貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
294 / 370

アッサリとコッテリ

しおりを挟む
「おはよう」

「おはようございます」

 日の出と共に目が覚めリビングへ向かうと、私たちのために朝食を作ってくれていたブルーノさんに朝の挨拶をされた。
 声のトーンと見た目の様子から、全く二日酔いにはなっていないようである。それはシャガもハマスゲもそうだった。

「あのテックノン王国の『ワイン』とか言う酒は、果実の香りや渋みや酸味が美味いですが、デーツの酒に比べたら果実水のようなものですね」

 食事をいただきながら、淡々と話すシャガに驚き手が止まってしまったが、ブルーノさんもハマスゲも「本当にそうだ」と同意している。何とも恐ろしい会話だ。

「……前にも言ったけれど、そのうちヒーズル王国製のものを作るわよ。ただ、お酒よりも他のものの優先度が高いから、順番に作っていきましょうね」

 ヒーズル王国の畑にはグレップがたくさん実る。ほとんどがおやつとして食べたり、潰してジュースとして飲んでいるが、ワインを作るにはまだ収穫量が足りないと思っている。
 なので少しずつグレップの木を増やしてもらっているのだ。

「もう私は『ヒーズル王国製』と聞いただけで、確実に旨いと思うようになってしまったよ」

 ブルーノさんの言葉に笑ってしまう。

「本当にヒーズル王国の食べ物を気に入ってくれたのね」

「食べ物だけじゃない。ヒーズル王国の全てが好きなんだ」

 愛おしそうにそう話すブルーノさんに心から感謝の言葉を伝え、名残惜しいが私たちは帰り支度を始めた。
 早いうちに沼地から植物を採取し、ヒーズル王国へ戻らなければならないからだ。

 ブルーノさんもそれを分かっているから、引き止めるようなことは言わず、笑顔で送り出してくれた。
 ただ言葉に出さないだけで、私たちもブルーノさんも寂しい気持ちで胸がいっぱいだ。

「ま……待ってくれ……」

 町の大人たちが二日酔いなのか、いつもよりどころか、全く人がいない町の中を歩いていると、突如苦しそうな声で私たちは呼び止められた。

「……アンソニーさん!?」

 呼び止められた場所はアンソニーさんの店の前だったが、真っ青な顔のアンソニーさんが入り口前に座り込み、こちらへ向かってプルプルと手を伸ばしていた。

「ぬ……沼地に……連れて行ってくれ……」

「行ける状態じゃないでしょう!?」

 明らかに二日酔いである。アンソニーさんの吐く息は酒臭いを通り越し、ワイン臭そのものだ。

「ス……スネックの在庫が……」

 どうやら昨夜の宴で、全てのスネックが無くなったらしい。なので捕まえに行きたいようだが、一人で行けずうずくまっていたようだ。
 アンソニーさんの意思は固かったので、とにかく水を飲ませ、沼地まで寝ているようにと荷車に載せ、町の入り口へと向かった。

「……おはよう……」

 入り口には表情を失くしたペーターさんが座っていた。こちらも二日酔いのようだが、アンソニーさんよりはまだマシのようだ。
 あのデーツの酒を飲んではいなかったのに、この程度で済んでいるのは元々酒に強いのだろう。

「ペーターさん、おはよう。大丈夫? 私たちはこれから沼地に行くのだけれど、アンソニーさんも行くことになって」

 そう言いながら荷台で目を瞑ったまま動かないアンソニーさんを見ると、ペーターさんは無言でスネックを入れる袋を渡してくれた。
 言葉を発するのも辛いのだろうに、律儀に入り口で見張り番をするペーターさんに苦笑いしか出て来ない。

「……またな……」

 あまりにもあっさりとした別れだが、二日酔いの辛さを知っている私たちは空気を読んで、そのままリトールの町を後にした。

────

「じゃあハマスゲは私の補助を、シャガはスネックが出たら対処を、アンソニーさんはポニーとロバを守りつつ、スネックが出たら狩ってね」

 沼地から離れた場所にポニーとロバを待機させ、若干復活したアンソニーさんを荷車の側に配置し、私たちは沼地へと入る。

 水中に根を張るアシっぽいものや、マコモっぽいものを中心に、水中に生える植物から水辺に生える植物まで多種類を泥ごと採取する。
 途中スネックが何匹も現れたが、毒はないとはいえさすがに身構えてしまう。涼し気な顔をして仕留めていくシャガが神に見えるほどだった。

「あとは……うーん……いたいた!」

「姫様……ベンジャミン様がお怒りになるのでは……?」

「どうしても必要なのよ」

 ハマスゲが焦った表情で見つめるのは、イトミミズもどきだ。名前はないようで、しいて言うなら『ミズミズズ』だろうか? 水中の泥の中で密集してゆらゆらと揺れるそのミズズを、広範囲の泥と共に木箱に入れていく。

「さぁこのミズズが新鮮なうちに帰りましょう!」

 私の言葉に皆は苦笑いとなりながら帰り支度をし、首を落としてもまだウネウネと動くスネック入りの袋をアンソニーさんに手渡し、リトールの町の近くでアンソニーさんとお別れした。
 その頃にはアンソニーさんも普通に動けるようになっていた。

────

「カレンさぁん!」
「カレン姫!」

 国境へ到着すると、警備隊の皆さんが走り寄って来て熱烈歓迎を受けてしまった。

「とても美味しいものをありがとうございました! ……隊長は毎日、あんなに美味しいものを食べていたんですね?」

 どうやらヒーズル王国製の果実がお気に召したようだが、特にジャムは奪い合いになるくらい好評だったようだ。
 そしてジェイソンさんは自慢をしたわけではないのだが、こんな食べ物やあんな食べ物があったと説明すると、ネチネチと一晩中ズルいと文句を言われ続けたようで、ゲッソリとしていた。

 食べ物の恨みは恐ろしいと言うけれど、国境警備隊の皆は食いしん坊なのね。
 次に会うときには、もっと美味しい食べ物を持って来ると言うと、私は警備隊員たちから野太い声援を受けたのだった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...