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嵐
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私たちはリトールの町を出て国境に向かって歩いているが、お母様たち仲良し三人組は「私たちもあんな家に住みたいわ」と楽しげに会話をし、タラとセリさんは「作ったものが売れるのがこんなに嬉しいなんて」と感動し涙ぐみながら会話をしている。そんな中、スイレンは笑顔で私に話しかけてくる。
「ねぇカレン。クジャクさんの瞳の色だけど不思議だったね。本当に綺麗だった。とても良い人だったし、ニコライさんもお話が面白かったよ。でも一番話していて楽しいのはやっぱりブルーノさんだなぁ」
それを聞いたヒイラギは吹き出している。やはりスイレンに恋愛はまだ早いようで、クジャに綺麗と言ったのもやはり瞳についてだったようだ。クジャの思いはいつ届くかしら、と思っているうちに国境が見えて来た。
「敬礼!」
今まで聞いたことのない腹の底から出された声が聞こえ、ジェイソンさんたちがこちらに敬礼をしている。
「もう! ジェイソンさんったら。今まで通りで良いと言ったでしょう?」
「しかし……」
ジェイソンさんに注意をするが、私たちが王族だと知ってしまったジェイソンさんは冷や汗をかき慌てている。
「あらジェイソンさん」
私たちが話しているところに後方から追いついたお母様が話に入って来ると、ジェイソンさんは違う汗をかき始める。
「今はまだお呼び出来ないけれど、もう少し国らしくなったらぜひ遊びにいらしてね」
お母様の笑顔に撃ち抜かれたのかジェイソンさんは胸を押さえてしまった。そしてうっかりと本音を漏らしてしまったのだ。
「……遊びに行くどころか住みたいです……」
これには私たちも他の国境警備隊も驚きの声を上げてしまった。ハッとしたジェイソンさんは片手で口を塞ぐが、天然のお母様とスイレンは何食わぬ顔をしている。
「あら、じゃあ住めば良いわ。でもまずは家を用意しないといけないわね。ご家族は?」
「いえ……あの……天涯孤独の独身ですが……」
一番呆気にとられているジェイソンさんはお母様のペースにハマり、質問に答えている。
「じゃあ早く帰って家の建設を進めないといけないね」
お母様とスイレンはにこやかに会話をしている。その隙に私はジェイソンさんに質問をしてみた。
「ちなみに他国に住むにはどうするの?」
「えぇ!? ……城に行き戸籍を消してもらい、その写しをもらい行きたい国に持って行くことになっているが……えぇ!?」
ジェイソンさんは見事に混乱しているようである。さらには他の警備隊が「隊長だけずるい!」とまで言っている。
「……もし本気ならテックノン王国かリーンウン国に先に行くことね。両国とは仲良くさせてもらっているから、その国から私たちのヒーズル王国に移り住めば良いわ。……でもそうしたらこの国境を通れなくなってしまうわね……リーンウン国の国境のレオナルドさんをこちらに移動出来ないかしら……」
後半は独りごちてしまったが、レオナルドさんの名前を聞いたジェイソンさんたちは「知っておられるのですか?」と驚いている。
「名前だけね。私たちとジェイソンさんのように、クジャ……リーンウン国の姫も内緒で国境を素通りしていると聞いたの。じいやの弟子であることも聞いたわ」
「隊は別でしたが優秀な男です」
私たちが話しているとお母様とスイレンは「早く帰って家を建てよう」と盛り上がってしまい、挨拶もそこそこにヒーズル王国へと足を踏み入れた。
山沿いに建てられた小屋を目指して歩く途中、今までで一番大きな砂嵐に遭いハコベさんを守るようにひとかたまりになってやり過ごしたりと帰りは大変であった。余裕が出来たら砂防林を作るべきなのかもしれない。
そして小屋に一泊した私たちは早朝から広場を目指して歩いたが、そこには鬼が二匹いた……。
「カレン! スイレン! なぜレンゲを危険な目に合わせた!?」
「ハコベは体が弱いと言ったのを忘れたのか!?」
広場に足を踏み入れようやく帰ってきたと実感しているところにとてつもなく激怒しているお父様とタデが現れた。あまりの剣幕とその形相にスイレンは泣いてしまう。タラとセリさんも怯え、共に怯え固まっている。
「ヒイラギ! お前もなぜ止めなかったのだ!?」
やはりヒイラギにも当たり散らし始め、ヒイラギが口を開く前にお母様たちが反撃する。
「私のヒイラギに怒鳴らないで」
「そうよ。体が弱いと言っても歩けないわけではないわ」
「モクレンが行きたい人は連れて行けと言ったのでしょう? 私たちは行きたいから行ったのよ? スイレンまで泣かせて……文句があるなら私たちに直接言えば良いでしょう? そんなことで怒るモクレンなんて嫌いよ」
女性陣はお父様たちに怒り詰め寄る。激しい夫婦喧嘩が起こるのかとハラハラとしていたが、ハコベさんに怒られたタデは激しく落ち込み項垂れ、お母様に「嫌い」と言われたお父様はその場に崩れ落ちた。
「「「謝って」」」
女性陣三人組はふんぞり返りそう言い放つと、お父様とタデは素直に謝ったのだ。おババさんの占いの『嵐』とは、砂嵐でもお父様たちでもなく、お母様たち仲良し三人組のことであったのを私とヒイラギは確信したのだった。
「ねぇカレン。クジャクさんの瞳の色だけど不思議だったね。本当に綺麗だった。とても良い人だったし、ニコライさんもお話が面白かったよ。でも一番話していて楽しいのはやっぱりブルーノさんだなぁ」
それを聞いたヒイラギは吹き出している。やはりスイレンに恋愛はまだ早いようで、クジャに綺麗と言ったのもやはり瞳についてだったようだ。クジャの思いはいつ届くかしら、と思っているうちに国境が見えて来た。
「敬礼!」
今まで聞いたことのない腹の底から出された声が聞こえ、ジェイソンさんたちがこちらに敬礼をしている。
「もう! ジェイソンさんったら。今まで通りで良いと言ったでしょう?」
「しかし……」
ジェイソンさんに注意をするが、私たちが王族だと知ってしまったジェイソンさんは冷や汗をかき慌てている。
「あらジェイソンさん」
私たちが話しているところに後方から追いついたお母様が話に入って来ると、ジェイソンさんは違う汗をかき始める。
「今はまだお呼び出来ないけれど、もう少し国らしくなったらぜひ遊びにいらしてね」
お母様の笑顔に撃ち抜かれたのかジェイソンさんは胸を押さえてしまった。そしてうっかりと本音を漏らしてしまったのだ。
「……遊びに行くどころか住みたいです……」
これには私たちも他の国境警備隊も驚きの声を上げてしまった。ハッとしたジェイソンさんは片手で口を塞ぐが、天然のお母様とスイレンは何食わぬ顔をしている。
「あら、じゃあ住めば良いわ。でもまずは家を用意しないといけないわね。ご家族は?」
「いえ……あの……天涯孤独の独身ですが……」
一番呆気にとられているジェイソンさんはお母様のペースにハマり、質問に答えている。
「じゃあ早く帰って家の建設を進めないといけないね」
お母様とスイレンはにこやかに会話をしている。その隙に私はジェイソンさんに質問をしてみた。
「ちなみに他国に住むにはどうするの?」
「えぇ!? ……城に行き戸籍を消してもらい、その写しをもらい行きたい国に持って行くことになっているが……えぇ!?」
ジェイソンさんは見事に混乱しているようである。さらには他の警備隊が「隊長だけずるい!」とまで言っている。
「……もし本気ならテックノン王国かリーンウン国に先に行くことね。両国とは仲良くさせてもらっているから、その国から私たちのヒーズル王国に移り住めば良いわ。……でもそうしたらこの国境を通れなくなってしまうわね……リーンウン国の国境のレオナルドさんをこちらに移動出来ないかしら……」
後半は独りごちてしまったが、レオナルドさんの名前を聞いたジェイソンさんたちは「知っておられるのですか?」と驚いている。
「名前だけね。私たちとジェイソンさんのように、クジャ……リーンウン国の姫も内緒で国境を素通りしていると聞いたの。じいやの弟子であることも聞いたわ」
「隊は別でしたが優秀な男です」
私たちが話しているとお母様とスイレンは「早く帰って家を建てよう」と盛り上がってしまい、挨拶もそこそこにヒーズル王国へと足を踏み入れた。
山沿いに建てられた小屋を目指して歩く途中、今までで一番大きな砂嵐に遭いハコベさんを守るようにひとかたまりになってやり過ごしたりと帰りは大変であった。余裕が出来たら砂防林を作るべきなのかもしれない。
そして小屋に一泊した私たちは早朝から広場を目指して歩いたが、そこには鬼が二匹いた……。
「カレン! スイレン! なぜレンゲを危険な目に合わせた!?」
「ハコベは体が弱いと言ったのを忘れたのか!?」
広場に足を踏み入れようやく帰ってきたと実感しているところにとてつもなく激怒しているお父様とタデが現れた。あまりの剣幕とその形相にスイレンは泣いてしまう。タラとセリさんも怯え、共に怯え固まっている。
「ヒイラギ! お前もなぜ止めなかったのだ!?」
やはりヒイラギにも当たり散らし始め、ヒイラギが口を開く前にお母様たちが反撃する。
「私のヒイラギに怒鳴らないで」
「そうよ。体が弱いと言っても歩けないわけではないわ」
「モクレンが行きたい人は連れて行けと言ったのでしょう? 私たちは行きたいから行ったのよ? スイレンまで泣かせて……文句があるなら私たちに直接言えば良いでしょう? そんなことで怒るモクレンなんて嫌いよ」
女性陣はお父様たちに怒り詰め寄る。激しい夫婦喧嘩が起こるのかとハラハラとしていたが、ハコベさんに怒られたタデは激しく落ち込み項垂れ、お母様に「嫌い」と言われたお父様はその場に崩れ落ちた。
「「「謝って」」」
女性陣三人組はふんぞり返りそう言い放つと、お父様とタデは素直に謝ったのだ。おババさんの占いの『嵐』とは、砂嵐でもお父様たちでもなく、お母様たち仲良し三人組のことであったのを私とヒイラギは確信したのだった。
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