幽幻會社 夢現堂

Levi

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宴会前の女子会

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 萌さんのかわいさとオシャンティーさに震えていると、横からユキさんが口出しします。

「お前の部屋は相変わらず統一感がなくて、色も柄もゴチャゴチャしているな。シンプルなのが一番だろう」

「なによユキ~。アンタの部屋なんて~シンプルどころか~ただの雪山じゃないのぉ~」

 お二人の言い合いが面白くて、つい笑ってしまいました。するとお二人は言い合いを止め、同時にどうしたのかと聞かれました。

「いえ……ふふっ。同年代の女の人と話すのって久しぶりなので……。それに濃い~ディープな趣味の話じゃなくて、普通の会話っていうのがまた新鮮で……」

「も~百合ちゃ~ん! リハビリして~、もっと女の子人生を~楽しまなきゃダメよ~!」

 私の言葉に対して、萌さんは優しく微笑みながら手を取り、ソファーに私を誘導しながら、さりげなく座らせてくれました。
 その直後、ユキさんは私の隣にドカッと座り、長くてキレイな足を組んで言いました。

「萌、お前バカだろう。お前も私も、女の『子』ではないんだぞ」

「うるさいわね~! 誰も実年齢の話なんてしてないわよぉ~! 見た目年齢の話をしてるのよ~!」

 ふんぞり返って、「ふふん」と萌さんを小馬鹿にしたユキさんに対して、萌さんはプンプンとしています。私は勇気を出して聞いてみました。

「あの……見た目年齢って……?」

「あたしは~その時によって違うけど~だいたい22~27歳設定にしてるかなぁ」

「私は28歳設定だ」

 設定? 年齢を設定? え? どういうことでしょうか? 頭の中がグルグルとしていると、萌さんは笑いながらお茶を用意してくれました。
 一口それを飲むと、芳香な香り漂うジャスミンティーで、少しだけ落ち着くことが出来ました。

 さて、ユキさんの見た目年齢は、クールビューティーとしか言いようのない見た目ですが、萌さん……。

「あの……。見た目って……その、変えられるんですか……?」

 少し落ち着いたと言っても、話している内容に納得が出来たわけではありません。ここは疑問をぶつけることにします。

「そうよ~。戸籍持ってる妖怪は~、いろんな手続きとかで~年齢確認されるじゃない~? だから~人前に出る時は~設定年齢に見た目を変えるのよ~」

 極々当たり前にそう言う萌さんに驚きました。

「あれ? じゃあ萌さんは人間としての戸籍があるんですね? ユキさんは?」

「私は人間社会の手続きなどが面倒になってな。数年前に83歳で死亡届を出した」

 いろいろなことを思い出したのか、ふぅと盛大にため息を吐いていました。

「あたしはぁ~通帳が欲しいから~戸籍がいるの~。ある程度の年齢になったら~死亡届を出して~出生届を出して~、裏ワザを使ってお金を移動させて~の繰り返し~。その裏ワザの辺りは~ナイショ~」

「つ……通帳ですか??」

 頭が追いつかずにポカーンとしながら聞くと、横からユキさんがとんでもないことを言いました。

「萌の通帳は普通の人間からしたら、とんでもない金額が入ってるぞ」

「やだぁ~ユキったら~! まだまだよ~! それにまだ日本は買えないわよ~」

 え? いつか日本を買収するんですか萌さん……? 思いっきり顔に出ていたらしく、萌さんが答えてくれました。

「日本は手に入れないわよ~。あたしが治めたら~妖怪大国になっちゃうわよ~! あはは~!」

 ……笑えませんよ萌さん……。

「あれ? でもそんなにお金があるなら、お金を稼がなくてもいいんじゃ……?」

 普通に疑問に思ったことを聞きました。

「通帳に入れてるお金はね~、長年貯めた~私への貢ぎ物なの~。だから~そんなお金を土地の為に~って払うのは違うと思うのよ~」

 まぁ言っていることは分かります。自分で稼いだわけじゃないってことですよね。って貢ぎ物……長年……長年?

「長年? って、何年くらいなんですか?」

「ん~中国にいる時からだからぁ~……」

 萌さんは少し上を向きながら、あごに人差し指を当てて「う~んと~」と考えています。
 大物すぎてあえてハッキリとご本人には聞きませんでしたが、お名前からして間違いなく『玉藻の前たまものまえ』ですよね?
 今さらですが中国っていうよりは、紀元前のインドや中国のお話にも出てくる超大物妖狐ですよね……。

「……萌さんっておいくつなんでしょう……?」

 うっかり心の声がく力だだ漏れになってしまいました。

「やだぁ百合ちゃんったら~、それ聞いちゃう~? 500くらいから~数えるのも面倒になったわよ~」

 とケラケラ笑う萌さん。ご冗談でしょうか?

「凄いな。私は300で数えるのが面倒になったぞ」

 おぅふ……ユキさんまで言うってことは、本当の話なんですね?
 ……お二人とも大先輩じゃないですか。

「あれ? さっき見た目年齢を変えられるって言ってましたけど、たまに実年齢にはならないんですか?」

「やだぁ~! 百合ちゃんったら~! 実年齢になったら~、あたしたち粒子になっちゃうわよ~!」

 今日一番の爆笑しているお二人ですが、粒子って……。
 もうミイラをも超越した、乾燥しきって砕け散ったサラッサラの粒子ってことなんですね?
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