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洗濯
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厨房から出たが、スズメちゃんは相変わらず緊張しているようである。
「スズメちゃんって、何歳?」
唐突に話しかけると、驚きながらもスズメちゃんは口を開いた。
「十二歳です」
「え!? 私も同じ歳よ! 良かったわ! ぜひお友だちになってちょうだいね!」
そう言いながらスズメちゃんの手を無理やり握り、ぶんぶんと腕を振りながら握手をする。けれどスズメちゃんは「そんな……」とか「恐れ多いです……」なんて謙遜をしている。
この国での私のミッションは決まった。王家の皆さんの回復と、女中たちとの関係、そしてスズメちゃんと仲良くなることだ。ちょっとのことでは私はめげないのだ。
「そのうち気付くと思うけれど、私はクジャのような姫ではないわ。とても大雑把だし、男の子のようなのよ。気を使うような必要なんてないからね」
私の言葉を聞いたスズメちゃんは「え? え?」と戸惑っている。すぐに私の特異さに気付くだろう。
「そうだ! お洗濯って、どこですれば良いのかしら?」
突然話題を変えた私に驚きつつも、「こちらです」と、スズメちゃんは案内してくれた。外ではあるが屋根が付いており、厨房からはそんなに離れていない場所に洗濯場はあった。
ここにも井戸があり、桶も何個か置かれている。地面はセーメントで固められており、タッケで作られた排水口から流れた水は小さなせせらぎとなり、森へと自然に流れて行くようだ。
「水の行き先は森なの?」
「はい。小さな小川が流れていて、そこに流れ着くようになっています」
それを聞いてしばし考える。
「その水を、この国の人が飲むようなことは?」
「それはないです。そこも考えて作られているそうです」
ならば安心だ。不安の無くなった私は笑顔で宣言をする。
「じゃあ、日の出ているうちにお洗濯をするわ」
ルンルンと小走りで部屋に戻り、メジロさんが戻っているのを確認した私はお父様たちに声をかける。
「お父様、じいや、樹皮を干しているのと同じ、物干し? を作ってほしいの。メジロさん、この部屋の近くに干す場所を作っても良いかしら?」
するとメジロさんは、この部屋から見えない場所であれば良いと言ってくれ、さらに物を干すなら乾燥させたタッケがあると言い、お父様たちをスズメちゃんに案内させた。
私はウキウキで部屋の外に置いてある洗濯物を持つと、メジロさんが驚きの表情をして口を開いた。
「カレンさん……? 何をなされるのです?」
「え? お洗濯よ?」
私は使い終わったおむつが入ったカゴを持っている。少々混乱しているメジロさんと話すと、どうやら私が洗うのは手ぬぐいや自分の下着なのだろうと思っていたようである。そして使い終わったおむつは、後でまとめて焼却処分するつもりであったようだ。
「えぇ!? 燃やすなんてしないわよ! もったいないわ! 洗ったらまた使えるのよ? じゃあ行ってくるわ!」
呆然としているメジロさんをその場に残し、私は洗濯場へと向かった。
井戸から水を汲み、桶に水を入れておむつを手洗いする。クジャのお祖母様もお母様もしばらく食べていなかったので、今のところおむつの汚れは小さい方だけなので楽だ。
洗濯日和だなと思いつつ、一枚一枚丁寧に洗っていると、一緒におむつを縫った女中と厨房の女中が洗濯物を持って現れた。女中同士の仲は良いようだ。
「……カレンさん? もしかして……それは……」
一緒におむつを縫っただけあって、すぐに私の洗っているものがおむつだと分かったようである。
「えぇ、お二人のおむつよ。こうやって洗えばまた使えるし、さらに布も柔らかくなってお肌への負担も減るわ」
それを聞いた厨房の女中が愕然とし、ぷいっとどこかへ行ってしまった。残った女中は、私とその女中を交互に見てオロオロとしている。
「突然やって来て散々騒いだ挙げ句、厨房まで出入りをしているのだもの。良く思われなくて当然だわ。でも私は仲良くなる気でいるから、全然平気よ」
ザブザブとおむつを洗いながら笑顔で答えるが、女中はそれで厨房で何かあったと察したのだろう。私のことを心配してくれ、次からは一緒に厨房に行こうかとまで言ってくれた。
「ううん、何かされるわけではないし、女中さんもお仕事があるでしょう? 本当に大丈夫よ」
「ですが……」
そんな会話をしていると、先程の厨房の女中が戻ってきた。その手にはマメ科特有のサヤが、例えるなら藤の実のサヤのようだが、それに比べると巨大なものを持っている。
「あげます」
ぶっきらぼうにそう言ってサヤを渡されたが、何が何だか分からずにいると「これだからお姫様は……」と嫌味を言われてしまった。けれどこの場に残っていた女中は、そんな様子を笑顔で見ている。
「これで洗い物が出来るんですよ」
女中は笑顔のまま手でサヤを折り、洗うために持ってきていた汚れの少ない手ぬぐいにそれを包んだ。そのままそれを水の中に入れ、しばらくその手ぬぐいを揉んだりしていると段々と泡立ってきた。
「まぁ! これはすごいわ! ありがとう!」
そう声をかけるも、女中はまだ笑顔を見せてくれない。けれどこれは大きな前進だ。
植物由来どころか、そのままの天然植物洗剤で洗濯を終え、二人にまた礼を言って干しに戻った。部屋の近くには、美しい庭には似合わない物干しが建てられていた。
「お父様! じいや! 私の知らない、泡の出る植物を教えてもらったの!」
洗い物を干しつつ、興奮しながらお父様たちに報告をすると、部屋からメジロさんが出て来て「多分、サイガーチだと思います」と言っている。お父様もじいやも知らない植物だったようで、帰国する時に苗木を貰おうと盛り上がったのだった。
「スズメちゃんって、何歳?」
唐突に話しかけると、驚きながらもスズメちゃんは口を開いた。
「十二歳です」
「え!? 私も同じ歳よ! 良かったわ! ぜひお友だちになってちょうだいね!」
そう言いながらスズメちゃんの手を無理やり握り、ぶんぶんと腕を振りながら握手をする。けれどスズメちゃんは「そんな……」とか「恐れ多いです……」なんて謙遜をしている。
この国での私のミッションは決まった。王家の皆さんの回復と、女中たちとの関係、そしてスズメちゃんと仲良くなることだ。ちょっとのことでは私はめげないのだ。
「そのうち気付くと思うけれど、私はクジャのような姫ではないわ。とても大雑把だし、男の子のようなのよ。気を使うような必要なんてないからね」
私の言葉を聞いたスズメちゃんは「え? え?」と戸惑っている。すぐに私の特異さに気付くだろう。
「そうだ! お洗濯って、どこですれば良いのかしら?」
突然話題を変えた私に驚きつつも、「こちらです」と、スズメちゃんは案内してくれた。外ではあるが屋根が付いており、厨房からはそんなに離れていない場所に洗濯場はあった。
ここにも井戸があり、桶も何個か置かれている。地面はセーメントで固められており、タッケで作られた排水口から流れた水は小さなせせらぎとなり、森へと自然に流れて行くようだ。
「水の行き先は森なの?」
「はい。小さな小川が流れていて、そこに流れ着くようになっています」
それを聞いてしばし考える。
「その水を、この国の人が飲むようなことは?」
「それはないです。そこも考えて作られているそうです」
ならば安心だ。不安の無くなった私は笑顔で宣言をする。
「じゃあ、日の出ているうちにお洗濯をするわ」
ルンルンと小走りで部屋に戻り、メジロさんが戻っているのを確認した私はお父様たちに声をかける。
「お父様、じいや、樹皮を干しているのと同じ、物干し? を作ってほしいの。メジロさん、この部屋の近くに干す場所を作っても良いかしら?」
するとメジロさんは、この部屋から見えない場所であれば良いと言ってくれ、さらに物を干すなら乾燥させたタッケがあると言い、お父様たちをスズメちゃんに案内させた。
私はウキウキで部屋の外に置いてある洗濯物を持つと、メジロさんが驚きの表情をして口を開いた。
「カレンさん……? 何をなされるのです?」
「え? お洗濯よ?」
私は使い終わったおむつが入ったカゴを持っている。少々混乱しているメジロさんと話すと、どうやら私が洗うのは手ぬぐいや自分の下着なのだろうと思っていたようである。そして使い終わったおむつは、後でまとめて焼却処分するつもりであったようだ。
「えぇ!? 燃やすなんてしないわよ! もったいないわ! 洗ったらまた使えるのよ? じゃあ行ってくるわ!」
呆然としているメジロさんをその場に残し、私は洗濯場へと向かった。
井戸から水を汲み、桶に水を入れておむつを手洗いする。クジャのお祖母様もお母様もしばらく食べていなかったので、今のところおむつの汚れは小さい方だけなので楽だ。
洗濯日和だなと思いつつ、一枚一枚丁寧に洗っていると、一緒におむつを縫った女中と厨房の女中が洗濯物を持って現れた。女中同士の仲は良いようだ。
「……カレンさん? もしかして……それは……」
一緒におむつを縫っただけあって、すぐに私の洗っているものがおむつだと分かったようである。
「えぇ、お二人のおむつよ。こうやって洗えばまた使えるし、さらに布も柔らかくなってお肌への負担も減るわ」
それを聞いた厨房の女中が愕然とし、ぷいっとどこかへ行ってしまった。残った女中は、私とその女中を交互に見てオロオロとしている。
「突然やって来て散々騒いだ挙げ句、厨房まで出入りをしているのだもの。良く思われなくて当然だわ。でも私は仲良くなる気でいるから、全然平気よ」
ザブザブとおむつを洗いながら笑顔で答えるが、女中はそれで厨房で何かあったと察したのだろう。私のことを心配してくれ、次からは一緒に厨房に行こうかとまで言ってくれた。
「ううん、何かされるわけではないし、女中さんもお仕事があるでしょう? 本当に大丈夫よ」
「ですが……」
そんな会話をしていると、先程の厨房の女中が戻ってきた。その手にはマメ科特有のサヤが、例えるなら藤の実のサヤのようだが、それに比べると巨大なものを持っている。
「あげます」
ぶっきらぼうにそう言ってサヤを渡されたが、何が何だか分からずにいると「これだからお姫様は……」と嫌味を言われてしまった。けれどこの場に残っていた女中は、そんな様子を笑顔で見ている。
「これで洗い物が出来るんですよ」
女中は笑顔のまま手でサヤを折り、洗うために持ってきていた汚れの少ない手ぬぐいにそれを包んだ。そのままそれを水の中に入れ、しばらくその手ぬぐいを揉んだりしていると段々と泡立ってきた。
「まぁ! これはすごいわ! ありがとう!」
そう声をかけるも、女中はまだ笑顔を見せてくれない。けれどこれは大きな前進だ。
植物由来どころか、そのままの天然植物洗剤で洗濯を終え、二人にまた礼を言って干しに戻った。部屋の近くには、美しい庭には似合わない物干しが建てられていた。
「お父様! じいや! 私の知らない、泡の出る植物を教えてもらったの!」
洗い物を干しつつ、興奮しながらお父様たちに報告をすると、部屋からメジロさんが出て来て「多分、サイガーチだと思います」と言っている。お父様もじいやも知らない植物だったようで、帰国する時に苗木を貰おうと盛り上がったのだった。
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