貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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見覚えのあるアレ

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 お父様が服を持って戻って来たが、ハコベさんとナズナさんも心配して一緒に来てくれた。
 見たままの私の状態やお父様の話から、民たちやハコベさんたちは私の状況を察してくれたらしいが、お父様とじいやは「どうした!?」と焦っている。

「……いえ……少し疲れが……」

 プライドが邪魔し、素直に股が痛いと言えない私が気取ったことを言うと、お父様とじいや以外の面々は「ブフッ!」と吹き出したり笑いをこらえている。失礼ではないだろうか?

「……思ったのだけれど……食料や道具は運べないわよね……私、ポニーとロバが戻るまで待つわ……」

「それもそうだな。途中ですれ違うだろうから、その説明はしておこう」

 お父様とじいやは先に戻ることになり、それぞれが黒王と松風に跨ると、黒王は名残惜しそうに顔を近付けてきた。

「大丈夫よ……また後で会いましょう……」

 鼻先を撫でると黒王は踵を返し、お父様を乗せて全力で走り去った。松風もだが、本能的に走る楽しさを知ってしまったのだろう。

「姫、大丈夫?」

 お父様たちが見えなくなると、ハコベさんとナズナさんはクスクスと笑いながら私に問いかけてきた。

「ご覧の通り……大丈夫ではないわ……」

「あの二人は身体能力が優れすぎているのよ。それに二人とも、あのバと相性が良かったのね」

 ハコベさんは笑いながらそう言う。にしてもだ。鞍も鐙も手綱もなしに、あそこまでバを操るなんて普通は出来ない。やはりお父様とじいやは普通ではないのだわ……。

────

 ポニーとロバが戻るまで時間があるので、女性陣が板を持ってきて衝立のようにし、周りから隠すようにしておババさんに何回かおしめ……いえ、薬草を交換してもらった。
 何回目かの交換時には、『ギャーッ!』と叫べるくらいには回復しているようだ。

「最初から血はほとんど出ておりませんし、すぐによくなるでしょう」

 おババさんと一緒に手当てをしてくれていたメヒシバさんがそう言う。骨の痛みもマシになり、起き上がってみるとなんとか動けそうだ。

 皆の手を借りながら着替え、そ~っと地面に腰を下ろし、作ってくれた食事を美味しくいただく。なんだかんだで至れり尽くせりで、特別待遇だ。
 食事をしながら、お父様が民たちに説明した話の補足をすることとなった。お父様は『リトールの町の人たちが来た』くらいの説明で終わり、『建設をしなければ』としか言っていなかったようだ。バの説明だけは詳しく話していたようだ。

「……というわけで、ペーターさんたち一同がこの国の一員になったのよ」

 この言葉に辺りは騒然となる。遊びに来たではなく、まさか移住したとは誰も思っていなかったのだ。

「それでブルーノさんがね、あの場所に移民の町を作ると意気込んでいて。お父様とじいやはその手伝いに行ったのよ」

 またまた辺りは騒がしくなった。当初の予定通り、お父様とじいやは国境建設に行ったものと思っていたらしい。
 あの建築技術を持ったブルーノさんがお弟子さんを従え、町を作ると宣言したのだ。広場はお祭り騒ぎとなった。

「エルザさんは食べ物を持ってきたと言っていたけれど、そんなに多くは持って来れないはずよ。おババさんの占いのおかげで、みんなに食べ物を渡せるわ」

 料理好きな民たちは、もはやヒーズル王国名物となりつつあるなんちゃってナンや、ムギン粉に卵と水を入れて溶いたクレープもどきをたくさん作っていた。
 皆が好きで、作っては保存していたジャムや新鮮な果実、サラダや簡単ドレッシングなどを編みかごや木箱に入れてくれる。建設に必要そうな道具も揃えてくれた。新しい仲間のために、民たちは楽しそうに、そして嬉しそうに作業をしていた。

「イーヒ! イーヒッヒッヒ!」

 特徴的なロバの鳴き声が遠くから聞こえて来た。お母様やスイレンたちの到着だ。

「みんな! その……私の負傷は内緒にしてくれるとありがたいのだけれど……」

 皆が忘れた頃に言った為、周りにいた民たちは思い出し笑いをし始めた。分かった分かったと口にするが、本当だろうか?

「みんな! ただいま!」

「戻ったわ」

 広場へ入って来た帰宅組は、真っ先に私の元へと来た。

「カレン、疲れちゃったって聞いたけど大丈夫?」

 スイレンが心配そうに駆け寄って来た。タデもヒイラギも小走りでこちらに来る。

「えぇ。大丈夫よ」

「そう? なんか……カレン、草の匂いがする」

 スイレンの言葉にビクリと肩が揺れたが、涼しい笑顔で「気のせいよ」と返答した。

「ポニー、ロバ。せっかく戻って来たのに、またあちらへ行かないといけないの。荷物を積むまで少し休んで」

 話を変えようとポニーとロバに話しかけたが、既にモシャモシャと周辺の草を食べており、休憩時間を満喫していたようだ。
 手の空いている者が水を運んで来て、二頭に飲ませている間に荷車に荷物を載せてもらった。

「ではそろそろ行こうかしら」

「待って」

 荷車に乗り込もうとすると、ハコベさんに呼び止められた。建物の陰になる場所へ誘導されたが、何かを察したらしい衝立係りが板を持ち、ぞろぞろとハコベさんの後を追う。

「姫、私たちはあまりこの薬草を知らないけど、ベンジャミン様が良く効くと教えてくれたの」

「……」

 そこにはとてつもなく見覚えのある万能草が置かれていた。事前に準備をしてくれていたようだ。用意周到なのはありがたいが、リーンウン国にいた時に慣れたはずの匂いは、やはり苦手な匂いに戻っていた……。
 ハコベさんは生の葉を手揉みし、それを私のおむつの中に目一杯詰め込んだ。辺りには濃厚な万能草の匂いが立ち込める。私は心を無にすることに徹した。悟りを開けそうだ。

「なんだ? どうしたんだ?」

 タデとヒイラギの心配そうな声が聞こえたが、少しすると「ブハッ!」と吹き出す声が聞こえたことから、誰かが言ってしまったらしい。

「内緒って言ったでしょう!?」

 どうやら私には、悟りはまだまだ開けそうにない。
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