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ヤンナギの植樹
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水路に到着した私たちはまずヤンナギを降ろした。そしてイチビたちに声をかける。
「私たちはこのヤンナギを植えるわ。その間に人工オアシスの近くにこのタッケを半分ほど降ろしてほしいの。残りとタケノコ……タッケノコは広場に持って行って、ポニーとロバを放牧してちょうだい。……オヒシバとケンカが始まると大変でしょ?」
苦笑いでそう言うと全てを察してくれたイチビ、シャガ、ハマスゲも苦笑いとなる。
「分かりました。何があってもポニーとロバを守りますので安心してください」
長年の友人よりもポニーとロバの味方をしてくれるイチビたちに申し訳ない気持ちになりながらも任せることにした。
さてここからは二手に分かれ、水路の両側にヤンナギを植え付けていくことにする。
「それなりに大きな木に育つから、植える時はそこまで間を詰めなくて良いと思うわ。根が蛇籠を包んでくれれば良いから。水路が完成するまでは毎日の水やりが大変かと思うけれど、しっかりとした水路になるように頑張りましょう」
そう言うとみんなは頷いてくれた。まず見本を見せる為に地面を少し掘り下げ窪みを作り、そこにヤンナギの枝を挿す。窪みを作ることによって貴重な水が他に流れないようにする為だ。そして次の穴を掘ろうとすると几帳面なスイレンに止められた。
「待ってカレン。こういうのは決まった間隔に植えたほうが見栄えが良くなると思うよ? 間隔の長さを決めよう」
「……まさか向こう側もなんて言わないわよね? 階段部分もあるのよ? そこはどうするの?」
几帳面であり頑固な部分があるスイレンは天使の笑みで悪魔のようなことを言い放った。
「階段の横から始めたら良いんじゃないかな? 僕が大体の角度を測るから、植えた場所の直角、真正面に植えるようにしたら綺麗なヤンナギ並木になるね」
この発言にじいややヒイラギも他の者もむせている。私は白目を剥きそうになりめまいさえ覚えた。タッケを置きに行ってもらったイチビたちが羨ましい。ただ単にヤンナギを植えるつもりだった私たちはスイレン現場監督の下に挿し木をすることになってしまった。
水路に降りる階段へと移動した私たち全員はスイレンの作業が終わるのを待つ。水を汲みやすいように幅広く作られた階段の幅を丁寧に測り、もしこの幅に植えるとしたら二本を植えると言う。そこから階段脇に植えたとして、木が成長した時に階段の昇り降りに邪魔にならない位置を考えているようだ。ブツブツと独り言を言い計算までしだしたものだから私は急な眠気に襲われ始めたが、私のことを熟知しているスイレンはパッと顔を上げた。
「カレン寝ちゃダメだよ。はいここに植えて」
言われるがまま指定された場所にヤンナギを先ほどのように植えている間に、スイレンはじいやに縄を持って来てほしいと頼んでいる。そして階段の逆側も同じように「ここ」と指定された場所にヤンナギを植える。じいやが縄を持って戻って来ると、スイレンは長さを測りながら縄にコブを二つ作る。コブを作り終わると縄を切り、それをヒイラギに手渡す。
「これを地面に置いてコブの位置にヤンナギを植えてね。僕はこっち側でカレンがズルをしないように見張るから、みんなはあっち側をお願い。手が空いている人は植えたヤンナギに水を与えて」
スイレンの号令によりみんなが動き始める。じいやとヒイラギに助けを乞う眼差しを送ったが、苦笑いで応援されただけだった。それも当然だ。私よりは監視の目が緩いとはいえこれから同じことをするのだから。じいやたちが反対側に回るとスイレンは大きな声で指示を出している。
「もう少しこっち! もうちょっと……そこ!」
隔離され育てられてきた私たちだが、外の世界を知らなかった頃のスイレンからは考えられないほど生き生きとし日々一所懸命に生活をしている。そんなスイレンを見ていると姉としては嬉しいのだが、ここまで細かい性格だとは思わなかったので違う意味で驚いている。
「あ! カレン! サボらないで!」
「はい!」
考え事をしていただけなのだがサボっていると思われたようで叱られてしまった。だけれどこの細かな性格のおかげでこんなに真っ直ぐな水路を作れたのだ。みんなは気付いていないのかもしれないが、スイレンは私よりも貴重ですごい人なのだ。
途中でイチビたちも加わり作業のスピードが増す。広場にいる者たちから果物の差し入れを貰い、しばし休憩をとりながら私たちはヤンナギを植え続けた。ついに人工オアシスの側まで来るとようやく植樹が終わったのである。
「終わったわ……ようやく終わったわー!」
適当に植えただけならここまで疲れることはなかっただろう。なので全てを植えきった私は解放感から空に向かって叫んだのだ。
「そうだカレン。せっかくここまでやったんだから、オアシスの周りにデーツを植えよう?」
意地悪でも何でもなく、民たちの憩いの場所を思ってのスイレンの発言に「……はい」としか言えない私がいた。
「私たちはこのヤンナギを植えるわ。その間に人工オアシスの近くにこのタッケを半分ほど降ろしてほしいの。残りとタケノコ……タッケノコは広場に持って行って、ポニーとロバを放牧してちょうだい。……オヒシバとケンカが始まると大変でしょ?」
苦笑いでそう言うと全てを察してくれたイチビ、シャガ、ハマスゲも苦笑いとなる。
「分かりました。何があってもポニーとロバを守りますので安心してください」
長年の友人よりもポニーとロバの味方をしてくれるイチビたちに申し訳ない気持ちになりながらも任せることにした。
さてここからは二手に分かれ、水路の両側にヤンナギを植え付けていくことにする。
「それなりに大きな木に育つから、植える時はそこまで間を詰めなくて良いと思うわ。根が蛇籠を包んでくれれば良いから。水路が完成するまでは毎日の水やりが大変かと思うけれど、しっかりとした水路になるように頑張りましょう」
そう言うとみんなは頷いてくれた。まず見本を見せる為に地面を少し掘り下げ窪みを作り、そこにヤンナギの枝を挿す。窪みを作ることによって貴重な水が他に流れないようにする為だ。そして次の穴を掘ろうとすると几帳面なスイレンに止められた。
「待ってカレン。こういうのは決まった間隔に植えたほうが見栄えが良くなると思うよ? 間隔の長さを決めよう」
「……まさか向こう側もなんて言わないわよね? 階段部分もあるのよ? そこはどうするの?」
几帳面であり頑固な部分があるスイレンは天使の笑みで悪魔のようなことを言い放った。
「階段の横から始めたら良いんじゃないかな? 僕が大体の角度を測るから、植えた場所の直角、真正面に植えるようにしたら綺麗なヤンナギ並木になるね」
この発言にじいややヒイラギも他の者もむせている。私は白目を剥きそうになりめまいさえ覚えた。タッケを置きに行ってもらったイチビたちが羨ましい。ただ単にヤンナギを植えるつもりだった私たちはスイレン現場監督の下に挿し木をすることになってしまった。
水路に降りる階段へと移動した私たち全員はスイレンの作業が終わるのを待つ。水を汲みやすいように幅広く作られた階段の幅を丁寧に測り、もしこの幅に植えるとしたら二本を植えると言う。そこから階段脇に植えたとして、木が成長した時に階段の昇り降りに邪魔にならない位置を考えているようだ。ブツブツと独り言を言い計算までしだしたものだから私は急な眠気に襲われ始めたが、私のことを熟知しているスイレンはパッと顔を上げた。
「カレン寝ちゃダメだよ。はいここに植えて」
言われるがまま指定された場所にヤンナギを先ほどのように植えている間に、スイレンはじいやに縄を持って来てほしいと頼んでいる。そして階段の逆側も同じように「ここ」と指定された場所にヤンナギを植える。じいやが縄を持って戻って来ると、スイレンは長さを測りながら縄にコブを二つ作る。コブを作り終わると縄を切り、それをヒイラギに手渡す。
「これを地面に置いてコブの位置にヤンナギを植えてね。僕はこっち側でカレンがズルをしないように見張るから、みんなはあっち側をお願い。手が空いている人は植えたヤンナギに水を与えて」
スイレンの号令によりみんなが動き始める。じいやとヒイラギに助けを乞う眼差しを送ったが、苦笑いで応援されただけだった。それも当然だ。私よりは監視の目が緩いとはいえこれから同じことをするのだから。じいやたちが反対側に回るとスイレンは大きな声で指示を出している。
「もう少しこっち! もうちょっと……そこ!」
隔離され育てられてきた私たちだが、外の世界を知らなかった頃のスイレンからは考えられないほど生き生きとし日々一所懸命に生活をしている。そんなスイレンを見ていると姉としては嬉しいのだが、ここまで細かい性格だとは思わなかったので違う意味で驚いている。
「あ! カレン! サボらないで!」
「はい!」
考え事をしていただけなのだがサボっていると思われたようで叱られてしまった。だけれどこの細かな性格のおかげでこんなに真っ直ぐな水路を作れたのだ。みんなは気付いていないのかもしれないが、スイレンは私よりも貴重ですごい人なのだ。
途中でイチビたちも加わり作業のスピードが増す。広場にいる者たちから果物の差し入れを貰い、しばし休憩をとりながら私たちはヤンナギを植え続けた。ついに人工オアシスの側まで来るとようやく植樹が終わったのである。
「終わったわ……ようやく終わったわー!」
適当に植えただけならここまで疲れることはなかっただろう。なので全てを植えきった私は解放感から空に向かって叫んだのだ。
「そうだカレン。せっかくここまでやったんだから、オアシスの周りにデーツを植えよう?」
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