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脱二日酔い
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一夜明け、完全に酒が抜けた大人たちはやる気に満ち溢れている。昨日の遅れを取り戻そうと、朝食すら早食いのように食べキビキビと動き『ホウレンソウ』こと報告・連絡・相談を始める。とは言っても大体いつものメンバーがいつもの作業をするのだが。
けれどまだオヒシバを完全に許せないらしいタデは住宅の建築から抜け、カッシとナーラの植樹をすると言う。ただ、炭焼きとレンガ焼き場の予定地は草は表面に生えているが、その下はおそらく砂地だろう。ならばまた森を作り始めたときのように木のベッドを作り、カッシとナーラの森を作ろうということになった。そのために人数を多くしてしまうと、昨日やることが出来なかった他の作業に支障が出そうなので最小限の人数で行くべきだということになり、人間重機であるお父様とじいや、そしてなぜか私も行くことになった。
ポニーとロバも散歩がてら連れて行くことにし、荷車を取り付けいくらかの食糧と丸太や土、若木を積み込む。ちょうど間伐作業に向かう者たちが近くにいたので、もし手が空いたなら精油の作業場と同じものを建ててほしいと伝えた。それは砂糖を作る場にしたいので、とにかく風通しの良い造りにしてほしいと頼んだ。精油もそうだが、あの暑さは体験した者にしか分からないくらい壮絶な暑さなのだ。
川へと向かう途中、住宅の建築現場の横を通った。作業は順調に進んでいるようで、私たちに気付いたブルーノさんとジェイソンさんがこちらに大きく手を振っている。そもそもジェイソンさんはじいやの側にいたくてこの国に来たのだが、なぜか普通にこの国の作業員として働いている。本人も嫌がるどころか楽しんでいるようなのであえてこちらからもそのことに触れないのだが。
私たちもブルーノさんたちに向けて手を振ると、ヒイラギやイチビたちが気付き手を振り返してくれるが、オヒシバだけが萎縮してこちらを見ようともしない。そんなオヒシバを見たポニーとロバは、明らかに攻撃をしようと走り出そうとした。かなりの危険を感じたためお父様とじいやの力で止め、早く川へ行こうと立ち去ることにした。
さらに進むと石管の埋め込み作業の現場に通りかかる。最初に作ったものよりもかなり大きい石管を作っているようで、その分それを埋めるための溝も大きく深く掘られている。スイレンは石管の傾斜を計算したり民たちに指示を出したりと大忙しで、私たちに全く気付く気配がない。下手に声をかけて作業を中断させるのも忍びないので私たちは静かに通過することにした。そのまま進むと先日魚を捕まえた取水口へと到着する。いつもと変わらず雄大に流れる川は、取水口へと勢い良く命の源である水を分け与えてくれている。
「さてどの辺に植えましょうか?」
私たちは周囲を見回す。取水口の左手、下流側にはヤンナギの木が気まぐれな風に遊ばれゆらゆらと揺れている。植えたときはただの枝だったヤンナギは今では立派な並木を作っている。
「上流側に植えるか」
タデがおもむろに口を開く。
「そうね、そうしましょう。ただ少し陸地側に植えましょう。あまり川の近くだと取水口に落ちた葉が詰まるかもしれないわ」
私の意見に賛成してくれた皆と共に移動し、丸太を積み上げ木のベッドを作っていく。隙間には持って来た土を川の水で泥にし、上手く貼り付けていく。
「初めてこれを作った日を思い出すな。こんなもので森が出来るとは、実はあのとき思っていなかったのだ」
お父様が笑いながら本音を漏らすと、じいやもタデも「本当にそうだ」と賛同する。あのときの皆の表情は困惑していたり、不信感をあらわにしていたのを思い出す。
「私も上手くいかなかったらどうしようかと少しだけ思っていたわよ」
そう言うと「少しだけか」と三人は笑う。笑い合いながらも手を止めず一定の間隔を開けて木のベッドを作ると、それに立てかけるようにしながら若木たちを植え付けていく。もう水やりは不要なのだが、すぐ近くに豊富に水があるのでなんとなく水かけもしてしまう。
「一度やった作業だけあってもう終わってしまったわね……。少し休憩をしましょうか」
私たちは地面に座り、持って来た野菜などを口にする。
「そういえばじいやとハーンの木の芽を見つけたのはこの辺りだったわよね。あのときは考えることが多すぎて深く考えることが出来なかったけれど、あの芽はどこから来たのかしら?」
なんとなく思い出話をしながら疑問を口にする。四人でそのことについて話し合うと「鳥か?」という仮説を立てたが、テックノン王国がダイナマイトを使ってもまだこちらに到達しないということはかなりの距離の山脈があるのではないか、そしてその山からここまではかなりの距離があるので、生物がいないはずのこの国ではそれは難しいのではないかと話が盛り上がる。
「……もしかしたら上流に木が生えていて、種が流されて来た?」
新たな仮説を立てると「いやいや、まさか」と三人は言うが、明らかにわくわくとした表情に変わっている。男は何歳になっても少年の心を失わないらしい。
「……行ってみる?」
そんな私も冒険が好きなのだ。試すように行くかと問えば、大人たちは皆笑顔で頷く。ただポニーとロバもいる上に準備は何もしていない。一度戻り装備を整えてから冒険に行くことにした。
けれどまだオヒシバを完全に許せないらしいタデは住宅の建築から抜け、カッシとナーラの植樹をすると言う。ただ、炭焼きとレンガ焼き場の予定地は草は表面に生えているが、その下はおそらく砂地だろう。ならばまた森を作り始めたときのように木のベッドを作り、カッシとナーラの森を作ろうということになった。そのために人数を多くしてしまうと、昨日やることが出来なかった他の作業に支障が出そうなので最小限の人数で行くべきだということになり、人間重機であるお父様とじいや、そしてなぜか私も行くことになった。
ポニーとロバも散歩がてら連れて行くことにし、荷車を取り付けいくらかの食糧と丸太や土、若木を積み込む。ちょうど間伐作業に向かう者たちが近くにいたので、もし手が空いたなら精油の作業場と同じものを建ててほしいと伝えた。それは砂糖を作る場にしたいので、とにかく風通しの良い造りにしてほしいと頼んだ。精油もそうだが、あの暑さは体験した者にしか分からないくらい壮絶な暑さなのだ。
川へと向かう途中、住宅の建築現場の横を通った。作業は順調に進んでいるようで、私たちに気付いたブルーノさんとジェイソンさんがこちらに大きく手を振っている。そもそもジェイソンさんはじいやの側にいたくてこの国に来たのだが、なぜか普通にこの国の作業員として働いている。本人も嫌がるどころか楽しんでいるようなのであえてこちらからもそのことに触れないのだが。
私たちもブルーノさんたちに向けて手を振ると、ヒイラギやイチビたちが気付き手を振り返してくれるが、オヒシバだけが萎縮してこちらを見ようともしない。そんなオヒシバを見たポニーとロバは、明らかに攻撃をしようと走り出そうとした。かなりの危険を感じたためお父様とじいやの力で止め、早く川へ行こうと立ち去ることにした。
さらに進むと石管の埋め込み作業の現場に通りかかる。最初に作ったものよりもかなり大きい石管を作っているようで、その分それを埋めるための溝も大きく深く掘られている。スイレンは石管の傾斜を計算したり民たちに指示を出したりと大忙しで、私たちに全く気付く気配がない。下手に声をかけて作業を中断させるのも忍びないので私たちは静かに通過することにした。そのまま進むと先日魚を捕まえた取水口へと到着する。いつもと変わらず雄大に流れる川は、取水口へと勢い良く命の源である水を分け与えてくれている。
「さてどの辺に植えましょうか?」
私たちは周囲を見回す。取水口の左手、下流側にはヤンナギの木が気まぐれな風に遊ばれゆらゆらと揺れている。植えたときはただの枝だったヤンナギは今では立派な並木を作っている。
「上流側に植えるか」
タデがおもむろに口を開く。
「そうね、そうしましょう。ただ少し陸地側に植えましょう。あまり川の近くだと取水口に落ちた葉が詰まるかもしれないわ」
私の意見に賛成してくれた皆と共に移動し、丸太を積み上げ木のベッドを作っていく。隙間には持って来た土を川の水で泥にし、上手く貼り付けていく。
「初めてこれを作った日を思い出すな。こんなもので森が出来るとは、実はあのとき思っていなかったのだ」
お父様が笑いながら本音を漏らすと、じいやもタデも「本当にそうだ」と賛同する。あのときの皆の表情は困惑していたり、不信感をあらわにしていたのを思い出す。
「私も上手くいかなかったらどうしようかと少しだけ思っていたわよ」
そう言うと「少しだけか」と三人は笑う。笑い合いながらも手を止めず一定の間隔を開けて木のベッドを作ると、それに立てかけるようにしながら若木たちを植え付けていく。もう水やりは不要なのだが、すぐ近くに豊富に水があるのでなんとなく水かけもしてしまう。
「一度やった作業だけあってもう終わってしまったわね……。少し休憩をしましょうか」
私たちは地面に座り、持って来た野菜などを口にする。
「そういえばじいやとハーンの木の芽を見つけたのはこの辺りだったわよね。あのときは考えることが多すぎて深く考えることが出来なかったけれど、あの芽はどこから来たのかしら?」
なんとなく思い出話をしながら疑問を口にする。四人でそのことについて話し合うと「鳥か?」という仮説を立てたが、テックノン王国がダイナマイトを使ってもまだこちらに到達しないということはかなりの距離の山脈があるのではないか、そしてその山からここまではかなりの距離があるので、生物がいないはずのこの国ではそれは難しいのではないかと話が盛り上がる。
「……もしかしたら上流に木が生えていて、種が流されて来た?」
新たな仮説を立てると「いやいや、まさか」と三人は言うが、明らかにわくわくとした表情に変わっている。男は何歳になっても少年の心を失わないらしい。
「……行ってみる?」
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