貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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恋に恋焦がれ恋になく

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 初めてと言っても過言ではないほどのときめきに、私自身が慣れずにドギマギとしていると、私の気持ちなど気付かないルーカス王が口を開く。

「噂には聞いていましたが、これほどまでに美味しいとは思いませんでした。私たちの国では農業をやる者が極端に減ってしまい、食べ物は輸入に頼っているのです」

 少し憂いた表情で話すルーカス王に、また胸がときめく。

「言った通りでしょう? これは城の食事に使用し、もっとたくさん輸入が出来たら城下町、王都、そしてテックノン王国全土へと普及させましょう。それまではシャイアーク国のリトールの町とも取り引きが決まっていますから、一般の民にはそちらを売りましょう」

 すっかりといつもの調子に戻ったニコライさんは、身振り手振りでルーカス王に話しかけている。そのニコライさんが急にこちらを向き、珍しく真面目な顔をして話し始めた。

「これらを『ヒーズル王国産』として売り出すわけではないので安心してください。あくまでもテスラ総合商社の中の『ヒーズル』という銘柄で売りに出しますから、その辺は私たちにお任せください」

 ニコライさんが言うには、『ヒーズル』というブランドを作り流通させるが、私たちの国や存在はトップシークレットとして、他国どころか王都のごく限られた、この場にいる人間にしか知らせないとのことだった。

「国境についてですが、ニコライが爆破した初代王が印した周辺は、元々一般人は立入禁止区域なのですよ」

 その言葉を聞いたニコライさんがまた小さく震え始めた。

「そこには常に門番を置き、そこを国境とします。毎日決まった時間に落ち合い、品物の受け渡しをしましょう。不法侵入した者は厳正な処分を下します。門番よりこちら側はヒーズル王国の土地としましょう」

「……この人、本当に怖いんですよ? 本当に死刑とかしますからね……」

「ニコライ、何か言ったかい? 兄弟のように育ったんだ。死刑にならないように気を付けてくれ」

 ニコライさんに笑顔でさらりと怖いことを言うが、その威風堂々とした様子にすらドキドキが止まらない。
 甲羅干しをしながら一通り話を聞いていたじいやが立ち上がり、ニコライさんやサイモン大臣と金銭についてや時間について話し合いを始めた。

「まさかこの水場を貰えるとは思っていなかった。感謝する」

 難しい話をじいやに任せたお父様が、ルーカス王に握手を求めた。

「いえ、実はこちらからも贈り物があるのですが、到着が遅れていまして……」

 初めて焦りの表情を見せたルーカス王だが、その顔も私の心を乱す……と思っていると、スイレンにいきなり頬をつねられた。

「いたたた! スイレン、何するの!?」

「別に」

 珍しくぶっきらぼうに答えたスイレンは、一言だけ発するとそっぽを向いた。
 そんなスイレンが小憎たらしく言い合いをしていると、また私たち以外の全員が一点を見つめ始めた。

「ようやく贈り物が……来た……よう……です?」

 あのルーカス王が歯切れの悪い言い方をしながら、笑いをこらえている。その先を見てみると、曲がりくねった道の先から馬車が見えた。だが様子がおかしい。
 バがこれでもかと言うほどに項垂れ、一歩進んでは立ち止まって動かない。馬車から降りた御者が引っ張っても、隣を歩くバが顔を近付けても動く気配がない。

「あと少しだ! 愛しい人はここにいるぞ!」

 急にルーカス王が叫んだ。愛しい人とは? いったい誰……? 胸の奥がざわめいて、立っているのも辛くなる。
 一人で落ち込んだり悲しんだりの負のループにはまっていると、「ブモッ!」という声と共にバが走り出した。御者も隣を走るバも大慌てで一緒に走っている。

「あ! やっと来ましたね! カレン嬢、覚えていますか? リトールの町でカレン嬢を乗せたバです!」

「……え? 覚えているけど……えぇ!?」

 興奮しているバと、その隣を走るバの足並みが揃わず、大型の客車を豪快に揺らしながら見事な蛇行運転をしている。それもそのはず、それを御するはずの御者は置いて行かれ「待てー!」と馬車の後方からコントのように追いかけている。

 全員が唖然と見守る中、フリーダムな馬車はこちらを目指しているようで、なんとなく私たちは一歩、また一歩と後退をする。
 ジリジリと後退をしても、あの大きさのバの速さには敵わない。

「「ひぃぃぃぃ!!」」

 私とスイレンは情けない悲鳴をあげ、スイレンに至っては尻もちまでついてしまった。

「ヒヒン! ブモッ! バヒヒン!」

 私の目の前で止まったバは、何か言いたげにバ語を叫んでいるが、気が動転している私は放心状態だ。
 するとニコライさんが小走りで駆けつけ、とんでもないことを言い始めた。

「この私のバがですね、カレン嬢に恋をしてしまったようなんですよ!」

「……は?」

「日に日に言うことを聞かなくなり、餌も食べず、無気力になってしまったんです。もしやと思い『カレン嬢』と口に出すと、辺りを見回す始末。このバにとっては私のところにいるよりも、カレン嬢の近くにいるほうが幸せだと思いまして。私からの贈り物です!」

「…………は!?」

 我にかえり聞き返すも、バは私に頬擦りをしたりムチュームチューとキスをしたり、されるがままになってしまっている。

「……ぷっ!」

 誰かの吹き出す声が聞こえ周りを確認すると、全員が口を押さえて笑いをこらえている。しかも悲しいことにルーカス王までもだ。
 ……いろいろな想いから、心の中で泣きつつ半笑いの完璧なまでの白目をむいてしまったわ……。
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