貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
320 / 370

予想外すぎるプレゼント

しおりを挟む
「……くっ! ……ぷっ! ……失礼……」

 どうにか笑いをこらえ、涙まで拭いてそう言うルーカス王が目の前にいるのに、私は遠い目をして見つめている。

「……ゴホン! 私からの贈り物です。我が国の優秀な住民をこちらに住まわせてほしいのです」

「ん!? それはだな……ありがたいが……その……」

 ルーカス王の突然の申し出に、お父様がかなり動揺をしている。もちろん私も目を見開く。
 いきなり住民をプレゼントされてしまっても、すぐに住む場所の確保も難しければこの国の秘密の件もある。

 私たちがしどろもどろになっている間に「遠慮なさらずに」と、ルーカス王がカーテンの閉まっているそれは大きな客車の扉を開けた。
 だが開けた扉の中は静まり返り、何かの冗談だったのかと思い始めると、一人の男が降りてきた。

「……先……生。うぷっ……気持ち悪い……」

「ジェイソン!?」

 真っ先に反応したじいやの叫び声を聞いて、ジェイソンさんは青い顔で微笑む。まるでホラー映画のようだ。
 それ以前に、まさかのジェイソンさんの出現に私たちは呆気にとられている。

「「……うぅ……隊長……」」

「もう……隊長では……うぷっ……ない……」

「えぇ!?」

 思わず叫んでしまった。ジェイソンさんと共に国境警備隊をしていたはずの二人が、フラフラと降りてきたからだ。

「え!? どういうこと!?」

「……お久しぶりです……ダミアンです……。妻と子どもと共に……今日からお世話に……なります」

「フレディです……。両親と共に……農業がやりたくて……来ました」

 名前を知らなかったジェイソンさんの部下たちだが、ジェイソンさんが国境へ戻るとすぐに話し合い、つい最近三人でシャイアーク国兵を辞めたそうだ。
 そしてジェイソンさん以外は家族を呼び寄せテックノン王国にしばし滞在し、国境が開通したら私たちを驚かせるために移住したいとニコライさんを通じてルーカス王に頼んでいたらしい。

「ずいぶん揺られたからね。大丈夫かい?」

 ルーカス王は苦笑いでそう言うが、視線はジェイソンさんたちではなく客車の中である。
 気を利かせたサイモン大臣が客車に乗り込み、手を引いて人々を降ろすが見たことがない。ダミアンさんとフレディさんの家族だろう。

「あぁ~……年寄りには刺激が強すぎたねぇ……」

「んん!?」

 客車の中から聞き覚えのある声が聞こえた。あの優しくゆっくりおっとりとした話し方は……。

「エルザさん!?」

 次にサイモン大臣に手を引かれて降りてきたのはエルザさんだ。想像だにしていなかった人物に、私たちは鳩が豆鉄砲をくらったかのような表情になった。

「……ここならリーモンをたくさん食べてくれるでしょう? シャイアークでは人気がないんだよねぇ。それに昔馴染みと一緒に、人生最後の冒険も悪くないわよねぇ」

 乗り物酔いはしていないのか、いつものエルザ節が健在である。ただ最後の言葉の意味が分からず小首を傾げていると、元気に自分から降りてきた人物がいた。

「やぁみんな久しぶりだね。アレはなんだい?」

 そう言って興味津々にセノーテの方へと歩き出した。頭がついていかず呆然としているとスイレンが叫ぶ。

「ブルーノさん!!」

 大好きなブルーノさんが現れたことにより、いつものスイレンに戻ったようだ。抱きつき再会を喜び、手を繋いでセノーテへと向かい、セノーテの説明を始めたようだ。

 ただひたすらに呆然としていた私たちだが、お父様と私が口を開こうとすると、客車からさらに人が降りてくるではないか。

「……」

「えぇぇぇぇ!?」

 無言で、青ざめた無表情で、二日酔いをさらに酷い顔にしたようなその人はペーターさんだった。

「ペーターさん!?」

 私の声に反応し軽く手を上げるが、どうやら激しく乗り物酔いをしているようである。

 ブルーノさんはスイレンと共にセノーテに夢中だったので、一番元気そうなエルザさんに話を聞いてみた。
 どうやらブルーノさんもペーターさんも、この世の楽園と思っているこの土地を終の住処と決めたようなのだ。何がなんでも移住しようと、ジェイソンさんたちと結託したらしい。

「新しい町長はねぇ、カーラの旦那なんだよぉ」

「はいぃぃぃ!?」

 エルザさんはコロコロと笑うが、次の町長はカーラさんを推す人が多かったらしい。なんとなく分からないでもない。
 けれど「あたしは店が忙しいんだよ!」と、代わりに旦那さんを無理やり町長にしたらしい。きっとカーラさんは裏ボス的な感じで上手く町をまとめるだろう。

「あとねぇ、ブルーノの弟子が完全に伸びているんだよぉ」

 その言葉と同時くらいにサイモン大臣が応援を呼び、兵士が頭と足を持って客車から人を運び出した。
 私たちはその見覚えのある顔に「あ!」と叫ぶが、ピクリとも反応しない。……まるで屍のようだ。

「フランクとミースは、どうしてもブルーノと離ればなれになるのが嫌だったらしいよぉ。二人とも繊細だったんだねぇ」

 そう言ってエルザさんはまた笑う。そもそも「お弟子さん!」といつも呼んでいたので、初めて名前を知ったのだ。

 スイレン以外のヒーズル王国民がざわめく中、テックノン王国の兵たちが拍手を始めると、ルーカス王も眩い笑顔で拍手を始めた。
 ……どうしましょう……断ることなんて出来ない雰囲気だわ……。辺りを見回すと、スイレン以外は白目をむいていた。便乗して私も白目をむくことにするわ……。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...