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「治ったー!」
「本当に?」
翌朝目を覚ますと熱は下がり咳も止まっている。無駄に元気アピールをしたが逆にスイレンに心配されてしまい、お母様を呼びに部屋から出て行ってしまった。少しすると家族全員が部屋になだれ込んで来る。
「カレン治ったのか!?」
「無理はいけないわ」
お父様とお母様はペタペタと私のおでこや顔を触り熱の確認をしている。本当に熱が下がったのを確認した二人はホッとすると同時に病み上がりだからと動き回るのを禁止した。
朝食の準備も片付けも手伝わせてもらえず、今日は広場から出るのを禁止された為に手持ち無沙汰になってしまう。森へも畑にも水路建設の場にも足を踏み入れることを許されず少々不貞腐れてしまう。昨日一日休養をした他の子どもたちは元気に仕事をしているのだから。
脱穀を手伝おうとしても糸作りに加わろうとしても「休んでいてください」としか言われず、ポニーとロバのブラッシングを丁寧にやっても時間が余り過ぎてしまう。ポニーとロバとおやつの時間に果実を食べ、暇を持て余した私は家の東側にあるレンガ作りの場所へと向かう。レンガを焼く窯も増えた分、在庫もかなり増えている。シャガたちから作り方を教わった者たちは日々レンガを作り続けていてくれたようで、その作業をボーっと見学することにした。
以前私が教えたように焼いている途中で割れてしまったレンガは粉になるまで粉砕し、粘土と混ぜて新たなレンガにしている。そのおかげで耐久性が上がっているのか、完成したレンガ置き場でレンガを叩いてみると新しい物ほど甲高い音を響かせるのだ。……閃いてしまったと同時に悪知恵も働く。広場から出るのはダメで脱穀も糸作りもダメならここで作業をすれば良いのだ。幸いにもレンガ作りの者たちは作るのや火加減に必死で私をあまり気にしていない。
今は使われていない最初に私が作った窯の隣にしゃがみ、まずは草をむしって地面を露出させる。ある程度むしったところで手を止め、素知らぬ顔をして古いレンガを運び地面に並べていく。数段重ね高さを出したこの部分は土台となる。今からこれ以上やると昼食の時にお母様に見つかってしまいそうなので、近くにバケツを置いたり使いもしない道具を置いてあくまでも一人遊びをしているように見せかける。
そして昼食後に急ピッチで作業を進める。新しいレンガを取りに行く時も作業をしている者たちに「レンガを積んで遊んでいるの」と微笑めば、皆「そうですか」と笑ってくれる。何往復もしレンガを集めそれを外側だけ『コ』の字に積んでいく。四段ほど積んだところで内部に数ヶ所レンガを置き、初めて作った窯の蓋として使っていた物を持って来る。これは最初に瓦状に作ったが、水分が多かったせいか焼いているうちに板状に近い形状になってしまったのだがまさかこれがここで役立つとは思ってもいなかった。それを敷くように並べ奥は隙間を開ける。
そしてまた『コ』の字にレンガを積み上げ、板状の物で天板のように塞ぎ上にレンガを一段敷き詰めた。一度全体を確認し、『コ』の字の開いている部分を少し狭くしたくて粉砕する前の割れたレンガをもらってきてはめ込む。なかなか良い感じだ。
近くに置いてあったバケツを持ち「粘土遊びをするの」とレンガを捏ねている者のところへ行き、粘土と粉砕した粉状のレンガを貰い、遊んでいると見せかけてよく混ぜる。そして積み上げたレンガの場所に戻り、板状のレンガを挟んだ辺りに出来ている隙間をその粘土を重ね付けして塞ぐ。
完璧よ。完璧だわ。そう、出来たのはレンガ作りのオーブンだ。料理をするわけではないが、試し焼きと粘土の乾燥を兼ねて火をつけてみる。下の段で燃えた空気が奥に作った隙間を通って上の段を暖める。火をつけてみるとやはり何かを焼いてみたくなり、ふと振り返ると広場との境い目にある畑にはトウモロコーンが実っている。畑に入るわけではないからセーフだと自分に言い聞かせ、広場から手を伸ばして一本を収穫した。
レンガの焼き場から何食わぬ顔をして薪を持って来てどんどんと焚べていくと、オーブンの温度はどんどんと上がっていく。頃合いを見計らいトウモロコーンを入れるとジュッと焼ける音がしている。醤油をかけて食べたい衝動に駆られるが、これは試し焼きだと我慢する。木の棒でトウモロコーンを転がし、全体的に焼けたところでまだ使っていない薪を皿代わりにして取り出した。
「うまっ!」
うっかり生前の言葉が出てしまうほど、ただ焼いただけのトウモロコーンは美味しかった。中まで火も通り夢中で食べていると背後に気配を感じた。
「カレン! 何をしているの!」
恐る恐る振り向くと鬼の形相のお母様が立っていた。
「えぇと……料理をする窯を作っていて……食べる?」
天然のお母様はものすごく怒っているのに素直に焼きトウモロコーンを受け取って食べる。するとみるみる機嫌が直って褒められてしまった。いつの間にかもう夕方となっており、夕食にこの焼きトウモロコーンを出そうとお母様が言い出し急きょ大量のトウモロコーンを焼くことになってしまった。結果オーライである。
「本当に?」
翌朝目を覚ますと熱は下がり咳も止まっている。無駄に元気アピールをしたが逆にスイレンに心配されてしまい、お母様を呼びに部屋から出て行ってしまった。少しすると家族全員が部屋になだれ込んで来る。
「カレン治ったのか!?」
「無理はいけないわ」
お父様とお母様はペタペタと私のおでこや顔を触り熱の確認をしている。本当に熱が下がったのを確認した二人はホッとすると同時に病み上がりだからと動き回るのを禁止した。
朝食の準備も片付けも手伝わせてもらえず、今日は広場から出るのを禁止された為に手持ち無沙汰になってしまう。森へも畑にも水路建設の場にも足を踏み入れることを許されず少々不貞腐れてしまう。昨日一日休養をした他の子どもたちは元気に仕事をしているのだから。
脱穀を手伝おうとしても糸作りに加わろうとしても「休んでいてください」としか言われず、ポニーとロバのブラッシングを丁寧にやっても時間が余り過ぎてしまう。ポニーとロバとおやつの時間に果実を食べ、暇を持て余した私は家の東側にあるレンガ作りの場所へと向かう。レンガを焼く窯も増えた分、在庫もかなり増えている。シャガたちから作り方を教わった者たちは日々レンガを作り続けていてくれたようで、その作業をボーっと見学することにした。
以前私が教えたように焼いている途中で割れてしまったレンガは粉になるまで粉砕し、粘土と混ぜて新たなレンガにしている。そのおかげで耐久性が上がっているのか、完成したレンガ置き場でレンガを叩いてみると新しい物ほど甲高い音を響かせるのだ。……閃いてしまったと同時に悪知恵も働く。広場から出るのはダメで脱穀も糸作りもダメならここで作業をすれば良いのだ。幸いにもレンガ作りの者たちは作るのや火加減に必死で私をあまり気にしていない。
今は使われていない最初に私が作った窯の隣にしゃがみ、まずは草をむしって地面を露出させる。ある程度むしったところで手を止め、素知らぬ顔をして古いレンガを運び地面に並べていく。数段重ね高さを出したこの部分は土台となる。今からこれ以上やると昼食の時にお母様に見つかってしまいそうなので、近くにバケツを置いたり使いもしない道具を置いてあくまでも一人遊びをしているように見せかける。
そして昼食後に急ピッチで作業を進める。新しいレンガを取りに行く時も作業をしている者たちに「レンガを積んで遊んでいるの」と微笑めば、皆「そうですか」と笑ってくれる。何往復もしレンガを集めそれを外側だけ『コ』の字に積んでいく。四段ほど積んだところで内部に数ヶ所レンガを置き、初めて作った窯の蓋として使っていた物を持って来る。これは最初に瓦状に作ったが、水分が多かったせいか焼いているうちに板状に近い形状になってしまったのだがまさかこれがここで役立つとは思ってもいなかった。それを敷くように並べ奥は隙間を開ける。
そしてまた『コ』の字にレンガを積み上げ、板状の物で天板のように塞ぎ上にレンガを一段敷き詰めた。一度全体を確認し、『コ』の字の開いている部分を少し狭くしたくて粉砕する前の割れたレンガをもらってきてはめ込む。なかなか良い感じだ。
近くに置いてあったバケツを持ち「粘土遊びをするの」とレンガを捏ねている者のところへ行き、粘土と粉砕した粉状のレンガを貰い、遊んでいると見せかけてよく混ぜる。そして積み上げたレンガの場所に戻り、板状のレンガを挟んだ辺りに出来ている隙間をその粘土を重ね付けして塞ぐ。
完璧よ。完璧だわ。そう、出来たのはレンガ作りのオーブンだ。料理をするわけではないが、試し焼きと粘土の乾燥を兼ねて火をつけてみる。下の段で燃えた空気が奥に作った隙間を通って上の段を暖める。火をつけてみるとやはり何かを焼いてみたくなり、ふと振り返ると広場との境い目にある畑にはトウモロコーンが実っている。畑に入るわけではないからセーフだと自分に言い聞かせ、広場から手を伸ばして一本を収穫した。
レンガの焼き場から何食わぬ顔をして薪を持って来てどんどんと焚べていくと、オーブンの温度はどんどんと上がっていく。頃合いを見計らいトウモロコーンを入れるとジュッと焼ける音がしている。醤油をかけて食べたい衝動に駆られるが、これは試し焼きだと我慢する。木の棒でトウモロコーンを転がし、全体的に焼けたところでまだ使っていない薪を皿代わりにして取り出した。
「うまっ!」
うっかり生前の言葉が出てしまうほど、ただ焼いただけのトウモロコーンは美味しかった。中まで火も通り夢中で食べていると背後に気配を感じた。
「カレン! 何をしているの!」
恐る恐る振り向くと鬼の形相のお母様が立っていた。
「えぇと……料理をする窯を作っていて……食べる?」
天然のお母様はものすごく怒っているのに素直に焼きトウモロコーンを受け取って食べる。するとみるみる機嫌が直って褒められてしまった。いつの間にかもう夕方となっており、夕食にこの焼きトウモロコーンを出そうとお母様が言い出し急きょ大量のトウモロコーンを焼くことになってしまった。結果オーライである。
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