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オドリキッコ
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村の女性たちが一度家へと帰り、そしてこの場に戻って来ると手にはそれぞれの家で作られた家庭料理を手にしていた。煮しめのようなものやおでんのようなもの、先程の網を使って肉や野菜を焼くバーベキューらしきものも始まった。
家によってはマイを担当していたらしく、冷めてしまっていたが白いマイも精米していないマイも出てくる。
「美味しすぎて幸せすぎる……」
食べるもの全てが懐かしい日本の記憶を呼び起こし、思わず私が呟くと村人たちは大層喜んでくれた。しかしこちらは大所帯で来ており、中にはクジャや兵たちという食いしん坊がいる。
「あれま! マイが足りない!」
おひつのようなものは空っぽになりかけている。女性たちは集まり、どうしようかと話し合っている。
「あの、ちょっと良いかしら? すぐに炊けるやり方があるんですよ」
一般の民が食べる玄米は、長時間水に浸けておかなければならない。けれど厨房の女中たちに教えた『びっくり炊き』のやり方はすぐに食べられる。そのことを言うと信じてもらえず、その場で実践することになった。
「……で、そろそろ蒸れたので完成です!」
半信半疑の村人たちの前で一から説明をしながら調理し、蓋を開けるとホカホカの玄米が出来上がっている。
「あれまぁ!」
「こんなことってあるのかい!?」
長年マイを炊き続けてきた女性たちは驚きの声を上げている。
「これだったらあちきにも作れるよ」
そんな弱々しい声が聞こえ、そちらを見るとオオルリさんのお母さんがにこやかにマイを見ていた。
さり気なく聞いてみると、あまり起き上がれないオオルリさんのご両親のために、近所の人が毎日食べ物を作って運んでいるらしいのだ。
さらに気になった私は、オオルリさんのお母さんに近寄り世間話的なことを話しながらお体の確認をした。
髪や肌は乾燥しており、爪は歪な形になっている。体調を聞けばめまいや倦怠感、そして数年前にくしゃみであばら骨が折れたと言う。さらにそれは、クジャがここに来なくなってから起こり始めたと言う。
「お肉やお魚は好きですか?」
「嫌いじゃあないけど、元々食が細いのが、最近じゃあ食欲がなくなってね」
段々と予想がついてきた。おそらく食が細いというのは本当なのだろう。オオルリさんもご両親もとても小柄だ。その食の細い人がクジャが来なくなったことにより、ショックや寂しさから食欲不振になったのではないだろうか?
そしてさらに食べなくなったことにより、王家の人たちのように栄養不足になっているのだと思う。あの爪は鉄分不足の人がなる爪だ。鉄分だけではなく、カルシウムや他の栄養も足りていないので、骨が脆くなり折れたのではないだろうか?
「みんなー! まだまだ食べられるー!?」
広場の人たちに確認をすると、王家の人たちも村人も「当然だ!」と言ってくれる。
「あの、私今からお料理を作るので食べてくれますか?」
オオルリさんのご両親にそう問いかけると、「はい」と二人とも答えてくれた。私は立ち上がりトビ爺さんの近くへ向かった。
「トビ爺さん、この近くにキノ……じゃなくて、キッコは生えてる?」
「採りに行かんでも、昨日採れたやつがあるが……お転婆は苦手なはずだぞ? 昔誰も見てない場所で、一人で毒のあるやつを採って食って腹を壊したからな」
そんな暴露話をされているのを知らないクジャは、お兄様であるチュウヒさんと共に村人と楽しそうに会話をしている。
「じゃあクジャには食べさせないようにしないとね。一度見せてもらっても良いかしら?」
そう言うとトビ爺さんは自宅へと案内してくれた。玄関の戸を開けると土間があり、中に入ると壁際にそれは置かれていた。
「これはっ!?」
私は驚きからバンザイのポーズとなり、興奮から高速で足踏みをしてしまった。
「こいつを知ってるのか? 一般的にキッコには名前がないが、このキッコを見つけた者は喜びから娘っこのように踊ってしまうから、『オドリキッコ』と呼ばれている」
それは当然だろう。そして由来も日本のものとほとんど一緒だ。このキッコことキノコは見た目も香りも間違いなく『舞茸』だろう。
「こんなにデカいのは久しぶりに採ったんだが、お転婆がなぁ……」
そう言ってトビ爺さんは苦笑いになる。
「大丈夫よ! クジャには違う食べ物を預けておけば静かになるわ! 食べたい……私が食べたい!」
目をギラギラと輝かせてオドリキッコを見る私にトビ爺さんは笑う。
「本当に面白い娘っこだなぁ。……お転婆の友人になってくれてありがとうな。お転婆の幼馴染だったカラスとハトは、王家に仕える身になってから昔みたいには接しなくなったからなぁ」
なんと国境警備のカラスさんとハトさんは、この村の出身とのことだった。仲の良かったクジャの身を案じ、年頃になると農民ではなく兵に志願したらしいのだ。ただ『お転婆!』と話しかけたのを上官に見つかり、当然のことながらこっぴどく怒られて以来、あのような話し方に徹底的に直されたそうだ。
何はともあれ私は食材の一つを手に入れた。栄養満点の美味しいものを作らないといけないわね!
家によってはマイを担当していたらしく、冷めてしまっていたが白いマイも精米していないマイも出てくる。
「美味しすぎて幸せすぎる……」
食べるもの全てが懐かしい日本の記憶を呼び起こし、思わず私が呟くと村人たちは大層喜んでくれた。しかしこちらは大所帯で来ており、中にはクジャや兵たちという食いしん坊がいる。
「あれま! マイが足りない!」
おひつのようなものは空っぽになりかけている。女性たちは集まり、どうしようかと話し合っている。
「あの、ちょっと良いかしら? すぐに炊けるやり方があるんですよ」
一般の民が食べる玄米は、長時間水に浸けておかなければならない。けれど厨房の女中たちに教えた『びっくり炊き』のやり方はすぐに食べられる。そのことを言うと信じてもらえず、その場で実践することになった。
「……で、そろそろ蒸れたので完成です!」
半信半疑の村人たちの前で一から説明をしながら調理し、蓋を開けるとホカホカの玄米が出来上がっている。
「あれまぁ!」
「こんなことってあるのかい!?」
長年マイを炊き続けてきた女性たちは驚きの声を上げている。
「これだったらあちきにも作れるよ」
そんな弱々しい声が聞こえ、そちらを見るとオオルリさんのお母さんがにこやかにマイを見ていた。
さり気なく聞いてみると、あまり起き上がれないオオルリさんのご両親のために、近所の人が毎日食べ物を作って運んでいるらしいのだ。
さらに気になった私は、オオルリさんのお母さんに近寄り世間話的なことを話しながらお体の確認をした。
髪や肌は乾燥しており、爪は歪な形になっている。体調を聞けばめまいや倦怠感、そして数年前にくしゃみであばら骨が折れたと言う。さらにそれは、クジャがここに来なくなってから起こり始めたと言う。
「お肉やお魚は好きですか?」
「嫌いじゃあないけど、元々食が細いのが、最近じゃあ食欲がなくなってね」
段々と予想がついてきた。おそらく食が細いというのは本当なのだろう。オオルリさんもご両親もとても小柄だ。その食の細い人がクジャが来なくなったことにより、ショックや寂しさから食欲不振になったのではないだろうか?
そしてさらに食べなくなったことにより、王家の人たちのように栄養不足になっているのだと思う。あの爪は鉄分不足の人がなる爪だ。鉄分だけではなく、カルシウムや他の栄養も足りていないので、骨が脆くなり折れたのではないだろうか?
「みんなー! まだまだ食べられるー!?」
広場の人たちに確認をすると、王家の人たちも村人も「当然だ!」と言ってくれる。
「あの、私今からお料理を作るので食べてくれますか?」
オオルリさんのご両親にそう問いかけると、「はい」と二人とも答えてくれた。私は立ち上がりトビ爺さんの近くへ向かった。
「トビ爺さん、この近くにキノ……じゃなくて、キッコは生えてる?」
「採りに行かんでも、昨日採れたやつがあるが……お転婆は苦手なはずだぞ? 昔誰も見てない場所で、一人で毒のあるやつを採って食って腹を壊したからな」
そんな暴露話をされているのを知らないクジャは、お兄様であるチュウヒさんと共に村人と楽しそうに会話をしている。
「じゃあクジャには食べさせないようにしないとね。一度見せてもらっても良いかしら?」
そう言うとトビ爺さんは自宅へと案内してくれた。玄関の戸を開けると土間があり、中に入ると壁際にそれは置かれていた。
「これはっ!?」
私は驚きからバンザイのポーズとなり、興奮から高速で足踏みをしてしまった。
「こいつを知ってるのか? 一般的にキッコには名前がないが、このキッコを見つけた者は喜びから娘っこのように踊ってしまうから、『オドリキッコ』と呼ばれている」
それは当然だろう。そして由来も日本のものとほとんど一緒だ。このキッコことキノコは見た目も香りも間違いなく『舞茸』だろう。
「こんなにデカいのは久しぶりに採ったんだが、お転婆がなぁ……」
そう言ってトビ爺さんは苦笑いになる。
「大丈夫よ! クジャには違う食べ物を預けておけば静かになるわ! 食べたい……私が食べたい!」
目をギラギラと輝かせてオドリキッコを見る私にトビ爺さんは笑う。
「本当に面白い娘っこだなぁ。……お転婆の友人になってくれてありがとうな。お転婆の幼馴染だったカラスとハトは、王家に仕える身になってから昔みたいには接しなくなったからなぁ」
なんと国境警備のカラスさんとハトさんは、この村の出身とのことだった。仲の良かったクジャの身を案じ、年頃になると農民ではなく兵に志願したらしいのだ。ただ『お転婆!』と話しかけたのを上官に見つかり、当然のことながらこっぴどく怒られて以来、あのような話し方に徹底的に直されたそうだ。
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