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ジョーイさんと履物
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ニコライさんと会話をしながら歩いているうちにお店が並ぶエリアに到着した。ニコライさんはカーラさんの店に行き、先程話した食料について話し合うと言うので一旦お別れをした。
「ジョーイさーん!」
入り口で声をかけると奥からジョーイさんが走って来る。
「カレンちゃん!待ってたよ!」
そう言いながらもじいやたちに会釈すると、じいやたちも会釈を返す。イチビたちは「カレンちゃん」と呼ぶジョーイさんには普通にしているので、ニコライさんだけを敵認定しているのだろう。ニコライさんは悪い人などではなく、むしろ良い人なのだがイチビたちの気持ちも分からなくもない。
「今日もね、買ってほしい物を作ってきたの」
「その言葉を待ってたよ!どうぞ奥へ!」
私たちは木箱を持ちジョーイさんの店の中に入る。席に着き木箱をテーブルの上に載せる。
「今回はどんなものを作って来たんだい?その帽子も?」
ワクワクとした様子のジョーイさんに少しだけ申し訳ない気持ちになり、苦笑いしながら話す。
「ごめんなさい、今回は娯楽の品ではないの。帽子も私たちの分しかなくて……。今回はね、履物を作って来たの」
ほんの少しだけ落胆したような表情をするジョーイさんだったが、私たちが作る品物を高く評価してくれているようので表情はすぐに戻った。見せてほしいと言うので木箱からぞうりやルームシューズが入ったカゴを取り出す。履物と聞いていたジョーイさんは不思議なものを見るような表情へと変わった。
「あのね、この町の人の履物を見て思ったんだけど、足が疲れない?」
足型に加工された木の板に足を乗せ布で縛っているだけのジョーイさんの足元を私は見る。
「これは家の中で履く履物なの。せめて家の中だけでも足を楽にできたらなと思って」
「産まれてからずっとこの履物だから、疲れるという感覚はないけど……一つ履いてもいいかい?」
そう言うジョーイさんにぞうりを手渡す。慣れるまで鼻緒が痛いかもと伝え実際に履いてもらった。
「うん……少し痛いけど……いつもより歩きやすい気がする」
ジョーイさんはそう言い店内を数歩進む。
「足の指を使って地を蹴るように歩くといいわよ」
それを聞いたジョーイさんはぎこちないながらもその通り歩いてみせた。最初は小首を傾げていたが、店内をグルグルと歩き回るうちにしっくりきたようだ。
「なんだか足の裏が気持ち良い気がするよ!それに歩きやすい気がする!」
元々すり足気味で歩いていたジョーイさんは、足の指を使うことによってストレッチ効果も得ることができたようで満足げだ。
「履物に男女差はないんだけれど、女性にはこっちのほうが良いと思うの」
あえて花のモチーフを着けた可愛らしいルームシューズを取り出せば、ジョーイさんは目を輝かせている。ヒーズル王国には既製品の靴がないのでサイズを測ることが出来ず、大小様々な大きさの履物を作ったのだ。ぞうりは鼻緒がチョーマ製の物とオッヒョイの布製の物の二種類、ルームシューズもデザインが二種類ある。
「どれもとても手間隙がかかる物なの。これに関しては作り方は教えないわ。値段は一足銀貨一枚よ」
日本円には正確に換算できないが、自分の中で銀貨一枚は五千円くらいの感覚でいる。ぞうりもルームシューズも日本でならそんなに高くないが、この世界には無いはずの物なのでふっかけたのだ。だけどジョーイさんは「銀貨一枚と銅貨二枚でも良いと思う」と言っている。話し合った結果ジョーイさんの見立てた値段で売り、売れたらジョーイさんの儲けとして銅貨二枚を渡すことにした。
そうと決まれば早速叩き売りの開始よ!
「皆さ~ん!森の民が作る、家の中での履物はいかが?」
店頭に並べ大声で客引きをする。町の人々は「家の中?」と首を傾げながらも集まって来た。
「皆さん自覚はないと思いますが、足が疲れていると思います。家の中では足を休ませませんか?」
ある程度人が集まったところで声を上げればジョーイさんもそれに加わる。
「森の民が作った貴重な糸を使って作られた物だ。私もさっき履かせてもらったが足が楽だ」
そう言うジョーイさんと二人で通りまで出てジョーイさんはぞうりを、私はルームシューズをアピールする。物珍しさと「貴重な糸」に反応した人は購入するが、いつものようには売れず大半が売れ残ってしまった。むしろルームシューズを入れていたカゴや木箱の方が食い付きが良かった。
売れ残った履物たちを見てしょんぼりとしているとジョーイさんが小声で話しかけてきた。
「大丈夫だカレンちゃん。これは明日以降に売れる」
「そうかしら……」
自信満々のジョーイさんに対して、自信喪失してしまった私は作り笑いも出来ない。
「今日買った人が家で履いて実感し、明日その話は広まる。さらに言うなら一つカーラに持って行きな。下手したら私よりも商売上手だしあの口だ。頼まなくても良い評判を広めてくれるぞ?」
確かに、と思った私はようやく笑うことができ、可愛らしいルームシューズを手にしてカーラさんのお店に向かうことにした。
「ジョーイさーん!」
入り口で声をかけると奥からジョーイさんが走って来る。
「カレンちゃん!待ってたよ!」
そう言いながらもじいやたちに会釈すると、じいやたちも会釈を返す。イチビたちは「カレンちゃん」と呼ぶジョーイさんには普通にしているので、ニコライさんだけを敵認定しているのだろう。ニコライさんは悪い人などではなく、むしろ良い人なのだがイチビたちの気持ちも分からなくもない。
「今日もね、買ってほしい物を作ってきたの」
「その言葉を待ってたよ!どうぞ奥へ!」
私たちは木箱を持ちジョーイさんの店の中に入る。席に着き木箱をテーブルの上に載せる。
「今回はどんなものを作って来たんだい?その帽子も?」
ワクワクとした様子のジョーイさんに少しだけ申し訳ない気持ちになり、苦笑いしながら話す。
「ごめんなさい、今回は娯楽の品ではないの。帽子も私たちの分しかなくて……。今回はね、履物を作って来たの」
ほんの少しだけ落胆したような表情をするジョーイさんだったが、私たちが作る品物を高く評価してくれているようので表情はすぐに戻った。見せてほしいと言うので木箱からぞうりやルームシューズが入ったカゴを取り出す。履物と聞いていたジョーイさんは不思議なものを見るような表情へと変わった。
「あのね、この町の人の履物を見て思ったんだけど、足が疲れない?」
足型に加工された木の板に足を乗せ布で縛っているだけのジョーイさんの足元を私は見る。
「これは家の中で履く履物なの。せめて家の中だけでも足を楽にできたらなと思って」
「産まれてからずっとこの履物だから、疲れるという感覚はないけど……一つ履いてもいいかい?」
そう言うジョーイさんにぞうりを手渡す。慣れるまで鼻緒が痛いかもと伝え実際に履いてもらった。
「うん……少し痛いけど……いつもより歩きやすい気がする」
ジョーイさんはそう言い店内を数歩進む。
「足の指を使って地を蹴るように歩くといいわよ」
それを聞いたジョーイさんはぎこちないながらもその通り歩いてみせた。最初は小首を傾げていたが、店内をグルグルと歩き回るうちにしっくりきたようだ。
「なんだか足の裏が気持ち良い気がするよ!それに歩きやすい気がする!」
元々すり足気味で歩いていたジョーイさんは、足の指を使うことによってストレッチ効果も得ることができたようで満足げだ。
「履物に男女差はないんだけれど、女性にはこっちのほうが良いと思うの」
あえて花のモチーフを着けた可愛らしいルームシューズを取り出せば、ジョーイさんは目を輝かせている。ヒーズル王国には既製品の靴がないのでサイズを測ることが出来ず、大小様々な大きさの履物を作ったのだ。ぞうりは鼻緒がチョーマ製の物とオッヒョイの布製の物の二種類、ルームシューズもデザインが二種類ある。
「どれもとても手間隙がかかる物なの。これに関しては作り方は教えないわ。値段は一足銀貨一枚よ」
日本円には正確に換算できないが、自分の中で銀貨一枚は五千円くらいの感覚でいる。ぞうりもルームシューズも日本でならそんなに高くないが、この世界には無いはずの物なのでふっかけたのだ。だけどジョーイさんは「銀貨一枚と銅貨二枚でも良いと思う」と言っている。話し合った結果ジョーイさんの見立てた値段で売り、売れたらジョーイさんの儲けとして銅貨二枚を渡すことにした。
そうと決まれば早速叩き売りの開始よ!
「皆さ~ん!森の民が作る、家の中での履物はいかが?」
店頭に並べ大声で客引きをする。町の人々は「家の中?」と首を傾げながらも集まって来た。
「皆さん自覚はないと思いますが、足が疲れていると思います。家の中では足を休ませませんか?」
ある程度人が集まったところで声を上げればジョーイさんもそれに加わる。
「森の民が作った貴重な糸を使って作られた物だ。私もさっき履かせてもらったが足が楽だ」
そう言うジョーイさんと二人で通りまで出てジョーイさんはぞうりを、私はルームシューズをアピールする。物珍しさと「貴重な糸」に反応した人は購入するが、いつものようには売れず大半が売れ残ってしまった。むしろルームシューズを入れていたカゴや木箱の方が食い付きが良かった。
売れ残った履物たちを見てしょんぼりとしているとジョーイさんが小声で話しかけてきた。
「大丈夫だカレンちゃん。これは明日以降に売れる」
「そうかしら……」
自信満々のジョーイさんに対して、自信喪失してしまった私は作り笑いも出来ない。
「今日買った人が家で履いて実感し、明日その話は広まる。さらに言うなら一つカーラに持って行きな。下手したら私よりも商売上手だしあの口だ。頼まなくても良い評判を広めてくれるぞ?」
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