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プロローグは失恋と共に
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「好きです。だからどうかーーー俺を振ってください」
「ーーーぇ」
桜の木の下。しかし、そこにはただ一枚の紅花は無く、代わりに真っ白い雪が積もっている。
先週から冬も本番に突入し、冷えた空気が冷たく肌を刺す。しかし何故か、二人の体温は妙な緊張により汗をかくほど高まっていた。
彼ーーー渡邊潤の告白と同時に、カサッと雪が桜の枝から滑り落ちた。
潤は、自分の心臓の鼓動を聞きながら、ゆっくりと二年前のあの日のことを思い出して、、、
「莉央さん。二年前のことを覚えてる?」
動揺する莉央に、優しく微笑みかけた。
◇
佐藤莉央は誰もが頷く美少女である。
学年で可愛い人は誰か、という話になれば間違いなく真っ先に出てくるのが彼女の立ち位置だ。
だがしかし、それはあくまで外見だけの話。もし彼等がその内面を知れば恐らく、その順位は大きく変動するだろう。
それは、彼女の万人うけしない性格故の当然の結果だった。
あれは、中学二年生の時のことだ。
佐藤莉央は当時から顔がかなり整っており、その為数多くの男子、、、時に女子からも言い寄られていた。
そんな中、当時学年で一番イケメンと言われていた凛堂くんという男子が佐藤莉央に告白した。
こんな調子にーーー
「莉央、お前可愛いよな」
体育館裏、そんな気色悪い凛堂の一言でこの告白は始まった。
「凛堂が佐藤に告白する」という事はかなりの噂となっており、その現場には二十人を超える野次馬が集っていた。
その中の一人に、俺ーーー渡邊潤もいた訳だが。
なんで呼びた事についての謝罪の言葉がねぇんだよ!という叫びを押し殺し俺は壁裏で大衆に紛れ聞き耳を立てていた。
「実は俺、前から莉央のこと可愛いなと思ってて…」
「何の用、というか誰の断りを得てそんな馴れ馴れしく私のこと呼ぶわけ?」
「…いや、、、その、、、実は話があってな」
凛堂の奴は口説き文句は冷徹に遮られ狼狽したが、すぐに乱れた髪先を整えながらフッと笑ってみせる。
しかし、それも束の間。
「手短に、私は今日忙しいんだ。あと、告白とかだったらぶっ飛ばすから」
莉央はグッと自分の拳を握りしめて、殺気ににた謎の気迫を漂わせる。
「はっ!?お前、それはいくらなんでも横暴な…」
「ごー、よーん、さーん…」
理不尽に迫るカウントダウン。
「ちょっ、えっ…、その、えっと、クソッ!!俺と付き合っーーー」
その後、痛々しい打撃音が体育館裏に響いた。
なんという事か…莉央さんの強烈な右ストレートが彼の鳩尾に直撃したのである。
そして、その場には悶絶する哀れな凛堂と、
「え、酷すぎ…」「鬼畜すぎだろw」「いたたまれない…」
と、理解し難い光景に各々感想を述べる大衆が残っており、対する莉央は
「時間取らせやがって…」
と呟くと、舌打ちを鳴らし、悶絶する悲惨な凛堂を睨みつけその場を後にした。
俺はと言えば、その光景に呆気に取られながらも密かにガッツポーズをしたのだった。
これが、今も尚語り継がれている佐藤莉央伝説の一つ。
『凛堂いたたまれない事件』
である。
この事件以降、莉央の噂は学年中に広がり莉央には、「凶暴少女」の蔑称が与えられたのだった…。
◇
そんな彼女に俺が告白し、振られかけ、最低な別れを告げられたのが丁度二年前。
そして、今から俺は、目の前にいる彼女ーーー暴力少女こと佐藤莉央に振られるのだ。
「ーーーぇ」
桜の木の下。しかし、そこにはただ一枚の紅花は無く、代わりに真っ白い雪が積もっている。
先週から冬も本番に突入し、冷えた空気が冷たく肌を刺す。しかし何故か、二人の体温は妙な緊張により汗をかくほど高まっていた。
彼ーーー渡邊潤の告白と同時に、カサッと雪が桜の枝から滑り落ちた。
潤は、自分の心臓の鼓動を聞きながら、ゆっくりと二年前のあの日のことを思い出して、、、
「莉央さん。二年前のことを覚えてる?」
動揺する莉央に、優しく微笑みかけた。
◇
佐藤莉央は誰もが頷く美少女である。
学年で可愛い人は誰か、という話になれば間違いなく真っ先に出てくるのが彼女の立ち位置だ。
だがしかし、それはあくまで外見だけの話。もし彼等がその内面を知れば恐らく、その順位は大きく変動するだろう。
それは、彼女の万人うけしない性格故の当然の結果だった。
あれは、中学二年生の時のことだ。
佐藤莉央は当時から顔がかなり整っており、その為数多くの男子、、、時に女子からも言い寄られていた。
そんな中、当時学年で一番イケメンと言われていた凛堂くんという男子が佐藤莉央に告白した。
こんな調子にーーー
「莉央、お前可愛いよな」
体育館裏、そんな気色悪い凛堂の一言でこの告白は始まった。
「凛堂が佐藤に告白する」という事はかなりの噂となっており、その現場には二十人を超える野次馬が集っていた。
その中の一人に、俺ーーー渡邊潤もいた訳だが。
なんで呼びた事についての謝罪の言葉がねぇんだよ!という叫びを押し殺し俺は壁裏で大衆に紛れ聞き耳を立てていた。
「実は俺、前から莉央のこと可愛いなと思ってて…」
「何の用、というか誰の断りを得てそんな馴れ馴れしく私のこと呼ぶわけ?」
「…いや、、、その、、、実は話があってな」
凛堂の奴は口説き文句は冷徹に遮られ狼狽したが、すぐに乱れた髪先を整えながらフッと笑ってみせる。
しかし、それも束の間。
「手短に、私は今日忙しいんだ。あと、告白とかだったらぶっ飛ばすから」
莉央はグッと自分の拳を握りしめて、殺気ににた謎の気迫を漂わせる。
「はっ!?お前、それはいくらなんでも横暴な…」
「ごー、よーん、さーん…」
理不尽に迫るカウントダウン。
「ちょっ、えっ…、その、えっと、クソッ!!俺と付き合っーーー」
その後、痛々しい打撃音が体育館裏に響いた。
なんという事か…莉央さんの強烈な右ストレートが彼の鳩尾に直撃したのである。
そして、その場には悶絶する哀れな凛堂と、
「え、酷すぎ…」「鬼畜すぎだろw」「いたたまれない…」
と、理解し難い光景に各々感想を述べる大衆が残っており、対する莉央は
「時間取らせやがって…」
と呟くと、舌打ちを鳴らし、悶絶する悲惨な凛堂を睨みつけその場を後にした。
俺はと言えば、その光景に呆気に取られながらも密かにガッツポーズをしたのだった。
これが、今も尚語り継がれている佐藤莉央伝説の一つ。
『凛堂いたたまれない事件』
である。
この事件以降、莉央の噂は学年中に広がり莉央には、「凶暴少女」の蔑称が与えられたのだった…。
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そんな彼女に俺が告白し、振られかけ、最低な別れを告げられたのが丁度二年前。
そして、今から俺は、目の前にいる彼女ーーー暴力少女こと佐藤莉央に振られるのだ。
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