幽幻會社 夢現堂

Levi

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 さて、食事などをしながら時間を潰して、どうにか隣の市に着いた私たちは、さっきの不動産屋さんのおじさん店員さんが書いてくれた地図を頼りに歩いています。
 国道沿いを歩いているのですが、私たち以外にほとんど人の姿もなく、辺りに建っている建物も造りやデザインが古く、さっきまでいた市と比べると明らかに田舎感が漂っています。私は嫌いじゃありません。

「あっち側の土地と違って静かですね……」

「本当にそうね~」

 なんて言いながら歩いていると、どうやら目的の場所に着いたようです。渡された地図が見やすいのと、人がいなさ過ぎて見通しが良く、あっという間に到着しました。
 第一印象を良くするために、大きな声で「すみませーん!」と、扉を開けてビックリです。さっきのおじさん店員さんと顔がそっくりの、失礼ですがハッキリと申し上げると、ツルッパゲのおじさんがいらっしゃいました。

「やぁやぁいらっしゃいませ! 思ったより早かったねぇ? 近くにバス停もなくて不便だったでしょう? タクシーで来たんでしょう?」

「! あぁ、はい!」

 ニコニコ笑顔のおじさん店員さん、その2と名付けましょうか。いや、それは失礼ですね。
 私たちは烏天狗に乗って来ましたが、タクシーで来たと思ってるので、話を合わせておきました。

「早速ですけど、物件を実際に見てみましょうか! ここから歩いて五分ほどですが、皆さん車に乗ってください!」

 お店の横の駐車場にはおじさん店員さんの自家用車と思われるファミリーカーがあり、全員が問題なく乗れそうです。
 不動産屋さんから歩いて五分ですから、車だと思っている以上にすぐに着きました。そして駐車場はなく、まさかの路駐です。

「いやぁ、この辺は駐車場も無くてねぇ。ぱぱっと見ましょう」

 苦笑いのおじさん店員さんに対し、私たちも苦笑いしか返せません。歩いて来たほうが良かったと私たちは思っていますが、きっとおじさん店員さんは歩きたくなかったんでしょうね……。

 まず物件を見る前に、商店街の入り口に意味もなく立ってみました。商店街とは名ばかりで、ほぼシャッターが閉まり閑散としていました。これはいわゆる『シャッター商店街』というものなんでしょう。
 ふと見上げると、アーケードの屋根の部分は撤去されていましたが、名残で商店街の入り口にかかる看板が残っていました。

 ~『陽』気で『快』適に! ようかい商店街~

「ふぉー!!!!!!!!」

 思わず奇声を発してしまいましたが、私が思いっきり指をさしていたため、ぬんさんたちもその看板を見たようです。

「「「ブフゥ!!!!」」」

 はい、全員が吹き出し、これはもう撃沈です。

「店員さん、ワシらはもうここに決めた! あとは物件だけ選ばせて貰うぞ!」

 うんうんと高速で頷く私とユキさん。

「えぇ!? 早くないですか!?」

 めっちゃ驚いてますが、そりゃあそうですよね。そこに萌さんが口を挟みました。

「待って~みんな~。よく見て~。この商店街、ほとんど人がいないわよ~」

 萌さんの発言でしっかりと商店街を見ると、長い元アーケードの通路にはお年寄りが数人、ベビーカーを押した若いお母さんが数人、合わせて十人もいなさそうです。
 私たちが立っている付近はシャッターが閉まっていますが、奥には何かあるのでしょうか? それともお散歩でしょうか?

「この道路が主要道路なのよね~? だったら~入り口に近い場所を選びましょうよ~。奥に出しても~人が来ないんじゃな~い?」

 確かに! さすが萌さんです!

「ちなみに……ここは何のお店だったんでしょうか?」

 一番手前の物件を指さして、おじさん店員さんに聞いてみました。

「向かって左側の建物がですね、ファミレスとファストフードを足して割ったようなお店でしたね。その向かいの、向かって右側の建物は理容室でした」

 それを聞いて全員がソワソワとし始めました。

「中を見ても……?」

 そう聞けば「どうぞー!」と、すぐに鍵を開けてくれました。まずはファミレスとファストフードを足して割ったようなお店……面倒なのでファミードって言いましょう……。ファミードに入ってみました。
 いや待ってください。ファミードなんて誰にも通じないですよね。

 一人で脳内ツッコミをしながら見学すると、中は思った以上に広く、一番奥は厨房のようです。働いた事もまともな料理もしない私ですが、ここだったら広々としていてお料理もしやすそうです。

「かなり広いな。もし可能なら、ホールを壁で区切ってもいいのか?」

 あのユキさんがまともな事を言いました。

「はい! 実は商店街自体が古いのでね、建物も少しばかり古いんですよ。なので契約した物件であれば、お好きなようにリフォームしていただいて構いません」

 なんと素敵なお言葉でしょうか。確かに半分で区切ったとしても、この物件は問題なく猫カフェと猫耳喫茶が営業出来るほど広いんです。

 そしてお次は、商店街の歩道を挟んで向かいにある物件へ移動です。中に入るとぬんさんたちが反応しました。

「何かおるのぅ」

 怖いことをいきなり言うぬんさんに驚いて、鳥肌が立ちました。店員さんもその発言に反応しました。

「え!? 何かって……やっぱり……」

 店員さんのその言葉に、今度は私が反応してしまいました。

「やっぱりとは……? 何かあるんですか……?」

「いやいや……いや、ちゃんとお伝えしないといけませんよね……。前の理容室の方がね、いつも何かの気配を感じて気持ち悪いって撤退したんですよ……」

 店員さんは落ち着かないのか、ハゲ頭をさすさすしながら話します。つられるように、私も鳥肌の出ている二の腕をさすさすしました。
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