貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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蛇籠再び

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 スイレンとブルーノさんが水路から少し離れた場所へ移動し、イチビたちは広場の方へ猛ダッシュをする。そんな状態なのに、お父様は未だ騒いでいる。

「お父様、落ち着いて。喜ぶのはまだなのよ?」

「いやいや、ヒーズル王国を象徴する偉大な建物だ!」

 お父様は水車の役割をまだ分かっていないらしい。当然、お母様もまたお父様のようにはしゃいではいないが、「素敵ね」と、お父様の横でうっとりと回らない水車を見つめている。
 スイレンたちはお母様に水車のことを説明したのだろうか? いや、説明したとしても……私は考えることを放棄した。

「お待たせいたしました!」

 少し経つとイチビたちが荷車に大量のタッケを載せて戻って来た。オヒシバは他の者よりも倍の量を積んでいて、誇らしげな顔で私だけを見ている。いつもの「ポニーとロバよりも、私の方がすごいですよね!?」アピールだろう。何となく察した私はあえてスルーさせてもらった。

「あ、みんなありがとう!」

 イチビたちの帰還に気付いたスイレンがそう労うと、すぐにタッケを降ろして作業を始めた。見覚えのあるタッケを縦に割る作業を見ると、じいややハマナスたちもそれに加わる。
 ある意味置いてけぼりになっているお父様も、笑顔のまま「なんだなんだ?」と、よく分からないなりにその作業に加わった。

「お父様とじいやはこっちを手伝って」

 スイレンが二人を名指しして、付近の岩の前に誘導し「はい」とツルハシを手渡した。私は皆が見える位置に移動しながら様子を伺っていたが、どうやら人間重機である二人に岩を砕いてもらおうとしているようだ。今日の二人は破砕機となったらしい。

「何がなんだか分からんが、今日はとてつもなく気分が良い。じいに負ける気がしないな」

「ほっほっほ。何をおっしゃいますモクレン様。いつも勝つことも負けることもないでしょうに」

 いつものことながら雲行きが怪しくなってきたが、スイレンはそんな二人を放置してタッケの加工に加わる。やはりスイレンはたまに黒い部分が見え隠れし、策士だと思ってしまう今日この頃だ。

 ブルーノさんが危険がない範囲でお父様たちの砕いた岩を運んで来ると、スイレンは「分担しよう」と掛け声をかけ、タッケを割る者と編む者、それと岩を運ぶ者とに別れた。どうやらタッケの蛇籠を作っているらしい。

「蛇籠を作っていたの? 手伝うわ」

 そう言って輪に加わり、皆と一緒に蛇籠を作り始めた。初めてこの作業を見る者は、祭りを見る観客たちのように歓声や掛け声をかけてくれる。その掛け声のリズムで、私たちはテンポ良く蛇籠を作り続けた。

「お父様、じいや。次は力比べだよ」

 すっかり忘れていたが、最初と同じスピードで岩を砕き続けている二人に私は引いたが、スイレンは爽やかに二人に声をかけた。二人は無言でこちらを振り向き、道具をその場に投げ捨て走って来て蛇籠を担いだ。
 運びやすいようにと、以前作った物よりも小型な蛇籠だが、砕かれた岩がギッシリと入っているので相当な重さのはずだ。

「どこに運べば良いのだ!?」

「どこに置くのですかな!?」

 二人にはもう勝負のことしか頭にないようだ。そんな二人を誘導し、「ここからここまで、びっしりと敷き詰めて」などと言うスイレンはすごい。

「みんなは続きをしよう」

 そしてまた、重機として人間コンベヤーとなった二人を放置して蛇籠作りに勤しんでいる。呆気に取られスイレンを観察してみると、合間合間に一人一人に声をかけ「上手」とか「さすが」などと褒めている。
 私がいない間に、人の心を掌握するカリスマ性が発揮されたようだ。おそらくそれは弟子がいるブルーノさんから教わったのだろうけれど。

「オヒシバ、動物には出来ないことを出来てすごいよ」

「このオヒシバ! 人に産まれたことを感謝します!」

 お父様とじいやをぶつけて効率アップを図るように、オヒシバにはポニーやロバといった動物と比べてやる気を出させているようだ。
 ただそのセリフはそれは褒め言葉なのかかなり疑問だが、オヒシバはそれはそれは嬉しそうにしているので良いとしよう。

 石を詰め込む作業などは簡単で力もあまりいらないからか、気付けばヒーズル王国のご老人たちや子どもたちまで手伝ってくれている。「この国のために」と誇らしげに笑い合う民たちを見て心が熱くなる。

「よし! じゃあ細かい調整とかはみんなでしよう。僕には持てそうにないから、大人のみんなにお願いするよ」

 そう言ったスイレンは、お父様とじいやに「先に岸に上がったほうが勝ちだよ!」と叫び、少々邪魔になる人間重機の撤去にかかった。
 二人は左岸と右岸に向かって獣のように走り、どちらも同じくらいのタイミングで岸に上がったが、お互いにお互いを見ていないのでどちらが早かったかの口論になっている。
 そんな二人を放置して、私たちヒーズル王国民は水路に蛇籠を黙々と並べたのだった。
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