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幽幻会社 夢現堂
発足!
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さて、あの記念すべき事業計画の話し合いをしてから、かれこれ二週間近く経ちました。
先週くらいにゴンさんが経理をお願いしたいと話していた、ゴンさんの友人の鈴木さんに実際にお会いし、正式に経理等を頼む事になりました。というか、「お願いします!」と土下座したのは言うまでもありません。
そんな鈴木さんの第一印象は、とても人当たりの良い人。第二印象はとても優しい人。第三印象は本当に良い人。
きっと聖人か何かだと思います。
鈴木さんは元々、ゴンさんの小学校時代の友人なんだそうです。鈴木さんはゴンさんに何回か妖怪に会わせてもらったものの、小学校卒業と同時にお父さんの転勤で、故郷から離れた遠い場所に引っ越したんだそうです。
二人は離れていても、年賀状や暑中見舞いでずーっと交流を続けていたらしいです。私なんて、毎年一枚も年賀状が来ないですけどね。
引っ越しした鈴木さんはそのままその地で勉学に励み、税理士となってその街に根付いて数ある企業のために、一般的な定年退職の年齢まで毎日必死に働いたそうです。
私なんかとは大違いですね……。
パートをしていた奥様が定年の年齢となり、そしてそのパートを定年退職をしたことをきっかけに、まだのどかさが残る産まれた場所に戻りたいと奥様と話し合いを重ねたそうです。
奥様もまた便利だけれど息苦しい都会ではなく、不便過ぎない田舎でのんびりと暮らしたいという夢があったそうで、ご夫婦でこの土地に引っ越して来たんだそうです。
そして今度はゴンさんと年賀状とかではない、小学生の頃のようなリアルの交流が始まり、友情もさらに深まったんだそうです。
私は友情を深める友人すらいなくて、羨ましいとも思えないほど心が荒んでいます。
鈴木さんが『昔のようにまた妖怪に会いたい』と、照れたようにゴンさんに告白した辺りで、ゴンさんは私たちが商売をするという話を聞いたそうです。
鈴木さんの経歴も知っていたことから、これは良い機会だから、経理関係など全く分からない私や妖怪たちをフォローするように、一緒に働いてくれると助かるな、と思ったそうです。
そして鈴木さんに声をかけ、事の経緯を全て説明してみたら、『絶対にやる!』と、大興奮だったそうです。
『難しいことは全部私がやりますからね! 妖怪たちと話せるだけで私は幸せですから!』
と、初めて会った時からニコニコ笑顔で本当に良い人です。社名変更の話し合いにも参加して下さいました。
『皆さん、会社の名前を考えたのですが……やる事が一つだけではないですし、妖怪さんが多数参加されてますので、夢か現実かという『夢現』から取りまして、『夢現堂』というのはどうでしょう……?』
『素晴らしいです!』
私の提案に真っ先に賛成してくれた鈴木さんは大興奮でした。
『純和風な感じでいいわね~』
『百合子が決めたならそれでいい』
『いい名前じゃな』
萌さん、ユキさん、ぬんさんも賛成のようでした。そこに鈴木さんが一つ提案をしてくれました。
『有限会社を文字ってみませんか? 人間社会で使う時はそのまま有限会社で、妖怪たちとの間でだけはあえて『幽幻會社』と。幽霊とは違うけど、幻は見せられるよ、ということで。會社も古い字体を使うことで、古くからいる妖怪たちにも読みやすいと思うのですが』
ワクワクが止まらないといった感じで、鈴木さんは満面の笑みでした。本当に妖怪たちと働くことが嬉しいのだと思います。この案も、皆さんが了承してくれました。
『そうと決まれば、社名変更などの手続きは私がやりましょう! 桃田さんはこの書類に名前やハンコをお願いします』
……さすがです、手際がいいです。ササッと必要書類を目の前に並べ、記入する場所が分かりやすいように付箋が貼られていました。いつかこんな大人になりたいものです。
カキカキポンポンっと署名とハンコを押すと、出来たものから鈴木さんのチェックが入りました。全部の書類が問題ない事を確認すると、丁寧に封筒にしまいました。
『お役所関係は任せてくださいね。慣れている私が行ってきますから』
最後まで満面の笑みの鈴木さんでした。法務局だの労働局だの税務署だの職業安定所だの……これらの場所とはあまりにも無縁の生活をしていましたが、この辺は鈴木さんが完全にフォローしてくれて、代わりに手続きをしてくれました。
そして今日。ついに手続きが終わり、この世に本当に『有限会社 夢現堂』が設立してしまいました。どうしましょう……名前を書いてハンコを押しただけで、社長のようなものになってしまいました(白目)
「おい、白目ってなんだ、白目って。しっかりしろ百合子。お前は私たちのリーダーだ」
あぁ、いきなり後ろからユキさんのツッコミが……。
「そうよ~リーダーなんだから~しっかりしてね~」
「ゴンから、事務所と店舗物件を選ぶのは頼むと連絡があったぞ」
萌さん、ぬんさんもユキさんの後に続きます。というか、そうですよね。お店なんですから、店舗物件を探さないとですよね。
「そうですね……不動産屋さんに行ってみましょうか……」
私と妖怪三人の、しかも大物妖怪三人との百鬼夜行ならぬ四鬼夜行の開始です。あぁ……緊張する……。
先週くらいにゴンさんが経理をお願いしたいと話していた、ゴンさんの友人の鈴木さんに実際にお会いし、正式に経理等を頼む事になりました。というか、「お願いします!」と土下座したのは言うまでもありません。
そんな鈴木さんの第一印象は、とても人当たりの良い人。第二印象はとても優しい人。第三印象は本当に良い人。
きっと聖人か何かだと思います。
鈴木さんは元々、ゴンさんの小学校時代の友人なんだそうです。鈴木さんはゴンさんに何回か妖怪に会わせてもらったものの、小学校卒業と同時にお父さんの転勤で、故郷から離れた遠い場所に引っ越したんだそうです。
二人は離れていても、年賀状や暑中見舞いでずーっと交流を続けていたらしいです。私なんて、毎年一枚も年賀状が来ないですけどね。
引っ越しした鈴木さんはそのままその地で勉学に励み、税理士となってその街に根付いて数ある企業のために、一般的な定年退職の年齢まで毎日必死に働いたそうです。
私なんかとは大違いですね……。
パートをしていた奥様が定年の年齢となり、そしてそのパートを定年退職をしたことをきっかけに、まだのどかさが残る産まれた場所に戻りたいと奥様と話し合いを重ねたそうです。
奥様もまた便利だけれど息苦しい都会ではなく、不便過ぎない田舎でのんびりと暮らしたいという夢があったそうで、ご夫婦でこの土地に引っ越して来たんだそうです。
そして今度はゴンさんと年賀状とかではない、小学生の頃のようなリアルの交流が始まり、友情もさらに深まったんだそうです。
私は友情を深める友人すらいなくて、羨ましいとも思えないほど心が荒んでいます。
鈴木さんが『昔のようにまた妖怪に会いたい』と、照れたようにゴンさんに告白した辺りで、ゴンさんは私たちが商売をするという話を聞いたそうです。
鈴木さんの経歴も知っていたことから、これは良い機会だから、経理関係など全く分からない私や妖怪たちをフォローするように、一緒に働いてくれると助かるな、と思ったそうです。
そして鈴木さんに声をかけ、事の経緯を全て説明してみたら、『絶対にやる!』と、大興奮だったそうです。
『難しいことは全部私がやりますからね! 妖怪たちと話せるだけで私は幸せですから!』
と、初めて会った時からニコニコ笑顔で本当に良い人です。社名変更の話し合いにも参加して下さいました。
『皆さん、会社の名前を考えたのですが……やる事が一つだけではないですし、妖怪さんが多数参加されてますので、夢か現実かという『夢現』から取りまして、『夢現堂』というのはどうでしょう……?』
『素晴らしいです!』
私の提案に真っ先に賛成してくれた鈴木さんは大興奮でした。
『純和風な感じでいいわね~』
『百合子が決めたならそれでいい』
『いい名前じゃな』
萌さん、ユキさん、ぬんさんも賛成のようでした。そこに鈴木さんが一つ提案をしてくれました。
『有限会社を文字ってみませんか? 人間社会で使う時はそのまま有限会社で、妖怪たちとの間でだけはあえて『幽幻會社』と。幽霊とは違うけど、幻は見せられるよ、ということで。會社も古い字体を使うことで、古くからいる妖怪たちにも読みやすいと思うのですが』
ワクワクが止まらないといった感じで、鈴木さんは満面の笑みでした。本当に妖怪たちと働くことが嬉しいのだと思います。この案も、皆さんが了承してくれました。
『そうと決まれば、社名変更などの手続きは私がやりましょう! 桃田さんはこの書類に名前やハンコをお願いします』
……さすがです、手際がいいです。ササッと必要書類を目の前に並べ、記入する場所が分かりやすいように付箋が貼られていました。いつかこんな大人になりたいものです。
カキカキポンポンっと署名とハンコを押すと、出来たものから鈴木さんのチェックが入りました。全部の書類が問題ない事を確認すると、丁寧に封筒にしまいました。
『お役所関係は任せてくださいね。慣れている私が行ってきますから』
最後まで満面の笑みの鈴木さんでした。法務局だの労働局だの税務署だの職業安定所だの……これらの場所とはあまりにも無縁の生活をしていましたが、この辺は鈴木さんが完全にフォローしてくれて、代わりに手続きをしてくれました。
そして今日。ついに手続きが終わり、この世に本当に『有限会社 夢現堂』が設立してしまいました。どうしましょう……名前を書いてハンコを押しただけで、社長のようなものになってしまいました(白目)
「おい、白目ってなんだ、白目って。しっかりしろ百合子。お前は私たちのリーダーだ」
あぁ、いきなり後ろからユキさんのツッコミが……。
「そうよ~リーダーなんだから~しっかりしてね~」
「ゴンから、事務所と店舗物件を選ぶのは頼むと連絡があったぞ」
萌さん、ぬんさんもユキさんの後に続きます。というか、そうですよね。お店なんですから、店舗物件を探さないとですよね。
「そうですね……不動産屋さんに行ってみましょうか……」
私と妖怪三人の、しかも大物妖怪三人との百鬼夜行ならぬ四鬼夜行の開始です。あぁ……緊張する……。
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