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一夜明け
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昨夜の宴は大いに盛り上がった。畑や森からの恵みをふんだんに使い、料理が好きな者たちは大量の食べ物を作り、国民全員が酒のない宴会といった感じに盛り上がった。元々は森の恵みに感謝をする宴を昨晩のようにやっていたらしかったが、昨夜は森にも畑にも水にも、そしてそれらを作り上げた者たちに感謝をする大規模な宴となったのだ。
皆は森以外にも感謝をするものがそこかしこにあるということに気付けたと、それすらも感謝の対象となり「ありがとう、ありがとう」とあちらこちらから声が上がっていた。
そして一夜明けた今、昨夜の残り物などをつまんで朝食をとっている。昨日のあれはなんだったのだろう? 幻覚だったのか? と思うほどお父様はテンション高く声を上げる。
「今日の作業の確認をしようではないか。私はもちろん水路の作業をする」
昨日お母様に「なんだって出来る」と言われたお父様はドヤ顔で宣言する。以前私がモルタルの塗り方を教えたウルイとミツバは今では立派な左官職人となり、二人も石管を繋ぐ為に参加すると言う。それと共に今後作られる住居にも左官工事が必要だろうからと、新たな左官職人の育成もすると言ってくれている。見込みのある者は数人いるらしく、ウルイとミツバは指名していた。
「では私は石管を作ろう」
タデがそう言うと、他の者たちもまた口々に思ったことを言う。タデの石管作りをずっと見てきたので自分たちがやると言うのだ。石を彫れるのはタデだけではないし、自分たちの技術力向上に石管を作りたいと言う。その代わりにタデは住居建築を始めるべきではないかと言うのだ。さらに一度作ってやり慣れた作業なので、当初の人数よりも少なくても大丈夫ではないかと提案までしている。お父様とタデはしばし考え込み、その案を採用した。
「姫ー、こちらも今日中に終わりそうだよー」
少し離れた場所にいたヒイラギは大きな声でこちらに向かって叫んでいる。
「分かったわー! 私は今日はこの辺にいるから、終わったら呼んでちょうだーい!」
私も大声で返事をするとヒイラギは楽しそうに笑っている。スイレンは今日はお父様について行き、傾斜について指導すると言っている。お母様たちにはコートンの布を作ってほしいと頼み、余った者たちには森と畑の手入れの手伝いをしてほしいと頼むと、朝食を終えた者たちは立ち上がり各々の作業箇所へと向かって行く。
────
昨日完成したばかりの水路に到着した私たちは、まず水路を見てみた。水が流れ出る付近は水深が数センチ程になっているが、オアシスの方向を見てみれば明らかに水が溜まる程ではないと思い知らされる。
「姫様!」
誰よりも気合いの入っているオヒシバは住居予定地でそわそわしながら私を呼ぶ。今この場にいるのは私、じいや、タデ、イチビ、シャガ、ハマスゲ、オヒシバの七人だ。
「じいやとタデには伝えていなかったわね。イチビたちもおさらいの為にもう一度家について話しましょう」
私は家から持ってきた黒板に女性たちの望んでいるチューダー様式の家の絵を描く。それを見たタデが口を開いた。
「何とも……手間がかかりそうな外観だが……本気で作るのか?」
「そうね、ハコベさんも楽しみにしているわよ」
「私に任せろ。全て要望通りに作り上げよう」
簡単な絵だけで骨が折れそうなことを察したタデだったが、愛する妻であるハコベさんの名前を出すと途端にやる気に満ち溢れる。一度黒板の絵を消し、家の中の見取り図を描いていくとじいやとタデは真剣な表情で説明を聞いている。
「……というわけで、水の供給はこのようにするし、排水の管はニコライさんに頼む予定よ。あとはそうね……家族がいる者と独身の者とで家の大きさをどうしたら良いかしら?」
そう言うと皆が考え込む。タデは奥さんがいる上に子どもが出来るかもしれない。今は独身のイチビたちもいつかは結婚するだろう。
「……同じ大きさでも良いと思う。伴侶に先立たれた者たちは共同で住むのは森の民の時代からあったことだ」
「一人きりでは住まないってことなのね? ……でもジェイソンさんたちはどうかしら?」
なんとなく独りごちるとじいやが反応する。
「ジェイソンがどうかしたのですか?」
「あら? 伝えてなかったかしら? この国に住みたいと言っていてね、お母様とスイレンが家を作ったら移住したら良いと言ってしまったのよ」
眉尻を下げ苦笑いで言うとじいやは驚いている。その少し後珍しく声を上げて笑い「それは面白いことになりそうですな」と喜んでいるようだ。
「あとは……暖房設備をどうするかと下水道の整備ね。暖炉は目の前は暖かいけれど、部屋を暖めるには薪ストーブのほうが良いし……」
ブツブツと呟いているとタデが口を開いた。
「細かなことは後からでも出来るだろう。おそらく一番大変なのはこの下水道というものを掘り進めることではないか?」
そうなのだ。これから一番大変になる作業は地中にトンネルを掘り進み下水道を作ることなのだ。私たちの話題は家についてから下水道へと変わっていく。
皆は森以外にも感謝をするものがそこかしこにあるということに気付けたと、それすらも感謝の対象となり「ありがとう、ありがとう」とあちらこちらから声が上がっていた。
そして一夜明けた今、昨夜の残り物などをつまんで朝食をとっている。昨日のあれはなんだったのだろう? 幻覚だったのか? と思うほどお父様はテンション高く声を上げる。
「今日の作業の確認をしようではないか。私はもちろん水路の作業をする」
昨日お母様に「なんだって出来る」と言われたお父様はドヤ顔で宣言する。以前私がモルタルの塗り方を教えたウルイとミツバは今では立派な左官職人となり、二人も石管を繋ぐ為に参加すると言う。それと共に今後作られる住居にも左官工事が必要だろうからと、新たな左官職人の育成もすると言ってくれている。見込みのある者は数人いるらしく、ウルイとミツバは指名していた。
「では私は石管を作ろう」
タデがそう言うと、他の者たちもまた口々に思ったことを言う。タデの石管作りをずっと見てきたので自分たちがやると言うのだ。石を彫れるのはタデだけではないし、自分たちの技術力向上に石管を作りたいと言う。その代わりにタデは住居建築を始めるべきではないかと言うのだ。さらに一度作ってやり慣れた作業なので、当初の人数よりも少なくても大丈夫ではないかと提案までしている。お父様とタデはしばし考え込み、その案を採用した。
「姫ー、こちらも今日中に終わりそうだよー」
少し離れた場所にいたヒイラギは大きな声でこちらに向かって叫んでいる。
「分かったわー! 私は今日はこの辺にいるから、終わったら呼んでちょうだーい!」
私も大声で返事をするとヒイラギは楽しそうに笑っている。スイレンは今日はお父様について行き、傾斜について指導すると言っている。お母様たちにはコートンの布を作ってほしいと頼み、余った者たちには森と畑の手入れの手伝いをしてほしいと頼むと、朝食を終えた者たちは立ち上がり各々の作業箇所へと向かって行く。
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昨日完成したばかりの水路に到着した私たちは、まず水路を見てみた。水が流れ出る付近は水深が数センチ程になっているが、オアシスの方向を見てみれば明らかに水が溜まる程ではないと思い知らされる。
「姫様!」
誰よりも気合いの入っているオヒシバは住居予定地でそわそわしながら私を呼ぶ。今この場にいるのは私、じいや、タデ、イチビ、シャガ、ハマスゲ、オヒシバの七人だ。
「じいやとタデには伝えていなかったわね。イチビたちもおさらいの為にもう一度家について話しましょう」
私は家から持ってきた黒板に女性たちの望んでいるチューダー様式の家の絵を描く。それを見たタデが口を開いた。
「何とも……手間がかかりそうな外観だが……本気で作るのか?」
「そうね、ハコベさんも楽しみにしているわよ」
「私に任せろ。全て要望通りに作り上げよう」
簡単な絵だけで骨が折れそうなことを察したタデだったが、愛する妻であるハコベさんの名前を出すと途端にやる気に満ち溢れる。一度黒板の絵を消し、家の中の見取り図を描いていくとじいやとタデは真剣な表情で説明を聞いている。
「……というわけで、水の供給はこのようにするし、排水の管はニコライさんに頼む予定よ。あとはそうね……家族がいる者と独身の者とで家の大きさをどうしたら良いかしら?」
そう言うと皆が考え込む。タデは奥さんがいる上に子どもが出来るかもしれない。今は独身のイチビたちもいつかは結婚するだろう。
「……同じ大きさでも良いと思う。伴侶に先立たれた者たちは共同で住むのは森の民の時代からあったことだ」
「一人きりでは住まないってことなのね? ……でもジェイソンさんたちはどうかしら?」
なんとなく独りごちるとじいやが反応する。
「ジェイソンがどうかしたのですか?」
「あら? 伝えてなかったかしら? この国に住みたいと言っていてね、お母様とスイレンが家を作ったら移住したら良いと言ってしまったのよ」
眉尻を下げ苦笑いで言うとじいやは驚いている。その少し後珍しく声を上げて笑い「それは面白いことになりそうですな」と喜んでいるようだ。
「あとは……暖房設備をどうするかと下水道の整備ね。暖炉は目の前は暖かいけれど、部屋を暖めるには薪ストーブのほうが良いし……」
ブツブツと呟いているとタデが口を開いた。
「細かなことは後からでも出来るだろう。おそらく一番大変なのはこの下水道というものを掘り進めることではないか?」
そうなのだ。これから一番大変になる作業は地中にトンネルを掘り進み下水道を作ることなのだ。私たちの話題は家についてから下水道へと変わっていく。
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