貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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ペーターさんGJ

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「すごい……」

 私たちは語彙力を失い、その言葉しか出て来ない。

 宮殿へと足を踏み入れたのだが、まずはその大きさに驚いた。今のところ、視界に入った建物は全て石造りなのだが、この宮殿ももちろん石造りでそれはまさに圧巻の一言である。
 塀の中に入ってからここに到着するまでの道は、風情ある大きな石畳の道であったが、宮殿の一階はもっと小さな石が敷き詰められ、さらには石の色や置き方によって模様まで描かれている。
 あの表情の変わらないタデが大興奮し、四つん這いで「すごい……すごい……」と、石畳を撫で回す姿にお父様は大爆笑だ。もちろん他の皆は引いている。

 さらにはその宮殿内の一階の中心部に池があるのだ。かなりの水量がある湧き水らしく、湧き出た水は北に面する正門へと真っ直ぐに流れている。つまり宮殿内に湧水があり川が流れているのだ。その両側が通路となっている。
 サイモン大臣が言うには、あの正門を越えるとこの湧き水は三方向に枝分かれし、城下町の中を川が流れているそうだ。

「上の階へ参りましょう」

 サイモン大臣に促され、正門近くの階段へと向かった。この水場は宮殿と城下町の要らしく、普段は一般人は近付くことも許されないらしい。
 それにしてもマークさんが睨みをきかせているせいか、ニコライさんがおとなしいおかげで物事がスムーズに進む。

 この国の特産物なのか、どこかから買い付けたものなのか階段には絨毯が敷かれ、もはや全員が遠足気分でその階段を登る。
 左右のどちらからでも登れる階段の先は大ホールとなっており、装飾の施された柱もまた圧巻である。
 大ホールをぐるりと見渡せば、廊下は左右に広がり、北側に大きな窓が並んでいるおかげで、ものすごく明るいわけではないが光に困ることはない。
 廊下の端から端までいくつもの扉が見え、そして大ホールの中央奥には巨大な扉が見えた。

「あちらが謁見の間でございます。ですが王は『謁見はヒーズル王国の皆さんに失礼』と、あちらの部屋でお待ちです」

 もはや誰もその言葉に反応することもなく、口を開けたまま「はぁ……」「ほぉ……」と、あちらこちらを見回しながらサイモン大臣の後に続く。

 招かれた私たちにはどの扉が何の部屋なのかは分からないが、いくつか扉を通り過ぎると一つの扉の前でサイモン大臣の足が止まった。

「どうぞ」

 サイモン大臣が扉を開けると、大きくはない、とはいえ、私たちの国のどの部屋よりも広い部屋が広がっていた。部屋の真ん中には大きなテーブルが置かれている。
 豪華な装飾品が壁や床を飾り、奥の壁一面の窓の前にどんな装飾品よりも麗しいルーカス王が佇んでいた。

「やあ皆さん! よくぞお越しくださいました!」

 破壊力抜群の笑顔にときめいていると、両サイドから圧を感じ、横目で見ると無表情で私の顔を覗き込むスイレンとオヒシバがいた。
 気にしたら負けである。

「ルーカス王! 久しいな! ずっとニコライから誘われていたが、ようやく来ることが出来た!」

 お父様が歩み出すのと同時にルーカス王もこちらに向かい、二人は笑顔でガッチリと握手を交わした。

「本当にニコライが申し訳ありません。ですがお会い出来て良かった。お疲れでしょう? まずは食事を楽しみませんか?」

 ニコライさんはやはり『なんで!?』という表情をしていたが、食事という言葉に反応し、どうしたら良いのか分からない私たちに座るよう促してくれた。

 遠足気分から少し緊張気味になった私たちは口数が少なくなったが、すぐに部屋の扉が開かれ、たくさんの料理が目の前に置かれていく。
 どの料理も美しい盛り付けで見た目はフレンチに似ているが、コース料理のように一品一品出る感じではなく、小さめのお皿が一人一人の前にたくさんある。
 私たちに気を使ってくれたのか、ナイフとフォークだけではなく、お箸も用意されていた。

「作法などは気にせず、好きなようにお食べください。足りなければ控えている者に気軽に声をおかけください」

 私たちの背後や入り口にはメイドたちが並び、レストランカートのような物の上に食材やお皿が載っている。
 後ろに人が立っているのは大変食べづらいが、大人たちはテックノン王国産のワインで乾杯をし、私とスイレンにはテックノン王国産のグレップのジュースを出してくれた。
 ヒーズル王国のグレップよりも甘さが足りず酸味が強いが、これはこれで美味しい。

 あまりに綺麗に盛られた料理を崩すのがもったいないが、食べないのも失礼である。何かのソースがかかった焼いた小さな肉を口に入れると、あっさりとした柔らかい肉と香草の香りが口の中でハーモニーを奏でている。
 これはコッコに違いない。我が国のコッコは、常に動き回りもはや地鶏のようであり、オスのコッコも食べるのでとにかく肉が固いのだ。

「何の肉だ?」

 向かいに座るお父様が、隣に座るニコライさんに話しかけた。ちなみになぜか一緒に食事を始めた、端に座るニコライさんの横にはマークさんが立ち圧をかけている。

「これはピョンですよ」

 この言葉に大人たちは歓声を上げた。そしてピョンの正体を理解した。

「ねぇカレン、ピョンって知ってる?」

「……えぇ。耳の長いとても可愛らしい動物よ」

 その言葉にスイレンは一瞬固まった。が、お父様たちは初めて食べるという小さなメー、要するに子羊の肉を食べ、おかわりを頼んで騒いでいるおかげで有耶無耶になった。
 この世界の羊ことメーもクセが強いが、野生の獣を食べてきた森の民には、これくらいのクセがある方が好みなのだろう。スイレンは一口で食べるのをやめたが。

 他にサラダなどがあったが、これはヒーズル王国産の野菜だろう。ただドレッシングではなく油がかかっており、その油を尋ねると『オリッブ』と言っていたことから、これはオリーブ油なのだろう。

 まだ手を付けていないものを食べようと思ったが、等間隔にカゴに入れられたスライスされた何かがある。何か分からないが、ひとまず食べてみることにした。

「あ! カレン嬢、大丈夫ですか?」

 ニコライさんが気にかけてくれたが、これはリトールの町とは形状が違うブレッドのようだ。ただ、リトールの町のものよりもとにかく固くて酸っぱいのだ。
 その私の姿を見たペーターさんも手に取って食べた。無言で咀嚼していたと思ったら、何やら自分の手荷物をあさっている。そして椅子から立ち上がり、ルーカス王の元へと進んだ。

「カレンちゃんが開発して私が作ったものだ」

 その手には、遠足のおやつであろう天然酵母パンがあった。よほどあのパンが好きなのか、材料が揃えば自ら作るようになったのだ。
 ルーカス王は気さくに「いただきます」と受け取り、そしてそれを口に入れて飲み込むと……。

「何これ!? これ何!? こんなに美味しいもの食べたことないです!」

 と、初めて年相応の反応を見せたのだ。自分が王であることを忘れ、完全に素になっているようである。

 その姿にたまらずキュンキュンしていると、またしてもスイレンとオヒシバから殺気が放たれていたのだった。
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