貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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ニーグリップ

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「………………」

 現在、私は広場に横たわっている。しかも片手でお尻を押さえ、もう片方の手で股間を押さえている。静かに悶絶しているのだ。

────

 お父様と共に跨った黒王だが、しばらく餌を食べていなかったせいか痩せて骨が浮いていたのだ。その骨が当たって痛かったのだが、さすがの私もお父様に「股が痛い」とは恥ずかしくて言えなかった。まだ恥じらいは捨てていないのだ。

 お父様もじいやも鞍も鐙もないのに乗りこなし、痛そうな素振りはなかった。むしろ二人ともバに話しかけ、バも嫌がる素振りもなく楽しそうに歩いていた。
 ゆっくりと歩いていたバだが、その巨体故にポニーやロバの歩くスピードよりも、遥かに速く前へと進む。
 私以外が楽しそうに進む中、私の股の痛みはピークへ達しようとしていた。違うことを考えようと頭を働かせると、美樹として生きていた頃を思い出した。

 美樹のご近所さんに、おじいさんと呼ぶには少し早い男性がいた。それほどご高齢者が多い地域だったのだが。
 その男性は『女に乗るよりバイクに乗るほうがいい』と、当時の美樹には意味が分からない言葉をよく言っていた。残念ながら今なら分かる。
 独身生活を満喫していて家族のいないその人は、美樹と弟を可愛がってくれていた。

 その男性の自宅にはガレージがあり、中にはすごい台数のバイクが保管されていた。暇さえあればバイクを磨きツーリングに出かける人だったが、自分の年齢と同じ年だというドリームという名前の、赤とシルバーのカラーリングが目を引くバイクを磨く時は特に饒舌になっていた。

『いいか、将来バイクに乗るなら、ニーグリップはちゃんとしろ』

 いつも言われていたその言葉が、股の痛みと共に脳内を駆け巡った。『股が痛いのはニーグリップをしていないせい』と、なぜかその時思い込んだのだ。
 もちろんバイクのステップも、乗馬用の鐙もない。足の力だけでニーグリップをしようとするとだんだんとずり上がり、気付けばたてがみを目一杯掴み、黒王のあばらの上辺りの広背筋付近でお尻を上げた何とも不格好なジョッキースタイルになった。
 競走馬ではないバだが、何かを感じたらしい。そのタイミングでお父様が黒王に話しかけた。

『本気で走ったことはあるのか?』

 と。黒王は悲しそうに『ブルルル……』と鼻を鳴らすと、『早く皆に紹介したい。走るぞ!』とお父様が叫ぶと、黒王は走り始めた。黒王とお父様はウマが合いすぎたのだ。
 隣を歩いていた松風も、それを見て触発されたのか走り始めた。
 あとはいつもの、どちらが早く広場に着くかという醜い争いが始まったのだ。

 もはやニーグリップどころではなく、腕の力でたてがみを掴んでいたが、思っていた以上に上下運動が激しく、上げていたお尻はずり落ち背骨に激しく当たった。

『……ハァーッ!!』

 あまりの痛みに苦悶の声を上げるが、お父様も黒王も何か勘違いをしてやる気を出してしまい、黒王たちは競走馬のような走りをみせた。
 道中何回も股を打ち付け、その度に叫ぶが、その都度スピードは上がっていった……。

 迷子の達人のお父様だが、バの嗅覚は優れている。黒王は森へ入ると人の匂いや気配を感じたのか、何も指示を出さなくても広場へ向かって走ってくれたのだ。
 そして森を抜けると、広場に集まっていた民たちが巨大なバを見て驚きつつも、なぜか『姫様! 姫様!』と叫んだのだ。

 痛みで意識が朦朧としていたが、耳はしっかりとしていた。

 私たちが開通式へと向かったあと、もし何かがあったらと心配してくれた民たちは集まり、おババさんに久しぶりに占ってもらったそうだ。
 すると『食料や各種道具』、そして『姫の負傷』という占い結果だったらしい。心配になった民たちは、食料を作り薬草を準備して待っていたそうだ。

『開通式は無事に終わった。だが……』

 お父様は黒王から私を降ろしながら、事のあらましを説明し始めた。民たちはお父様と黒王、そして松風に興味津々だった為、顔面蒼白な私は手招きでおババさんを呼んだ。

『姫様、お怪我は……?』

『……股……』

 その一言でおババさんは察してくれたようで、腹を抱えて笑い始めた。全員に注目されたが、気を遣ったおババさんはメヒシバさんを呼び、お父様とじいやに着替えてからいつもの私の服をハコベさんたちの元へ取りに行くように進言してくれた。
 お父様の話を聞きたい民たちは水や草を黒王と松風に与え、そのまま金魚の糞のようにお父様の後について行き、その場に残ったのは私とおババさんとメヒシバさんだけだった。

『……では』

 人の居なくなった広場でおババさんに下着まで脱がされ、すり潰した薬草を股いっぱいに塗られ、そして用意されていた布でおむつをされたのだ……。
 一応それまで履いていたズボンを履かされたが、普段痛くならない場所が打ち身や擦り傷だらけとなっており、そこに良く効くという薬草を塗られたのだ……。

 あまりの痛みに声すら上げられず、私はそっと静かにその場に横たわり今に至っているのだ……。そんな私を見て、腹を抱えて笑うおババさんとメヒシバさんにすら何も言えない状態だ……。
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