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ご挨拶
⑤
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あまりの泣きっぷりに心配になっていると、ぬんさんが安心させるように笑顔で声をかけました。
私なんて脱水症状になりそうなのが心配で、さっき酒屋さんで買った飲みかけのお茶を渡そうとしてたのに、この違いったらないです。
「いやいや、死なれたら困りますな。これからワシら妖怪たちが、この『ようかい商店街』に店を出すんじゃからの。今日は妖怪の総大将として、その出店の挨拶をするために、この商店街の理事長殿であるあなたに会いに来たのですからな」
うわっ……カッコイイ……と思いましたが、頭の中で今のぬんさんのセリフを何回も再生しているうちに、ハッとしてしまいました。
「ぬぬぬ、ぬんさん!? そこまで話して大丈夫なんですか? 一応、一般人には秘密にしないといけないんじゃ……」
私のセリフを聞いたおじいちゃんは、目を見開いてプルプルしています。おそらく、猛烈に驚いているようです。
「この店にある九十九神たちが、とても大事に扱われているのを見て安心したんじゃよ。そして九十九神たちが、ここの店主殿に本当に感謝をしておってな。全てを話しても大丈夫だと九十九神からの太鼓判が押されたんじゃよ」
ぬんさんが話し終わると、売り物……というか九十九神たちはまたガタガタと揺れます。
話せないから、感情を表現するために揺れるんですね。それを分かったのでもう怖くありません。
ぬんさんの太鼓判の話のあとからフリーズしていたおじいちゃんですが、ようやく動き出して口を開きました。
「……いまー、何とおっしゃったのかのー? 何かー店を出すとー聞こえたようなー……気がするー……」
太鼓判の話ではなく、その前のぬんさんのセリフに今ようやく反応したようです。タイムラグがすごいです。
「えぇと、はい。お店を一気に三店ほど出す予定でして……。今日は挨拶回りを兼ねて商店街を見て回ってるんです」
おじいちゃんはまたフリーズしたのですが、私の話は聞こえたのでしょうか?
三十秒ほど見つめ合っていると、おじいちゃんがまた動き出しました。
「全部ー、妖怪の店かのー?」
「はい、全部のお店で妖怪たちが働きます」
そう答えると、おじいちゃんはまた泣きすぎて、声にならない魂の叫びを口から発していました。
というか会話は噛み合うのに、噛み合うまでに時間がかかるという、私の人生で出会ったことのないタイプで困惑してしまいます。
おじいちゃんの今の魂の叫びの時間が長かったので要約すると、今年いっぱいでご自身は引退し、このお店はお孫さんに譲るつもりだったそうです。
それを訳すのも大変でしたが、鈴木さんも似たような発作を起こすので、慣れって大事だなと思いました。
「じゃがー、儂はー辞めんー。決めたー。孫もーちょっと難ありだしなー」
お孫さんが難あり? 自分の孫をそう表現するくらいなら、よっぽどなんでしょうか?
……すっかり忘れていましたが、桃田家の人間からしたら、私も立派な難ありでした。白目。
「遅れましたがー、これが儂の名刺じゃー」
突然懐から出された名刺を受け取り、それをじっくり見てみると『ようかい商店街理事長 小滝骨董品店 代表 小滝 秀治』と書かれています。
あー! 誰かに似てると思ったら、俳優の大〇秀治さんに似てるんですよ! 読み方は違うけど名前まで似ているし、見た目も雰囲気も話し方もそっくりです!
ちなみにゴンさんの見た目は、津川〇彦さんのような、ワイルドで男の色気のあるイケオジ社長さんです。
「小滝さんと仰っしゃるのですな。ワシらは店舗名すら決まっておらんのでの、名刺などをまだ作っておらんのじゃ。
じゃから口頭で申し訳ないが、ワシは怒和と名乗っておる。雪女は漢字をそのまま使って雪女と名乗っておる。
そしてワシらと一緒に働くこの人間は……」
「桃田百合子と申します!」
頑張りました! 元気に挨拶が出来ましたよ! ちょっとだけ成長した気分です。
「……そんなにー若いのにー、儂よりもー長い間ー妖怪と一緒にいるなんてー……ずるいー……」
小滝さんに、まさかのヤキモチを妬かれたました! 無表情でじっとりと見つめられながらそんなセリフを言われると、なんだかとっても怖いんですが。
「じゃがー、儂はー老い先短いジジイじゃがー、全力で応援するとー決めたんじゃー。困った事があればー、なんでも言ってくれー」
鈴木さんもそうですが、高齢になっても妖怪に会いたいと思いを募らせ、その願いが叶ったからこそ、私のような年齢で一緒にいるのは羨ましく見えるのかもしれません。
出会いがあれば別れもありますし、いつまで妖怪の皆さんと一緒にいられるかわかりませんが、貴重すぎる体験を日々過ごしていることを実感しないとですね……。
ひとまず、羨ましがられてはいますが、一周まわって小滝さんが味方になってくれたようで一安心です。
私なんて脱水症状になりそうなのが心配で、さっき酒屋さんで買った飲みかけのお茶を渡そうとしてたのに、この違いったらないです。
「いやいや、死なれたら困りますな。これからワシら妖怪たちが、この『ようかい商店街』に店を出すんじゃからの。今日は妖怪の総大将として、その出店の挨拶をするために、この商店街の理事長殿であるあなたに会いに来たのですからな」
うわっ……カッコイイ……と思いましたが、頭の中で今のぬんさんのセリフを何回も再生しているうちに、ハッとしてしまいました。
「ぬぬぬ、ぬんさん!? そこまで話して大丈夫なんですか? 一応、一般人には秘密にしないといけないんじゃ……」
私のセリフを聞いたおじいちゃんは、目を見開いてプルプルしています。おそらく、猛烈に驚いているようです。
「この店にある九十九神たちが、とても大事に扱われているのを見て安心したんじゃよ。そして九十九神たちが、ここの店主殿に本当に感謝をしておってな。全てを話しても大丈夫だと九十九神からの太鼓判が押されたんじゃよ」
ぬんさんが話し終わると、売り物……というか九十九神たちはまたガタガタと揺れます。
話せないから、感情を表現するために揺れるんですね。それを分かったのでもう怖くありません。
ぬんさんの太鼓判の話のあとからフリーズしていたおじいちゃんですが、ようやく動き出して口を開きました。
「……いまー、何とおっしゃったのかのー? 何かー店を出すとー聞こえたようなー……気がするー……」
太鼓判の話ではなく、その前のぬんさんのセリフに今ようやく反応したようです。タイムラグがすごいです。
「えぇと、はい。お店を一気に三店ほど出す予定でして……。今日は挨拶回りを兼ねて商店街を見て回ってるんです」
おじいちゃんはまたフリーズしたのですが、私の話は聞こえたのでしょうか?
三十秒ほど見つめ合っていると、おじいちゃんがまた動き出しました。
「全部ー、妖怪の店かのー?」
「はい、全部のお店で妖怪たちが働きます」
そう答えると、おじいちゃんはまた泣きすぎて、声にならない魂の叫びを口から発していました。
というか会話は噛み合うのに、噛み合うまでに時間がかかるという、私の人生で出会ったことのないタイプで困惑してしまいます。
おじいちゃんの今の魂の叫びの時間が長かったので要約すると、今年いっぱいでご自身は引退し、このお店はお孫さんに譲るつもりだったそうです。
それを訳すのも大変でしたが、鈴木さんも似たような発作を起こすので、慣れって大事だなと思いました。
「じゃがー、儂はー辞めんー。決めたー。孫もーちょっと難ありだしなー」
お孫さんが難あり? 自分の孫をそう表現するくらいなら、よっぽどなんでしょうか?
……すっかり忘れていましたが、桃田家の人間からしたら、私も立派な難ありでした。白目。
「遅れましたがー、これが儂の名刺じゃー」
突然懐から出された名刺を受け取り、それをじっくり見てみると『ようかい商店街理事長 小滝骨董品店 代表 小滝 秀治』と書かれています。
あー! 誰かに似てると思ったら、俳優の大〇秀治さんに似てるんですよ! 読み方は違うけど名前まで似ているし、見た目も雰囲気も話し方もそっくりです!
ちなみにゴンさんの見た目は、津川〇彦さんのような、ワイルドで男の色気のあるイケオジ社長さんです。
「小滝さんと仰っしゃるのですな。ワシらは店舗名すら決まっておらんのでの、名刺などをまだ作っておらんのじゃ。
じゃから口頭で申し訳ないが、ワシは怒和と名乗っておる。雪女は漢字をそのまま使って雪女と名乗っておる。
そしてワシらと一緒に働くこの人間は……」
「桃田百合子と申します!」
頑張りました! 元気に挨拶が出来ましたよ! ちょっとだけ成長した気分です。
「……そんなにー若いのにー、儂よりもー長い間ー妖怪と一緒にいるなんてー……ずるいー……」
小滝さんに、まさかのヤキモチを妬かれたました! 無表情でじっとりと見つめられながらそんなセリフを言われると、なんだかとっても怖いんですが。
「じゃがー、儂はー老い先短いジジイじゃがー、全力で応援するとー決めたんじゃー。困った事があればー、なんでも言ってくれー」
鈴木さんもそうですが、高齢になっても妖怪に会いたいと思いを募らせ、その願いが叶ったからこそ、私のような年齢で一緒にいるのは羨ましく見えるのかもしれません。
出会いがあれば別れもありますし、いつまで妖怪の皆さんと一緒にいられるかわかりませんが、貴重すぎる体験を日々過ごしていることを実感しないとですね……。
ひとまず、羨ましがられてはいますが、一周まわって小滝さんが味方になってくれたようで一安心です。
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