貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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お約束

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 ようやく私たちの笑いとクジャの怒りが静まった頃、マークさんにお父様を紹介した。

「ヒーズル王国のモクレンだ」

「これはこれは。カレン嬢のお父上だったのですね。いつもニコライ様がご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 マークさんは『お世話になっております』ではなく、それは真面目に『ご迷惑をおかけして』と深々と頭を下げて謝罪した。この言葉にマークさん以外は爆笑してしまい、当の本人であるニコライさんはキョトンとしている。

「ぶはっ……良い。最初はなんと無礼な者かと思ったが……ぶふっ……このような生き物は見たことがないので貴重だ」

 そしてお父様は『人』ではなく『生き物』と表現し、それに気付いた私たちは笑いが止まらなくなる。ハヤブサさんも腹を抱えて笑い始め、体は大丈夫かと心配になったが問題はなさそうである。そしてニコライさんは『貴重』という言葉を褒められたと思ったのか、ニコニコとお父様を見つめている。
 ちなみに、部屋の中に待機している家臣や女中は壁を向いて両手で顔を押さえていることから、こちらも笑いが止まらなくなっているようである。

「あ~笑ったわ。ニコライさんは憎めない人なのよ」

 私がお父様にそう言うと、ニコライさんの目はキラキラと輝き始める。

「でしたらカレン嬢、私と結婚を前提に……」

「ならん!」
「ならぬ!」

 ニコライさんが話している途中にもかかわらず、お父様とじいやが本気のトーンで怒鳴ると、今度は叱られた子犬のようにしょぼんとし始めた。

「ニコライ……そなた本当に何をしに来たのだ? そなたの鑑賞会になっているではないか」

「え? ですから薬を持って来たのです」

「あぁ……そうだったな……」

 コロコロと表情が変わるニコライさんに対しクジャが質問をしたが、クジャももはや笑いすぎておかしくなってきたようである。

────

「なるほど……人の体の持っている力と、植物の力と、食べ物の力ですか……。私たちは、例えば痛かったら痛みを感じさせなくする、そういう風に薬を使うので驚きました。さすがは森の民ですね」

 ようやく真面目な話し合いになった頃、どうやって王家の人々をここまで回復させたのかを聞かれ、自然治癒力や植物の効能、食べ物の栄養について簡単な言葉で説明をすると、ニコライさんもマークさんも感心しきっていた。

「もちろん、テックノン王国の薬も間違いではないのよ? ただ今回は薬もなかったし、下手に薬を使っていたら逆に危なかったかもしれないわ」

 まだテックノン王国製の薬を使用したことがないので、成分などが分からないためにもし使用していたら……と、信用していないわけではないが少し懐疑的になってしまう。

「何よりも『元気になろう』と思う本人の気持ちが強かったから、ここまで早く元気になったのよ」

 病は気からという言葉があるが、本人が絶対に治してやると強く思っている人が回復するのを美樹はたくさん見てきた。
 例えば、高齢になってから骨折をしてしまうと、そのまま寝たきりになってしまう方も多いだろう。けれど美樹の周りのご老人たちは、『治して釣りに行く!』とか『山菜を採りに行かなきゃ!』と言い、見事に有言実行を果たした強いご老人たちが多かったのだ。

「そして私のことを信用してくれて、食べるものまで制限したりしたのに、それに不満も言わずに従ってくれたおかげよ。私がすごいんじゃないわ。クジャの家族がすごいのよ」

「カレン……」

 私の言葉にクジャは涙ぐみ、隣に座る私の手をそっと握った。

「良いです……良いですね……! 美しいお二人が手を取り合う……なんと素敵なことでしょう!」

 ニコライさんは褒めているつもりなのかもしれないが、皆は残念な溜め息をこぼした。するとハヤブサさんが話題を変えようとしてくれる。

「カレンさんは私たちの世話、そして毎食必ず食事を作りそれを食べさせ、私たちの洗濯までしていたと聞いて驚いた。一時期はほとんど寝ずに看病までしてくれたのだ。一国の姫であるカレンさんに、心から尊敬し感謝をしている」

 その言葉は嬉しかったが、私は小さく首を振った。

「私は私をお姫様だなんて思っていないわ。私はただの人。お父様とお母様の子どもとして産まれただけよ。『姫』という肩書きや愛称はあるけれど、皆同じ人間なのよ」

 私の言葉に、クジャの握る手に力がこもる。

「これからも私は、自分の大切な人たちのために走り回るわ。自分に出来ることを精一杯するだけよ。だからクジャ、何かあったらすぐに言ってね? でもわがままはダメよ?」

 その言葉を聞いたハヤブサさんとクジャは涙ぐみ、お父様は「よく言った。私も必ず手を貸す」とわざわざ私のところまで来て頭を撫で、それを見たじいやとマークさんが拍手をしてくれた。
 けれど、そんな感動的であろう場面に爆弾を投下する者がいた。

「そうです! クジャク嬢! いつもいつもわがままはいけませんよ! 本当に大変なんですから!」

 私の知らないところで、クジャに振り回された経験のあるニコライさんが熱弁を振るった。もちろん即座に全員が「人のことは言えないだろう!」と総ツッコミをしたのは言うまでもない。
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