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タッケの加工
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「お待たせ! お父様! じい……や……」
少し早めのペースで歩いて来た私たちだが、そこにはそれは楽しそうに破壊活動……いや、岩を砕く二人と、疲れきった様子のタデがいた。
「姫が到着したぞ! もう勝負は終わりだ! ……もう充分だろう……」
タデの叫び声と共にお父様たちは手を止めた。
「おぉカレン。もう戻って来たのか。まだ少ししか砕いていないぞ」
「ほほ、モクレン様は雑ですな。私のようにすれば皆が使いやすいものを。この勝負、私の勝ちですな」
素手で岩を砕くという荒技を二人はやっていたが、そんな荒技の中にも性格が現れている。お父様は岩を見つけると、近くの岩にぶつけて砕いていたのであちらこちらに砕かれた瓦礫が散乱している。対してじいやは岩を運んでから砕いていたので、一ヶ所に砕かれた瓦礫が山になっている。どちらにせよその量が想像以上で私たちは絶句したのだ。
「……どちらもすごいわ。お父様は砕いた岩を集めて」
常識はずれの二人のおかげで私のスルースキルは鍛えられたように思う。
お父様が瓦礫を集めじいやが手伝っている間に私たちは作業を進めることにした。
「まずタッケを割りましょう」
本来であれば金属製の竹割り器があれば便利なのだが、なくても出来ないことはない。ナタでも割ることは出来るが竹割り器を使った時のように幅が揃わない。それでも良いのだがせっかくなので竹割り器を作ることにした。竹割り器とは竹を四等分、六等分に分ける「四つ割」や「六つ割」と呼ばれる道具なのだが、この先もタッケを使うことは多くなりそうなので木製の竹割り器を作ってしまうことにする。まずはスイレンの出番だ。
「スイレン、ここにこういうのを描いて」
丸太とも枝とも呼べないような硬い木の切れっ端に描いてほしい図柄を地面に描く。描いてもらうのは例えるなら、地図記号で言う平成二十五年に図式から消えた「工場」のような丸に線がついた歯車のような形だ。この通り大雑把な性格の私が描くと「分かれば良いだろう」と歪んだ図形になってしまうが、その点スイレンであれば定規やコンパスを使いしっかりとしたものを描いてくれる。
あっという間に描いたスイレンに、なぜこんなにすぐに描けるのだろうと双子でありながら思ったりもしたが、線の部分に適当に肉付けをして加工してもらおうとすると「そういうこと?」と綺麗に図形を手直ししてくれた。スイレンはある意味完璧主義者である。
今からの作業の為と今後の為に数個を大人たちに加工してもらうが、それも職人技にかかればあっという間に完成してしまう。そしてお父様の瓦礫集めも終わったようだ。
「カレンよ! 次はどうすれば良いのだ?」
「お父様、じいや、ちょうど良いところに来たわ。力のある人に任せたい作業があるの」
作業用の手袋を作っていなかったことを悔やみながら、怪我の防止に布を渡して手に巻いてもらう。そして横に寝かせた太いタッケに少しだけナタで切れ込みを入れ、その切れ込みに出来たばかりの竹割り器をあてがう。
「お父様、これは竹割り器と言うのだけれど、これにナタの背中を押し当てて……力技で押して」
お父様は言われた通りに力を込めると、節抜きをしていないタッケにもかかわらず先端から花が咲くようにタッケが割れる。お父様は「おぉ!?」と驚きつつもこの作業が気に入ったようで、またしてもじいやと勝負をしようとしている。パワー系にはピッタリの作業だ。
「じゃあ二人はこの太いタッケをお願いね」
もう私の声が聞こえていない二人にそう言い残し、私は他の者と共に種類の違う細いタッケを選びお父様たちから少し離れた場所に移動する。こちらに付いてきたタデに特に細いタッケを抜けないように地面に深く差し込んでもらい、横に同じような細さのタッケをあてがいいぼ結びという結び方で縄で固定する。緩みはないかを確認しているとタデに質問された。
「姫、これは何なのだ?」
「ふふふ、お父様たちと勝負よ。私たちが持って来た細いタッケはこっちのほうが早いと思うわ。お父様たちの太いタッケにはさっき作った竹割り器が良いのだけれど」
そしてそのままタデに細いタッケの先端に十字に切れ込みを入れてもらい、地面に設置した十字架のようなものにその先端を当てる。
「タデ、向こうからこのタッケを押して」
不思議そうな顔をしながらもタデは場所移動し、そしてタッケをグっと押し込む。すると簡単に四つに割れる。
「おおー!」
タデも他の者もあまりにも綺麗に割れるタッケにどよめき立つ。そして他の者たちも地面に十字架もどきを設置していく。
「お父様ー! じいやー! 勝負よー!」
勝負という言葉に反応した二人はこちらを向き、二人よりも簡単にタッケを割っていくタデたちを見て驚愕の表情をしている。
「ぬおぉぉ! じい! 負けてられん! 共同作戦だ!」
「負けられませんぞ!」
勝負に燃える二人の速度が増し、力技の大変な作業なのにどんどんとタッケを割っていく。すると背後からポツリとスイレンの呟きが聞こえた。
「カレンって、たまにすごく策士だよね……」
褒められているのか貶されているのか分からないその言葉に苦笑いをするしかなかった。
少し早めのペースで歩いて来た私たちだが、そこにはそれは楽しそうに破壊活動……いや、岩を砕く二人と、疲れきった様子のタデがいた。
「姫が到着したぞ! もう勝負は終わりだ! ……もう充分だろう……」
タデの叫び声と共にお父様たちは手を止めた。
「おぉカレン。もう戻って来たのか。まだ少ししか砕いていないぞ」
「ほほ、モクレン様は雑ですな。私のようにすれば皆が使いやすいものを。この勝負、私の勝ちですな」
素手で岩を砕くという荒技を二人はやっていたが、そんな荒技の中にも性格が現れている。お父様は岩を見つけると、近くの岩にぶつけて砕いていたのであちらこちらに砕かれた瓦礫が散乱している。対してじいやは岩を運んでから砕いていたので、一ヶ所に砕かれた瓦礫が山になっている。どちらにせよその量が想像以上で私たちは絶句したのだ。
「……どちらもすごいわ。お父様は砕いた岩を集めて」
常識はずれの二人のおかげで私のスルースキルは鍛えられたように思う。
お父様が瓦礫を集めじいやが手伝っている間に私たちは作業を進めることにした。
「まずタッケを割りましょう」
本来であれば金属製の竹割り器があれば便利なのだが、なくても出来ないことはない。ナタでも割ることは出来るが竹割り器を使った時のように幅が揃わない。それでも良いのだがせっかくなので竹割り器を作ることにした。竹割り器とは竹を四等分、六等分に分ける「四つ割」や「六つ割」と呼ばれる道具なのだが、この先もタッケを使うことは多くなりそうなので木製の竹割り器を作ってしまうことにする。まずはスイレンの出番だ。
「スイレン、ここにこういうのを描いて」
丸太とも枝とも呼べないような硬い木の切れっ端に描いてほしい図柄を地面に描く。描いてもらうのは例えるなら、地図記号で言う平成二十五年に図式から消えた「工場」のような丸に線がついた歯車のような形だ。この通り大雑把な性格の私が描くと「分かれば良いだろう」と歪んだ図形になってしまうが、その点スイレンであれば定規やコンパスを使いしっかりとしたものを描いてくれる。
あっという間に描いたスイレンに、なぜこんなにすぐに描けるのだろうと双子でありながら思ったりもしたが、線の部分に適当に肉付けをして加工してもらおうとすると「そういうこと?」と綺麗に図形を手直ししてくれた。スイレンはある意味完璧主義者である。
今からの作業の為と今後の為に数個を大人たちに加工してもらうが、それも職人技にかかればあっという間に完成してしまう。そしてお父様の瓦礫集めも終わったようだ。
「カレンよ! 次はどうすれば良いのだ?」
「お父様、じいや、ちょうど良いところに来たわ。力のある人に任せたい作業があるの」
作業用の手袋を作っていなかったことを悔やみながら、怪我の防止に布を渡して手に巻いてもらう。そして横に寝かせた太いタッケに少しだけナタで切れ込みを入れ、その切れ込みに出来たばかりの竹割り器をあてがう。
「お父様、これは竹割り器と言うのだけれど、これにナタの背中を押し当てて……力技で押して」
お父様は言われた通りに力を込めると、節抜きをしていないタッケにもかかわらず先端から花が咲くようにタッケが割れる。お父様は「おぉ!?」と驚きつつもこの作業が気に入ったようで、またしてもじいやと勝負をしようとしている。パワー系にはピッタリの作業だ。
「じゃあ二人はこの太いタッケをお願いね」
もう私の声が聞こえていない二人にそう言い残し、私は他の者と共に種類の違う細いタッケを選びお父様たちから少し離れた場所に移動する。こちらに付いてきたタデに特に細いタッケを抜けないように地面に深く差し込んでもらい、横に同じような細さのタッケをあてがいいぼ結びという結び方で縄で固定する。緩みはないかを確認しているとタデに質問された。
「姫、これは何なのだ?」
「ふふふ、お父様たちと勝負よ。私たちが持って来た細いタッケはこっちのほうが早いと思うわ。お父様たちの太いタッケにはさっき作った竹割り器が良いのだけれど」
そしてそのままタデに細いタッケの先端に十字に切れ込みを入れてもらい、地面に設置した十字架のようなものにその先端を当てる。
「タデ、向こうからこのタッケを押して」
不思議そうな顔をしながらもタデは場所移動し、そしてタッケをグっと押し込む。すると簡単に四つに割れる。
「おおー!」
タデも他の者もあまりにも綺麗に割れるタッケにどよめき立つ。そして他の者たちも地面に十字架もどきを設置していく。
「お父様ー! じいやー! 勝負よー!」
勝負という言葉に反応した二人はこちらを向き、二人よりも簡単にタッケを割っていくタデたちを見て驚愕の表情をしている。
「ぬおぉぉ! じい! 負けてられん! 共同作戦だ!」
「負けられませんぞ!」
勝負に燃える二人の速度が増し、力技の大変な作業なのにどんどんとタッケを割っていく。すると背後からポツリとスイレンの呟きが聞こえた。
「カレンって、たまにすごく策士だよね……」
褒められているのか貶されているのか分からないその言葉に苦笑いをするしかなかった。
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