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最強草刈り装置
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朝食を済ませスイレンたちと作業のペースについて話し合っている。オヒシバは間もなく完全に水路の蛇籠設置が終わるので、先に植樹したヤンナギに水を与えてから作業を終わらせ貯水池の建設に合流すると言う。その貯水池もかなりハイペースで作業が進んでおり、岩盤が川側に向かって下がっているのでその上の砂さえどうにかすれば比較的楽に作業が進むらしいのだ。その砂もお父様が力技で退かしているらしい。
「ねぇカレン。貯水池の周りにも蛇籠を固定するために何か植えたいんだけど、ヤンナギ以外にも何か良い木はあるかなぁ? あっちにもこっちにもヤンナギだと面白味がないし、デーツも何か違う気がするんだよね」
スイレンにそう問いかけられる。人工オアシスは娯楽の場として作ったので南国情緒漂うヤシの木を植えたが、農作業用の水の確保をする予定の貯水池には確かにヤシの木は似合わない気がする。ヤンナギを植えるにしても水路脇に植えたヤンナギはまだ枝を折れるほど成長しておらず、植えるとなれば向こうの川まで行かねばならない。しばし考え込み美樹の家の近くの川の風景を思い出す。柳以外にも繁っている木があった。
「……ハンの木! ハンの木って呼ばれていた木は川沿いに生えていたりしたわ。この世界での名前が分からないけれど、木の特徴を見れば分かるわ」
すると近くにいたじいやが口を開く。
「ハンの木? ハーンの木ですかな? 姫様、覚えておりますか? 川の近くで採取した苗を。あれは今立派なハーンの木になっておりますぞ?」
あの栄養不足でヒョロヒョロだった小さな木が? ならば確認の為にとじいやと二人で森へ行き、スイレンたちは作業へ行ってもらうことにした。
森と言ってもすぐ側は布作りの場所なので奥深い中まで入らずに済んだ。遠目から見てまだらの灰色の少し割れた幹、楕円状の長い葉、そして見慣れたぶら下がった雄花。間違いない、ハンの木だ。
「じいや! これよ! これも挿し木で増えるから枝を折りましょう」
二人で枝を折り貯水池へ向かおうと振り向くと、そこにはお母様たち仲良し三人組が立っていた。
「カレン、以前香草を畑に植えようと言っていたでしょう? 昨日の食事は癖になりそうよ」
「今から植えましょう?」
「水路に行かなければダメ?」
お母様、ナズナさん、ハコベさんが口々にまくし立てる。確かにいつだったか香草を植えようと提案してそのままだった。この国の怒らせてはいけない三大女性を前に、じいやは「これは植えておきますぞ」とハーンの木の枝を全て持ちそそくさと走り去って行く。ということは今日は農作業をすることが確定した。
「分かったわ。まずは植えられる畑があるか確認しましょう」
苦笑いでそう言いエビネかタラを探そうと畑へと向かった。二人の名前を呼ぶと畑からわざわざこちらに来てくれた。
「お呼びですか?」
「えぇ、今すぐ使えそうな畑はある?」
そう言うと少し困った顔を二人はする。どうしたのかと聞いてみると、広場の東側にあるナーの花畑付近に耕したままの畑はあるが雑草が生い茂ってしまっているらしいのだ。そして昨日からの最少人数での農作業で草むしりが出来ないと言う。ならばついにアレを教えなければならない。
「素晴らしいものを教えるわ。お母様たちも木の加工はできるのよね?」
「もちろんよ」
エビネとタラにはこちらを気にせず農作業を続けてもらうように伝え、ナズナさんとハコベさんに軽くて硬い材質の木材の調達を頼み、私とお母様は針金や中途半端な長さになった鉄線を物置小屋から集める。集合場所はその畑だ。
畑に到着すると確かに抜くのが大変なほど草が生えている。せっかく作った畝すら崩れてしまってほとんど平坦になったそこで作業を開始することにした。
まずは枠組み作りである。とは言ってもこの草刈り機は移動式なのだが、気合いを入れて作り大きくすると移動が困難となる。なので大人が持ち運べる重さにしなければならない。さらにこの広さに対応できるように四つ作ることにした。
木材を組み合わせ横から見ると三角形になるように固定する。三角形が『A』に見えるように極一部に床を作り壁も作る。その中空の床へ行けるように小さなはしごを作る。『A』の上の部分には板で屋根を、下の部分には小さな扉を付け外側からしか開けられない構造にする。屋根の一部も外側から開けられるように工夫する。あとは剥き出しになっている部分を針金で檻のように簡単に編むだけだ。
「完成よ」
これを作りなれている私はテキパキと作業をし、あっという間に完成させたのだが、お母様たちは「え……」と怪訝そうな顔をしている。その不安になる気持ちは分かる。知らない人からするとこれで草がなくなるとは思わないだろう。大丈夫だからとお母様たちに言い聞かせ、同じものをさらに作ったがまだお母様たちは半信半疑のようだ。
「必要なものを持って来るわ」
そう言い残し広場へ戻り、私でも使える小さな荷車を用意し荷台にニコライさんからのいただきものを載せる。そして畑へ戻ると私の姿を見たお母様たちはさらに困惑の表情をしている。
「さぁご飯と仕事の時間よ」
私が話しかけたのはようやくトサカが出てきた鶏ことコッコである。作ったものの中に数羽ずつ入れていくと早速囲いの中を探索し始めてくれた。
「これは『チキントラクター』と呼ばれるものよ。チキンとはコッコのこと、トラクターとは耕す機械とでも言えば良いかしら?」
まだ半信半疑のお母様たちだが、このチキントラクターの威力を見たら納得するはずだわ。早く驚いた顔が見たいわね。
「ねぇカレン。貯水池の周りにも蛇籠を固定するために何か植えたいんだけど、ヤンナギ以外にも何か良い木はあるかなぁ? あっちにもこっちにもヤンナギだと面白味がないし、デーツも何か違う気がするんだよね」
スイレンにそう問いかけられる。人工オアシスは娯楽の場として作ったので南国情緒漂うヤシの木を植えたが、農作業用の水の確保をする予定の貯水池には確かにヤシの木は似合わない気がする。ヤンナギを植えるにしても水路脇に植えたヤンナギはまだ枝を折れるほど成長しておらず、植えるとなれば向こうの川まで行かねばならない。しばし考え込み美樹の家の近くの川の風景を思い出す。柳以外にも繁っている木があった。
「……ハンの木! ハンの木って呼ばれていた木は川沿いに生えていたりしたわ。この世界での名前が分からないけれど、木の特徴を見れば分かるわ」
すると近くにいたじいやが口を開く。
「ハンの木? ハーンの木ですかな? 姫様、覚えておりますか? 川の近くで採取した苗を。あれは今立派なハーンの木になっておりますぞ?」
あの栄養不足でヒョロヒョロだった小さな木が? ならば確認の為にとじいやと二人で森へ行き、スイレンたちは作業へ行ってもらうことにした。
森と言ってもすぐ側は布作りの場所なので奥深い中まで入らずに済んだ。遠目から見てまだらの灰色の少し割れた幹、楕円状の長い葉、そして見慣れたぶら下がった雄花。間違いない、ハンの木だ。
「じいや! これよ! これも挿し木で増えるから枝を折りましょう」
二人で枝を折り貯水池へ向かおうと振り向くと、そこにはお母様たち仲良し三人組が立っていた。
「カレン、以前香草を畑に植えようと言っていたでしょう? 昨日の食事は癖になりそうよ」
「今から植えましょう?」
「水路に行かなければダメ?」
お母様、ナズナさん、ハコベさんが口々にまくし立てる。確かにいつだったか香草を植えようと提案してそのままだった。この国の怒らせてはいけない三大女性を前に、じいやは「これは植えておきますぞ」とハーンの木の枝を全て持ちそそくさと走り去って行く。ということは今日は農作業をすることが確定した。
「分かったわ。まずは植えられる畑があるか確認しましょう」
苦笑いでそう言いエビネかタラを探そうと畑へと向かった。二人の名前を呼ぶと畑からわざわざこちらに来てくれた。
「お呼びですか?」
「えぇ、今すぐ使えそうな畑はある?」
そう言うと少し困った顔を二人はする。どうしたのかと聞いてみると、広場の東側にあるナーの花畑付近に耕したままの畑はあるが雑草が生い茂ってしまっているらしいのだ。そして昨日からの最少人数での農作業で草むしりが出来ないと言う。ならばついにアレを教えなければならない。
「素晴らしいものを教えるわ。お母様たちも木の加工はできるのよね?」
「もちろんよ」
エビネとタラにはこちらを気にせず農作業を続けてもらうように伝え、ナズナさんとハコベさんに軽くて硬い材質の木材の調達を頼み、私とお母様は針金や中途半端な長さになった鉄線を物置小屋から集める。集合場所はその畑だ。
畑に到着すると確かに抜くのが大変なほど草が生えている。せっかく作った畝すら崩れてしまってほとんど平坦になったそこで作業を開始することにした。
まずは枠組み作りである。とは言ってもこの草刈り機は移動式なのだが、気合いを入れて作り大きくすると移動が困難となる。なので大人が持ち運べる重さにしなければならない。さらにこの広さに対応できるように四つ作ることにした。
木材を組み合わせ横から見ると三角形になるように固定する。三角形が『A』に見えるように極一部に床を作り壁も作る。その中空の床へ行けるように小さなはしごを作る。『A』の上の部分には板で屋根を、下の部分には小さな扉を付け外側からしか開けられない構造にする。屋根の一部も外側から開けられるように工夫する。あとは剥き出しになっている部分を針金で檻のように簡単に編むだけだ。
「完成よ」
これを作りなれている私はテキパキと作業をし、あっという間に完成させたのだが、お母様たちは「え……」と怪訝そうな顔をしている。その不安になる気持ちは分かる。知らない人からするとこれで草がなくなるとは思わないだろう。大丈夫だからとお母様たちに言い聞かせ、同じものをさらに作ったがまだお母様たちは半信半疑のようだ。
「必要なものを持って来るわ」
そう言い残し広場へ戻り、私でも使える小さな荷車を用意し荷台にニコライさんからのいただきものを載せる。そして畑へ戻ると私の姿を見たお母様たちはさらに困惑の表情をしている。
「さぁご飯と仕事の時間よ」
私が話しかけたのはようやくトサカが出てきた鶏ことコッコである。作ったものの中に数羽ずつ入れていくと早速囲いの中を探索し始めてくれた。
「これは『チキントラクター』と呼ばれるものよ。チキンとはコッコのこと、トラクターとは耕す機械とでも言えば良いかしら?」
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