貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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移民たち

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 ひとまずルーカス王たち御一行と、着飾って動きにくい私たちは帰ろうということになった。

 しばらくはニコライさんもテックノン王国に滞在するとのことで、明日以降こちら側の輸出の荷物が整ったら国境で声をかけてほしいとのことだった。その時に用事やこちら側が欲しいものがあれば、門番に伝えてほしいことも言われた。
 こんなにもスムーズに話がまとまったのは、私たちが騒いでいるのに気付いたじいやとサイモン大臣が駆けつけてくれたからだ。サイモン大臣は出来る男だと確信した。

────

「さて……」

 ルーカス王たちを見送った私たちだが、問題は山ほどある。特にこの移民たちだ。

「フランク、ミース、そろそろ起きなさい。一から町を作るなんて、こんな経験は普通なら出来ないぞ!」

「いや、普通でもなかなか大変だと思うぞ」

 やる気に満ち溢れたブルーノさんは横たわるお弟子さんたちに喝を入れ、まだ気が動転しているのかお父様はまたマトモなツッコミを入れている。
 ちなみにペーターさんは、お弟子さんたちの近くで座りこんでいる。

「女性やお子さんやご高齢の方は、一度私たちの住居の方へ……」

 さすがに半壊した監視小屋以外、この何もない場所に置き去りには出来ないので声をかけたが、それを遮るようにエルザさんが元気ハツラツに声を発する。

「ブルーノの言う通りだよぉ。自分たちの手で町を作るなんて楽しそうだねぇ。食べ物も持って来ているし、大丈夫だよぉ。カレンちゃん、ありがとうねぇ」

「でもこの国の夜は冷えるわ。ここはあの壊れた建物以外に屋根もない場所だし、当然心配だわ」

 そう声をかければ、「カレンちゃんたちがリトールの町に初めて来た時も野宿だったんでしょう?」と言われてしまう。その言葉に頷くと「なら大丈夫よぉ」とエルザさんは笑う。
 おっとりとした話し方だが、とても芯の強い女性だったようだ。

「でも……他の皆さんは……」

 先に目が合ったのはダミアンさんの家族だった。

「ダミアンの妻のエスターです」

「息子のハンニバルです。ジェイソン隊長や父に憧れ兵を目指していましたが、数々の真実を知り、シャイアークに嫌気が差しここに参りました」

 童顔の奥さんは照れたように微笑みながら、私たちに何度も頭を下げている。そして私よりも少し歳上であろうハンニバル君は、とてもしっかりとした少年だった。兵を目指していただけあって、生真面目さが雰囲気から感じ取れる。

「フレディの父のポールだ」

「母のアニーです。うふふ、女の子が産まれたらミザリィって名前に決まってたのに、男の子だった上に兵になると言って、早くに家を飛び出してしまったのよ。ようやく一緒に暮らせるわ」

 ポールさんはまだ乗り物酔いが治まっていないようで、ぽっちゃり体型のアニーさんはお喋り好きの天然さんのようだ。「うふふ」と笑いながら私たちに手を振る姿は、ご高齢なのを感じさせない可愛らしさが滲み出ている。
 そして二家族共、ブルーノさんとエルザさんの言葉を聞いてこのままここに留まると言って聞かない。

「……分かったわ。まずは着替えましょう。お父様とじいやも着替え終わったら、すぐに戻りましょう」

 するとスイレンがピクリと反応する。

「僕も……」

「いや、スイレン君は民たちのために作業をするべきだ。私たちは大丈夫だよ。スイレン君が一番良く知ってくれているだろう?」

 ブルーノさんにそう言われてしまえば、スイレンは反論も出来ずに仕方なさそうに頷いた。

「ならば私たち三人は先に戻ろう。タデ、ヒイラギよ。レンゲとスイレンを頼む」

「お父様? 先にって……?」

 またお父様の人間ジェットコースターを味わうのかと身構えると、お父様はニッカリと笑う。

「新たな仲間が増えただろう? カレンよ、名前は付けないのか?」

 お父様の指さす先には、私に熱い視線を送るバがいた。このバもまた問題の一つである。

「えぇと……」

 私に懐いてこの国に来てしまったのなら、生涯大事にしなければならない。そして短絡的な私は、大きな馬と言ったらあの二頭しか思い浮かばない……。美樹のお父さん世代が好きな、あの有名漫画に登場する馬だ……。

「……黒王」

「「国王!?」」

 私の言葉にお父様とじいやが目をひん剥いて驚く。

「あぁ違うのよ! 『黒い王』という意味なの」

「なるほど……コクオウか……良い名だ! ではこちらは?」

 嬉しそうに尻尾を揺らす黒王の隣には、一番の仲良しだというバが寄り添っている。離れ離れにするのは可哀想だと、このバもニコライさんがプレゼントしてくれたのだ。

「……松風」

 名前を呼ばれた松風は、キリリとした表情で尻尾を振っている。どうやら名前を気に入ってくれたようだ。

「マツカゼか。こちらも良い名だ! では準備をするか」

 そう言ったお父様は、じいやと共にテキパキとバから客車を外し「無理をせず、適度にこの中で休め」と移民たちに声をかけた。

「さぁカレン! 行くぞ!」

 笑顔のお父様を見て、人間ジェットコースターをまた体験するのかと覚悟して背中に乗ろうとすると、もっと恐ろしいことを言い始めた。

「ははは、違うぞカレン。私ではなくバの背中に乗るのだ」

「……は? 手綱も何もないけれど……」

 そうなのだ。お父様とじいやは客車を外す時に、バの全ての装着品も外したのだ。なのにお父様にはなんの躊躇も見られない。

「コクオウよ、私はカレンの父だ。そしてこの国の王だ。『コクオウ』同士、仲良くしようではないか。その背を私とカレンに貸してくれ」

「お主のような綺麗なバは見たことがない。腹の底から惚れたぞ」

 お父様とじいやは黒王と松風にそう語りかけている。……私は二人のセリフに激しいデジャブを感じつつ、覚悟を決めてお父様と共に黒王の背中に跨ったのだった。
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