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取水口の改良
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兎にも角にも取水口に流れる水の量を増やさなければならない。要は今現在フラットになっている川の水面と取水口に差をつければ良いのだ。けれどセメントで接着しながら埋めた沈殿槽へと続く取水口を掘り起こすのは困難だ。ましてや前世では土木工事などやったことなどないのだ。ならば別の方法を考えねばならない。
困ったり焦ったりするみんなに早めの休憩をとるように言い少し考える。美樹の住んでいた県に流れる川は急流で洪水も多く、『大聖牛』という三角形に組んだ丸太と蛇籠を組み合わせた水の流れを緩めるものはあった。逆に水の流れを早くするものが分からない。……いや、もしかしたらあの漁の方法が使えるかもしれない。
「まだ使用していないタッケが残っていたわよね? それを使うわ。私はタッケを取りに行くから、お父様とじいやはその辺にある岩を割っていてちょうだい」
道具もない一般人にはそんな無茶振りは出来ないが、パワー系の二人はすぐに立ち上がり手頃な岩を持ち上げ別の岩に叩きつけて割り始める。
「カレンが戻るまでどちらが多く砕けるかな?」
「ほっほっほ。望むところですよモクレン様」
二人は久しぶりの勝負に燃えているようだ。この二人に常識は通用しないのでこれで良い。スイレンは私について来ると言うので私たちは広場を目指し、その途中で休憩をとっている者たちに声をかけ道具が必要だと伝える。ぞろぞろと連なって歩いていると、ちょうど水路にいたタデに会った。
「みんなでどうした? モクレンとベンジャミン様は?」
指笛では伝えきれないこれまでのことと、同時にこれからのことを伝えるとタデは驚く。そのタデが驚いたことはこれからの作業内容ではなく、二人を残してきたことだった。
「あの二人が夢中になって勝負すれば、石管まで破壊されかねん!」
そう言い残しタデは全力疾走で川の方向へと走って行ってしまった。確かにそうだ。迂闊な判断をしたことを反省する。
「……タデの道具も持っていきましょう」
「……そうだね……」
破壊活動をさせたら世界一、二を争う二人だけにしてしまったことを深く反省しながら広場でポニーとロバに荷車を取り付け様々な道具やタッケを載せていく。
「そうだわ! 少し待っていて」
まだ全てのものを積み込んでいないので必要なものの確認をし、後のことはスイレンに任せ私は貯水池へと走った。そこではイチビたち四人がせっせと蛇籠作りに没頭していた。
「イチビー! ちょっと来てー!」
少し離れた場所から叫ぶと四人は驚いている。名前を呼ばれたイチビは「何かありましたか?」とこちらに向かって来てくれた。そして現在の状況を伝える。
「それでタッケの加工が必要なのだけれど、イチビたちはタッケを扱ったことがあるし川にも入ったことがあるでしょう? だから手伝ってほしいのだけれど……ポニーとロバも連れて行くのよ……」
小声でそう話すと察してくれたイチビはシャガとハマスゲを呼び、手短に助けが必要なこととポニーとロバのことを話す。名前を出していないが話の中心人物となっているオヒシバは、こちらに目もくれずに蛇籠を作っている。
「私が残ります。その前に姫様、オヒシバを励ましてやってください」
シャガはそう言いオヒシバの背中を親指で指さす。なので私はオヒシバのところまで駆け足で近付き声をかけた。
「オヒシバ! さすがよ! 仕事が丁寧だわ! あのね、タッケの加工が必要でイチビとハマスゲを連れて行くのだけれど、ここはこのまま任せても大丈夫かしら? ううん、オヒシバにしか任せられないわ」
顔を上げたオヒシバに大げさに話しながら、罪悪感やら何やらを感じつつ両手を胸の前で組みオヒシバを見上げる。すると鼻息を荒くしたオヒシバは叫んだ。
「もちろん! お任せください! このオヒシバ、例え一人になったとしてもここは完成させます!」
「いや、私も残るのだが」
冷静なシャガの突っ込みに気付いているのか気付いていないのか、オヒシバはスピードを上げ鉄線の中に綺麗に石を詰め込んでいく。それを見たシャガは「早く行け」と言わんばかりに広場を数回指さした。
広場へ戻ると荷車には全てのものが載せられていた。思った以上のタッケの量だったが、力持ちのポニーとロバは気にしていないようだ。
「お待たせ。イチビとハマスゲにも手伝ってもらうわ。二人はタッケの加工をしたことがあるし川にも慣れているから」
そう言うと何人かに川に入ることになるのかと問われた。必ずしも全員が入るわけではないと伝えるが、川に入るという恐怖心を抱える者はすでに顔面蒼白である。
「無理強いなんてしないわ。お父様もじいやもいるし百人力よ。もし良かったら松……マッツを切り倒して後で届けてもらっても良いかしら? 枝と葉を落として丸太にしてくれるとありがたいのだけれど」
そう言うと「すぐに取り掛かります」と数人が森へと入って行った。言葉通り本当にすぐにやってくれるだろう。
「じゃあマッツが届く前に私たちも作業を少しでも進めましょう」
私の号令の元、私たちは川へと向かって歩き出した。
困ったり焦ったりするみんなに早めの休憩をとるように言い少し考える。美樹の住んでいた県に流れる川は急流で洪水も多く、『大聖牛』という三角形に組んだ丸太と蛇籠を組み合わせた水の流れを緩めるものはあった。逆に水の流れを早くするものが分からない。……いや、もしかしたらあの漁の方法が使えるかもしれない。
「まだ使用していないタッケが残っていたわよね? それを使うわ。私はタッケを取りに行くから、お父様とじいやはその辺にある岩を割っていてちょうだい」
道具もない一般人にはそんな無茶振りは出来ないが、パワー系の二人はすぐに立ち上がり手頃な岩を持ち上げ別の岩に叩きつけて割り始める。
「カレンが戻るまでどちらが多く砕けるかな?」
「ほっほっほ。望むところですよモクレン様」
二人は久しぶりの勝負に燃えているようだ。この二人に常識は通用しないのでこれで良い。スイレンは私について来ると言うので私たちは広場を目指し、その途中で休憩をとっている者たちに声をかけ道具が必要だと伝える。ぞろぞろと連なって歩いていると、ちょうど水路にいたタデに会った。
「みんなでどうした? モクレンとベンジャミン様は?」
指笛では伝えきれないこれまでのことと、同時にこれからのことを伝えるとタデは驚く。そのタデが驚いたことはこれからの作業内容ではなく、二人を残してきたことだった。
「あの二人が夢中になって勝負すれば、石管まで破壊されかねん!」
そう言い残しタデは全力疾走で川の方向へと走って行ってしまった。確かにそうだ。迂闊な判断をしたことを反省する。
「……タデの道具も持っていきましょう」
「……そうだね……」
破壊活動をさせたら世界一、二を争う二人だけにしてしまったことを深く反省しながら広場でポニーとロバに荷車を取り付け様々な道具やタッケを載せていく。
「そうだわ! 少し待っていて」
まだ全てのものを積み込んでいないので必要なものの確認をし、後のことはスイレンに任せ私は貯水池へと走った。そこではイチビたち四人がせっせと蛇籠作りに没頭していた。
「イチビー! ちょっと来てー!」
少し離れた場所から叫ぶと四人は驚いている。名前を呼ばれたイチビは「何かありましたか?」とこちらに向かって来てくれた。そして現在の状況を伝える。
「それでタッケの加工が必要なのだけれど、イチビたちはタッケを扱ったことがあるし川にも入ったことがあるでしょう? だから手伝ってほしいのだけれど……ポニーとロバも連れて行くのよ……」
小声でそう話すと察してくれたイチビはシャガとハマスゲを呼び、手短に助けが必要なこととポニーとロバのことを話す。名前を出していないが話の中心人物となっているオヒシバは、こちらに目もくれずに蛇籠を作っている。
「私が残ります。その前に姫様、オヒシバを励ましてやってください」
シャガはそう言いオヒシバの背中を親指で指さす。なので私はオヒシバのところまで駆け足で近付き声をかけた。
「オヒシバ! さすがよ! 仕事が丁寧だわ! あのね、タッケの加工が必要でイチビとハマスゲを連れて行くのだけれど、ここはこのまま任せても大丈夫かしら? ううん、オヒシバにしか任せられないわ」
顔を上げたオヒシバに大げさに話しながら、罪悪感やら何やらを感じつつ両手を胸の前で組みオヒシバを見上げる。すると鼻息を荒くしたオヒシバは叫んだ。
「もちろん! お任せください! このオヒシバ、例え一人になったとしてもここは完成させます!」
「いや、私も残るのだが」
冷静なシャガの突っ込みに気付いているのか気付いていないのか、オヒシバはスピードを上げ鉄線の中に綺麗に石を詰め込んでいく。それを見たシャガは「早く行け」と言わんばかりに広場を数回指さした。
広場へ戻ると荷車には全てのものが載せられていた。思った以上のタッケの量だったが、力持ちのポニーとロバは気にしていないようだ。
「お待たせ。イチビとハマスゲにも手伝ってもらうわ。二人はタッケの加工をしたことがあるし川にも慣れているから」
そう言うと何人かに川に入ることになるのかと問われた。必ずしも全員が入るわけではないと伝えるが、川に入るという恐怖心を抱える者はすでに顔面蒼白である。
「無理強いなんてしないわ。お父様もじいやもいるし百人力よ。もし良かったら松……マッツを切り倒して後で届けてもらっても良いかしら? 枝と葉を落として丸太にしてくれるとありがたいのだけれど」
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