貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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お料理談義

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 完全に不貞腐れている私に皆が謝るが、過ぎたるは猶及ばざるが如しである。

「カレン、あれを少し分けてもらって、ヒーズル王国で育てるのはどうかしら?」

「…………」

 お母様の提案に無言の抵抗をしたものの、小さく頷いてしまった。サツマイモは素直に欲しい。

「……荒れた土地でも育つから、この国でも育てるべきよ」

 ポツリとつぶやいたが、従者たちは聞き逃さずそれすらも黒板に記入している。その従者の一人に恐る恐るといった感じで「どうやって増やすのですか?」と問われたが、誰も答えない。そうだった、私しか知らないものだった。

「……ツルを切って畑に挿せば、根っこが生えてくるわ。その根があのサツマイモよ。ツルは伸びてきたら地面になるべく触れないようにすること。理由は……」

 サツマイモのツルは地面に触れると、そこから根っこが生えてしまう。そうするとイモに栄養が行かず、葉だけが茂るツルボケという状態になるのだ。
 そうならないためにツル返しという、畑に伸びたツルをひっくり返して根っこが生えないようにする作業をするのだが、あの植物園では知らずに支柱にツルを這わせてたおかげで、見事なサツマイモを収穫出来たのだ。
 ……私は微々たる量しか食べていないが。

 さてこれからどうするかという話になっているが、子どもの頃にヒーズル王国へ来たオヒシバと、シャイアーク国出身のペーターさんチームは、分からない植物が多かったらしい。
 なのでもう一度植物園へ行こうという話になっている。その時だ。

「カレン姫様、大変申し訳無いのですが、先程のこれは何なのでしょう……?」

 そこには使い切れなかったバターを手にする料理人がいた。

「……モーの乳の脂肪分よ。お料理にもお菓子作りにも欠かせないものよ」

 そう説明すると、料理人たちは「詳しく教えてください!」と私の周りに殺到した。
 どうやら私は植物園へ行けそうにないようだ。私だけがこの場に残る空気が漂っていたが、スイレンも残ると言う。当たり前すぎて気にしていなかったが、小さな虫たちをあまり見たくないとのことだった。

「では二手に別れましょう」

 こうして私とスイレンがこの場に残った。

────

 厨房から人が、というより、ルーカス王たちがいなくなると、料理人たちは「座りましょう」とお茶を淹れてくれた。料理人たちも王が来るとは思わず緊張していたらしい。

「あ……リーンウン国の……」

 一口飲むと、リーンウン国産だと分かる香り高いお茶だった。そこから少しずつ会話をしているうちに意気投合し、気付けばいつの間にか料理人たちの愚痴を聞いていた。
 主にニコライさんの愚痴で、私もスイレンも笑ってしまった。

「ニコライ様は良い人なんです。それは間違いない。ですが、こっそりとここに侵入して食べ物を食べてしまうんです!」

 あまりにも想像できるニコライさんの姿に、私もスイレンも吹き出した。

「他にも逸話はいくつもありますよ!」

「最近の面白い話はあるの?」

 スイレンの問いかけに、料理人たちは「面白くはないかもしれません」と前置きし、厨房が困っていることを言い出した。

「食材を輸入してくれるのはありがたいのですが、調理法を詳しく聞かずに輸入するんです」

 思わず笑ってしまったが、どんな食材なのかと問うと、『マイ』だと言う。しかも気を利かせたリーンウン国はたくさんのマイを輸出してくれるが、白米と玄米の違いが分からないこの国にマイを輸出しているので、特に調理に困っていると言う。そしてこの国の人たちは、あまりマイが好みではないと言う。
 炊き方を間違ってるだけかと思い、そこから短時間で炊けるリーンウン国にも教えた玄米の『びっくり炊き』のやり方を実践しながら事細かに説明した。

「確かに芯もなく、私たちが作ったものよりも柔らかく美味しい」

 美味しいとは言ってくれるが、それは自分たちが作ったものと比べての話なのだろう。表情がそれを物語っている。

「これだけを食べるのは私たちもあまりしないわ。味の濃いものと一緒に食べると美味しいわよ? ただのブレッドよりも、何かを塗ったブレッドのほうが美味しいでしょう?」

 そこから話題はブレッドに変わった。ルーカス王はこの国のブレッドをもっと普及させたいようだが、あの硬さと酸味はこの国の住人ですら食べる人を選ぶと言う。スイレンは素直に「あれはちょっと苦手かな……」と口にした。

「ムギンにも種類があるでしょう? この国のムギンはちょっと特殊ね」

 食べて分かったが、この国のムギンは地球で言うライ麦だ。

「でもひと工夫すれば、子どもも喜ぶブレッドになるわよ」

 私の言葉を聞いた料理人たちはざわめいた。だがさすがに今から作業するのもどうかということになり、明日以降の私の予定が空いている時にお邪魔することになった。

「この余ったバターは冷やして保存しても良いし、これを使って肉を焼いても美味しくなるわよ。ところで……」

 私は目ざとく見つけていた厨房内にあった鍋を指さす。中身はブイヨンスープだ。
 いくつか質問すると、このブイヨンスープを元にコンソメスープを作ると言う。ならば話は早い。

「手間はかかるけど、これは長期保存できるって知ってたかしら?」

 私の発言に再度料理人たちはざわめく。

「最低限この野菜は用意して欲しいわ」

 料理人たちは黒板に材料と分量を記入していく。ただのスープであれば、簡単に言えば野菜を煮込んで汁の部分だけ飲む。
 だが野菜をペースト状にしてひたすら弱火で煮詰め、それを乾燥させればコンソメ顆粒になるのだ。

「作るのは大変だけれど、作ってしまえば料理の幅が広がるわよ」

 こうして私はリーンウン国だけでなく、テックノン王国でも厨房の人たちと仲良くなったのだった。
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