109 / 370
姫たちの約束
しおりを挟む
思いがけず手に入った白ワインで、アンソニーさんは急遽スネック料理を追加で作る。その間にクジャは興味を持ったスネックについてペーターさんに問いかける。
「このスネックは食べるために捕まえておるのか?」
「いいや、この国では元々は腰紐として皮を使うために捕まえていたのだが、この町では余った肉がもったいなくて食べ始めたんだ」
ペーターさんの話を聞いたクジャはしばし考えてから口を開いた。
「我が国は森や林が多くスネックもたくさんいる。そのスネックを捕まえれば……」
クジャがそこまで言うとペーターさんはそれを遮る。
「やめたほうがいい。私たちも同じようなことを考えた時もあったが、このスネックは毒もないし臭みがない。毒のあるスネックは危険だし、毒が無くても他のものは臭みで食べられんよ」
それを聞いたクジャはしょんぼりとしている。よほどこのスネック料理が気に入ったようだ。ちなみにスネックを好んで食べない街などでは、このスネック以外も捕まえるらしい。皮だけ剥がし、身は捨てるそうだ。
「そうだわ!クジャ、さっき言ってた『セウユ』と『ミィソ』を分けてもらうことは可能かしら?」
私はどうしてもその調味料が欲しく、図々しくお願いをした。
「ふふ。少量で悪いが持って来ておる。ニコライが『カレン嬢がカレン嬢が』とうるさかったのでな。後ほど渡そう。それにしてもなぜカレンはセウユとミィソを知っておるのだ?」
単純な疑問なんだろうが、前世が日本人でしたと言えるはずもなくじいやに犠牲になってもらうことにした。
「……うちのじいやは昔シャイアーク城で弓や槍の使い方を教えていたらしくて、その時に食べたことがあるらしいのよ!ね!?じいや!」
無理やり話題を振ったのでじいやは驚いていたが、必死な私を見て察してくれたようで上手く話に乗ってくれた。
「えぇ美味でした」
おそらく本当は口にしたこともなければ全く知らない調味料だろうに、じいやは爽やかな笑顔でそう答えた。だけれどクジャとモズさんは驚いた顔をして顔を見合わせ、そしてじいやに向かって口を開いた。
「レオナルドという弟子がいたことは?」
「……レオナルド?……あぁ!赤毛のレオナルドですかな!?」
するとじいやもその名前に覚えがあったらしく興奮気味に声を発する。
「そなた、あの『稀代の森の民』であったか!まさか会えるとは……実はレオナルドはリーンウン国との国境警備隊としているのじゃよ。いつも『あの頃は毎日が楽しかった』と申しておる。そしてシャイアーク王のことを嫌っておってな、わらわの味方である。故に闇市の為にシャイアーク国に入る時は秘密にしてくれるのじゃ。我が国の国境警備隊とも仲良しじゃ」
それを聞いたじいやは珍しく声を出して笑い始めた。どうやらヒーズル王国との国境にいるジェイソンさんと同じようなことをしているようだ。ジェイソンさんとレオナルドさんはほとんど同時期に教えていた生徒らしい。
「そうじゃ!今度リーンウン国に遊びに来るが良い!いや、ぜひ来て欲しいのじゃ!さすがに今すぐとは言わぬ。こちらも父上に報告せねばならぬし……さっきは秘密にすると申したが、わらわの家族には森の民の存在は知らせても良いか?」
この問いかけに私とじいやは顔を見合わせる。出来る限り森の民の存在は秘密にしたい。けれどクジャとせっかく友人になれたのだ。複雑な思いでいるとクジャが口を開いた。
「心配はいらぬ。わらわの家族も皆、シャイアーク王に良い感情を持っておらぬ。皆味方になってくれるであろう。わらわの家族と打ち解けると良い」
そしてペーターさんに「王の悪口を散々言って悪いな」と言うと、ペーターさんもまた「この町の人間も同じくらい王を嫌っている」と言い笑い合っている。
「ねぇじいや。おババさんの占いの『仲間』って、人数までは言っていなかったわよね?もしかしたらクジャもその『仲間』なんじゃないかしら?」
「ふむ……そうですな。……レオナルドもまた信頼出来る男でありましたからな。そのレオナルドとの関係が良好なのであればこの方は大丈夫ではないかと……。もし何かあったとしたら、このじいが全力でお守りしますよ」
小声で会話をするじいやのナイト的な発言にときめいてしまった。するとそれを察したオヒシバも「全力でお守りします」と話に入って来た。うん、今すぐは無理だけれど、リーンウン国に行ってみよう。
「クジャ、ぜひ行かせて欲しいわ。ただね、一度帰ってからやることがたくさんあって、少し先の話になると思うの」
眉尻を下げそう言うと、クジャは「やること?」と不思議そうに聞いてくる。
「ヒーズル王国は砂と岩しかない場所だったの。そして民たちはちゃんとした家すら無かったの。今はその砂の地に畑を作って森の再建をしていて、帰ったら民の家を作って水場を得るために水路も作っていて……。あぁあとテックノン王国とこの町の為に輸出する物も作らないといけないわね。収穫したものも加工しないといけないし……あとはなんだったかしら……?」
指を折りながらやることを話しているとクジャとモズさん、そして隣で聞いていたニコライさんたちも絶句している。
「カレンよ……もしや、そなた姫でありながらそれをこなしておるのか……?」
「え?うん、そうよ。私だけでなく王であるお父様も王妃であるお母様も、王子である私の弟も全員で作業をしているわ。だって私たちの国だもの。私たちがやらなければ誰がやるの?ふんぞり返っていたって民の暮らしは良くならないわ」
自分では当たり前のことを言ったつもりだったが、クジャは立ち上がりわざわざテーブルを回り込んでこちらに来て「本当に頭が下がる!カレンのことが大好きじゃ!」と抱き着いてきた。どさくさに紛れてニコライさんも「カレン嬢!素敵です!」と抱き着こうとしたが、オヒシバに首根っこを掴まれ席に引きずり戻されていた。
「このスネックは食べるために捕まえておるのか?」
「いいや、この国では元々は腰紐として皮を使うために捕まえていたのだが、この町では余った肉がもったいなくて食べ始めたんだ」
ペーターさんの話を聞いたクジャはしばし考えてから口を開いた。
「我が国は森や林が多くスネックもたくさんいる。そのスネックを捕まえれば……」
クジャがそこまで言うとペーターさんはそれを遮る。
「やめたほうがいい。私たちも同じようなことを考えた時もあったが、このスネックは毒もないし臭みがない。毒のあるスネックは危険だし、毒が無くても他のものは臭みで食べられんよ」
それを聞いたクジャはしょんぼりとしている。よほどこのスネック料理が気に入ったようだ。ちなみにスネックを好んで食べない街などでは、このスネック以外も捕まえるらしい。皮だけ剥がし、身は捨てるそうだ。
「そうだわ!クジャ、さっき言ってた『セウユ』と『ミィソ』を分けてもらうことは可能かしら?」
私はどうしてもその調味料が欲しく、図々しくお願いをした。
「ふふ。少量で悪いが持って来ておる。ニコライが『カレン嬢がカレン嬢が』とうるさかったのでな。後ほど渡そう。それにしてもなぜカレンはセウユとミィソを知っておるのだ?」
単純な疑問なんだろうが、前世が日本人でしたと言えるはずもなくじいやに犠牲になってもらうことにした。
「……うちのじいやは昔シャイアーク城で弓や槍の使い方を教えていたらしくて、その時に食べたことがあるらしいのよ!ね!?じいや!」
無理やり話題を振ったのでじいやは驚いていたが、必死な私を見て察してくれたようで上手く話に乗ってくれた。
「えぇ美味でした」
おそらく本当は口にしたこともなければ全く知らない調味料だろうに、じいやは爽やかな笑顔でそう答えた。だけれどクジャとモズさんは驚いた顔をして顔を見合わせ、そしてじいやに向かって口を開いた。
「レオナルドという弟子がいたことは?」
「……レオナルド?……あぁ!赤毛のレオナルドですかな!?」
するとじいやもその名前に覚えがあったらしく興奮気味に声を発する。
「そなた、あの『稀代の森の民』であったか!まさか会えるとは……実はレオナルドはリーンウン国との国境警備隊としているのじゃよ。いつも『あの頃は毎日が楽しかった』と申しておる。そしてシャイアーク王のことを嫌っておってな、わらわの味方である。故に闇市の為にシャイアーク国に入る時は秘密にしてくれるのじゃ。我が国の国境警備隊とも仲良しじゃ」
それを聞いたじいやは珍しく声を出して笑い始めた。どうやらヒーズル王国との国境にいるジェイソンさんと同じようなことをしているようだ。ジェイソンさんとレオナルドさんはほとんど同時期に教えていた生徒らしい。
「そうじゃ!今度リーンウン国に遊びに来るが良い!いや、ぜひ来て欲しいのじゃ!さすがに今すぐとは言わぬ。こちらも父上に報告せねばならぬし……さっきは秘密にすると申したが、わらわの家族には森の民の存在は知らせても良いか?」
この問いかけに私とじいやは顔を見合わせる。出来る限り森の民の存在は秘密にしたい。けれどクジャとせっかく友人になれたのだ。複雑な思いでいるとクジャが口を開いた。
「心配はいらぬ。わらわの家族も皆、シャイアーク王に良い感情を持っておらぬ。皆味方になってくれるであろう。わらわの家族と打ち解けると良い」
そしてペーターさんに「王の悪口を散々言って悪いな」と言うと、ペーターさんもまた「この町の人間も同じくらい王を嫌っている」と言い笑い合っている。
「ねぇじいや。おババさんの占いの『仲間』って、人数までは言っていなかったわよね?もしかしたらクジャもその『仲間』なんじゃないかしら?」
「ふむ……そうですな。……レオナルドもまた信頼出来る男でありましたからな。そのレオナルドとの関係が良好なのであればこの方は大丈夫ではないかと……。もし何かあったとしたら、このじいが全力でお守りしますよ」
小声で会話をするじいやのナイト的な発言にときめいてしまった。するとそれを察したオヒシバも「全力でお守りします」と話に入って来た。うん、今すぐは無理だけれど、リーンウン国に行ってみよう。
「クジャ、ぜひ行かせて欲しいわ。ただね、一度帰ってからやることがたくさんあって、少し先の話になると思うの」
眉尻を下げそう言うと、クジャは「やること?」と不思議そうに聞いてくる。
「ヒーズル王国は砂と岩しかない場所だったの。そして民たちはちゃんとした家すら無かったの。今はその砂の地に畑を作って森の再建をしていて、帰ったら民の家を作って水場を得るために水路も作っていて……。あぁあとテックノン王国とこの町の為に輸出する物も作らないといけないわね。収穫したものも加工しないといけないし……あとはなんだったかしら……?」
指を折りながらやることを話しているとクジャとモズさん、そして隣で聞いていたニコライさんたちも絶句している。
「カレンよ……もしや、そなた姫でありながらそれをこなしておるのか……?」
「え?うん、そうよ。私だけでなく王であるお父様も王妃であるお母様も、王子である私の弟も全員で作業をしているわ。だって私たちの国だもの。私たちがやらなければ誰がやるの?ふんぞり返っていたって民の暮らしは良くならないわ」
自分では当たり前のことを言ったつもりだったが、クジャは立ち上がりわざわざテーブルを回り込んでこちらに来て「本当に頭が下がる!カレンのことが大好きじゃ!」と抱き着いてきた。どさくさに紛れてニコライさんも「カレン嬢!素敵です!」と抱き着こうとしたが、オヒシバに首根っこを掴まれ席に引きずり戻されていた。
81
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる