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小さな村の大きな宴
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拍手が湧き起こる中、お父様にお姫様抱っこをされたスワンさんが部屋まで来た。
お父様とじいやがオオルリさんの乗っていた車椅子の車輪を拭き、座敷に上げて車椅子の交換をしようとしたところ、スワンさんは『土がついたものは拭いても履物と一緒よ』と、自らお姫様抱っこを頼んだらしい。
部屋に着いたスワンさんもまたオオルリさんのご両親に謝り始め、自分は遠くから嫁いだので、王家の迷惑にならないよう実家に里帰りするということを言わなかったせいで、オオルリさんを苦しめてしまったと謝っている。
さらにそこにクジャとチュウヒさんが涙ぐみながらやって来て、なんとチュウヒさんは「はじめまして」などと挨拶を始めた。長いことサギにクジャのようになるなと外出を認められず、出かける時はサギが同行していたので、今までこの村には来れなかったと謝っている。
クジャもまた幼少期はこの村が逃げ場だったが、成長と共に外国であるハーザルの街に魅了され、ここにあまり来なくなったことを詫びている。
王家総出の謝罪にオオルリさんのご両親はたじたじとなってしまい、あまりにも混乱と恐縮しきっている様子にトビ爺さんが間に入り、歓迎の宴をしようと外へ出ることになった。
────
「こっちこっち!」
「オオルリ!」
「久しぶり!」
広場へと移動する際には、オオルリさんの幼馴染たちが集まって来た。久しぶりの友人との会話に、オオルリさんはそれは嬉しそうに話している。
「あちきらはね! オオルリが閉じ込められてるんじゃないかと話してたんだよ!」
「でもね、お転婆ちゃんが来るようになったら、どうやら違うようだと思ってね」
オオルリさんのことを思っての苦言にハヤブサさんは苦笑いとなり、オオルリさんも「違うのよ」とフォローをしている。
そんな会話をしているうちに広場へと到着した。まるで花見の会場のように地面には布が敷かれ、その上には食器などが置かれている。そして簡易のかまどが作られ、調理器具が並んでいる。
「オメェらもういいだろ! オオルリは帰って来た! また来るって言ってる! それよりも大事なことがあるだろ!」
トビ爺さんが一喝すると辺りは静まり返った。それと同時に、オオゾラ村の皆さんの視線がなぜか私へと集中する。
「娘っこ! ……早くあの『モチ』を作ってくれ! 村人全員が楽しみに待ってたんだ!」
本当はオオルリさんの里帰りを楽しみにしていたはずなのに、場を盛り上げようとしているのだと気付いた。トビ爺さんは口は悪いが、相当気遣いが出来る人なのだと確信した。
「もちろん任せてちょうだい! あれを!」
私の言葉で馬車から杵と臼が降ろされる。村の女性たちはかまどに火を点け始め、マイを洗って来ると井戸へと走り出した。
そこから一気にモチつき大会のようになり、スズメちゃんと共に村の女性たちに教えながら餡子を作ったり、マイを蒸したりと大忙しとなった。そんな中、お父様とじいやは村の男性たちに杵と臼の作り方を教えている。
「せーの! よいしょ!」
マイが蒸されたところで、今まで空気のようだった兵たちにモチつきをさせる。先日城に来れなかった村人や、オオルリさんのご両親は驚きつつも大喜びでその様子を見ている。兵たちも笑顔を振りまき、楽しそうにモチをついている。
出来たてのモチを一口大に分け、特に老人と子どもはよく噛んで食べるように何回も叫びながら配っていく。
「美味い!」
「こんなにおいしいの、食べたことない!」
小さな子どもたちはニコニコ顔でモチを楽しんでいる。けれど私は今日サプライズのものを作っていたのだ。何回もスズメちゃんに『カレンさん、失敗しちゃったんですか?』と聞かれ、否定し続けた餡子の出番である。
「こういう食べ方もおすすめよ!」
器に餡子を入れてモチを混ぜ、それを配る。これはおしるこだ。まず村人に、そう思っていたが、一番に反応したのはクジャだった。
「なんじゃコレは!!」
まるでわんこそばのように一瞬で食べてしまい、そのまま器を渡された。要するにおかわりである。王家の人も村人もそんなクジャを見て笑っている。
「娘っこ。他にも食べ方があるのか?」
おしるこに興味を示して近寄ってきたトビ爺さんに問われた。
「この前城で振る舞ったのはディーズとセッサーミンをまぶしたものよ」
詳しく聞きたいという村の女性たちに、それぞれの作り方を説明する。
「一番手っ取り早いのはコレね!」
皿に砂糖を乗せ、その上にセウユをかけて混ぜる。そして「どうぞ」とトビ爺さんに渡した。それにトビ爺さんがモチを付けて食べると悶絶しそうになっている。もちろんクジャも横からそれを食べ、「我が国の宝じゃ!」と叫んでいる。
「もしモチを食べ切れそうにない時は、小さく丸めて乾燥させるといいわよ。日持ちはしないけれど、食べる時は焼くの。どんどん膨らんでくるから面白いわよ。あとは好きな味付けで……あ、表面がパリッとするから、それが苦手なら熱湯に浸すと良いわ」
村人だけでなく、スズメちゃんも熱心に聞いている。
「そうそう、焼く時はこういう網を使うと良いのよ」
たまたま近くに置いてあった網を手にすると、村人たちが「あっ!」と騒ぎ始めた。
「あまりにもモチが美味しくてすっかり忘れていたよ! あちきらも料理を振る舞うからね!」
そう言って女性たちは各々の家に食材や作り置きの料理を取りに戻った。歓迎の宴は始まったばかりで、まだまだ終わりそうにない。
お父様とじいやがオオルリさんの乗っていた車椅子の車輪を拭き、座敷に上げて車椅子の交換をしようとしたところ、スワンさんは『土がついたものは拭いても履物と一緒よ』と、自らお姫様抱っこを頼んだらしい。
部屋に着いたスワンさんもまたオオルリさんのご両親に謝り始め、自分は遠くから嫁いだので、王家の迷惑にならないよう実家に里帰りするということを言わなかったせいで、オオルリさんを苦しめてしまったと謝っている。
さらにそこにクジャとチュウヒさんが涙ぐみながらやって来て、なんとチュウヒさんは「はじめまして」などと挨拶を始めた。長いことサギにクジャのようになるなと外出を認められず、出かける時はサギが同行していたので、今までこの村には来れなかったと謝っている。
クジャもまた幼少期はこの村が逃げ場だったが、成長と共に外国であるハーザルの街に魅了され、ここにあまり来なくなったことを詫びている。
王家総出の謝罪にオオルリさんのご両親はたじたじとなってしまい、あまりにも混乱と恐縮しきっている様子にトビ爺さんが間に入り、歓迎の宴をしようと外へ出ることになった。
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「こっちこっち!」
「オオルリ!」
「久しぶり!」
広場へと移動する際には、オオルリさんの幼馴染たちが集まって来た。久しぶりの友人との会話に、オオルリさんはそれは嬉しそうに話している。
「あちきらはね! オオルリが閉じ込められてるんじゃないかと話してたんだよ!」
「でもね、お転婆ちゃんが来るようになったら、どうやら違うようだと思ってね」
オオルリさんのことを思っての苦言にハヤブサさんは苦笑いとなり、オオルリさんも「違うのよ」とフォローをしている。
そんな会話をしているうちに広場へと到着した。まるで花見の会場のように地面には布が敷かれ、その上には食器などが置かれている。そして簡易のかまどが作られ、調理器具が並んでいる。
「オメェらもういいだろ! オオルリは帰って来た! また来るって言ってる! それよりも大事なことがあるだろ!」
トビ爺さんが一喝すると辺りは静まり返った。それと同時に、オオゾラ村の皆さんの視線がなぜか私へと集中する。
「娘っこ! ……早くあの『モチ』を作ってくれ! 村人全員が楽しみに待ってたんだ!」
本当はオオルリさんの里帰りを楽しみにしていたはずなのに、場を盛り上げようとしているのだと気付いた。トビ爺さんは口は悪いが、相当気遣いが出来る人なのだと確信した。
「もちろん任せてちょうだい! あれを!」
私の言葉で馬車から杵と臼が降ろされる。村の女性たちはかまどに火を点け始め、マイを洗って来ると井戸へと走り出した。
そこから一気にモチつき大会のようになり、スズメちゃんと共に村の女性たちに教えながら餡子を作ったり、マイを蒸したりと大忙しとなった。そんな中、お父様とじいやは村の男性たちに杵と臼の作り方を教えている。
「せーの! よいしょ!」
マイが蒸されたところで、今まで空気のようだった兵たちにモチつきをさせる。先日城に来れなかった村人や、オオルリさんのご両親は驚きつつも大喜びでその様子を見ている。兵たちも笑顔を振りまき、楽しそうにモチをついている。
出来たてのモチを一口大に分け、特に老人と子どもはよく噛んで食べるように何回も叫びながら配っていく。
「美味い!」
「こんなにおいしいの、食べたことない!」
小さな子どもたちはニコニコ顔でモチを楽しんでいる。けれど私は今日サプライズのものを作っていたのだ。何回もスズメちゃんに『カレンさん、失敗しちゃったんですか?』と聞かれ、否定し続けた餡子の出番である。
「こういう食べ方もおすすめよ!」
器に餡子を入れてモチを混ぜ、それを配る。これはおしるこだ。まず村人に、そう思っていたが、一番に反応したのはクジャだった。
「なんじゃコレは!!」
まるでわんこそばのように一瞬で食べてしまい、そのまま器を渡された。要するにおかわりである。王家の人も村人もそんなクジャを見て笑っている。
「娘っこ。他にも食べ方があるのか?」
おしるこに興味を示して近寄ってきたトビ爺さんに問われた。
「この前城で振る舞ったのはディーズとセッサーミンをまぶしたものよ」
詳しく聞きたいという村の女性たちに、それぞれの作り方を説明する。
「一番手っ取り早いのはコレね!」
皿に砂糖を乗せ、その上にセウユをかけて混ぜる。そして「どうぞ」とトビ爺さんに渡した。それにトビ爺さんがモチを付けて食べると悶絶しそうになっている。もちろんクジャも横からそれを食べ、「我が国の宝じゃ!」と叫んでいる。
「もしモチを食べ切れそうにない時は、小さく丸めて乾燥させるといいわよ。日持ちはしないけれど、食べる時は焼くの。どんどん膨らんでくるから面白いわよ。あとは好きな味付けで……あ、表面がパリッとするから、それが苦手なら熱湯に浸すと良いわ」
村人だけでなく、スズメちゃんも熱心に聞いている。
「そうそう、焼く時はこういう網を使うと良いのよ」
たまたま近くに置いてあった網を手にすると、村人たちが「あっ!」と騒ぎ始めた。
「あまりにもモチが美味しくてすっかり忘れていたよ! あちきらも料理を振る舞うからね!」
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