225 / 370
サギへの処罰
しおりを挟む
クジャを一人にしないように、クジャのお父様たちの部屋に運んでもらったが、その部屋にまだ到着していないのに「カレン! どこじゃ!?」という叫び声が聞こえる。苦笑いでその扉を開けると、いろんな意味で疲れ果てた顔のクジャのお父様が、椅子に座り溜め息を吐きながらクジャを見ていたところだった。
「クジャ! クジャのお父様もお兄様も病気なのよ! 静かにしないとダメじゃない!」
少しきつい言い方をすると「そうじゃった……」と、クジャは急に大人しくなった。それを見たクジャのお兄様のチュウヒさんは、笑いたくても体の調子が悪くて上手く笑えないようで、「グフッ」という微妙に辛そうな声だけを漏らしていた。
「改めて……礼を言わせてもらおう……リーンウン国王……ハヤブサだ……」
そう言ったクジャのお父様であるハヤブサさんは、握手をしようと片腕を上げようとしている。無理をさせないよう小走りで近付き、握手をしたあとにその手をそっと膝の上に戻した。病は気からと言うが、呪いではなく治ると分かったハヤブサさんは、目には力強さが戻り、威厳も増している。
「先程……モクレン殿と……レオナルド殿とも話し……サギの処罰を決めた……」
「え?」
聞けば、他の者と一緒に牢に入れられようとしていたサギを止めたのは、お父様とレオナルドさんらしい。そしてお父様たちはハヤブサさんに掛け合い、三人で話し合った結果、サギはあの『空の間』に幽閉し、自分のしでかしたことを反省させているとのことだった。
「まさか……あの寝台に寝かせているんじゃ……?」
恐る恐るお父様に問いかけると、「当然だ。だから着替えたのだ」と平然と言う。
クジャのお祖母様とお母様が寝かせられていたあの寝台は、かなり大きなものであった。そしてあの惨状からもう使えないと判断し、私は汚れきっていたお二人の下半身を寝台の上でそのまま洗い流したのだ。そしてお二人の着替えなどは濡れていない場所を使って行った。
そこにサギを寝かせ、「意識はあるのに動けない苦痛を思い知れ」と、お父様とレオナルドさんはサギの関節を所々外したそうだ。あまりにショッキングな内容に、私もクジャも絶句してしまう。
「私情は挟みたくないが……サギのしたことは……許せなかった……」
ハヤブサさんは言い切った。私もクジャも何も言えずにいる。「やり過ぎ」と言うのは簡単だが、サギのしたことはそれ以上だ。罪の償わせ方はいろいろとあるが、命を軽視したサギにはこの国の王がその償わせ方を選んだのだ。目には目を、ではないが、この国の王族ではない私には何も言うことが出来ない。そんな私やクジャの気持ちを察したのか、ハヤブサさんは口を開いた。
「今日から……肉も解禁だ……。食べねば……治るものも治らないからな……」
辛そうではあるが、明るく言おうとするその言葉に私は反応し、大声を出した。
「そうだわ! そのことで言わなければいけないことがあるの!」
慌ててそう叫ぶと、クジャの横で黙っていたモズさんや、チュウヒさんのお顔の手入れをしていたモズさんの息子さんも近くに来てくれた。名前はコゲラさんと言うらしい。メジロさんと並び、私の話を聞こうとしてくれている。
「えぇとね、王家の皆さんは極度に栄養不足の状態ですが、いきなり食べるとお亡くなりになる可能性が高いです」
ハッキリと言うと部屋中の全員がどよめく。かの秀吉の兵糧攻めの話が有名だが、降伏を許した後に城から出て来た極度の空腹状態の兵士にお粥を振る舞ったら、そのほとんどが死んでしまったという話がある。食べ過ぎて胃が破裂した、なんて話もあるが、実はリフィーディング症候群だったと言われている。
医者ではないので詳しくは分からないが、極度に栄養不足なのにいきなり栄養を与えすぎると、その栄養を摂取しようと体が頑張った結果、リンやマグネシウムが欠乏して心不全などを引き起こし、死に至ってしまうらしいのだ。
「だから、最低でも今日と明日は私が作ったもの以外を口にするのを禁止します。今、厨房を使わせてもらえるかスズメちゃんが確認に行っているの」
そう言うとクジャが立ち上がる。
「確認などいらぬ! 例えダメと言われようが、わらわの権限で許可するのじゃ! のう、父上!」
クジャがそう言うと、ハヤブサさんは頷く。
「だが、さすがにその姿で厨房に入るのはいかんな。カレンよ、水浴びに行くぞ。ついてまいれ」
今さら気付いたが、私が着ている服には排泄物や膿、さらにはドクダミの臭いまでも付着し大変なことになっている。誰もそれを指摘しない程、皆が目の前のことに一所懸命だったのだろう。それを指摘し、水浴びに行くと言うクジャに自由奔放さが戻った。気持ち的にも少し元気になった証拠だろう。
クジャの後ろに続き、案内されたのは城の浴室だった。シャイアーク国の、一般家庭であるブルーノさんの浴室よりも遥かに広い。
「シャイアーク国では拭くだけであろう? わらわたちは水を浴びるのじゃ」
浴室の一部に井戸があり、そこから水を汲むらしい。そして床はすのこ状の板張りとなっている。
「冬はどうするの? さすがに寒いんじゃない?」
「……我慢じゃ。どうにもならん時は湯を沸かす」
私の質問にクジャは苦笑いで答えてくれた。そして何かを思い出したように、クジャはハッとする。
「連れて来たは良いが……カレンの着替えを持って来ていないのじゃ……」
クジャらしい失態に二人で笑っていると、メジロさんが慌てた様子で着替えを持って来てくれた。
「あの……わがままで申し訳ないのだけれど、もう少し動きやすくて、体にピッタリ合うものが良いのだけれど……」
そう言うと、クジャとメジロさんは顔を見合わせ何か話し合っている。
「今度こそわらわが持って来るのじゃ。カレンは存分に水を浴びると良い」
そう言ってクジャはどこかへ行ってしまい、メジロさんは「お召し物の準備が整いましたら声をかけます」と、その場に留まったのだった。
「クジャ! クジャのお父様もお兄様も病気なのよ! 静かにしないとダメじゃない!」
少しきつい言い方をすると「そうじゃった……」と、クジャは急に大人しくなった。それを見たクジャのお兄様のチュウヒさんは、笑いたくても体の調子が悪くて上手く笑えないようで、「グフッ」という微妙に辛そうな声だけを漏らしていた。
「改めて……礼を言わせてもらおう……リーンウン国王……ハヤブサだ……」
そう言ったクジャのお父様であるハヤブサさんは、握手をしようと片腕を上げようとしている。無理をさせないよう小走りで近付き、握手をしたあとにその手をそっと膝の上に戻した。病は気からと言うが、呪いではなく治ると分かったハヤブサさんは、目には力強さが戻り、威厳も増している。
「先程……モクレン殿と……レオナルド殿とも話し……サギの処罰を決めた……」
「え?」
聞けば、他の者と一緒に牢に入れられようとしていたサギを止めたのは、お父様とレオナルドさんらしい。そしてお父様たちはハヤブサさんに掛け合い、三人で話し合った結果、サギはあの『空の間』に幽閉し、自分のしでかしたことを反省させているとのことだった。
「まさか……あの寝台に寝かせているんじゃ……?」
恐る恐るお父様に問いかけると、「当然だ。だから着替えたのだ」と平然と言う。
クジャのお祖母様とお母様が寝かせられていたあの寝台は、かなり大きなものであった。そしてあの惨状からもう使えないと判断し、私は汚れきっていたお二人の下半身を寝台の上でそのまま洗い流したのだ。そしてお二人の着替えなどは濡れていない場所を使って行った。
そこにサギを寝かせ、「意識はあるのに動けない苦痛を思い知れ」と、お父様とレオナルドさんはサギの関節を所々外したそうだ。あまりにショッキングな内容に、私もクジャも絶句してしまう。
「私情は挟みたくないが……サギのしたことは……許せなかった……」
ハヤブサさんは言い切った。私もクジャも何も言えずにいる。「やり過ぎ」と言うのは簡単だが、サギのしたことはそれ以上だ。罪の償わせ方はいろいろとあるが、命を軽視したサギにはこの国の王がその償わせ方を選んだのだ。目には目を、ではないが、この国の王族ではない私には何も言うことが出来ない。そんな私やクジャの気持ちを察したのか、ハヤブサさんは口を開いた。
「今日から……肉も解禁だ……。食べねば……治るものも治らないからな……」
辛そうではあるが、明るく言おうとするその言葉に私は反応し、大声を出した。
「そうだわ! そのことで言わなければいけないことがあるの!」
慌ててそう叫ぶと、クジャの横で黙っていたモズさんや、チュウヒさんのお顔の手入れをしていたモズさんの息子さんも近くに来てくれた。名前はコゲラさんと言うらしい。メジロさんと並び、私の話を聞こうとしてくれている。
「えぇとね、王家の皆さんは極度に栄養不足の状態ですが、いきなり食べるとお亡くなりになる可能性が高いです」
ハッキリと言うと部屋中の全員がどよめく。かの秀吉の兵糧攻めの話が有名だが、降伏を許した後に城から出て来た極度の空腹状態の兵士にお粥を振る舞ったら、そのほとんどが死んでしまったという話がある。食べ過ぎて胃が破裂した、なんて話もあるが、実はリフィーディング症候群だったと言われている。
医者ではないので詳しくは分からないが、極度に栄養不足なのにいきなり栄養を与えすぎると、その栄養を摂取しようと体が頑張った結果、リンやマグネシウムが欠乏して心不全などを引き起こし、死に至ってしまうらしいのだ。
「だから、最低でも今日と明日は私が作ったもの以外を口にするのを禁止します。今、厨房を使わせてもらえるかスズメちゃんが確認に行っているの」
そう言うとクジャが立ち上がる。
「確認などいらぬ! 例えダメと言われようが、わらわの権限で許可するのじゃ! のう、父上!」
クジャがそう言うと、ハヤブサさんは頷く。
「だが、さすがにその姿で厨房に入るのはいかんな。カレンよ、水浴びに行くぞ。ついてまいれ」
今さら気付いたが、私が着ている服には排泄物や膿、さらにはドクダミの臭いまでも付着し大変なことになっている。誰もそれを指摘しない程、皆が目の前のことに一所懸命だったのだろう。それを指摘し、水浴びに行くと言うクジャに自由奔放さが戻った。気持ち的にも少し元気になった証拠だろう。
クジャの後ろに続き、案内されたのは城の浴室だった。シャイアーク国の、一般家庭であるブルーノさんの浴室よりも遥かに広い。
「シャイアーク国では拭くだけであろう? わらわたちは水を浴びるのじゃ」
浴室の一部に井戸があり、そこから水を汲むらしい。そして床はすのこ状の板張りとなっている。
「冬はどうするの? さすがに寒いんじゃない?」
「……我慢じゃ。どうにもならん時は湯を沸かす」
私の質問にクジャは苦笑いで答えてくれた。そして何かを思い出したように、クジャはハッとする。
「連れて来たは良いが……カレンの着替えを持って来ていないのじゃ……」
クジャらしい失態に二人で笑っていると、メジロさんが慌てた様子で着替えを持って来てくれた。
「あの……わがままで申し訳ないのだけれど、もう少し動きやすくて、体にピッタリ合うものが良いのだけれど……」
そう言うと、クジャとメジロさんは顔を見合わせ何か話し合っている。
「今度こそわらわが持って来るのじゃ。カレンは存分に水を浴びると良い」
そう言ってクジャはどこかへ行ってしまい、メジロさんは「お召し物の準備が整いましたら声をかけます」と、その場に留まったのだった。
53
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる