幽幻會社 夢現堂

Levi

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妖怪大集合

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 頑張って皆さんに思っていることを伝えようと思います。

「あ、皆さん聞いてください。この辺りはお年寄りが多いです。日中はベビーカーを押した若いママさんも少数いますけど。
 あと近くにはバス停も駐車場もないそうです。この道の先には学校があったので、夕方以降は学生さんも来るかもしれません」

 大きな声でたくさんの人の前で発言するのは緊張しましたが、みんな教えてくれてありがとうと言ってくれました。また一つ成長したかな?
 今度こそ話し合いのスタートです。

「お年寄りがメインとなりそうにゃんですね……? あまりハイカラなメニューはやめましょうか……」

「そうですね。老若男女問わないメニューで、尚且つお年寄りも気兼ねなく食べられるメニューにしましょうか」

 お料理担当のちらんさんとマオさんがそう話します。

「猫耳喫茶と謳うので、お年寄りは普通の喫茶店を想像して来る可能性が高いですね」

 ちりさんもつぶやきます。そしてみんなで『喫茶店あるあるメニュー』を書き出しました。楽しくワイワイ相談し合っていると、入口の開く音がしました。

「遅くなりましてすみません。いや、烏天狗さんが最高速度で送って下さったので、遅くはないのですが……」

 死角から走って来たのか、ゼーハー言っている鈴木さんの登場です。珍しく上下ジャージです。

「鈴木さん、こんにちは。ジャージなんて珍しいですね? 本当に急いで来てくれたんですね」

 苦笑いで聞いてみれば。

「今日は妻と庭いじりをしていまして……。事情を知っている妻は快く送り出してくれました」

「あー……奥方殿には申し訳なかったのぅ」

 さすがにバツの悪そうなぬんさんです。

「仕事ですから、お気になさらずに」

 笑顔でそう話す鈴木さんもすごいなぁ。こうやって見ると、みんな見習いたいと思わせる部分があって、人として羨ましいです。

「手の空いている方から雇用契約書を書いて貰いますので、こちらにお願いします」

 着いて早々に仕事を始める鈴木さんの言葉に、「はーい」と返事をしてホール担当予定のジャコちゃん、コハダさん、タラオくん、鉄火さんが先発隊として並びます。

 チラリと鬼塚さんを見てみれば、一人静かに図面を書いているようです。職人オーラが半端ないです。

 先発隊の猫又たちが戻ると、今度は美容チームが並びます。うん、順調に進んでる。そして最後に残りの猫又たちが雇用契約を結びます。

「あの、あなたは?」

 鈴木さんが声をかけた相手は鬼塚さんです。

「お? 初めましてだな。俺っちは小鬼の鬼塚だ。リフォームも内装も全部うちが面倒見るぜ」

 そのセリフを聞いて興奮状態の鈴木さんと名刺交換をしているようです。少しするとこちらに来た鈴木さん。

「鬼さんですよ! 鬼さん! 伝説の鬼!」

 鈴木さん? お屋敷で赤さんと青さんに会ったことありませんでしたっけ? 彼らも一応鬼だということを忘れないであげてください。

「鈴木さんも書いてみませんか? 喫茶店と言えばっていうメニューを書いてるんですが」

「面白そうですね。ぜひ書かせてください!」

 鈴木さんを落ち着けようと声をかけると筆記用具を受け取り、いろいろと書いているようです。

 ある程度時間が経ったので、みんなで見せ合いっこしました。やっぱりほとんどの人が書いたのは、定番のナポリタン。だよねーとみんな納得です。
 次いでカレーライスとハヤシライス。あるあるーと盛り上がります。
 続きましてハンバーグ。ピラフ。ホットケーキ。パフェ。料理名があがる度に盛り上がります。ただ一人、ユキさんを除いて。だってユキさんの書いたメニューは。

『かき氷、アイス、ソフトクリーム』

 笑われたユキさんは、何故だ!? と首をひねっています。間違ってはないです。間違っては。

 そんな盛り上がりをみせていると、またしても入口から誰かが入って来ました。

「お邪魔するぞー。盛り上がってーおるようじゃがー、もしや皆さんはー……」

「おぉ! 小滝さん! こんにちは。紹介しよう、こちら事務の鈴木さんじゃ。百合子と鈴木さん以外は妖怪じゃ」

 するとそれを聞いた小滝さんは。

「ふぉ、ふぉーーー!」

 某レイザーラモンのような奇声を発生です。

「こ……小滝さん? 落ち着いてくださいね?」

 一応声をかけてみたものの。

「おおお落ち着いてられるか! こんなにっ……こんなに妖怪が……!」

 早口になったという事は、興奮状態なんですね。そこへ鈴木さんが乗っかります。

「分かります! 分かりますとも! 私たちは奇跡を体験しているんです!」

「そうじゃ! 奇跡じゃ!」

 どうやら二人の間に何かが芽生えたらしいです。鈴木さんは私やぬんさんを差し置いて、妖怪の紹介を始めました。
 普通は引いてもおかしくない行動なのに、皆さん笑って挨拶をしています。優しいなぁ。

「……で、あちらが鬼の鬼塚さんです」

「初めまして。こういう者です」

 鬼塚さんが名刺を渡すと、小滝さんが叫びます。

「あんた! 鬼じゃったんか!? 鬼塚建築会社って言ったら、完璧な仕事をするので有名じゃないか! 一流で有名じゃぞ!?」

「ありがとうございます。俺っちは人間じゃないんで、安易な妥協はしないんですよ。そうしたらいい職人が周りに集まりましてね……」

 話が盛り上がる小滝さん、鈴木さん、鬼塚さんの三人です。ほーほー! 鬼塚さんはその道では有名なんですね。リフォームが楽しみです。

「いかん……儂はー出張買取に行くところじゃったー」

 口調が戻ってきたので少し落ち着いてきたようです。歩いて行くのかと聞いたら、少し離れた場所に駐車場があるとのことでした。……やっぱり近くに駐車場がないと不便ですね。

「もしーまた九十九神つくもがみがおったらー連絡するからのー」

 そう言い残し、小滝さんは名残惜しそうに出て行きました。……はて? 何かを忘れているような……。
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