貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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まさかのナンバーワン

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 ゴトゴトと私とスイレンはロバの荷車に揺られ、お母様はポニーの荷車に揺られている。さらに採れたて新鮮な農作物は木箱に収められ、それは人が荷車を引いている。

 森へと入ったところで手持ち無沙汰となり、クローバーの花や葛のようなツル性植物の花を見つけては集めてもらった。
 私と同じように暇そうなスイレンに作り方を教え、二人で小さな花冠を作った。
 それをポニーとロバの耳にかけてもらうと、二頭は嬉しそうに尻尾を揺らした。

 森を抜け、国境までの道を他愛のない話をしながら進んでいると、前方から獣が走って来るのが見え、私たちに緊張が走る。

「レンゲー! カレーン! スイレーン!」

 なんとその獣は人語を話した。頭がパニックになったが、今の声はお父様だ。

「「……お父様?」」

 こちらが警戒して立ち止まっていると、獣様、いや獣のようなお父様がグングンと近付いて来る。あの人型ジェットコースターを思い出し、気持ちが悪くなってくる。あのスピードで走っていたのかと、思い出しただけで目が回る思いだ。

「遅かったな! とはいえ、向こうもまだ来ていないがな!」

 明らかにウキウキとしているお父様の衣装は、走りやすそうな足首までのズボンに、だぼっとした緩めの服を着て、お尻が隠れるくらいの羽織りのようなものを着ている。
 あくまでも動きやすさ重視のようだが、やはり全身が白で統一され、なんだか神々しい。

 あのお父様を神々しいと思うのにはわけがある。お父様の頭飾りは、動物の角と思われるものが数種類ついており、その姿は『王』というよりも、まさに『王者』のようなのだ。
 真っ直ぐの角や、螺旋状の角、そのどれもがお父様のワイルドさを引き立たせ、よく見れば首元には牙と思われるネックレスもしていた。

「……やっぱり……素敵……」

 甘く囁くようなお母様の声で、私とスイレンは我にかえることが出来た。

「お父様……」

「それ何……?」

 お母様の着替えの時とはまた違う思いの私とスイレンが、呆気にとられながら角を指さし質問をすると、お父様は満面の笑顔となる。

「良いだろう? これはこの土地に来た時に狩った獣のものだ」

 本来なら森の民の男の正装は、自分が狩った獣の毛皮を頭からかぶるらしい。
 それを持たず、着の身着のままでこの土地に来たお父様たちは、見たことのない動物を見つけては食べるために狩ったそうだ。その毛皮をしまいこんでいたらしい。

「乾燥しているから大丈夫だと思っていたが、乾燥しすぎて触れたらボロボロになってな。この角と歯だけは無事だったのだ」

 ふんぞり返って自慢気に笑うと、ハマナスたち一同は「素晴らしい」と拍手を送っている。

「もしかして、昨日帰ってから作ったの?」

「私たちの着ている服は、レンゲやおババたちが手伝って作ってくれたが、全ての頭の飾りは私が作ったものだ」

 この可愛らしい小さな羽飾りは、てっきりお母様が作ったものだと思っていた。

「お父様って……」

「もしかしてすごく器用なの……?」

 私とスイレンは、怪力を通り越した超人ぶりだったり、すこぶる残念なイメージのお父様が定着している。

「カレン、スイレン。モクレンは基本的に何でも他の者よりも優れているわ。ただ誰よりも方角が分からなくなるだけで」

「長くとも数日もあれば戻って来れるのだ。問題など無い」

 そうして腕組みをして笑うお父様を、お母様は頬を染めて見つめている。

「……お父様って……こう……」

「うん……言いたいことは分かるよカレン……」

 そういえばお父様はクジャたちのために薬草を摘み手当てをし、リーンウン国城では獣のように暴れまわった。そして兵たちに訓練までしていたのだ。
 あの勇ましい姿は、娘から見ても格好良かったし、確かに器用だったことを思い出す。基本的に残念な部分が目立つが、そういえばお父様はやる時はやる男で、その時はとてつもなく格好良いのだった。

「さぁ、早く国境へ行き、ニコライや向こうの王を待とうではないか!」

 楽しそうなお父様の一言で、私たち一行は歩き出した。早く行きたくてウズウズしているだろうに、ポニーとロバに「無理をするなよ」と声をかけて頭を撫で、二頭の歩みに合わせて歩いている。
 しかも荷台に載っているお母様の横をキープしているのだ。真っ白な衣装の二人は、まるで花嫁と花婿のようだとぼんやりと思った。

────

「まぁ! 小屋が!」

 国境へ到着し、岩の崩落によって一部が潰れた小屋を見てお母様が嘆く。スイレンとお母様は荷車に載ったままだが、私は裾を汚さないように服をたくし上げて小屋に近付いている。

「どのみち国境が完成したら、いずれは壊す予定だったのよ」

「タデたちは被害のない部屋に泊まったそうだ」

 お母様に対し私とお父様が話していると、後方にいたスイレンが叫んだ。

「わぁ! じいや! 格好良い!」

 スイレンの褒め言葉を聞いた、嬉しそうなじいやの笑い声が聞こえそちらを見たが、私の位置からはまだじいやの姿は見えない。

「カレン、じいが一番すごいぞ!」

 自分のことのように話すお父様に期待が高まり、私はじいやが見える位置まで服を気遣いながら歩いた。

「……ブッ!!」

 カレンとしても美樹としても、今までにないくらいに吹き出してしまった。確かにお父様の言うとおり、じいやは一番すごかった。

「じいやすごい! 近くで見せて!」

 スイレンがねだると、じいやは笑顔でスイレンに近付いた。

「……かかか……ブフッ! ……か! ……ぱぱ!」

 私は震えて声が出せなくなり、意味不明な言葉を発する。

「姫様? どうされました?」

 私を気遣うじいやがこちらを向く。私とスイレンの着ているのと同じく、じいやも緑がかった服を着ている。そのじいやの頭には、大小様々な大きさの動物の牙を輪にした頭飾りが乗っており、空に向かって花咲くように牙が伸びている。
 そして背中には、オアシスから拾って来たと思われる亀ことカンメの巨大な甲羅を背負っている。

「グフゥッ!! ……いえ、じいやがあまりにも強そうで……ッ!!」

 ただでさえ、ツルツルのじいやの頭に飾りがあるだけでも面白いのに、トータルで見るとカッパにしか見えないのだ。もしくは亀○人だ。カッパや亀仙○を知らないこの世界の住人に、私の笑いのツボは分からないだろう。
 必死に下を向き震えていると、じいやの格好良さに震えていると勘違いされたが、もうそれで良い。

 私の腹筋は今日一日耐えられるだろうか? 不安と笑いが増すばかりである。
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