37 / 47
新たな出会い
②
しおりを挟む
煙管を見ながら微笑むぬんさんが口を開きました。
「ずっと手元にあったのに気付かんかったのか。おいで」
声を出して笑うぬんさんでしたが、「おいで」と呼ぶと煙管から……なんかヌルっと出てきたー!
「なななな! なんですかコレは!? なんか出ましたけど!?」
「見ての通り、管狐じゃよ。まだ子供じゃな」
管狐ってあのですか!? ……こうやって見てみると、細長いので狐というよりはイタチやオコジョのようにも見えます。
久しぶりに妖怪に会ったからか、キューキュー言いながらぬんさんの肩や首まわりをチョロチョロし、ほっぺたにスリスリしています! かわえぇ!
「なになに? ん? ……そうか」
私には分かりませんが、この管狐はぬんさんに話しかけているようです。
そのぬんさんの通訳によると、この管狐ちゃんの親は飯綱使いに使役されていたそうですが、この子は他の兄弟たちと隠れんぼをして遊んでいるうちに、この煙管に入りぐっすりと眠ってしまったそうです。
飯綱使いは、常にたくさんの狐をいろんな筒型の物に入れて持ち歩いていて、おそらく出先でこの煙管を落としたか忘れたかしたようで、目を覚ました時には知らない土地にいたんだそうです。
そしてたまたまこの綺麗な煙管を見つけた子供が、宝物として大事にしまっていたのが流れ流れて小滝さんの所に来たようです。
「親と離れた不安と、飯綱使いくらいしか人間を知らんから、怖くて出られなかったと言っておる。うちの化け狐が何とかしてくれよう」
化け狐って、まさか萌さんですか?
「こんなにも近くにおったのに! 全く気付かんかった!」
会計のカウンターをバンバン叩きながら、かなり悔しがる小滝さんです。
「私はコレが欲しい。故郷の匂いがすると思ったらまったく……コレ、本物だぞ!?」」
小滝さんの悔しさを一切無視で、ユキさんが興奮気味に話し出したー! ユキさん、本当にフリーダムー!
「ってユキさん……? それは……?」
「土偶だ」
いや、それは見て分かるのですが……言っても大丈夫でしょうか……?
「あの、ユキさん? 本物って言ってましたけど……?」
「あぁ、私より年上だな」
「意味が分かりません。いや……そうじゃなくて……前にネットで見た国宝の土偶に似てるんですが……」
体育座りのように地面に座って膝を立て、その膝に両腕を置いて祈ってるようなポーズの土偶。顔はとてもシュールです。
「だからそれと同じ時代の物だ。九十九神ではないが、このかわいい顔がたまらない。かまくらの中に飾ると決めた」
とんでも発言ktkr!? この『うー』って言ってるような口がかわいいですと!?
「ここここ! 小滝さん! コレ国宝ですよ!? 国に連絡しましょう!」
「……あー……国宝でも何でもー……持って行けばいいー……儂はー妖怪の方がー大事じゃー……」
ちょっとちょっとぉ! このおじいちゃんったら、一大事なのに呆けちゃってるぅ!
ちなみに『呆ける』の読み方ですが、『ほうける』であって『ぼける』じゃないですよ! さすがにそこまで失礼なこと言いませんからね!
「持って行くのはダメじゃろう。さすがに代金は払おうと思っとるんじゃが」
ぬんさんですら苦笑いですが、今日の出会いの記念として、小滝さんはタダで持っていけと言い張ります。
煙管の中の管狐には気付かなかったし、福の神さんの小さな刀もただの装飾品と思っていたし、土偶については子供が作った物くらいに思っていたそうで。ショックからやる気が無くなったようです。
小滝さんの発言を聞いた福の神さんはニッコリ笑って消えてしまうし、ユキさんは入れる袋はないかと騒ぐし。国宝級の物を普通の袋に入れるってアナタ……。
ぬんさんと目を見合わせて苦笑いしか出ませんでした。
無事に土偶を袋にも入れましたし、そろそろおいとましましょうか、という空気になった時に、入口のドアが開き誰か入ってきたようです。
「じいちゃん、いる? ゴメンゴメン、まぁた寝坊しちゃった」
口だけの謝罪だと聞いて分かるほど、全く心のこもってないセリフで現れた人物がいました。
あきらかにこのお店では浮くほどの、真っ白いジャケットに真っ白のズボンをはき、元は金髪であったろう髪は半分ほど黒くなっており、その髪は不自然なほどに盛り盛りに盛られています。
……あぁ、これが噂のアレかと思ったら、ユキさんが言ってくれました。
「見事なまでのホスト崩れだな」
そう言われた人物は、ユキさんを見るなり大興奮です。
「うっわ! スッゲー美人じゃん!? 」
まさかのノーダメージ……。そんな彼は続けます。
「ホスト崩れとか酷いよ~。これでもちゃんとホストやってたんだからさぁ」
やたら前髪を触りながら、何故か自慢げに話しています。てか、やってたって過去形って事はやっぱり崩れなんじゃ……。
その時、店内の九十九神たちが一斉にドンっと一度だけ跳ね、店が揺れました。
「なんか最近地震多くね?」
的外れもいいとこー! それを聞いたぬんさんが呆れ顔をしています。
「おーおーこりゃあまぁ……」
呆れ顔からとっても残念そうな顔をして言葉を発しました。それに気付いたホスト崩れはというと。
「うっわ! 超ダンディズム! 憧れるっすー! 舎弟にでもして下さいよー!」
その言葉を聞いて鼻で笑うぬんさんです。ダンディズムまでは理解できますが、舎弟とか普通言わなくないですか?
そんなぬんさんに声をかけようとしたら、ようやく私に気付いたようです。
「……うわぁ……引くわぁ……女捨ててるわ。お姉さん、コイツ、引き立て役っすかぁ?」
私を指さしてユキさんに確認しつつ、ゴミを見るように、吐き捨てるように言ってくれました。
うん、さすがの私もめっちゃおこですよ! なんて思うか思わないかのうちに。
「おい!」
「なんだと!?」
「小僧!」
小滝さん、ぬんさん、ユキさんの三人が噴火です。自分の事なのに出遅れた私……。
「え? なんか怒ってるんすか? 人ってやっぱ~、見た目重視じゃないっすか? 見た目さえ良ければ勝ち組っすよ!」
うわぁ……なんか一周回って残念な人……。
「ずっと手元にあったのに気付かんかったのか。おいで」
声を出して笑うぬんさんでしたが、「おいで」と呼ぶと煙管から……なんかヌルっと出てきたー!
「なななな! なんですかコレは!? なんか出ましたけど!?」
「見ての通り、管狐じゃよ。まだ子供じゃな」
管狐ってあのですか!? ……こうやって見てみると、細長いので狐というよりはイタチやオコジョのようにも見えます。
久しぶりに妖怪に会ったからか、キューキュー言いながらぬんさんの肩や首まわりをチョロチョロし、ほっぺたにスリスリしています! かわえぇ!
「なになに? ん? ……そうか」
私には分かりませんが、この管狐はぬんさんに話しかけているようです。
そのぬんさんの通訳によると、この管狐ちゃんの親は飯綱使いに使役されていたそうですが、この子は他の兄弟たちと隠れんぼをして遊んでいるうちに、この煙管に入りぐっすりと眠ってしまったそうです。
飯綱使いは、常にたくさんの狐をいろんな筒型の物に入れて持ち歩いていて、おそらく出先でこの煙管を落としたか忘れたかしたようで、目を覚ました時には知らない土地にいたんだそうです。
そしてたまたまこの綺麗な煙管を見つけた子供が、宝物として大事にしまっていたのが流れ流れて小滝さんの所に来たようです。
「親と離れた不安と、飯綱使いくらいしか人間を知らんから、怖くて出られなかったと言っておる。うちの化け狐が何とかしてくれよう」
化け狐って、まさか萌さんですか?
「こんなにも近くにおったのに! 全く気付かんかった!」
会計のカウンターをバンバン叩きながら、かなり悔しがる小滝さんです。
「私はコレが欲しい。故郷の匂いがすると思ったらまったく……コレ、本物だぞ!?」」
小滝さんの悔しさを一切無視で、ユキさんが興奮気味に話し出したー! ユキさん、本当にフリーダムー!
「ってユキさん……? それは……?」
「土偶だ」
いや、それは見て分かるのですが……言っても大丈夫でしょうか……?
「あの、ユキさん? 本物って言ってましたけど……?」
「あぁ、私より年上だな」
「意味が分かりません。いや……そうじゃなくて……前にネットで見た国宝の土偶に似てるんですが……」
体育座りのように地面に座って膝を立て、その膝に両腕を置いて祈ってるようなポーズの土偶。顔はとてもシュールです。
「だからそれと同じ時代の物だ。九十九神ではないが、このかわいい顔がたまらない。かまくらの中に飾ると決めた」
とんでも発言ktkr!? この『うー』って言ってるような口がかわいいですと!?
「ここここ! 小滝さん! コレ国宝ですよ!? 国に連絡しましょう!」
「……あー……国宝でも何でもー……持って行けばいいー……儂はー妖怪の方がー大事じゃー……」
ちょっとちょっとぉ! このおじいちゃんったら、一大事なのに呆けちゃってるぅ!
ちなみに『呆ける』の読み方ですが、『ほうける』であって『ぼける』じゃないですよ! さすがにそこまで失礼なこと言いませんからね!
「持って行くのはダメじゃろう。さすがに代金は払おうと思っとるんじゃが」
ぬんさんですら苦笑いですが、今日の出会いの記念として、小滝さんはタダで持っていけと言い張ります。
煙管の中の管狐には気付かなかったし、福の神さんの小さな刀もただの装飾品と思っていたし、土偶については子供が作った物くらいに思っていたそうで。ショックからやる気が無くなったようです。
小滝さんの発言を聞いた福の神さんはニッコリ笑って消えてしまうし、ユキさんは入れる袋はないかと騒ぐし。国宝級の物を普通の袋に入れるってアナタ……。
ぬんさんと目を見合わせて苦笑いしか出ませんでした。
無事に土偶を袋にも入れましたし、そろそろおいとましましょうか、という空気になった時に、入口のドアが開き誰か入ってきたようです。
「じいちゃん、いる? ゴメンゴメン、まぁた寝坊しちゃった」
口だけの謝罪だと聞いて分かるほど、全く心のこもってないセリフで現れた人物がいました。
あきらかにこのお店では浮くほどの、真っ白いジャケットに真っ白のズボンをはき、元は金髪であったろう髪は半分ほど黒くなっており、その髪は不自然なほどに盛り盛りに盛られています。
……あぁ、これが噂のアレかと思ったら、ユキさんが言ってくれました。
「見事なまでのホスト崩れだな」
そう言われた人物は、ユキさんを見るなり大興奮です。
「うっわ! スッゲー美人じゃん!? 」
まさかのノーダメージ……。そんな彼は続けます。
「ホスト崩れとか酷いよ~。これでもちゃんとホストやってたんだからさぁ」
やたら前髪を触りながら、何故か自慢げに話しています。てか、やってたって過去形って事はやっぱり崩れなんじゃ……。
その時、店内の九十九神たちが一斉にドンっと一度だけ跳ね、店が揺れました。
「なんか最近地震多くね?」
的外れもいいとこー! それを聞いたぬんさんが呆れ顔をしています。
「おーおーこりゃあまぁ……」
呆れ顔からとっても残念そうな顔をして言葉を発しました。それに気付いたホスト崩れはというと。
「うっわ! 超ダンディズム! 憧れるっすー! 舎弟にでもして下さいよー!」
その言葉を聞いて鼻で笑うぬんさんです。ダンディズムまでは理解できますが、舎弟とか普通言わなくないですか?
そんなぬんさんに声をかけようとしたら、ようやく私に気付いたようです。
「……うわぁ……引くわぁ……女捨ててるわ。お姉さん、コイツ、引き立て役っすかぁ?」
私を指さしてユキさんに確認しつつ、ゴミを見るように、吐き捨てるように言ってくれました。
うん、さすがの私もめっちゃおこですよ! なんて思うか思わないかのうちに。
「おい!」
「なんだと!?」
「小僧!」
小滝さん、ぬんさん、ユキさんの三人が噴火です。自分の事なのに出遅れた私……。
「え? なんか怒ってるんすか? 人ってやっぱ~、見た目重視じゃないっすか? 見た目さえ良ければ勝ち組っすよ!」
うわぁ……なんか一周回って残念な人……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる