175 / 370
リトールの町で
しおりを挟む
ぐすぐすと鼻をすすりながらリトールの町の前まで行くと、いつも入り口の前に座っているペーターさんが「待っていました!」と言わんばかりに手を振りながらこちらへ向かって歩いてくる。
「カレンちゃーん! スイレンくーん!」
ペーターさんの孫を待ちわびたおじいちゃんのような振る舞いに、私とスイレンは走り出し抱きついた。
「ペーターさん! まるで私たちが来るのが分かっていたみたい」
「ペーターさん、お久しぶり!」
いつものように優しく頭をポンポンとされているとペーターさんは嬉しそうに口を開く。
「なんだ? カレンちゃんは泣いているのか? 最近はカレンちゃんに教えてもらった娯楽ばかりしていたが、久しぶりに占いをやったら『待ち人が来る』と出たんだ。私の待ち人と言えばカレンちゃんとスイレンくんだ」
その嬉しい言葉にスイレンと共にニンマリと笑っているとじいやたちが追いついた。
「お久しぶりですなペーターさん」
「おぉ! ベンジャミンさん! よく来てくださった」
二人はガッチリと握手をし、しばし世間話に花を咲かせる。じいやの年齢はいまだに教えてもらえず、民たちに聞いても「姫様に内緒にするように言われています」と返され不明だが、ペーターさんは日本人の感覚からすると超ご高齢なのに若々しいというよりは生き生きとしている。賭け事を教えた辺りから特に生き生きとしているに見えるのは気のせいだろうか?
「では私たちはブルーノさんのところへ行きますので」
じいやの話が終わりぞろぞろとブルーノさんの家を目指して歩くと、町の人たちから普通に挨拶をたくさんされる。もはや第二の故郷である。
「「ブルーノさーん!」」
玄関前からスイレンと名前を呼べばバタバタとブルーノさんが出て来てくれた。ブルーノさんもご高齢なのだが、こちらは悠々自適に暮らしているせいかペーターさんと比べると若々しい。実際にペーターさんよりは若いのだが。
「カレンちゃん! スイレンくん! それに皆さんも! よく来たね! さぁ中へどうぞ」
事前に連絡する手段もない為に突然押しかける形となってしまったが、ブルーノさんはとても嬉しそうに家に私たちを招き入れてくれる。ポニーとロバを玄関前に繋がせてもらい私たちは揃ってお邪魔させてもらった。
中へと入ると慣れた手つきでオーレンジンを搾り、私たちに生搾りオーレンジンのジュースを振る舞ってくれる。
「今日はどうしたんだい?」
自分の分を持ち席に座ったブルーノさんが口を開いた。
「あのね、大工の仕事や建設について詳しく教えてほしいの」
そう言うと驚いていたが、立場の強い女性たちがこの町やブルーノさんの自宅のような家に住みたがっていると言うと笑われた。ブルーノさんは昔は近隣の町などへ赴き建築したりしていたそうだが、今は年齢的なものからこの町の建物の修繕をメインでやっているそうだ。お弟子さんたちが今では近隣に向かっているらしい。
「いくらでも技術を教えるよ。ただ思ったのだが……私がそちらの国に行ったほうが良いんじゃないかな?」
この申し出は非常にありがたい。作業をする者たち皆が覚えることが可能だ。だが、なぜか驚異的なスピードで植物が生えるあの土地のことを知られても大丈夫だろうか? 私たちは目配せし合う。そのタイミングでお弟子さんに呼ばれたブルーノさんは「すまない、少し席を外すよ」と工房へと向かって行く。
「……どうしましょう? ありがたいけれど、あの土地の不思議な力をどう説明したら良いかしら……」
小声で囁くとタデが反応する。
「……森は奥に入らなければそうそう分からないのではないか?」
さらにはじいやとヒイラギも口を開く。
「畑はどうしましょう?」
「柵なんて作って見えないようにしちゃったら?」
口々にそう言っているとスイレンが「はい」と手を上げ、私たちが注目すると元気に発言をする。
「どんなことだってブルーノさんは受け入れてくれると思うよ? 内緒にしてって言ったら内緒にしてくれると思うけど……植物の成長のことよりも、民たちの家のほうが大事じゃない?」
一気に私たちの肩の力が抜けた。秘密を知られたら、とか保身のことしか考えていなかった私たちは深く反省をする。そうなのだ、今は民たちの住まいについてを最優先で考えなければいけなかったし、それを手助けしてくれようとしている人に対して少なからず拒絶の気持ちを持っていたのだから侮辱行為だろう。スイレンの発言によってガツンと頭を殴られたような衝撃が走り、曇ってしまった心の目が覚める。
「そうよね……ここまで親切にしてくれるこの町の人たちにも失礼よね……。うん、ブルーノさんにお願いして来てもらいましょう。良いわね?」
私の言葉を聞いた皆は「姫が決めたことに従う」と言ってくれる。私も笑顔で頷きふと隣のスイレンを見ると、驚くほどニコニコと嬉しそうにしている。
「良かった! これで毎日数字の勉強が出来る!」
勉強という言葉に頭痛を覚えたが、もしやスイレンは最初からこれを狙っていたのだろうか? だとしたらとんだ策士である。私は引きつり乾いた笑いをこぼしたのだった。
「カレンちゃーん! スイレンくーん!」
ペーターさんの孫を待ちわびたおじいちゃんのような振る舞いに、私とスイレンは走り出し抱きついた。
「ペーターさん! まるで私たちが来るのが分かっていたみたい」
「ペーターさん、お久しぶり!」
いつものように優しく頭をポンポンとされているとペーターさんは嬉しそうに口を開く。
「なんだ? カレンちゃんは泣いているのか? 最近はカレンちゃんに教えてもらった娯楽ばかりしていたが、久しぶりに占いをやったら『待ち人が来る』と出たんだ。私の待ち人と言えばカレンちゃんとスイレンくんだ」
その嬉しい言葉にスイレンと共にニンマリと笑っているとじいやたちが追いついた。
「お久しぶりですなペーターさん」
「おぉ! ベンジャミンさん! よく来てくださった」
二人はガッチリと握手をし、しばし世間話に花を咲かせる。じいやの年齢はいまだに教えてもらえず、民たちに聞いても「姫様に内緒にするように言われています」と返され不明だが、ペーターさんは日本人の感覚からすると超ご高齢なのに若々しいというよりは生き生きとしている。賭け事を教えた辺りから特に生き生きとしているに見えるのは気のせいだろうか?
「では私たちはブルーノさんのところへ行きますので」
じいやの話が終わりぞろぞろとブルーノさんの家を目指して歩くと、町の人たちから普通に挨拶をたくさんされる。もはや第二の故郷である。
「「ブルーノさーん!」」
玄関前からスイレンと名前を呼べばバタバタとブルーノさんが出て来てくれた。ブルーノさんもご高齢なのだが、こちらは悠々自適に暮らしているせいかペーターさんと比べると若々しい。実際にペーターさんよりは若いのだが。
「カレンちゃん! スイレンくん! それに皆さんも! よく来たね! さぁ中へどうぞ」
事前に連絡する手段もない為に突然押しかける形となってしまったが、ブルーノさんはとても嬉しそうに家に私たちを招き入れてくれる。ポニーとロバを玄関前に繋がせてもらい私たちは揃ってお邪魔させてもらった。
中へと入ると慣れた手つきでオーレンジンを搾り、私たちに生搾りオーレンジンのジュースを振る舞ってくれる。
「今日はどうしたんだい?」
自分の分を持ち席に座ったブルーノさんが口を開いた。
「あのね、大工の仕事や建設について詳しく教えてほしいの」
そう言うと驚いていたが、立場の強い女性たちがこの町やブルーノさんの自宅のような家に住みたがっていると言うと笑われた。ブルーノさんは昔は近隣の町などへ赴き建築したりしていたそうだが、今は年齢的なものからこの町の建物の修繕をメインでやっているそうだ。お弟子さんたちが今では近隣に向かっているらしい。
「いくらでも技術を教えるよ。ただ思ったのだが……私がそちらの国に行ったほうが良いんじゃないかな?」
この申し出は非常にありがたい。作業をする者たち皆が覚えることが可能だ。だが、なぜか驚異的なスピードで植物が生えるあの土地のことを知られても大丈夫だろうか? 私たちは目配せし合う。そのタイミングでお弟子さんに呼ばれたブルーノさんは「すまない、少し席を外すよ」と工房へと向かって行く。
「……どうしましょう? ありがたいけれど、あの土地の不思議な力をどう説明したら良いかしら……」
小声で囁くとタデが反応する。
「……森は奥に入らなければそうそう分からないのではないか?」
さらにはじいやとヒイラギも口を開く。
「畑はどうしましょう?」
「柵なんて作って見えないようにしちゃったら?」
口々にそう言っているとスイレンが「はい」と手を上げ、私たちが注目すると元気に発言をする。
「どんなことだってブルーノさんは受け入れてくれると思うよ? 内緒にしてって言ったら内緒にしてくれると思うけど……植物の成長のことよりも、民たちの家のほうが大事じゃない?」
一気に私たちの肩の力が抜けた。秘密を知られたら、とか保身のことしか考えていなかった私たちは深く反省をする。そうなのだ、今は民たちの住まいについてを最優先で考えなければいけなかったし、それを手助けしてくれようとしている人に対して少なからず拒絶の気持ちを持っていたのだから侮辱行為だろう。スイレンの発言によってガツンと頭を殴られたような衝撃が走り、曇ってしまった心の目が覚める。
「そうよね……ここまで親切にしてくれるこの町の人たちにも失礼よね……。うん、ブルーノさんにお願いして来てもらいましょう。良いわね?」
私の言葉を聞いた皆は「姫が決めたことに従う」と言ってくれる。私も笑顔で頷きふと隣のスイレンを見ると、驚くほどニコニコと嬉しそうにしている。
「良かった! これで毎日数字の勉強が出来る!」
勉強という言葉に頭痛を覚えたが、もしやスイレンは最初からこれを狙っていたのだろうか? だとしたらとんだ策士である。私は引きつり乾いた笑いをこぼしたのだった。
54
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる