貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
336 / 370

冬の話2

しおりを挟む
 さて暗渠排水設備だが、タッケと籾殻さえ入れてしまえばあとは土をかぶせて構わない。住んでいる土地や農家によっては布や砂利をかぶせるらしいが、我が国ではシンプルなこの方式にした。
 今は考えられないが、将来大雨が降ったり水捌けが悪くなれば、このタッケの隙間を通って余分な水が排水されるのだ。畑の方まで延長した水路や浄化設備に流れるよう、排水路も工夫した。
 しかも土の中に埋めたタッケは腐りにくく、この設備は数十年と持つはずだ。

 細い素焼きの土管だが、これも暗渠排水に使用する。タッケが足りなくなるのは目に見えていたので、早めに発注をしておいて助かった。
 無理を言って凹凸をつけてもらい、簡単に繋げることが出来る土管を一直線に並べ、その上に砂利や砕石をかけて土に埋めた。
 この素焼きの土管の暗渠排水設備は、地球でも古代から使用されているのだ。繋ぎ目などから水が入り、上手く排水されるのだ。
 タッケも土管も少しの勾配を付け、中に水が溜まらないようにした。

 そして手間がかかる水やりと草刈りにも、知恵を絞り工夫を凝らした。
 それは素焼きの土管と共に発注した、蓋付きのただの素焼きの壺だ。ヒーズル王国では冷蔵庫代わりに使っている、あのただの壺である。
 もちろん我が国でも作ることは可能だが、大量生産は難しい。なのでテックノン王国に丸投げしたのだ。

 その壺を等間隔に埋めて水を入れれば、じわじわと水が染み出て土を潤し、水やり時間の大幅節約になる。蓋があるので、中に砂やゴミなども入りにくい。

 草刈りに関しては畝間を広くし、細長いチキン、もといコッコトラクターを作った。見回りの際に位置を変えれば、あとは勝手にコッコたちが草を食べてくれる。作物の根元に生えた雑草は手作業で抜くことになるが、これだけでもかなりの時間短縮になる。

 この畝間を広くしたことに、もう一つの意味がある。収穫の時期になったらポニーとロバに荷車を付け、畝間を通って収穫した野菜を積めるようにした。
 ポニーとロバの負担が相当なものとなるので、新たに『チバ』と『ニバ』を購入した。ちなみに名前は『ニポー』と『バロー』である。皆が『バーロー』と呼ぶのを止めさせるのに苦労したのは、また別の話だ。
 ポニーとロバともすぐに打ち解け、私たちの言うことも聞く良い子たちだが、やはりオヒシバとは仲良く出来ないらしい。

 畝間を広くしたおかげで広くなった畑のあぜ道には、数ヶ所のトイレも作った。もちろん我が国自慢の、あのバイオトイレである。
 どうやら今までは畑の片隅に穴を掘って用を足していたらしく、このトイレの設置は大変喜ばれた。

 さらに他国からの需要を満たす為に、ほとんど手間のかからないドライフルーツも作ってみた。
 栽培している果実、そして一部の木に実ったデーツも使った。
 オーレンジンやリーモン、アポーの実は薄く切る手間があるが、数日干すだけで作れるこれらは結果として大成功し、さらなる収入源となった。
 特に、生のまま食べるには向かない甘くないデーツですら、それはとてつもなく甘いドライフルーツに変わったのだ。
 だが人が甘味を求める気持ちは分かるが、テンサインは収穫に時間がかかりすぎるため、この畑の改修をもって作ることをやめた。

 この世界ではドライフルーツはそれなりに珍しいものらしく、ヒーズル王国も、輸出先のテックノン王国とリーンウン国もお祭り騒ぎとなったのは言うまでもない。
 ちなみにリトールの町へお裾分けをしに行った際、カーラさんに作り方を聞かれ「切って干すだけ」と話すと、パク……いや、模倣し売り始めた。
 商売根性のたくましいカーラさんは、立派な裏ボスとしてリトールの町をまとめているようだ。

 そういえば、冬に入ったばかりの頃、タデとヒイラギに頼んでいた建物が完成した。
 グレップを植えた時から密かに企んでいた、ワインの製造場所なのだ。

 美樹の家は貧乏だったので、お父さんは自分からお酒を買うことはなかった。料理で余ったり、ご近所からいただいたお酒を大事に飲む人だった。
 が、収穫の秋ともなれば、ご近所からいただいたぶどうを使って自家製ワインを作っていた。その場合、アルコールの度数を一%未満にしなければ酒税法違反となってしまう……。……あまり深く思い出さないようにするが、私はワインの作り方を知っているのだ……。

 ワイン作りは意外と簡単で、潰して発酵させるだけだ。さすがにこの香ばしい香りを放つ足で、外国の女性たちのように踏んで潰そうとは思わなかったので、潰す道具は自作した。
 赤ワインも白ワインも作り方に大差はない。皮や種を入れるか入れないかくらいだ。
 大人たちは新たな酒のために、非常に協力的に作業に参加してくれた。おババさんは美味い酒を飲む未来が見えたらしく、毎日のようにまだかまだかと製造場所に足を運んでいたくらいだ。
 ワインは寝かせなければいけないので、それを話すとガックリと肩を落とす者、楽しみに待つ者と、その反応は十人十色だった。

 問題は寝かせる樽だったが、普段からワインを作っているテックノン王国に頼み、簡単に手に入れることが出来た。
 その樽のおかげで捻れば液体が出る金属製のコックに出会い、それを輸入し各住居の水道に使うことにした。給水装置との接合部には、パッキン代わりに動物の革を使った。実にワイルドである。

 ただ、テックノン王国が「その時が来たらどうぞ」とワインを入れる瓶もくれたのだが、その瓶は蓋がガラス製なのだ。
 瓶と蓋に溝が彫られ、紐などで縛って封をするのだ。……ワインはこれではない。そんな思いから、急遽コルクも増やすことにした。
 コルクもドングーリを落とす木なので、拾い集めたドングーリを畑の近くに植えた。地球であればコルクの収穫まで五十年ほどかかるが、この世界ではもっと早くに収穫できることだろう。

 そうだった。皆の負担が増えてしまうが、新たな油の生産も始めたのだ。以前から畑の拡大をしていたアーマがたくさんの種を付けてくれたのだ。
 種を採ったアーマは糸や布にすることも出来る。それらも立派な収入源になるのだ。

 アーマの油は日本で言うところの亜麻仁油だ。この油は熱に弱いため、ナーの油のように炒ることはしない。
 ゴミなどを取り除いた種をそのまま、ナーの油のように玉締め圧搾機で、ゆっくりじっくりと圧力をかけて油を抽出する。
 この作業は気温が下がってきた夕方以降にやることに決めた。一晩かけて自然と油を搾ることで、こちらも時間短縮することにしたのだ。

 ただ、完成したこの油は酸化するのも早い。ではなぜ一度にたくさん作ったかというと、もちろんサラダにかけて食べたりもするが、ほとんどが住居の壁や床、家具の塗装に使ったのだ。
 亜麻仁油は防カビや撥水、防腐の効果があり、木材の保護や日焼け防止として使えるのだ。今まで住居などは無垢の木材だったが、この油のおかげで艶出し効果も得られた。

 問題だったのは、塗装に使った場合、乾くのに時間がかかることだった。なのでこの作業は各住居の住人に地道にやってもらうことにした。
 磨き上げに使った布は自然発火の恐れがあるので、料理の時にかまどで一緒に燃やしてもらうことを徹底した。

 こうして長い冬の間に、ヒーズル王国はさらなる進化を遂げたのだ。
 寝る子は育つと言うが、私が眠って見た夢で国が発展したのだ。
 もう可哀想な森の民ではない。公には出来ないが、世界に誇れる国に一歩前進したのだ。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...