貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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 さてようやく家についての話し合いが行われる。私は持ってきた黒板にチョークンで家の外観、内部の細かい点までを描き、ブルーノさんにこういう家にしたいと伝える。ただリトールの町に行く前との変更点がある。コンポストを三人に見せた時にあるものの存在を思い出したのだ。いつものように『思い出した』と言ってしまい、ブルーノさんたちに『どこで知った?』と聞かれると困るので、あえて『思い付いた』と言うことにする。

「……と、こんな感じでね。それで排水についてなんだけれど、元々下水道を掘ろうと思っていたのを変更しようと思うの。良い案を思い付いてしまって」

 後半部分を少し強めに言うと、ヒーズル王国民は一瞬表情が変わり察してくれたようだ。けれどそれ以前にブルーノさんが口を開けたまま呆けている。

「……これをカレンちゃんが考えたと言うのかい?」

「うん」

 何かヘマをしただろうか? あえてその不安を出さないように笑顔で受け答えする。

「排水についても考えられているなんて……」

「リトールの町のように地面に流せないのよ。今は表面に草が生えているけれど元々は砂地なの。砂は水を貯えることが出来ないから、大量の水を流してしまうと洪水になりかねないわ」

 さすがに災害級の洪水にはならないだろうけれど、それに近いことは起こると思う。それを言うと「確かに……」と納得はしてくれた。

「それで下水道を地下に掘ろうと思ったのかい?」

「それもあるのだけれど、お便所も全て水で流すつもりだったの」

 やはり便所に『お』を付けるのが面白いらしく、またしても全員に笑われてしまった。私は赤くなりながらもまず水洗式のトイレについて説明した。するとシャイアーク国の三人は初めて聞く構造に驚いて絶句している。

「ふん尿を流すわけだから臭いが出るでしょう? だから地面の下に下水道を作ろうと思ったのだけれど、岩盤を掘り進むのにどれだけ時間がかかるか分からないし……この方法にすればもっと簡単で時間も短縮できるわ」

 コンポストの説明の時に思い出したのが俗に言う『バイオトイレ』である。おがくずなどを便槽に敷き詰め用を足すと、腸内細菌と微生物の力で発酵し最後はおがくずが堆肥となる水を使わないトイレのことだ。美樹が住んでいた地域で災害が起きしばらく断水が続いた時に、普段水洗トイレの友人宅でこれが活躍していたのだ。
 発酵の時の温度で病原菌は死滅するので感染症の心配もほとんどない。何よりも臭いがほとんど出ないのだ。友人の家で使われていたものはヒーターで便槽内を温めるものだったが、最初の発酵さえ上手くいけば密閉されているし日中は暑いので問題ないと思うのだ。現に畑の周りのコンポストは普通に使えている。
 友人の家では使用後はおがくずを撹拌するためにスイッチを稼働させていたが、歯車を組み合わせて作れば手動でも便槽内を撹拌するものが作れる。それも図に描いて説明をする。

「……素晴らしい……」

 ブルーノさんは一言だけ言い、ペーターさんとジェイソンさんは理解しきれないのか首を傾げている。

「そして排水なんだけれど」

 そうなのだ。わざわざ下水道を掘らなくてもふん尿さえ流さないのなら、田舎ではお馴染みのドブを作れば良いのだ。美樹の住んでいる地域では年に二回のドブさらいをしていたが、美樹の町内は時間を持て余したご老人が多かったせいか自主的に毎月ドブさらいをしていた。普通なら嫌がる作業だがお年寄りが集まり社交の場ともなっていたのだ。生活排水が流れるドブなのに悪臭がなかったのはこまめな手入れのおかげだったと思う。

「取水口を作った時に石を彫って誘導口を作ったでしょう? あれを繋げるの」

 いつものように説明を終えるとタデたちはすぐに「分かった」と言うが、ブルーノさんたちは「信じられない」という言葉しか発さない。さらにブルーノさんは黒板を持ち、誰も疑問に思わなかった部分の指摘をする。

「あぁ、それはね……」

 その絵に描かれたものの役割と原理を説明すると、ほとんどの者が理解出来ない中ブルーノさんだけはその原理を理解してくれた。

「カレンちゃん……初めて会った日を覚えているかい? 『小さな天才が現れる』と占いで言われ、実際にスイレン君の数字の才能を知り、私はスイレン君を小さな天才だと思っていたよ。だけどカレンちゃん、君も立派な天才だよ。私は感動している」

「大げさよ。私は天才なんかじゃないわ。いつもこんな風に大雑把に絵にして、それを計算するのはスイレンだし形にしてくれるのはこの国の民たちなのだもの」

 そうなのだ。私は天才なんかじゃない。前世の記憶や知識を頼りに、民たちが楽になれるように提案をしているだけなのだ。一から全てを考えたわけではないのでズルっ子なのだ。

「姫」

 呼びかけられた方を見るとヒイラギが手招きしている。何かと思い近付くと、立ち上がり頭を撫でられる。

「また余計なことを考えてるでしょ? 姫はすごいよ」

 最近はじいややスイレンよりも、ヒイラギに心の弱い部分を見透かされてしまう。私が泣きそうになったのも分かったのだろう。

「あとは私たちに任せて。姫、今日はまだ食べたことのないものが食べたいな。早く作って!」

 そんな我がままを言うようなフリをし、私が泣く前にヒイラギは笑いながら背中を押してこの場から私を遠ざけてくれた。
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