貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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商談会

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 生で食べられる試食会が終わると、特別に厨房をお借りしポゥティトゥを茹でる。いつものように茹でて一口大に切ったものにシンプルに塩だけを振りかけ、そしてまたそれを食べてもらう。もう何を食べてもニコライさんたちは悶えるので、じいやたちの機嫌も良くなってきたようだ。
 果実も先ほど全て食べたと思っていたら、木箱の底からオーレンジンが出てきた。すっかりその存在を忘れていた私は持参したオーレンジンの半分を持ち、また厨房へと行き搾ってもらう。全員の試飲分くらいしか絞れなかったがまぁ良いだろう。

「果実水にしてもらったわ。飲んでみて」

 席へと戻った私は全員に少量のオーレンジンジュースを手渡すと、みんな同時に口に含む。

「……やはり品種が違うのですかね?先ほどのものよりも甘い」

 イチビが口を開くとカーラさんが騒ぎ出した。

「これもこの町で買ったオーレンジンかい!?全く同じものを育ててどうしてここまで甘く育つのさ?」

 カーラさんは首をひねりながら大声で独りごちている。どうやら先ほど飲んだオーレンジンと同じ品種らしかった。返答に困った私はミカンの皮を剥くようにオーレンジンを剥き、そしてそれも手渡すと噛むごとにニコライさんもカーラさんも「甘い」と騒ぐ。

「ちょいとアンタ。悪いけど口出しさせてもらうよ。こんなに味も品質も良いんだ。相場の倍の値段はするよ」

 値段について考えていたところ、カーラさんがまさかの援護射撃をしてくれる。とはいえその相場が分からない。

「……確かに。ここまでのものとは思っていませんでした。相場の倍の値段も納得です。ですがそれでは庶民が買えなくなってしまう」

 なるほど、と思っているとまたカーラさんがまた口を開く。

「そんなの王室の食事と王都で売り出せばいいじゃないか。その代わりごく普通の品質のものはこの町から買ったらいいよ。せっかく出来た縁だ。大事にしようじゃないか」

 カーラさんはなかなかの商売人だったようだ。私たちはカーラさんの発言に驚いていたが、ニコライさんは「それもそうか」と考える。

「商談正立ですね」

 一呼吸おいたニコライさんは立ち上がりカーラさんに握手を求める。そして二人はガッチリと固い握手を交した。それにしても今日はヒーズル王国とテックノン王国との取引だった筈である。当事者であるのに置いてけぼり感に戸惑っていると、ニコライさんとマークさんが話している隙にカーラさんが耳元で囁いた。

「値段は吊り上げとくよ」

 どうやら私たちが呆気にとられているうちに、カーラさんは私たちが儲けることが出来るように上手く立ち回っていたようだった。失礼ながら、騒がしいことが大好きな普通の女性だと思っていただけに、その商売人としての手腕は見事なものだった。

 だがこのまま黙っているわけにはいかない。こちらも今回ニコライさんに高値で買ってもらわねばならないものがあるのだ。

「ニコライさん」

 私はニコライさんの名前を呼び、テーブルの上にヒイラギ特製のリバーシを置く。ニコライさんの目はリバーシに釘付けになっている。

「以前会った時に町のみんなが遊んでいた道具よ。でも造りを見て分かる通り、これは安くないわ」

 お母様が紡いだ糸を合わせ紐にしたものを解く。蓋にはヒイラギが彫った森の民を象徴するマークがくっきりと存在感をあらわにしている。蓋を開けるまでもなく、その高級感にニコライさんは感嘆の溜め息をもらしている。

「蓋を開けてみて」

 私がそう言うとニコライさんはそっと蓋を開け、そして息を呑んだ。盤面の周りにはツルや花をモチーフとしたとても美しく、それでいて繊細な模様が彫り込まれている。私も初めて見たときはヒイラギの芸術センスに度肝を抜かれ感動すら覚えた。それはニコライさんもそうだったらしく、ヒイラギの作ったリバーシのおいそれと触れることを許さない存在感にニコライさんは動くことが出来ずにいた。賑やかなカーラさんですら両手で口を塞いで見入っている。
 やがて震える手でそっとコマを摘むと、コマにも彫られた模様を確認している。コマの一枚一枚の表には種を、裏には葉を彫り、角は丸く整えられ全て同じ大きさに作られたコマが盤面の横に整然と並んでいる。

「……これは……いくらでしょう?」

 震える声でニコライさんは話す。

「これを超えるものを作れる人はいないと思うわ。全て手作業で作り上げたものよ。傷の付きにくい固い木材で作ったそうだから、大事に使えば何十年と使えるわ。これは十個だけの限定品よ。いくらだったら買ってくれるかしら?」

 質問にあえて質問で返す。

「限定品!?」

 この世界でも『限定』という言葉に弱いのか、ニコライさんは顎に手を当てたりおでこに手を当てたりと思い悩んでいるようだ。今はリトールの町の人しか知らず、テックノン王国でこれの存在を知る者はいない。誰も口を挟まずニコライさんの言葉を待っていると、しばらくしてニコライさんは口を開いた。

「ここまで素晴らしい彫刻まで施されて、飾るだけでも価値があると思います。そして限定品ともなれば……大金貨二枚でどうでしょうか……?」

 予想以上の価格に叫び声を上げそうになったがぐっと堪えた。じいやたちは逆に絶句しているようだ。あえて平静を装いニコリと笑う。

「商談成立ね」

 私はニコライさんと握手を交した。その手をイチビたちは複雑な表情で見つめていたので、目で制したのだった。
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