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プレゼント
すごいもの、貰いました
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コホン、と咳払いしたゴンさんが話し始めました。
「……さて、話を戻そう。正直、桃田さんがここまで考えているとは思っていなかった。先日の萌のキャバクラの話を本気でやりたいのなら、それも応援するつもりだったんだが……」
萌さんは「やだ~」と笑い、まんざらでもないようですが萌さんのキャバ嬢姿、普通に見たいですよね。分かります。
「ここまで頑張った桃田さんに、ご褒美というか、プレゼントを贈ろうと思う」
「ふぁ?」
残念な結果しか想像していなかったので、『ご褒美』や『プレゼント』なんて予想もしていなかった言葉に、うっかりマヌケな声を出してしまいました。
「私個人のものなんだがな。しばらく眠らせてる会社がある。『休眠会社』というものだな。
元々は孫にいつか渡そうと思っていたんだよ。何人も孫がいるが、その内の孫の一人もとても生き辛そうでなぁ……。例えば私の権力を使ったとして、本社で働かせたとしても人間関係で上手くいかないのは、誰の目から見ても分かりきっていたんだ。
だがその孫も素晴らしい仲間に出会い、驚く事に今では私の初恋の人の元で、なんとお化け退治を生業にしておる」
「……は?」
おそらく、そのお孫さんも私のように、どこか他人と噛み合わずに苦労しているのでしょう。
そこまでは理解できました。ですが、お化け退治? え? ゴーストバスターズってことですよね? いつかお会いしてみたいのですが。
「話は戻るが、その休眠会社を桃田さんにプレゼントしようと思う。孫にはもう必要ないからな。妖怪相手とは違いお化け退治は大変だろうが、孫は仲間たちと出会って本当に変わった。
だから桃田さんも、これをきっかけにしてもらいたい。おめでとう、これで晴れて君は社長だ」
……ん? は? どういうことなのか、私の頭では理解が追いつきません……。
「えと……ちょっとどういうことか意味が分からないのですが……」
考えようとしても、私の脳ミソが上手く働きません……。あ、いつものことでした。
「今では作る事のできない有限会社だ。桃田さんは代表取締役になるといい。私とぬんも全力でサポートするから心配ない。資金面は私がなんとかするから、妖怪たちと思うがまま好きなようにやってみるといい」
「すっご~い! 百合ちゃんったら~、ニートからいきなり社長よ~」
手を叩いて喜んでいる萌さんですが、ニートから何ですって?
「……はぁぁぁぁ!? 社長~!? いやいやいやいや! 無理です! 絶対無理!」
「なぁに、一人で一から会社を立ち上げる訳ではないから、そんなに難しく考える必要もないし、気負わなくていい。何か分からない事があれば、その都度私に聞いてくれればいい。経理関係は……そうだな私の友人に頼むから、それも全部任せればいい。よし! これで話は決まったな」
ゴンさんはポケットからメモとペンを取り出して、何かを書いています。なぜか勝手に話が進んでいます。
「ゴンさん聞いてくださーい! 無ー理ーでーすー!」
「百合子や、ここまで妖怪のことを考えてくれたのは百合子じゃ。それにこれからもみんなの中心でいて欲しいとワシらは思っているんじゃ。じゃから当然、百合子に社長をやってもらいたいのぅ」
ゴンさんに抗議をしているところに、ぬんさんが突然割って入ってきてこっ恥ずかしいことを言いました。
「だからぬんさんも~無理ですってば~……」
もはや泣く寸前の私です。学級委員すら絶対にやりたくなかった私が、ニートからいきなり社長とか無理です……。
「ワシにサポートして欲しいって言ったのは、百合子なのにのぅ」
……そういえば宴会の時に、そんなことを言ったような気が……。
「ワシらと楽しくやろうと思えばいいじゃろ。硬っ苦しく考えんでいい。なぁに、金はゴンが出すから失敗したとしても、百合子はなーんも気にせんで良い。百合子一人くらい、萌が余裕で養えるわい」
「当たり前に気にしますし、萌さんも不良債権を押し付けられて迷惑になりますから!」
……ツッコミをしたおかげで少し冷静になれました。頭の中を整理しましょう。
私一人が社長で一人で働く訳でなく、ゴンさんもぬんさんもサポートに回ってくれる……。超有名社長に分からない事は聞けばいいし、人とは違う妖怪と何かあってもぬんさんは妖怪の総大将です……。
そんな事を必死に考えていると、福の神さんが私の前に現れ、ニコニコ笑顔でうんうんと頷いています。
パラヒキニートだったアラサー女子の私が、人生をやり直せるのは今しかない気がします……。
「……分かりました……やってみます……ですが皆さん、本当にサポートをよろしくお願いします……」
「当然よ~。頑張りましょ~」
「百合子を助けることは当たり前だ」
深々と頭を下げると、萌さんもユキさんもやる気満々でそう言ってくれました。
「そうと決まれば社名変更もしないとな。どうする桃田さん?」
「社名ですか!? うーん……少しだけ時間を貰えますか?」
「分かった。私も経理を頼む予定の友人に連絡しないといけないからな。後日また会おう」
「はい。それまでに決めておきます。……ふしだらな者ですが、よろしくお願いしますゴンさん」
「そこは『ふつつか』だろう……。桃田さん、改めてよろしくな」
とてつもない言い間違いをして恥ずかしい思いの中、私たちは握手を交わしました。その瞬間、妖怪さんたちは大盛り上がりです。
「宴よ~!」
はい、このお屋敷でのお決まりなのか、宴会の準備が始まりました。
きっとこれから毎日が大変そうですが、それでも皆さんと一緒ならとても楽しそうで毎日が充実しそうです!
「……さて、話を戻そう。正直、桃田さんがここまで考えているとは思っていなかった。先日の萌のキャバクラの話を本気でやりたいのなら、それも応援するつもりだったんだが……」
萌さんは「やだ~」と笑い、まんざらでもないようですが萌さんのキャバ嬢姿、普通に見たいですよね。分かります。
「ここまで頑張った桃田さんに、ご褒美というか、プレゼントを贈ろうと思う」
「ふぁ?」
残念な結果しか想像していなかったので、『ご褒美』や『プレゼント』なんて予想もしていなかった言葉に、うっかりマヌケな声を出してしまいました。
「私個人のものなんだがな。しばらく眠らせてる会社がある。『休眠会社』というものだな。
元々は孫にいつか渡そうと思っていたんだよ。何人も孫がいるが、その内の孫の一人もとても生き辛そうでなぁ……。例えば私の権力を使ったとして、本社で働かせたとしても人間関係で上手くいかないのは、誰の目から見ても分かりきっていたんだ。
だがその孫も素晴らしい仲間に出会い、驚く事に今では私の初恋の人の元で、なんとお化け退治を生業にしておる」
「……は?」
おそらく、そのお孫さんも私のように、どこか他人と噛み合わずに苦労しているのでしょう。
そこまでは理解できました。ですが、お化け退治? え? ゴーストバスターズってことですよね? いつかお会いしてみたいのですが。
「話は戻るが、その休眠会社を桃田さんにプレゼントしようと思う。孫にはもう必要ないからな。妖怪相手とは違いお化け退治は大変だろうが、孫は仲間たちと出会って本当に変わった。
だから桃田さんも、これをきっかけにしてもらいたい。おめでとう、これで晴れて君は社長だ」
……ん? は? どういうことなのか、私の頭では理解が追いつきません……。
「えと……ちょっとどういうことか意味が分からないのですが……」
考えようとしても、私の脳ミソが上手く働きません……。あ、いつものことでした。
「今では作る事のできない有限会社だ。桃田さんは代表取締役になるといい。私とぬんも全力でサポートするから心配ない。資金面は私がなんとかするから、妖怪たちと思うがまま好きなようにやってみるといい」
「すっご~い! 百合ちゃんったら~、ニートからいきなり社長よ~」
手を叩いて喜んでいる萌さんですが、ニートから何ですって?
「……はぁぁぁぁ!? 社長~!? いやいやいやいや! 無理です! 絶対無理!」
「なぁに、一人で一から会社を立ち上げる訳ではないから、そんなに難しく考える必要もないし、気負わなくていい。何か分からない事があれば、その都度私に聞いてくれればいい。経理関係は……そうだな私の友人に頼むから、それも全部任せればいい。よし! これで話は決まったな」
ゴンさんはポケットからメモとペンを取り出して、何かを書いています。なぜか勝手に話が進んでいます。
「ゴンさん聞いてくださーい! 無ー理ーでーすー!」
「百合子や、ここまで妖怪のことを考えてくれたのは百合子じゃ。それにこれからもみんなの中心でいて欲しいとワシらは思っているんじゃ。じゃから当然、百合子に社長をやってもらいたいのぅ」
ゴンさんに抗議をしているところに、ぬんさんが突然割って入ってきてこっ恥ずかしいことを言いました。
「だからぬんさんも~無理ですってば~……」
もはや泣く寸前の私です。学級委員すら絶対にやりたくなかった私が、ニートからいきなり社長とか無理です……。
「ワシにサポートして欲しいって言ったのは、百合子なのにのぅ」
……そういえば宴会の時に、そんなことを言ったような気が……。
「ワシらと楽しくやろうと思えばいいじゃろ。硬っ苦しく考えんでいい。なぁに、金はゴンが出すから失敗したとしても、百合子はなーんも気にせんで良い。百合子一人くらい、萌が余裕で養えるわい」
「当たり前に気にしますし、萌さんも不良債権を押し付けられて迷惑になりますから!」
……ツッコミをしたおかげで少し冷静になれました。頭の中を整理しましょう。
私一人が社長で一人で働く訳でなく、ゴンさんもぬんさんもサポートに回ってくれる……。超有名社長に分からない事は聞けばいいし、人とは違う妖怪と何かあってもぬんさんは妖怪の総大将です……。
そんな事を必死に考えていると、福の神さんが私の前に現れ、ニコニコ笑顔でうんうんと頷いています。
パラヒキニートだったアラサー女子の私が、人生をやり直せるのは今しかない気がします……。
「……分かりました……やってみます……ですが皆さん、本当にサポートをよろしくお願いします……」
「当然よ~。頑張りましょ~」
「百合子を助けることは当たり前だ」
深々と頭を下げると、萌さんもユキさんもやる気満々でそう言ってくれました。
「そうと決まれば社名変更もしないとな。どうする桃田さん?」
「社名ですか!? うーん……少しだけ時間を貰えますか?」
「分かった。私も経理を頼む予定の友人に連絡しないといけないからな。後日また会おう」
「はい。それまでに決めておきます。……ふしだらな者ですが、よろしくお願いしますゴンさん」
「そこは『ふつつか』だろう……。桃田さん、改めてよろしくな」
とてつもない言い間違いをして恥ずかしい思いの中、私たちは握手を交わしました。その瞬間、妖怪さんたちは大盛り上がりです。
「宴よ~!」
はい、このお屋敷でのお決まりなのか、宴会の準備が始まりました。
きっとこれから毎日が大変そうですが、それでも皆さんと一緒ならとても楽しそうで毎日が充実しそうです!
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