184 / 370
ブルーノさんの宣言
しおりを挟む
一夜明けた早朝から私やお母様はパタパタと動いている。昨夜の持て成し料理は作りすぎなくらい作ったので私たちは朝食にその残り物をいただく予定だったのだが、三人に大絶賛され、いや、民たちにも大好評で汁の一滴も残らなかったのだ。残飯が出ないのは素晴らしいことだが、昨夜あんなに料理を絶賛してくれた人たちにいつもの質素な朝食のようにトウモロコーンだけを出すわけにはいかないだろうとのことで急きょ料理をしているのだ。
とはいえ、皆が起き出すまでの時間もあまりないので簡単な野菜炒めとなんちゃってナンを作っているのだが、最近は皆が健康になるにつれて食欲が増し量を作らなければならないのだ。給食センターの職員さんたちの気持ちがこの世界に来てようやく分かった気がする。
昨夜揚げ物に使った油は品質が良いらしく、これも後日リトールの町で売ることが決まった。一度しか使っていない油を濾し、悪くなる前にこれを油炒めなどに使うのだと説明をするとお母様は大量の野菜を切り始め今に至っている。
────
「簡単な朝食でごめんなさいね」
三人にはイチビたちが先に帰って来た時に作ってくれた簡易型の家に泊まってもらった。ムギンの藁を束にして敷き詰め、それに布をかぶせたムギンベッドは寝心地が良かったらしく三人はゆっくりと休むことが出来たようだ。ただ今日もリトールの町では見慣れない食べ物であるナンを見て口を閉ざし戸惑っているらしい。
「これはほんの少し味がついているから、このまま食べても良いしその野菜炒めを包んで食べても良いのよ。好きなように食べて」
私たちの主食になりつつあるナンを恐る恐るかじった三人は「美味い!」と声を上げている。昨日から何回そのセリフを聞いたか分からないが、言われる度に嬉しくなってしまう。逆に質素な食事で申し訳ないとすら思ってしまう。
食事を終えるとお母様たちが片付けをするので、ブルーノさんたちと家について話してきなさいと背中を押された。新たな石管作りをしているお父様のチームと合流し、タデやヒイラギ、イチビたちと共に家の予定地まで一緒に歩く。
「では今日から私は作業を再開する。何かあったら遠慮なく声をかけてくれ」
お父様はそう言い残すとスイレンたちと共に颯爽と歩いて行く。その姿を見たペーターさんが口を開いた。
「王や王子が自ら力仕事をするなんて……本当に君たち親子には驚かされてばかりだよ」
「私も自分をお姫様だなんて思っていないわ。愛称だと思っているくらい」
笑ってそう返すと側にいたブルーノさんもジェイソンさんも笑う。
「こんなに楽しい旅になるとは思わなかったよ。実はね、ある程度建築について教えたら私は帰るつもりだったんだ。だが決めた! 最低でも一軒の家をしっかりと建てるまでは帰らない!」
私たちはその発言にとても驚いた。ある程度助言をもらい、専門的な部分をしっかりと学んだらブルーノさんは数日で帰ってしまうのだと思っていた。ペーターさんもジェイソンさんも加わっているからなおさらだ。ちらりとペーターさんとジェイソンさんを見ると二人は考え込んでいる。
「……私も帰りたくない!」
「……私もです!」
しばし無言だった二人は声を上げたが、こちらも帰りたくない宣言をしてしまったのだ。しかしその背後から、お母様の片付けの手伝いをしていたじいやがちょうど現れた。
「ペーターさんは町長の仕事は良いのですかな? ジェイソンは隊長であろう。はっきりとした期日を言わずに来ているのだから、皆が心配するのでは?」
じいやの言葉でペーターさんは頭を抱え悩んでいる。私たちは何と声をかけたら良いか分からず無言で見つめるしかない。
「……何も起こらない町ではあるが、何かあったら大変だしな……。仕方がない、私は帰るとしよう……明日以降にな!」
はっきりと帰る日を言わない辺りに、よほど帰りたくないのだと察して思わず笑ってしまう。
「ジェイソンも隊員たちが待っておるだろう。ペーターさんが帰る日に一緒に帰るぞ。良いな?」
大好きなじいやに声をかけられたのにジェイソンさんはうつむき無言だ。そしておもむろに顔を上げると声高らかに宣言をした。
「帰りません! 私も家を建てるお手伝いをし、完成してから帰ります!」
よほどじいやと離れたくないのだと思い私たちは笑うが、じいやはため息を吐いている。ジェイソンさんがいかにじいやラブなのかを昨日今日で知ったペーターさんは笑いながら口を開いた。
「私が帰る時に国境警備隊の人たちに説明しよう。上手く言っておくよ」
ペーターさんまでジェイソンさんの味方をするので、じいやは何も言えなくなってしまい苦笑いをしている。何はともあれヒーズル王国は数人の来客でとても賑やかな日々となっている。
とはいえ、皆が起き出すまでの時間もあまりないので簡単な野菜炒めとなんちゃってナンを作っているのだが、最近は皆が健康になるにつれて食欲が増し量を作らなければならないのだ。給食センターの職員さんたちの気持ちがこの世界に来てようやく分かった気がする。
昨夜揚げ物に使った油は品質が良いらしく、これも後日リトールの町で売ることが決まった。一度しか使っていない油を濾し、悪くなる前にこれを油炒めなどに使うのだと説明をするとお母様は大量の野菜を切り始め今に至っている。
────
「簡単な朝食でごめんなさいね」
三人にはイチビたちが先に帰って来た時に作ってくれた簡易型の家に泊まってもらった。ムギンの藁を束にして敷き詰め、それに布をかぶせたムギンベッドは寝心地が良かったらしく三人はゆっくりと休むことが出来たようだ。ただ今日もリトールの町では見慣れない食べ物であるナンを見て口を閉ざし戸惑っているらしい。
「これはほんの少し味がついているから、このまま食べても良いしその野菜炒めを包んで食べても良いのよ。好きなように食べて」
私たちの主食になりつつあるナンを恐る恐るかじった三人は「美味い!」と声を上げている。昨日から何回そのセリフを聞いたか分からないが、言われる度に嬉しくなってしまう。逆に質素な食事で申し訳ないとすら思ってしまう。
食事を終えるとお母様たちが片付けをするので、ブルーノさんたちと家について話してきなさいと背中を押された。新たな石管作りをしているお父様のチームと合流し、タデやヒイラギ、イチビたちと共に家の予定地まで一緒に歩く。
「では今日から私は作業を再開する。何かあったら遠慮なく声をかけてくれ」
お父様はそう言い残すとスイレンたちと共に颯爽と歩いて行く。その姿を見たペーターさんが口を開いた。
「王や王子が自ら力仕事をするなんて……本当に君たち親子には驚かされてばかりだよ」
「私も自分をお姫様だなんて思っていないわ。愛称だと思っているくらい」
笑ってそう返すと側にいたブルーノさんもジェイソンさんも笑う。
「こんなに楽しい旅になるとは思わなかったよ。実はね、ある程度建築について教えたら私は帰るつもりだったんだ。だが決めた! 最低でも一軒の家をしっかりと建てるまでは帰らない!」
私たちはその発言にとても驚いた。ある程度助言をもらい、専門的な部分をしっかりと学んだらブルーノさんは数日で帰ってしまうのだと思っていた。ペーターさんもジェイソンさんも加わっているからなおさらだ。ちらりとペーターさんとジェイソンさんを見ると二人は考え込んでいる。
「……私も帰りたくない!」
「……私もです!」
しばし無言だった二人は声を上げたが、こちらも帰りたくない宣言をしてしまったのだ。しかしその背後から、お母様の片付けの手伝いをしていたじいやがちょうど現れた。
「ペーターさんは町長の仕事は良いのですかな? ジェイソンは隊長であろう。はっきりとした期日を言わずに来ているのだから、皆が心配するのでは?」
じいやの言葉でペーターさんは頭を抱え悩んでいる。私たちは何と声をかけたら良いか分からず無言で見つめるしかない。
「……何も起こらない町ではあるが、何かあったら大変だしな……。仕方がない、私は帰るとしよう……明日以降にな!」
はっきりと帰る日を言わない辺りに、よほど帰りたくないのだと察して思わず笑ってしまう。
「ジェイソンも隊員たちが待っておるだろう。ペーターさんが帰る日に一緒に帰るぞ。良いな?」
大好きなじいやに声をかけられたのにジェイソンさんはうつむき無言だ。そしておもむろに顔を上げると声高らかに宣言をした。
「帰りません! 私も家を建てるお手伝いをし、完成してから帰ります!」
よほどじいやと離れたくないのだと思い私たちは笑うが、じいやはため息を吐いている。ジェイソンさんがいかにじいやラブなのかを昨日今日で知ったペーターさんは笑いながら口を開いた。
「私が帰る時に国境警備隊の人たちに説明しよう。上手く言っておくよ」
ペーターさんまでジェイソンさんの味方をするので、じいやは何も言えなくなってしまい苦笑いをしている。何はともあれヒーズル王国は数人の来客でとても賑やかな日々となっている。
56
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる