幽幻會社 夢現堂

Levi

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ご挨拶

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 お二人は何のソシャゲやってたんだろう? とか思っているうちに、商店街の理事長さんがいらっしゃるという、噂の骨董屋さんの前に到着しました。

「ん?」

「おや?」

 ぬんさんとユキさんが、何かを探っているような仕草と顔つきになりました。

「どうしたんですか?」

 お二人に小声で聞いてみたのですが、何ですかこの緊張感は……。

「いや……まずは入ってみようかの……」

 ぬんさんは警戒するように、店の入り口のドアに手をかけました。垢舐めくん事件もありましたし、また何かあるんでしょうか?

 ちなみにこのお店、ショーウィンドウとでも言えばいいのでしょうか? 商品なのかオブジェなのかよく分からない壷や、どこの国のものなのかも判別できないような怪しげでカラフルな、バカでかいお面のような物を飾ってあります。
 ……統一性がないのが素敵です(褒め言葉)

 無言でぬんさんが先に入り、続いてユキさん、私と続きます。入り口のドアが閉まると同時に、店内の売り物と思われる物の一部がガタガタと揺れだしました。

「え!? 地震ですか!?」

 パニックになっていると、お店の奥からのんきな声が聞こえて来ました。

「おー。お前たちー、今日は一段と元気だなー。元気があるのは良いことだー。はっはっはー」

 は?

「地震じゃない……? あの……」

 ぬんさんもユキさんも返答してくれず、一人で喋る私に気付いたようです。

「おー。お客さんかのー。いらっしゃいー……い?」

 売り物を見ながら話していた結構ヨボヨボなおじいちゃんですが、間延びした『いらっしゃいー』を言いながらこちらを向くと、疑問形のまま固まりました。

「……失礼だがー、その丈夫そうなお嬢さんはー、人間で間違いないなー……?」

 おじいちゃんはプルプルしながら私を見ます。丈夫そう……うん、三人の中で一番肥えて丈夫そうですが何か? 寝肥りに間違えられましたが何か?

「丈夫な人間で……」

「そちらはー、名のある妖怪ではーなかろうかー?」

 喋ってる途中で被せられたー! しかもサラッと妖怪とか言ってるー!

「いやはやご老人、ワシらに気付くとはなかなかやりおるのう」

 さっきまでピリピリしていたぬんさんはようやく言葉を発し、しかもなぜか笑顔です。
 何がどうなってるの? と思ってたら、また売り物の一部がガタガタと動きます。正確には跳ねてるような動きです。

「……ユキさん? これ、ポルターガイストってやつですか……?」

 見える妖怪は大丈夫ですが、見えないオバケが怖くて小声でユキさんに聞きました。

「違う。ここにあるのは九十九神つくもがみだな」

九十九神つくもがみってあの!?」

 長年使っていた物に魂が宿るというあのですか!?

 おじいちゃんはプルプルしていたかと思うと、今度はポロポロと泣き出しました。そしてそれを見てオロオロする私です。

「この子たちがー、こんなに喜ぶなんてー、もしかしてーもしかしてー……」

 おじいちゃんは涙声で話していますが、どうやら感極まっているようです。

「そうじゃ、総大将……と言えば分かるかの?」

 ニヤリと笑うぬんさん、カッコイー! てかおじいちゃん、大丈夫かな? と思ったら……。

「ついに! ついに夢が叶った! 九十九神つくもがみを集めていれば、いつか出会えると思って……長年の努力が報われた!」

 ……あれ? おじいちゃんの口調が変わった……。

「儂はな、子供の頃から妖怪はいると、いつか会えると思っていたんだ! 今日やっと……夢が叶った!」

 ……鈴木さんとはまた違う意味で危なかったので、とりあえず落ち着かせて座らせて、話しを聞いてみることにしました。

 妖怪に会いたくて仕方のなかったおじいちゃんは、ある日一つの九十九神つくもがみに出会ったそうで。九十九神つくもがみを集めたら、いつか妖怪が集まって来て、夢である百鬼夜行を見れるのではと思い、勢いで骨董屋を始めたそうです。

 そのうち本格的な商店街を作る話が出始め、お店も年齢も年長者の、この妖怪好きなおじいちゃんが理事長となり、理事長という権力を使い無理やり『ようかい商店街』と名付けたそうです。
 職権乱用とはまさにこのことですね。

「儂はー、普段は駄目なジジイだがー、好きな事になるとー、早口になるんじゃー」

 口調がゆっくりになってきた……落ち着いてきたようです。

「ちなみにー、そちらのべっぴんさんはー、なんの妖怪かねー?」

 ふとユキさんを見ると、ユキさんもニヤリと不敵に笑いました。もしかしてヤル気満々?

 ユキさんは短くフッと息を吐くと、空中に手の平サイズの氷の塊が出来ました。さらにフッと息を吐くともう一つ氷の塊が出来ます。
 それを掴んでお手玉のようにしながら息を吐くと、氷のお手玉が増えていきます! 最後には、合計五つの氷でお手玉をするユキさん! すごいです!

 ……と思っていると、空中で氷のお手玉が静止しました。そしてユキさんが指パッチンをすると、フワッと雪に変わり、床に落ちる寸前にスターダストのようにキラキラと光りながら消えていきました。

「ユキさんすごーい! カッコイイ!」

 滅多に見れないであろうユキさんのやる気モードです! 私は手が取れそうなほど拍手していますが……ん? おじいちゃん静かだぞ?

「……雪女ゆきおんなじゃー!」

 おじいちゃんの目から、生命の危機になりそうなくらいの涙が……もう洪水レベルです……。

「いつお迎えが来てもいいと思っていたが……まだまだ死ねん! この店もまだまだ儂がやる!」

 魂の叫びと言うか……泣き叫んでおります……。
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