貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

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いつもの如く

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 エドワードさんと厨房へ行くと、ひと仕事終えて休んでいた数人の料理人たちが一斉にこちらを見た。
 このお屋敷は若い人が少ないのか、料理人たちもそれなりにお年を召していたが、その表情は自分たちの腕前の自信とやりきった感でとても満たされたものだった。

「とても美味しいものをありがとうございました。お礼と言ってはなんですが、マイの調理法をお伝えしますね」

 私のその言葉に、料理人たちは年齢を感じさせない喜びの雄叫びを上げ、厨房の奥からマイを担いで持って来た。
 皆、学ぼうという意欲が旺盛で、ここではあまり品質の良くないであろう紙を用意して、しっかりと書き記そうとしている。

「や……やる気がすごいですね」

「私たちは死ぬまで料理人です。まだ知らない食材を調理し食し、それを他の方にも食べてもらい、身も心も満たされてもらいたい。それが私たち料理人の喜びです」

 宮殿の料理人たちも学びの姿勢は良かったが、こちらの面々はもっと意識が高かった。
 作業の途中途中で話してみると、元々は先々代の王、すなわちルーカス王とニコライさんのお祖父様が王だった頃に、宮殿の厨房で腕をふるっていた面々とのことだった。

「だからさっきティージュ料理を作ったのね?」

「それもあるが! 単純に! 産地が! 宮殿よりもここに近いのだ!」

 お料理が趣味というエドワードさんは、当たり前のように料理人たちの中に混ざっているが、耳が遠い以外は手際も良く、料理人を名乗っても問題ないレベルだった。
 教えたマイの研ぎ方にいたっては、日本の主婦顔負けである。

 宮殿でもお料理教室を開き、私が料理人たち向けにティージュを使った料理を作りながら教え、知らずに先々代の王に焼き菓子まで作った話をすると、料理人たちは「そんなことが!?」と声を揃え、大いに盛り上がった。
 むしろそのティージュ料理も教えて欲しいと懇願されていると、厨房にニコライさんとゴードンさんが入って来たではないか。

「……カレン嬢……すみません……」

「エドワード。……エドワード!」

 ゴードンさんが耳の遠いエドワードさんを呼ぶのに必死な中、しゅんとしたニコライさんが謝罪の内容を語ってくれた。

「ニコライさん、今度は何をしたのかしら?」

「私じゃないですよ!」

 必死に自分は悪くないと言うニコライさんの説明を聞けば、ゴードンさんもエドワードさんも元々は先々代の王付きの兵士だったそうだ。それもかなり上の役職だったらしい。

 そんなゴードンさんは、ニコライさんへのこめかみグリグリに飽きてきたのか、お父様たちと会話をし始めたそうだ。
 元兵士と類まれなる運動神経の持ち主は段々と意気投合し、なぜか手合わせをする流れになったらしい。

「どうしてそうなるのよ!?」

「私には分かりません! ですが、ゴードンよりもエドワードが強いので、こうやって呼びに来たんです!」

 なぜこうも筋肉談議になるのか分からないが、筋肉には一定数の男を呼び寄せる、フェロモン的な何かがあるのだろう。私に理解は出来ないが、このイベントになぜか料理人たちも盛り上がりをみせている。
 それよりも、この耳の遠いもはや料理人のようなエドワードさんが強いというのが意外だった。

 おそらく、この屋敷全体を巻き込んだ盛り上がり方は、この屋敷には主人であるニコライさんもお客様も誰も来ないので、仕えている皆は張り合いのない日々を過ごすという、地味で分かりにくいストレスを感じていたからだろう。
 そのことをゴードンさんのようにチクチクと責めると、「皆にそんなに気苦労をかけていたのですね……」と、ニコライさんは反省しきりだった。
 しかし、だからこそ皆で手合わせを見て楽しもうと燃えてしまったようで、私たちは全員厨房から外に出された。

────

「カレン、こっち」

 なぜか外にはベンチまで用意されており、スイレンが私の場所を取ってくれていた。

「どうしていつもこうなるのかしら?」

「僕はお父様の動きを見るのが好きだけど」

 席に座るなり愚痴をこぼせば、スイレンはそんなことを言う。今までスイレンはこんなことをあまり言わなかったが、森の民としての暮らしに興味を持ち始めたのだろうか? はたまた年頃の男子らしく筋肉に目覚めてしまったのだろうか?
 とはいえ、私は前世のおかげでたくましく暮らしているが、箱入り息子であるスイレンには、どちらも習得するにはなかなか難易度が高いものだと思うのだが。

「あ、始まった」

 スイレンの言葉で前を向くと、楽しそうに腕組みをして立っているお父様の向かいには、なぜか鎧に着替えているエドワードさんが向かい合っている。どれだけ気合いが入っているのだろうか? そしていつの間に着たのだろうか?

 応援にも熱が入っているが、観客の人数の多さからエドワードコールがすごいことになっている。この屋敷の主人であるニコライさんは、なぜかお父様を応援しているが。

「……負けた!」

 突如、向かい合い見つめ合っていただけなのに、エドワードさんがあっさりと敗北宣言をし観客席はざわめく。

「私が全盛期でも! 勝てない!」

 辺りに「そんな!」という野太い絶叫にも似た悲鳴が響く中、なぜかゴードンさんはエドワードさんの背後で準備運動をしている。

「二人でもか?」

 準備運動が終わり、上着を脱いだゴードンさんはエドワードさんに問いかけた。

「全盛期の二人がかりでも! 勝てない!」

 エドワードさんはキッパリと断言した。スイレンはそれを聞き「僕のお父様はやっぱりすごい!」と、目を輝かせている。
 違うのよスイレン。お父様を普通の人類と一緒にしたらダメなのよ。

 やる気満々だったゴードンさんは残念そうに溜め息を吐いたが、ふとタデと目が合ったようだ。
 そして時を同じくして、エドワードさんはオヒシバと目が合ったようだ。

 ニヤリと不敵に笑うゴードンさんとエドワードさんに対して、タデもオヒシバもキョトンとしている。

「なるほど。確かにちょうど良いかもしれないな。タデ! オヒシバ! 頑張れよ!」

 エドワードさんたちの視線に気付いたお父様の言葉に、当然ながら二人は目をひん剥いて驚いている。

「まぁ! 頑張ってねタデ! ハコベへの土産話が出来たわ」

 お母様の何気ない応援で、タデのやる気スイッチが入ったようだ。
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