貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
88 / 370

お待ちかねの『アレ』の納品

しおりを挟む
 表面上は爽やかにニコリと笑い、内心は悪代官も真っ青なほどいやらしい笑みをこぼしている私にニコライさんは語りかけた。

「そうでした!注文された物を作って参りましたよ!出来上がった物を見ても何に使うのか全く分からなかったのですが……」

「一度見せてもらってもいいかしら?」

 ようやく、ようやくアレが手に入る。私は自然な微笑みを携えウキウキしながら全員で外へと出た。カーラさんは「残念だけど一度店に戻るよ」と仕事に戻って行った。

 食堂の側には屋根付きの二頭立ての立派な馬車が四台も並んでいた。身なりの良い御者たちは背筋を伸ばしたまま御者席に座っている。

「ちょっとニコライさん!私たちが飲み食いしてる間、この人たちはずっと待ってたの!?ちゃんと休ませてあげなきゃダメじゃない!」

「え?……いや、考えてみればそうですね……」

「まさかいつもこんなことをしているの!?同じ人間なんだから疲れたりお腹が空いたりするのは当たり前でしょう!?」

 王国では適度に休憩をとりながら働いているので、主を待ったまま緊張感を維持している御者たちが辛くないかと思いつい怒ってしまった。御者たちもそれが当たり前だったのか、はたまた主が小娘に怒られている姿に驚いたのかあたふたとしている。空気を読んだマークさんが動き、食堂に人数分の飲み物と食事を注文し御者たちに中で休むように指示を出す。御者たちは私にわざわざ一礼をしてから中へと入って行った。

「ニコライさん、いい?人は大事にしないとダメよ?大事にしない主はいつか見限られるわよ」

 箱入り息子だったのか、ニコライさんは俺様ではないけれど気が利くタイプではなかったらしくその場で猛省していた。同じくマークさんもニコライさんの隣で小さくなっている。
 萎縮してしまった二人に普通のトーンで話しかけた。

「それでお願いした物はどこかしら?」

 私の問いかけにマークさんは三台目の馬車に走る。荷物の積み下ろしは御者にやらせていたのかマークさんが辛そうに見えたので、じいやに声をかけ手伝ってもらった。
 地面に置かれた金属製の物を見て、持って来たニコライさんも含め全員が不思議そうな顔をしている。ステンレスで作られたそれは私の知る鉄製の物よりも見た目の重量感はないが、細部を確認すると頼んだ通りの出来になっている。ペダルを踏むと難儀だったであろう部分はしっかりと回転をする。

「カレン嬢、これは何なのですか?もし数が必要であればと思い、こちらも十台作って参りました。必要でなければ用途をお伺いして他所に売るつもりなのですが……」

「実はね、まだ完成じゃないのよ。騙したつもりはないんだけれど、ごめんなさい」

 ニコライさんに謝りつつ、イチビたち四人にそれぞれ購入してきて欲しい物を、またはブルーノさんから借りてきて欲しい物を伝える。四人は脱兎のごとく走り出し、ほんの数分で戻って来てくれた。そしてその場で加工を頼む。
 イチビに頼んだ板を指定した形に何枚も加工してもらい、シャガに頼んだかなり太い鉄の針金を、ハマスゲが借りてきたニッパのような物で切断しその両側を金槌で等間隔に板に打ち付けていく。一通り出来たらそれをニコライさんが作った物にはめ込む。
 取り付けた板はドラム状となり、ペダルを踏むとそのドラム部分が勢い良く回る。

「完璧よ!」

「カレン嬢、私にはまだ分からないのですが……」

 喜ぶ私とは対象的にその場の全員が困惑気味のようだ。なのでオヒシバに頼んだ片手ほどのムギンの藁をドラム部分にあてがいペダルを踏んだ。穂の付いていない藁ではあったが、じいやたちはそれで理解したらしく歓声を上げる。

「姫様!これで皆がまた楽になりますぞ!」

 じいやは興奮しているが、やはりニコライさんには縁のない物のようでさっぱり分からないという表情をしている。

「これはね足踏式の脱穀機なのよ」

 信じられないことに、この世界では未だに脱穀をちまちまと手作業でしていたのだ。良くて金属を櫛状にした『千歯扱き』のような物を使うか、ヒーズル王国やリトールの町のような裕福ではない場所では布の上で穂先を棒で叩いて脱穀していたのだ。

「農作業で使う道具なのよ。これがあれば作業がかなり楽になるの。こちらは五台買わせていただくわ。残りは多分この町で全部売れるはずよ」

 農作業などしたことのないニコライさんやマークさんには、これがどれだけすごい道具なのか分からないらしく金貨二枚で良いと言う。想像してたよりもあまりの安さに驚いたが、他の町では金貨五枚か大金貨一枚で売ってみるつもりだと言う。

「ニコライさん……まだ分かってないと思うけれど、この道具の反響はすごいと思うわよ?」

 はぁ……、と気の抜けた返事をするので、近くを歩いていた人を呼び止め私が脱穀機の説明をする。説明を聞くや否や歓喜の声を上げ、その声を聞いた人がまた集まる。もう一度説明をしたあとに私は大きな声で言った。

「この脱穀機だけれど、金貨二枚ですって!」

 それを聞いた町の人は我先にとニコライさんに詰め寄り、喧嘩が起きそうになったので急きょ私が提案した抽選方式によりようやく落ち着いたのだった。

 ここまでの事態になるとは思ってもいなかったニコライさんの溜め息に、私は苦笑いするしか出来なかった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...