幽幻會社 夢現堂

Levi

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新たな出会い

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 煙管キセルを見ながら微笑むぬんさんが口を開きました。

「ずっと手元にあったのに気付かんかったのか。おいで」

 声を出して笑うぬんさんでしたが、「おいで」と呼ぶと煙管キセルから……なんかヌルっと出てきたー!

「なななな! なんですかコレは!? なんか出ましたけど!?」

「見ての通り、管狐くだぎつねじゃよ。まだ子供じゃな」

 管狐ってあのですか!? ……こうやって見てみると、細長いので狐というよりはイタチやオコジョのようにも見えます。
 久しぶりに妖怪に会ったからか、キューキュー言いながらぬんさんの肩や首まわりをチョロチョロし、ほっぺたにスリスリしています! かわえぇ!

「なになに? ん? ……そうか」

 私には分かりませんが、この管狐くだぎつねはぬんさんに話しかけているようです。
 そのぬんさんの通訳によると、この管狐くだぎつねちゃんの親は飯綱いづな使いに使役されていたそうですが、この子は他の兄弟たちと隠れんぼをして遊んでいるうちに、この煙管キセルに入りぐっすりと眠ってしまったそうです。

 飯綱いづな使いは、常にたくさんの狐をいろんな筒型の物に入れて持ち歩いていて、おそらく出先でこの煙管キセルを落としたか忘れたかしたようで、目を覚ました時には知らない土地にいたんだそうです。

 そしてたまたまこの綺麗な煙管キセルを見つけた子供が、宝物として大事にしまっていたのが流れ流れて小滝さんの所に来たようです。

「親と離れた不安と、飯綱いづな使いくらいしか人間を知らんから、怖くて出られなかったと言っておる。うちの化け狐が何とかしてくれよう」

 化け狐って、まさか萌さんですか?

「こんなにも近くにおったのに! 全く気付かんかった!」

 会計のカウンターをバンバン叩きながら、かなり悔しがる小滝さんです。

「私はコレが欲しい。故郷の匂いがすると思ったらまったく……コレ、本物だぞ!?」」

 小滝さんの悔しさを一切無視で、ユキさんが興奮気味に話し出したー! ユキさん、本当にフリーダムー!

「ってユキさん……? それは……?」

「土偶だ」

 いや、それは見て分かるのですが……言っても大丈夫でしょうか……?

「あの、ユキさん? 本物って言ってましたけど……?」

「あぁ、私より年上だな」

「意味が分かりません。いや……そうじゃなくて……前にネットで見た国宝の土偶に似てるんですが……」

 体育座りのように地面に座って膝を立て、その膝に両腕を置いて祈ってるようなポーズの土偶。顔はとてもシュールです。

「だからそれと同じ時代の物だ。九十九神つくもがみではないが、このかわいい顔がたまらない。かまくらの中に飾ると決めた」

 とんでも発言ktkr!? この『うー』って言ってるような口がかわいいですと!?

「ここここ! 小滝さん! コレ国宝ですよ!? 国に連絡しましょう!」

「……あー……国宝でも何でもー……持って行けばいいー……儂はー妖怪の方がー大事じゃー……」

 ちょっとちょっとぉ! このおじいちゃんったら、一大事なのに呆けちゃってるぅ!
 ちなみに『呆ける』の読み方ですが、『ほうける』であって『ぼける』じゃないですよ! さすがにそこまで失礼なこと言いませんからね!

「持って行くのはダメじゃろう。さすがに代金は払おうと思っとるんじゃが」

 ぬんさんですら苦笑いですが、今日の出会いの記念として、小滝さんはタダで持っていけと言い張ります。
 煙管キセルの中の管狐には気付かなかったし、福の神さんの小さな刀もただの装飾品と思っていたし、土偶については子供が作った物くらいに思っていたそうで。ショックからやる気が無くなったようです。

 小滝さんの発言を聞いた福の神さんはニッコリ笑って消えてしまうし、ユキさんは入れる袋はないかと騒ぐし。国宝級の物を普通の袋に入れるってアナタ……。
 ぬんさんと目を見合わせて苦笑いしか出ませんでした。

 無事に土偶を袋にも入れましたし、そろそろおいとましましょうか、という空気になった時に、入口のドアが開き誰か入ってきたようです。

「じいちゃん、いる? ゴメンゴメン、まぁた寝坊しちゃった」

 口だけの謝罪だと聞いて分かるほど、全く心のこもってないセリフで現れた人物がいました。

 あきらかにこのお店では浮くほどの、真っ白いジャケットに真っ白のズボンをはき、元は金髪であったろう髪は半分ほど黒くなっており、その髪は不自然なほどに盛り盛りに盛られています。
 ……あぁ、これが噂のアレかと思ったら、ユキさんが言ってくれました。

「見事なまでのホスト崩れだな」

 そう言われた人物は、ユキさんを見るなり大興奮です。

「うっわ! スッゲー美人じゃん!? 」

 まさかのノーダメージ……。そんな彼は続けます。

「ホスト崩れとか酷いよ~。これでもちゃんとホストやってたんだからさぁ」

 やたら前髪を触りながら、何故か自慢げに話しています。てか、やってたって過去形って事はやっぱり崩れなんじゃ……。

 その時、店内の九十九神つくもがみたちが一斉にドンっと一度だけ跳ね、店が揺れました。

「なんか最近地震多くね?」

 的外れもいいとこー! それを聞いたぬんさんが呆れ顔をしています。

「おーおーこりゃあまぁ……」

 呆れ顔からとっても残念そうな顔をして言葉を発しました。それに気付いたホスト崩れはというと。

「うっわ! 超ダンディズム! 憧れるっすー! 舎弟にでもして下さいよー!」

 その言葉を聞いて鼻で笑うぬんさんです。ダンディズムまでは理解できますが、舎弟とか普通言わなくないですか?
 そんなぬんさんに声をかけようとしたら、ようやく私に気付いたようです。

「……うわぁ……引くわぁ……女捨ててるわ。お姉さん、コイツ、引き立て役っすかぁ?」

 私を指さしてユキさんに確認しつつ、ゴミを見るように、吐き捨てるように言ってくれました。
 うん、さすがの私もめっちゃおこですよ! なんて思うか思わないかのうちに。

「おい!」
「なんだと!?」
「小僧!」

 小滝さん、ぬんさん、ユキさんの三人が噴火です。自分の事なのに出遅れた私……。

「え? なんか怒ってるんすか? 人ってやっぱ~、見た目重視じゃないっすか? 見た目さえ良ければ勝ち組っすよ!」

 うわぁ……なんか一周回って残念な人……。
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