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チキントラクターの威力
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外に出さないように大事に育ててきた、文字通り『箱入り娘・箱入り息子』のコッコたちだが、野生の本能というものは備わっていたらしく早速雑草をついばみ始めた。いや、ついばむなんて優しい表現では語弊がありそうだ。正確には雑草を食い荒らしている。
「コッコが……」
「草を……」
「食べ散らかしている……?」
三人はしゃがんで囲いの中を呆然と見つめ各々がポツリポツリと言葉を発している。ナズナさんには食べ散らかしているように見えるらしく、その表現に笑ってしまう。
「えぇ、この囲いの中の雑草を根こそぎ食べるわよ。脚で地面を掘ってくれるから土に空気を入れてくれるし、今はいないでしょうけど害虫がいればそれも食べてくれる上に糞は畑の栄養になるの。ただ一ヶ所に置きっぱなしだと逆に土を悪くするから、定期的に動かさなければならないけれど。あとあの小さな部屋では勝手に休んでくれるし卵も産んでくれるわ。コッコを食べる為にも増やさなくちゃ」
なぜこんなに詳しいのかと言うと美樹の家にもチキントラクターがあったからだ。もちろん廃材を貰い自作した完全無料のトラクターだ。借金返済の為に働き過ぎなくらい働いていた両親は草むしりをする時間なんてない。けれどさすがに庭先にボーボーと生えた草は見栄えが悪い。そしてあまり良い食材を買えない美樹の家では卵は貴重な栄養価の高い食材なのだ。そこでたまたま知ったチキントラクターを作り、ひよこを知人から貰い育て始めたのだが美樹の家では手放せないものになってしまったのだ。おかげで何回もこの装置を作っただけに、手慣れてしまいこうも簡単に作り上げることが出来たのだ。
「本当にカレンの知恵には驚かされてばかりだわ……」
コッコの野生ぶりを見ながら呟くお母様だったが、それは地球で最初にチキントラクターを作った人に言いたい言葉だ。おかげでこの世界でも大変重宝しているのだから。
チキントラクター同士の間は四人で手で雑草を抜き、時おり果実を食べながら休みコッコたちが雑草を食べ尽くしたらチキントラクターを移動させる。昼食を食べてからもそんなことを繰り返していると畑は見事なまでに雑草がなくなり、その畑を見たお母様たちは呆然としながら「コッコってすごいのね……」と尊敬の眼差しをコッコたちに向けていた。
「なんですかこれは? ……えぇ!? 雑草が!?」
後ろから驚いた様子の声が聞こえ振り向くと、急いで畑の手入れを終わらせたエビネが口を開けて畑を見ている。
「秘密兵器を作ったの。私が昔住んでいた場所でチキントラクターと呼ばれていたコッコを使った除草装置よ」
そう説明するもエビネの混乱は解けない。「は? え?」という言葉を連発するので、手を引っ張りチキントラクターの側に来てもらった。育ち盛りで食欲旺盛なコッコたちは勢いが衰えることなく雑草を食べ、実際にその様子を目の当たりにしてエビネの混乱は解けたが驚きすぎている。お母様たちにも説明したことをエビネに伝え、ぜひ活用して欲しいことも伝える。
「さぁあらかた雑草はなくなったし、畝を作って植えてしまいましょう」
私の言葉にみんなは反応し、物置小屋から鍬を持って来て畝を作っていく。鶏糞が土の表面にあるので混ぜ合わせるようにしながら畝を作り終えた。そしてお母様たちが植えたがっているガンリック、セルリン、ベージルを採取しに森へと向かった。
森と言っても広場のすぐ側にある日当たりの良い場所にガンリックとベージルは生えていた。いくらかはこの場所に自生させたいので全部は採取せずに根ごと掘り返す。
「……セルリンはここにはないの?」
そう聞けばお母様が答えてくれた。
「この日当たりの良い場所では上手く育ってくれなくて、もう少し奥に入った場所に生えているわ」
お母様はそう言いながら森の奥へと案内してくれた。間伐をして開けた空間には以前シャイアーク国から採ってきたフキことフゥキが群生していた。葉は尻拭きに使うので茎の部分は炒めたりしてよく食べている。そんなフゥキの近くにセルリンは生えていた。しゃがんで観察をするとなぜここでは上手く繁殖しているのか分かった。
「多分このセルリンは乾燥を嫌うのね。フゥキの周りは土が湿っているでしょう? だからここでは育つのよ。これに気を付ければ畑でも育てられるわ」
そう言いながらセルリンも採取するが、みんなは少し不安そうな顔をしている。ひとまず採取したものを持ち畑へと戻ることにする。
畑の傍らに採取したものを置き、ベージルとセルリンはそのまま植えてもらう。私はガンリックをそのまま植えるものと球根として使うものを選り分ける。普段食べる球根部分が小さなものはそのまま植えることにし、球根が大きなものは一片ずつばらしていく。水に浸ければ薄皮も向きやすいし、日本でも早いものはすぐに根を出すが水を用意するのが面倒なので手で分けていく。一欠片になったガンリックも畑に植えて注意事項を説明する。
「栽培するとなると、ガンリックは花をつけると花に栄養が取られるの。だから花芽はすぐに折りましょう。もちろんそれも食べられるわ。ベージルは挿し木で増やせそうね。もう少し根が定着したら挿し木をしましょう。そしてセルリンにはあれを使いましょう」
小さな荷車を引きみんなと物置小屋に来ると私はムギンの藁を目一杯載せた。そして畑に戻りセルリンの根元にその藁を敷く。
「これで水分の蒸発は防げるけれど、水やりは多めにしましょう。他にも乾燥に弱い植物があればこのようにすれば良いわ。残った藁はコッコたちにあげましょう」
作りっぱなしで忘れていたチキントラクター内のコッコたちの部屋に藁を敷き詰める。これで卵を産んでくれるだろう。私にとってはやりなれた作業の一日だったが、最後までお母様たちは驚き続けていた。
「コッコが……」
「草を……」
「食べ散らかしている……?」
三人はしゃがんで囲いの中を呆然と見つめ各々がポツリポツリと言葉を発している。ナズナさんには食べ散らかしているように見えるらしく、その表現に笑ってしまう。
「えぇ、この囲いの中の雑草を根こそぎ食べるわよ。脚で地面を掘ってくれるから土に空気を入れてくれるし、今はいないでしょうけど害虫がいればそれも食べてくれる上に糞は畑の栄養になるの。ただ一ヶ所に置きっぱなしだと逆に土を悪くするから、定期的に動かさなければならないけれど。あとあの小さな部屋では勝手に休んでくれるし卵も産んでくれるわ。コッコを食べる為にも増やさなくちゃ」
なぜこんなに詳しいのかと言うと美樹の家にもチキントラクターがあったからだ。もちろん廃材を貰い自作した完全無料のトラクターだ。借金返済の為に働き過ぎなくらい働いていた両親は草むしりをする時間なんてない。けれどさすがに庭先にボーボーと生えた草は見栄えが悪い。そしてあまり良い食材を買えない美樹の家では卵は貴重な栄養価の高い食材なのだ。そこでたまたま知ったチキントラクターを作り、ひよこを知人から貰い育て始めたのだが美樹の家では手放せないものになってしまったのだ。おかげで何回もこの装置を作っただけに、手慣れてしまいこうも簡単に作り上げることが出来たのだ。
「本当にカレンの知恵には驚かされてばかりだわ……」
コッコの野生ぶりを見ながら呟くお母様だったが、それは地球で最初にチキントラクターを作った人に言いたい言葉だ。おかげでこの世界でも大変重宝しているのだから。
チキントラクター同士の間は四人で手で雑草を抜き、時おり果実を食べながら休みコッコたちが雑草を食べ尽くしたらチキントラクターを移動させる。昼食を食べてからもそんなことを繰り返していると畑は見事なまでに雑草がなくなり、その畑を見たお母様たちは呆然としながら「コッコってすごいのね……」と尊敬の眼差しをコッコたちに向けていた。
「なんですかこれは? ……えぇ!? 雑草が!?」
後ろから驚いた様子の声が聞こえ振り向くと、急いで畑の手入れを終わらせたエビネが口を開けて畑を見ている。
「秘密兵器を作ったの。私が昔住んでいた場所でチキントラクターと呼ばれていたコッコを使った除草装置よ」
そう説明するもエビネの混乱は解けない。「は? え?」という言葉を連発するので、手を引っ張りチキントラクターの側に来てもらった。育ち盛りで食欲旺盛なコッコたちは勢いが衰えることなく雑草を食べ、実際にその様子を目の当たりにしてエビネの混乱は解けたが驚きすぎている。お母様たちにも説明したことをエビネに伝え、ぜひ活用して欲しいことも伝える。
「さぁあらかた雑草はなくなったし、畝を作って植えてしまいましょう」
私の言葉にみんなは反応し、物置小屋から鍬を持って来て畝を作っていく。鶏糞が土の表面にあるので混ぜ合わせるようにしながら畝を作り終えた。そしてお母様たちが植えたがっているガンリック、セルリン、ベージルを採取しに森へと向かった。
森と言っても広場のすぐ側にある日当たりの良い場所にガンリックとベージルは生えていた。いくらかはこの場所に自生させたいので全部は採取せずに根ごと掘り返す。
「……セルリンはここにはないの?」
そう聞けばお母様が答えてくれた。
「この日当たりの良い場所では上手く育ってくれなくて、もう少し奥に入った場所に生えているわ」
お母様はそう言いながら森の奥へと案内してくれた。間伐をして開けた空間には以前シャイアーク国から採ってきたフキことフゥキが群生していた。葉は尻拭きに使うので茎の部分は炒めたりしてよく食べている。そんなフゥキの近くにセルリンは生えていた。しゃがんで観察をするとなぜここでは上手く繁殖しているのか分かった。
「多分このセルリンは乾燥を嫌うのね。フゥキの周りは土が湿っているでしょう? だからここでは育つのよ。これに気を付ければ畑でも育てられるわ」
そう言いながらセルリンも採取するが、みんなは少し不安そうな顔をしている。ひとまず採取したものを持ち畑へと戻ることにする。
畑の傍らに採取したものを置き、ベージルとセルリンはそのまま植えてもらう。私はガンリックをそのまま植えるものと球根として使うものを選り分ける。普段食べる球根部分が小さなものはそのまま植えることにし、球根が大きなものは一片ずつばらしていく。水に浸ければ薄皮も向きやすいし、日本でも早いものはすぐに根を出すが水を用意するのが面倒なので手で分けていく。一欠片になったガンリックも畑に植えて注意事項を説明する。
「栽培するとなると、ガンリックは花をつけると花に栄養が取られるの。だから花芽はすぐに折りましょう。もちろんそれも食べられるわ。ベージルは挿し木で増やせそうね。もう少し根が定着したら挿し木をしましょう。そしてセルリンにはあれを使いましょう」
小さな荷車を引きみんなと物置小屋に来ると私はムギンの藁を目一杯載せた。そして畑に戻りセルリンの根元にその藁を敷く。
「これで水分の蒸発は防げるけれど、水やりは多めにしましょう。他にも乾燥に弱い植物があればこのようにすれば良いわ。残った藁はコッコたちにあげましょう」
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