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妖怪大集合
①
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朝、とは言い切れない少しゆっくりめな時間に目を覚まし、レモン石鹸以外のちゃんとした物で身支度を整えます。
うっかりレモン石鹸で体や頭を洗おうものなら、萌さんが激おこしますからね。
食べ物を買い忘れてた事に気付いて、保存食のカップラーメンで空腹をしのぎます。
程よい時間になった頃に黒羽さんとの待ち合わせ場所に向かい、商店街へと送ってもらいました。
飛ぶのに良い風が吹いていたおかげか、思ったよりも早く到着しました。現在時刻は十一時四十二分。そろそろみんな来るかな? と思い、鍵を使って猫カフェ予定の店舗に入りました。
ガラーンとした殺風景なこの空間がどんなお店になるのかイマイチ想像しきれないですが、なんだかワクワクそわそわします。
きっと今までにない楽しい毎日が過ごせるな、こんなこと思ったこともないな、なんて物思いにふけていると、背中を向けていた入口が開く音がしました。
あ、ぬんさんかな? 他の妖怪さんかな? と思い振り向くとそこには……。
「桃田さんってぇのはアンタかい?」
……どちら様でしょう……? パンチパーマにグラデーションがかったサングラス。筋骨隆々とした四十代くらいのいかにもアレな感じの男性に、ドスの効いた低音で名前を呼ばれました。
……店をやる前から借金の取り立てでしょうか……? はたまた地上げ屋などと呼ばれるお仕事の方でしょうか……?
「どうなんだ? 桃田さんなのか? 違うのか?」
イライラとした様子の地上げ屋さん(仮)です。
「あああああああの……」
拉致られるのかとか、内臓を抜かれちゃうのかなとか、ユキさんの悪影響を受けて脳内で物騒な事を考える私です。
その時、ガチャリとドアを開けてぬんさんとユキさんが入って来ました。この緊迫とした状況に現れるなんてまさに救世主!!
その音に反応して、身体ごと振り向く地上げ屋さん(仮)。その動きの速さが素人ではないと思わせます。
「ぬんさんじゃねぇか! 何百年ぶりだ!?」
……え?
「おぉ! 小鬼か! 随分と久しぶりじゃのう! ……ん? 建築関係をやっている鬼が見つかったと先程連絡を受けたが、まさかお主か?」
「そうよ! で、この姉ちゃんが桃田さんなのか聞いてるのに何も話さないんだが。侵入者か? 証拠隠滅に食うか?」
地上げ屋さん(仮)は関係者で鬼でしたー! 食うかとか言ってるしー! さらにパニックになっていると、私を見て爆笑するぬんさんとユキさんです。酷い……。
「ゆ……百合子……今日も面白いな!」
ユキさんはお腹を抱えて笑っています。
「小鬼よ、こちらの女性がその桃田さんじゃ。お主の事を地上げ屋だと思っていたようで……ププッ……拉致されるとか内臓を抜かれるとか……物凄く恐怖を感じていたようじゃ」
ぬんさんは笑い涙を拭きながら余計な説明をします。
「おいおい姉ちゃん、そりゃないぜ。どこをどう見たら地上げ屋に見えんだい!?」
その風貌というか、パンチパーマとサングラスですとは言えず、そっと視線を反らす私です。
「このつぶらな瞳がそんな悪いヤツに見えんのかい? どう見たってカタギだろ?」
そう言ってクイッとガラの悪いサングラスを上にズラすと、キラッキラに輝くつぶらな瞳がありました。目だけは夢と希望に溢れる少年のようです。
「俺っちこんなに背が低いし、見た目がベビーフェイスだろ? 舐められたら困るからよ、サングラスが必須なんだよ」
そう笑顔で説明してますが、どう見ても身長は人間界で言うところの百八十センチを超えていますし、ベビーフェイスでは全くありませんし、目だけはキラッキラですがそれ以外の風貌からして舐められる事はないかと思うのですが……。
「小鬼よ、それくらいにしてやってくれ。ワシらの腹筋がヤバい」
ぬんさんとユキさんはそれぞれ自分の太ももを叩いて笑っています。私の心を読みすぎですよ。
「……も、桃田です……よろしくお願いします……」
ビビり散らかしながらも、精一杯の自己紹介を頑張りました。
「おぅ! よろしくな! 俺っちはこういうもんだ」
そう言って流れるような所作で差し出された名刺を見ると、『鬼塚建築会社 社長 鬼塚 正太郎』と書かれていました。
こんなめちゃくちゃコワモテの社長さんとか、社員の皆さんは大丈夫なんでしょうか? 毎日胃痛とかしないんですかね?
「俺っちと姉ちゃんはもう仲間だ! 今この瞬間から、俺っちの事はしょうちゃんって呼んでくれな!」
何を言ってるんですか!? それはムーリー!
うっかりレモン石鹸で体や頭を洗おうものなら、萌さんが激おこしますからね。
食べ物を買い忘れてた事に気付いて、保存食のカップラーメンで空腹をしのぎます。
程よい時間になった頃に黒羽さんとの待ち合わせ場所に向かい、商店街へと送ってもらいました。
飛ぶのに良い風が吹いていたおかげか、思ったよりも早く到着しました。現在時刻は十一時四十二分。そろそろみんな来るかな? と思い、鍵を使って猫カフェ予定の店舗に入りました。
ガラーンとした殺風景なこの空間がどんなお店になるのかイマイチ想像しきれないですが、なんだかワクワクそわそわします。
きっと今までにない楽しい毎日が過ごせるな、こんなこと思ったこともないな、なんて物思いにふけていると、背中を向けていた入口が開く音がしました。
あ、ぬんさんかな? 他の妖怪さんかな? と思い振り向くとそこには……。
「桃田さんってぇのはアンタかい?」
……どちら様でしょう……? パンチパーマにグラデーションがかったサングラス。筋骨隆々とした四十代くらいのいかにもアレな感じの男性に、ドスの効いた低音で名前を呼ばれました。
……店をやる前から借金の取り立てでしょうか……? はたまた地上げ屋などと呼ばれるお仕事の方でしょうか……?
「どうなんだ? 桃田さんなのか? 違うのか?」
イライラとした様子の地上げ屋さん(仮)です。
「あああああああの……」
拉致られるのかとか、内臓を抜かれちゃうのかなとか、ユキさんの悪影響を受けて脳内で物騒な事を考える私です。
その時、ガチャリとドアを開けてぬんさんとユキさんが入って来ました。この緊迫とした状況に現れるなんてまさに救世主!!
その音に反応して、身体ごと振り向く地上げ屋さん(仮)。その動きの速さが素人ではないと思わせます。
「ぬんさんじゃねぇか! 何百年ぶりだ!?」
……え?
「おぉ! 小鬼か! 随分と久しぶりじゃのう! ……ん? 建築関係をやっている鬼が見つかったと先程連絡を受けたが、まさかお主か?」
「そうよ! で、この姉ちゃんが桃田さんなのか聞いてるのに何も話さないんだが。侵入者か? 証拠隠滅に食うか?」
地上げ屋さん(仮)は関係者で鬼でしたー! 食うかとか言ってるしー! さらにパニックになっていると、私を見て爆笑するぬんさんとユキさんです。酷い……。
「ゆ……百合子……今日も面白いな!」
ユキさんはお腹を抱えて笑っています。
「小鬼よ、こちらの女性がその桃田さんじゃ。お主の事を地上げ屋だと思っていたようで……ププッ……拉致されるとか内臓を抜かれるとか……物凄く恐怖を感じていたようじゃ」
ぬんさんは笑い涙を拭きながら余計な説明をします。
「おいおい姉ちゃん、そりゃないぜ。どこをどう見たら地上げ屋に見えんだい!?」
その風貌というか、パンチパーマとサングラスですとは言えず、そっと視線を反らす私です。
「このつぶらな瞳がそんな悪いヤツに見えんのかい? どう見たってカタギだろ?」
そう言ってクイッとガラの悪いサングラスを上にズラすと、キラッキラに輝くつぶらな瞳がありました。目だけは夢と希望に溢れる少年のようです。
「俺っちこんなに背が低いし、見た目がベビーフェイスだろ? 舐められたら困るからよ、サングラスが必須なんだよ」
そう笑顔で説明してますが、どう見ても身長は人間界で言うところの百八十センチを超えていますし、ベビーフェイスでは全くありませんし、目だけはキラッキラですがそれ以外の風貌からして舐められる事はないかと思うのですが……。
「小鬼よ、それくらいにしてやってくれ。ワシらの腹筋がヤバい」
ぬんさんとユキさんはそれぞれ自分の太ももを叩いて笑っています。私の心を読みすぎですよ。
「……も、桃田です……よろしくお願いします……」
ビビり散らかしながらも、精一杯の自己紹介を頑張りました。
「おぅ! よろしくな! 俺っちはこういうもんだ」
そう言って流れるような所作で差し出された名刺を見ると、『鬼塚建築会社 社長 鬼塚 正太郎』と書かれていました。
こんなめちゃくちゃコワモテの社長さんとか、社員の皆さんは大丈夫なんでしょうか? 毎日胃痛とかしないんですかね?
「俺っちと姉ちゃんはもう仲間だ! 今この瞬間から、俺っちの事はしょうちゃんって呼んでくれな!」
何を言ってるんですか!? それはムーリー!
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