貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
147 / 370

確認

しおりを挟む
 ヒーズル王国へと帰ってきた私たちは、ひとまずゆっくりしましょうと言うお母様の一言により広場に座ってくつろいでいる。くつろいではいるつもりなのだが、視界の端に見える燃え尽き完全に消し炭のようになっているお父様とタデが気になって落ち着かない。スイレンも同じような居心地の悪さを感じているらしく「僕、水路を見て来ようかな」なんて作り笑いで言う。

「そ、そうねスイレン。一緒に行きましょうか」

 なんとかこの場を離れようとスイレンと一緒に立ち上がると、お母様が天然なのか嫌味なのか分からない発言をした。

「じゃあ私も行こうかしら。二人だけで行って直接私に何も言えないモクレンに何かされたら許せないもの」

 お父様たちのいる方向を見ることもなく笑顔で言い放つお母様だが、私とスイレンはお父様を見ることが出来ない。きっとこの発言で地に埋まっているのではないかと思う。

 居心地の悪くなったヒイラギもまた一緒に行くと言い出し、必死にお父様たちを見ないように購入してきた物を降ろし鉄線だけをポニーとロバに運んでもらう。ちなみにハコベさんとナズナさんは何を、とは言わないが見張りをするとその場に残った。

 私とスイレン、ヒイラギは変な緊張感から口数が少なくなるが、お母様は「ブルーノさんのお宅は素敵だったわね」とウキウキとした様子である。水路に向かう途中の家の建築予定地では足を止め、「ジェイソンさんの家も作らないとね」と終始楽しそうに話しているのがまた怖い。

 水路に到着するとほんの数日で立派に護岸整備がされていて、スイレンと共に感嘆の声を漏らした。きっちりと真っ直ぐに並べられた蛇籠は圧巻であった。

「姫様! スイレン様!」

 私たちに気付いた者が声を上げるとみんながこちらを振り向く。そしてじいややイチビたちがこちらへ走って来る。

「お帰りになられたのですね。……モクレン様はどうなされました?」

 じいやは辺りを見回しながらそう聞くが、どう答えたら良いのか分からない私とスイレンとヒイラギは苦笑いをするしかない。するとお母様はニッコリと微笑んで口を開いた。

「とても楽しい旅だったのよ。なのにモクレンとタデったらスイレンを泣かせたんですもの。もう知らないわ」

 頬を膨らませるお母様の仕草は可愛らしいものであるが、その言葉を聞いた者は全員が何かを察した表情をした。おそらく森に住んでいた頃からこのようなことが多々あったのだろう。一番このような事態に慣れているであろうヒイラギは、努めて明るく声を上げた。

「鉄線を購入してきたよ。早く水を引けるようにみんなで頑張ろう」

 ヒイラギの張り付けたような笑顔でさらに何かを察したみんなは「そ……そうだな」と顔を見合わせている。そして同じくこのようなことに慣れているであろうじいやはお母様に声をかけた。

「お疲れでなければ、作りかけのオアシスを見てみませんか?」

「えぇ、ぜひ」

 ヒイラギはこのまま蛇籠作りと設置をすると言うので一度ここで別れる。じいやに案内され川底に向かって小さな蛇籠を組み合わせた階段を降りると、お母様は階段の高さなどについて作業をしている者から質問攻めにあう。水路の建設はほとんど男性が作業しており、女性が降りやすい高さか確認をしたいようだ。もちろん器用な者たちの作った階段なので確認せずとも全く問題はないのだが、お母様の機嫌を治す為の行動でもあるのだろう。
 じいやを先頭に私たち親子は手を繋いで水路の底を歩く。蛇籠を置くために一時は拡張をしたが、設置が終わった水路は水を汲む為のものなので幅は狭い。それでも三人が横並びになれるので幅は二メートル程であろうか?

「着きましたぞ」

 振り向きそう言うじいやだが、お母様がいない為にお父様は無になり一心不乱にオアシスを作ったのだろう。まだ水が入っていないが大きく円形に作られた人工オアシスの周囲には一部を残して蛇籠が設置されている。

「……じいや、ここまで進めているとは思わなかったわ」

 お母様とスイレンが「すごい!」と走り回っているうちにそっとじいやに話しかける。

「それはもう力を惜しみなく出し、休憩も取らずにモクレン様がやっておられましたからな……」

 やはりお父様はストレスの全てをこの建設にぶつけていたようだ。それでも手を抜かずここまで作り上げたのはじいやとハマナスがいたからだろう。

「……姫様、レンゲ様は怒ると機嫌がなかなか治らないのです。笑ってはいますがまだ怒っている筈ですので、モクレン様の為にも機嫌を治していただけるようにじいは一肌脱ぎますぞ」

「……ぜひお願いするわ」

 コソコソと二人で話し合い、やはりお母様は怒っているのだと再認識した。じいやは気をつかっている様子もなく、それは手なれた様子でお母様に話しかけたのだった。じいや、夫婦喧嘩の仲裁までしてくれて本当にありがとう。そしてごめんなさいね。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...