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騎馬ちゃんの声
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リハビリが騎馬ちゃんから、又モンに代わった頃私は、個室から大部屋に移っていた。個室にいた頃は他の人の事がわからないので、まるで騎馬ちゃんは私の為にいるリハさんかの様な感覚に陥っていた。
まるで、私の専属の様な気になっていたのだ。それは、ICUやHCUでリハビリをしている人が少なかったというのもあると思う。
特にHCUには、リハビリの人はいなかったと思う。
実際には、私は、騎馬ちゃんのたくさんいる患者の1人に過ぎず、担当でなくなった騎馬ちゃんは一気に遠い人になってしまった気がした。
当たり前だ。騎馬ちゃんを別の人に代えてもらったら、もう少しリハビリが進むのではないか?と悩み出したのは、私なのだ。
どんどんリハビリを進めようとする主治医と騎馬ちゃんについて行けず、苦しかった。リハビリをしたい気持ちがあっても、体調がついていかなかった。主治医は、
「それなら、あたしを代えて良いよ。主治医は秒で代えれるでね。」
と、方言交じりに言った。
「騎馬ちゃんは、真木さんの為に自分の時間をさいて頑張ってくれてる人だから。」
「うん。」
私は頷いた。しかし、騎馬ちゃんの何倍もの自分の時間を主治医の先生は私の為に使っているのを私は知っていた。(他の先生方から聞いていた。)
その事は、主治医は私にいつだって一言も言わない。主治医は自分を笹舟に例えたことがある。彼は若過ぎて少し弱気な所がある。
私はその時、
「この笹舟で一緒に行こう。どちらかが弱気になったら励ましあって行こう。」
と言った。その時、この先生に命を預けたのだ。主治医を変えれるわけがない。
私は結局の所、騎馬ちゃんを代えてとは言えず、誰かがそれを察して代えてくれた。
大部屋にいれば、1日、3回くらい騎馬ちゃんの声がどこからか聞こえてくる。きちんと話してお互いに納得してリハさんを交代にした方が良かったのかもしれない。
あの時、私にそんな心の余裕は無かった。
廊下や、どこかの病室なら騎馬ちゃんの声が聞こえるたびに胸が痛んだ。
私は主治医よりさらに若い騎馬ちゃんを傷つけてしまった。
いつも元気な騎馬ちゃんの声が、どことなくから元気の様に聞こえて辛かった。
結果を出して次に踏み出すこと、私ができるのはそれだけだ。
病棟を少し歩きながらそんな事を考えていたら、又モンが通った。手をふってアピールするが行ってしまった。そうだね、最近担当になったばかりだから、忙しい時に手を振られたってね。
私のリハビリの時間でもないし。
私は静かに椅子にすわった。だいぶ通り過ぎて小さくなった又モンが突然戻ってきた。
「あれ?さっき手を振ってくれました?」
「はい。」
えっ、こんなタイミングで戻って来る?てっきり忙しくてスルーされたと思ったけど。
又モンは今までいないタイプの面白い人。そして、この病院は一人一人のスタッフの個性を生かしているようにも感じる。
スタッフが伸び伸びしている気がする。又モンはいつも静かだけど、楽しそうだ。
まるで、私の専属の様な気になっていたのだ。それは、ICUやHCUでリハビリをしている人が少なかったというのもあると思う。
特にHCUには、リハビリの人はいなかったと思う。
実際には、私は、騎馬ちゃんのたくさんいる患者の1人に過ぎず、担当でなくなった騎馬ちゃんは一気に遠い人になってしまった気がした。
当たり前だ。騎馬ちゃんを別の人に代えてもらったら、もう少しリハビリが進むのではないか?と悩み出したのは、私なのだ。
どんどんリハビリを進めようとする主治医と騎馬ちゃんについて行けず、苦しかった。リハビリをしたい気持ちがあっても、体調がついていかなかった。主治医は、
「それなら、あたしを代えて良いよ。主治医は秒で代えれるでね。」
と、方言交じりに言った。
「騎馬ちゃんは、真木さんの為に自分の時間をさいて頑張ってくれてる人だから。」
「うん。」
私は頷いた。しかし、騎馬ちゃんの何倍もの自分の時間を主治医の先生は私の為に使っているのを私は知っていた。(他の先生方から聞いていた。)
その事は、主治医は私にいつだって一言も言わない。主治医は自分を笹舟に例えたことがある。彼は若過ぎて少し弱気な所がある。
私はその時、
「この笹舟で一緒に行こう。どちらかが弱気になったら励ましあって行こう。」
と言った。その時、この先生に命を預けたのだ。主治医を変えれるわけがない。
私は結局の所、騎馬ちゃんを代えてとは言えず、誰かがそれを察して代えてくれた。
大部屋にいれば、1日、3回くらい騎馬ちゃんの声がどこからか聞こえてくる。きちんと話してお互いに納得してリハさんを交代にした方が良かったのかもしれない。
あの時、私にそんな心の余裕は無かった。
廊下や、どこかの病室なら騎馬ちゃんの声が聞こえるたびに胸が痛んだ。
私は主治医よりさらに若い騎馬ちゃんを傷つけてしまった。
いつも元気な騎馬ちゃんの声が、どことなくから元気の様に聞こえて辛かった。
結果を出して次に踏み出すこと、私ができるのはそれだけだ。
病棟を少し歩きながらそんな事を考えていたら、又モンが通った。手をふってアピールするが行ってしまった。そうだね、最近担当になったばかりだから、忙しい時に手を振られたってね。
私のリハビリの時間でもないし。
私は静かに椅子にすわった。だいぶ通り過ぎて小さくなった又モンが突然戻ってきた。
「あれ?さっき手を振ってくれました?」
「はい。」
えっ、こんなタイミングで戻って来る?てっきり忙しくてスルーされたと思ったけど。
又モンは今までいないタイプの面白い人。そして、この病院は一人一人のスタッフの個性を生かしているようにも感じる。
スタッフが伸び伸びしている気がする。又モンはいつも静かだけど、楽しそうだ。
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