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第3章の2「ねっ聞いて」
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新たな敵グレート・ジュニア・ハイスクールのブリオとフォーター。和やかな商店街が一変、大乱闘の舞台となるかと思われたその時、どこからともなく現れた正義の使者・白仮面の介入により、彼らの戦いの決着はマラソン大会でつけられる事となった。…このあらすじ、何かちょっと大袈裟な気も
で、次の日。龍青学園生徒指導室、昼休み。
「ふぅ~…それにしても、無茶な事言うわね白仮面も。」
GCSA全員が集まっていた。
「まず『鬼下りごっこ大会』について説明するね。」
流香はノートパソコンを開いた。
「これを見て。」
モニターにマラソン大会のコースが出た。
「この大会は四人で四区間、合計約二十四キロを走る。スタートである鬼緑山のてっぺんから徐々に下って行くという、ほぼ下りオンリーのコースなわけ。一区間の制限時間が三十分。それを超えると失格になる。下りが鬼のようにキツいってところから『鬼下り』、そして時間に追われるってところから『鬼ごっこ』、この二つと鬼緑山を掛け合わせて『鬼下りごっこ大会』って付けられたの。」
すでに竜沢達は気付いた。逆走ってつまり…。
「白仮面が提案したこの勝負…名付けて『白仮面企画マラソン大会』に制限時間が付くのかどうかは分からないけど…ただ四時スタートって事は、本来のマラソン大会の準備が七時前位から始まると考えて、六時前後にはゴール出来ると考えてるんだと思う。」
「…なるほど。そのマラソン大会のゴールになっているのが一番下町に位置してるグレート・ジュニア・ハイスクールの校門前なんだな。つまり逆走ってことは、そこが白仮面大会のスタートになる、か。で…」
竜沢がそこまで言うと、流香が話し出す。
「そう、逆走なの。つまり…」
「ほぼ上り坂で…」
「しかも三人。」
鏡と甲のワンツー言葉に、うなずく流香。
「下りは下りで辛いけど上りはもちろんキツい。しかも三人となると…これは相当キツいわよ。」
「へんっ、俺に任せとけや。そんなもん何ともないで!」
胸を張る隆正にため息をつく流香。
「いや待て流香。今回に限っては隆正の言ってる事は大げさでも何でもないぞ。今回に限っては…だが。」
竜沢の言葉に、しかめっ面になる隆正と流香。
「今回に限っては…を強調すんなや!」
「どういうこと?」
竜沢はニヤリとして言った。
「隆正は走る事に関しては化け物って事だよ。」
そして竜沢は流香達を連れて、運動場に出て来た。
「騙されたと思ってテストしてみてくれ。」
竜沢に言われ、隆正の持久力のテストをする事にした流香。
「それじゃ行くわよ。はい…スタート。」
「よっしゃ!」
トラックを走り出す隆正。そして…
「な、何なの…」
しばらくタイムを計っていた流香が驚きの表情になった。
「言った通りだろ?」
驚いている流香達に、ちょっと自慢げに言う竜沢。
「鏡達はあいつの家に行った事ないしなぁ。」
「ええ。でも、それがどう関係してるんです?」
竜沢は鏡の質問に対し、こう答えた。
「あいつの家は…先祖代々から続いている飛脚一家なんだよ。」
ひゅ~…っと、風が吹く。流香はしばらく放心した後、話し出す。
「ひ、飛脚って、あの、じ、時代劇とかで出てくる、あの…」
驚きを隠せない流香。
「そうだ。」
軽くうなずく竜沢。
「隆正くんらしい…と言えばいいんでしょうか。」
「そんなんで納得できないし…しかもこの持久力…。ふぅ~、頭おかしくなりそ。」
長時間、速めのスピードで走り続ける隆正に頭を抱える流香であった。
「まぁこれ、かなーりの秘密な。あいつの祖父からそう言われてるから。」
竜沢の言葉に『?』な面々。
「あいつの家は運送屋なんだ…が、それは表の仕事でな。実は裏では運び屋をやってるらしい。」
竜沢は、呆然とする流香達にかまわず話しを続ける。
裏の運び屋と言ってもテレビとかで見るような、犯罪者を逃がしたりとか、そういった物騒なものではなく、単に秘密文書等の書類を運ぶ仕事だということ。郵便も使わず、このネット社会の時代に…と思うだろうが、だからこその裏稼業なのだと。一切公共の機関は使わず足一つで運ぶ事により、完全に秘密裏のうちに事が運ぶというのだ。
その範囲は日本の端から端まで…北海道から沖縄までに及ぶ。(さすがに北海道や沖縄には船に乗って渡るが)搬送者は山嵐家の血族の男のみで、隆正には兄が四人居るのだが、父親を含み、現在男五人で全国を走り回っているのだとか。隆正は幼い頃から走る事に特化した英才教育を受けており、山嵐家の長い飛脚歴史の中でもかなりの才能を持つ男とのこと。
だが今はまだ修行の身であり、高校を卒業した後、本格的に飛脚業を始めるのだという。
「ふぅ~…何というか…」
「面白いといいますか…」
竜沢から話しを聞き、苦笑いの流香と鏡。
〝俺以外にもおかしな星の下に産まれた奴がいるんだな〟
甲は、心の中で笑った。
龍青学園近くのビルの屋上では、その隆正を双眼鏡で見ている男がいた。
「オ、オオオ…オー!マイガッ!」
ブリオである。
「や、奴はモンスターでーす!エクセレンッ!信じられませーん!」
叫ぶブリオの横にフォーターもいた。
「タカマサ・ヤマアラシ、コウ・タニズミ…恐ろしい。」
「オー!フォーター!これではまともに戦っても勝ち目ナイでーす!コウ・タニズミよりタカマサ・ハリネズミをどうにかしないと、とてもダメでーすネ!」
「ヤマアラシ。」
「オー!そうでした!ハッハァッ!」
本当に分かってんのか、こいつ。
「とにかくミスター音根に報告ネ!」
ブリオとフォーターは音根に連絡した。
龍青学園生徒指導室。ここにGCSAマイナス甲プラス学美&七月の、合計六人が集まっていた。
「ふぅ~…楽勝だわ。」
流香が呆れた顔で言った。隆正の人間離れした力があれば、グレートとのマラソン勝負は楽に勝てるようである。
「問題はその音根とかいう奴やな。」
「珍しい事に隆正の言う通りだな。多分マラソン勝負の前に何かしてくるだろう。」
「珍しいとはどういう意味や!」
怒ってツッコむ隆正。
「それはいいとして…」
隆正を無視して流香が話し出す。流香が音根利住という生徒を調べたところ、とんでもない男だという情報が出てきたのだ。
「七月達にも話しておくね。………ねっ聞いて?」
スマホをいじりまくっている学美と、その学美に必死で使い方を教えている七月に、苦笑いでお願いする流香。やっとスマホが手に入り嬉しい学美だったが、使い方がよく分からずに悪戦苦闘中。
「あとで私も教えるからっ。ねっ聞いて、音根利住って男子生徒のこと。」
「わ、わかった。」
スマホを置き、何故か背筋を伸ばして聞く態勢になる学美と七月。
「ふぅ~…音根はグレート・ジュニア・ハイスクールに二ヶ月前に転校してきたようね。前にいた学校では、彼の通った後には怪我人の山が出来るという事で『怪我人製造機』と呼ばれ、恐れられていたみたい。一匹狼だったんだけど、グレートに来てすぐ外人二人と一緒にいる様になった…それが白人のマイケル・ブリオと黒人のガーデン・フォーター。それからは特に目立った問題は起こしてないんだけど、今まで病院送りにした者は五十人を下らないと言われているわ。これらの情報からして、その容姿からは想像出来ないほどケンカが大好きで、しかもかなり強い…という事になるわね。まぁ裏が取れている訳じゃないから、噂レベルの情報なんだけど。」
冷や汗を垂らしている七月と学美。
「そ、それって……誰が調べてくるの?」
「そこが気になるね。」
二人は音根プロフィール以外の事が気になっていた様だ。
「ふぅ~…情報屋。」
あっさり答える流香であった。実は例の高瀬であるが、その事は誰も知らない。
「それより、この情報が噂だけじゃないとしたら…十中八九、三人の内の誰かを襲いに来るわね。」
流香の言う三人とは、マラソンに出る事になっている甲、鏡、隆正のことである。
「そうだな、今んとこ正々堂々とスポーツ勝負してくるとは思えない。隆正は一人で下校するなよ。」
「…何で俺だけに言うんや、神侍。」
「それを聞くのか?」
「おう、聞くわい。」
「へっへっへっ。」
「はっはっはっ。」
「へーっへっへっ。」
「はーっはっはっ。」
睨み合いながら笑い合う、無気味な隆正と竜沢であった。要するに隆正以外は簡単にやられない、という事だね。
「私がそいつの立場でも隆正を狙うかなー。」
隆正を見ながら言う学美。
「うう、くそぅ…。」
静かに悔しがる隆正。
「気にしちゃいけませんよ隆正くん。あなたには誰にも負けないスピードがあるじゃないですか。」
「鏡~、ありがとぉ~。」
「でも人間離れし過ぎですよね、ははっ。」
感動していた隆正は、次の瞬間地獄に落とされた。
「いいじゃないの隆正くん。隆正くんはずば抜けて走るのが速いっ。しかも誰にも負けないくらい。私はそういう、一つの事に特化してる人、才能に溢れてる人…すごく好きだけどなー。」
地獄に落ちていた隆正は、七月の言葉によって瞬間で天に昇った。
「ありがとう七月さん!俺はやるで!」
「単純だな。」
「単細胞ですね。」
「単に深く考えない性格なんだろーね。」
竜沢、鏡、学美の三段ツッコミ。
「あれ?そう言えば甲は?」
「学美、今頃気付いたの?甲くんなら誰もいない音楽室でぐっすり眠ってるよ。何でも昨夜、迷い道妖怪に迷路に閉じ込められて出られなくなったんだって。」
「どんな妖しいゲーム?!」
七月の話しにツッコむ竜沢。
「音楽の授業中に深い眠りについたらしくて。深雪(みゆき)先生が、そのまま寝かせといてあげてって。」
「新任の深雪先生か~。あの人、心広そうだもんね。」
そんな学美と七月の会話を聞いていた竜沢は、大事なことを思い出した。
「そうだ、ミユキと言えば!」
「何です、突然?」
「鏡、帰り本屋に付き合ってくれ!」
「もしかして昨日探してた本ですか?」
「そう、世界の超常現象第三集っ。」
握り拳を作る竜沢。
「な、何その妖しい題名は。甲くんのこと言えないじゃないの。第一その妖しい本と深雪先生とがどうやったらつながるのよ?」
「ふっ、さすがの流香でも分からんか。それはな…本の中で文章を書いているのがミス・ミユキという人なんだ!今日鏡今日は三丁目の本屋に、グッと行くぞ!」
「分かる訳無いでしょ!」
「きょうきょうきょうって…引っ付けて言わないで下さい。一回多いし。まぁ付き合いますが、その代わり玄さん所のたこ焼きおごって下さい。」
そんなこんなで今日も授業のシーンなく放課後となる。
三丁目の本屋。竜沢と鏡は学校帰りにここに来ていた。
「やっと手に入った~。」
世界の超常現象第三集を握りしめ、感動している竜沢。
「よかったですね。今度からは予約する事をお勧めしますよ。マニアック過ぎです。」
「そうだな~そうしよ~。よしっ、じゃあ玄さん所のたこ焼き屋にたこ焼き買いに行こうか。」
二人はるんるんとして『玄さん所のたこ焼き屋』という名のたこ焼き屋に向かった。
周囲がやや暗くなってきていた、その道中…外灯の下で軽くステップを踏む、グレーのジャケットを着た男と出会う二人。
「何だ?」
「…竜沢くん、気を付けて下さい。」
鏡が一瞬笑顔を消した。
「鏡?…そうか、あいつが音根…」
「ええ。どうやら隆正くんじゃなかったようですね、狙われたのは。」
すでにポケットからドライバーグローブを出している鏡。そして竜沢が鏡から離れた瞬間、音根が凄いスピードで間合いをつめて来た!そして…
「ふんっ♪」
勢いに任せた音根の右のパンチを、鏡はそのスピードに関心しながらも後ろに素早く下がって距離を取りつつ首を左に傾けてかわす。
「ふんっ♪」
「ととっ。」
続いて左のジャブ!これまた後ろに下がりながら、次は首を右に傾けてかわす鏡。
「…すっげ。」
竜沢は想像を上回る音根の速さに驚いていた。それでもどこか落ち着いているのは、鏡は負けないと確信しているからだ。
「ふふんっ♪」
「なるほど。」
鏡はリズミカルに動く音根のタイミングをつかんできた。
「ふふん…ふんっ♪」
今まで以上の鋭いパンチを繰り出す音根。右のストレートだ。
バシィッ!
夜空に鋭い音が響く。鏡が音根のストレートを左手でブロックした音だった。
「ふふん♪避け切れなかった…って事だよね♪」
「そうですね。でも…」
バキッ!
「ぐっ?!」
「僕があなたなら、絶対に動きを止めませんけどね。」
音根は鏡の左ジャブを右頬の下辺りにくらい、ガクリと片膝をついた。
「さすが鏡。おみごとっ。」
近付いて来る竜沢。
「やれやれ、簡単に言わないで下さいよ。」
気を抜いた鏡。その時…
「ふふん♪」
再び動き出す音根。
「ヤバいっ!」
その竜沢の叫びと同時に音根は立ち上り、そのまま鏡のあご目掛けて右のアッパーを繰り出した。
「くっ!」
一瞬、鏡の表情が真剣になった。そして…
「鏡っ?!」
鏡がアッパーをくらったと思い、驚きの声を上げる竜沢。
「…ふー、やれやれ。」
鏡のあごと音根の右拳の間に、鏡の右手が入っていた。鏡は何とか音根のアッパーを防いでいた。
「ふふん♪ふん♪」
今度は鏡に打ち返される前にバックステップで離れる音根。
「やっぱり山嵐を狙うより、僕はこっちの方が楽しいな♪…今日は挨拶代わりだよ、川波鏡。必ず僕が君を倒す。ふっ、ははっ♪」
不気味な笑い声を残し、去って行く音根。
「何て奴だ。鏡の拳をくらって、まだあれだけ動けるなんて。」
「何言ってるんです。竜沢くんだってそうだったじゃないですか。」
ドライバーグローブをはずしながら、鏡がニコやかに言った。
「そ、そうだっけ?」
「僕はあの時の竜沢くんの方がよっぽど恐かったですよ。」
「おいおい、人を化け物みたいに言うなよ。」
「おや?」
「てめっ!『違いましたか?』…みたいな顔すんな!」
「ははっ。」
不気味な音根の事など忘れて、楽しげにたこ焼き屋を目指す二人であった。
で、次の日。龍青学園生徒指導室、昼休み。
「ふぅ~…それにしても、無茶な事言うわね白仮面も。」
GCSA全員が集まっていた。
「まず『鬼下りごっこ大会』について説明するね。」
流香はノートパソコンを開いた。
「これを見て。」
モニターにマラソン大会のコースが出た。
「この大会は四人で四区間、合計約二十四キロを走る。スタートである鬼緑山のてっぺんから徐々に下って行くという、ほぼ下りオンリーのコースなわけ。一区間の制限時間が三十分。それを超えると失格になる。下りが鬼のようにキツいってところから『鬼下り』、そして時間に追われるってところから『鬼ごっこ』、この二つと鬼緑山を掛け合わせて『鬼下りごっこ大会』って付けられたの。」
すでに竜沢達は気付いた。逆走ってつまり…。
「白仮面が提案したこの勝負…名付けて『白仮面企画マラソン大会』に制限時間が付くのかどうかは分からないけど…ただ四時スタートって事は、本来のマラソン大会の準備が七時前位から始まると考えて、六時前後にはゴール出来ると考えてるんだと思う。」
「…なるほど。そのマラソン大会のゴールになっているのが一番下町に位置してるグレート・ジュニア・ハイスクールの校門前なんだな。つまり逆走ってことは、そこが白仮面大会のスタートになる、か。で…」
竜沢がそこまで言うと、流香が話し出す。
「そう、逆走なの。つまり…」
「ほぼ上り坂で…」
「しかも三人。」
鏡と甲のワンツー言葉に、うなずく流香。
「下りは下りで辛いけど上りはもちろんキツい。しかも三人となると…これは相当キツいわよ。」
「へんっ、俺に任せとけや。そんなもん何ともないで!」
胸を張る隆正にため息をつく流香。
「いや待て流香。今回に限っては隆正の言ってる事は大げさでも何でもないぞ。今回に限っては…だが。」
竜沢の言葉に、しかめっ面になる隆正と流香。
「今回に限っては…を強調すんなや!」
「どういうこと?」
竜沢はニヤリとして言った。
「隆正は走る事に関しては化け物って事だよ。」
そして竜沢は流香達を連れて、運動場に出て来た。
「騙されたと思ってテストしてみてくれ。」
竜沢に言われ、隆正の持久力のテストをする事にした流香。
「それじゃ行くわよ。はい…スタート。」
「よっしゃ!」
トラックを走り出す隆正。そして…
「な、何なの…」
しばらくタイムを計っていた流香が驚きの表情になった。
「言った通りだろ?」
驚いている流香達に、ちょっと自慢げに言う竜沢。
「鏡達はあいつの家に行った事ないしなぁ。」
「ええ。でも、それがどう関係してるんです?」
竜沢は鏡の質問に対し、こう答えた。
「あいつの家は…先祖代々から続いている飛脚一家なんだよ。」
ひゅ~…っと、風が吹く。流香はしばらく放心した後、話し出す。
「ひ、飛脚って、あの、じ、時代劇とかで出てくる、あの…」
驚きを隠せない流香。
「そうだ。」
軽くうなずく竜沢。
「隆正くんらしい…と言えばいいんでしょうか。」
「そんなんで納得できないし…しかもこの持久力…。ふぅ~、頭おかしくなりそ。」
長時間、速めのスピードで走り続ける隆正に頭を抱える流香であった。
「まぁこれ、かなーりの秘密な。あいつの祖父からそう言われてるから。」
竜沢の言葉に『?』な面々。
「あいつの家は運送屋なんだ…が、それは表の仕事でな。実は裏では運び屋をやってるらしい。」
竜沢は、呆然とする流香達にかまわず話しを続ける。
裏の運び屋と言ってもテレビとかで見るような、犯罪者を逃がしたりとか、そういった物騒なものではなく、単に秘密文書等の書類を運ぶ仕事だということ。郵便も使わず、このネット社会の時代に…と思うだろうが、だからこその裏稼業なのだと。一切公共の機関は使わず足一つで運ぶ事により、完全に秘密裏のうちに事が運ぶというのだ。
その範囲は日本の端から端まで…北海道から沖縄までに及ぶ。(さすがに北海道や沖縄には船に乗って渡るが)搬送者は山嵐家の血族の男のみで、隆正には兄が四人居るのだが、父親を含み、現在男五人で全国を走り回っているのだとか。隆正は幼い頃から走る事に特化した英才教育を受けており、山嵐家の長い飛脚歴史の中でもかなりの才能を持つ男とのこと。
だが今はまだ修行の身であり、高校を卒業した後、本格的に飛脚業を始めるのだという。
「ふぅ~…何というか…」
「面白いといいますか…」
竜沢から話しを聞き、苦笑いの流香と鏡。
〝俺以外にもおかしな星の下に産まれた奴がいるんだな〟
甲は、心の中で笑った。
龍青学園近くのビルの屋上では、その隆正を双眼鏡で見ている男がいた。
「オ、オオオ…オー!マイガッ!」
ブリオである。
「や、奴はモンスターでーす!エクセレンッ!信じられませーん!」
叫ぶブリオの横にフォーターもいた。
「タカマサ・ヤマアラシ、コウ・タニズミ…恐ろしい。」
「オー!フォーター!これではまともに戦っても勝ち目ナイでーす!コウ・タニズミよりタカマサ・ハリネズミをどうにかしないと、とてもダメでーすネ!」
「ヤマアラシ。」
「オー!そうでした!ハッハァッ!」
本当に分かってんのか、こいつ。
「とにかくミスター音根に報告ネ!」
ブリオとフォーターは音根に連絡した。
龍青学園生徒指導室。ここにGCSAマイナス甲プラス学美&七月の、合計六人が集まっていた。
「ふぅ~…楽勝だわ。」
流香が呆れた顔で言った。隆正の人間離れした力があれば、グレートとのマラソン勝負は楽に勝てるようである。
「問題はその音根とかいう奴やな。」
「珍しい事に隆正の言う通りだな。多分マラソン勝負の前に何かしてくるだろう。」
「珍しいとはどういう意味や!」
怒ってツッコむ隆正。
「それはいいとして…」
隆正を無視して流香が話し出す。流香が音根利住という生徒を調べたところ、とんでもない男だという情報が出てきたのだ。
「七月達にも話しておくね。………ねっ聞いて?」
スマホをいじりまくっている学美と、その学美に必死で使い方を教えている七月に、苦笑いでお願いする流香。やっとスマホが手に入り嬉しい学美だったが、使い方がよく分からずに悪戦苦闘中。
「あとで私も教えるからっ。ねっ聞いて、音根利住って男子生徒のこと。」
「わ、わかった。」
スマホを置き、何故か背筋を伸ばして聞く態勢になる学美と七月。
「ふぅ~…音根はグレート・ジュニア・ハイスクールに二ヶ月前に転校してきたようね。前にいた学校では、彼の通った後には怪我人の山が出来るという事で『怪我人製造機』と呼ばれ、恐れられていたみたい。一匹狼だったんだけど、グレートに来てすぐ外人二人と一緒にいる様になった…それが白人のマイケル・ブリオと黒人のガーデン・フォーター。それからは特に目立った問題は起こしてないんだけど、今まで病院送りにした者は五十人を下らないと言われているわ。これらの情報からして、その容姿からは想像出来ないほどケンカが大好きで、しかもかなり強い…という事になるわね。まぁ裏が取れている訳じゃないから、噂レベルの情報なんだけど。」
冷や汗を垂らしている七月と学美。
「そ、それって……誰が調べてくるの?」
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二人は音根プロフィール以外の事が気になっていた様だ。
「ふぅ~…情報屋。」
あっさり答える流香であった。実は例の高瀬であるが、その事は誰も知らない。
「それより、この情報が噂だけじゃないとしたら…十中八九、三人の内の誰かを襲いに来るわね。」
流香の言う三人とは、マラソンに出る事になっている甲、鏡、隆正のことである。
「そうだな、今んとこ正々堂々とスポーツ勝負してくるとは思えない。隆正は一人で下校するなよ。」
「…何で俺だけに言うんや、神侍。」
「それを聞くのか?」
「おう、聞くわい。」
「へっへっへっ。」
「はっはっはっ。」
「へーっへっへっ。」
「はーっはっはっ。」
睨み合いながら笑い合う、無気味な隆正と竜沢であった。要するに隆正以外は簡単にやられない、という事だね。
「私がそいつの立場でも隆正を狙うかなー。」
隆正を見ながら言う学美。
「うう、くそぅ…。」
静かに悔しがる隆正。
「気にしちゃいけませんよ隆正くん。あなたには誰にも負けないスピードがあるじゃないですか。」
「鏡~、ありがとぉ~。」
「でも人間離れし過ぎですよね、ははっ。」
感動していた隆正は、次の瞬間地獄に落とされた。
「いいじゃないの隆正くん。隆正くんはずば抜けて走るのが速いっ。しかも誰にも負けないくらい。私はそういう、一つの事に特化してる人、才能に溢れてる人…すごく好きだけどなー。」
地獄に落ちていた隆正は、七月の言葉によって瞬間で天に昇った。
「ありがとう七月さん!俺はやるで!」
「単純だな。」
「単細胞ですね。」
「単に深く考えない性格なんだろーね。」
竜沢、鏡、学美の三段ツッコミ。
「あれ?そう言えば甲は?」
「学美、今頃気付いたの?甲くんなら誰もいない音楽室でぐっすり眠ってるよ。何でも昨夜、迷い道妖怪に迷路に閉じ込められて出られなくなったんだって。」
「どんな妖しいゲーム?!」
七月の話しにツッコむ竜沢。
「音楽の授業中に深い眠りについたらしくて。深雪(みゆき)先生が、そのまま寝かせといてあげてって。」
「新任の深雪先生か~。あの人、心広そうだもんね。」
そんな学美と七月の会話を聞いていた竜沢は、大事なことを思い出した。
「そうだ、ミユキと言えば!」
「何です、突然?」
「鏡、帰り本屋に付き合ってくれ!」
「もしかして昨日探してた本ですか?」
「そう、世界の超常現象第三集っ。」
握り拳を作る竜沢。
「な、何その妖しい題名は。甲くんのこと言えないじゃないの。第一その妖しい本と深雪先生とがどうやったらつながるのよ?」
「ふっ、さすがの流香でも分からんか。それはな…本の中で文章を書いているのがミス・ミユキという人なんだ!今日鏡今日は三丁目の本屋に、グッと行くぞ!」
「分かる訳無いでしょ!」
「きょうきょうきょうって…引っ付けて言わないで下さい。一回多いし。まぁ付き合いますが、その代わり玄さん所のたこ焼きおごって下さい。」
そんなこんなで今日も授業のシーンなく放課後となる。
三丁目の本屋。竜沢と鏡は学校帰りにここに来ていた。
「やっと手に入った~。」
世界の超常現象第三集を握りしめ、感動している竜沢。
「よかったですね。今度からは予約する事をお勧めしますよ。マニアック過ぎです。」
「そうだな~そうしよ~。よしっ、じゃあ玄さん所のたこ焼き屋にたこ焼き買いに行こうか。」
二人はるんるんとして『玄さん所のたこ焼き屋』という名のたこ焼き屋に向かった。
周囲がやや暗くなってきていた、その道中…外灯の下で軽くステップを踏む、グレーのジャケットを着た男と出会う二人。
「何だ?」
「…竜沢くん、気を付けて下さい。」
鏡が一瞬笑顔を消した。
「鏡?…そうか、あいつが音根…」
「ええ。どうやら隆正くんじゃなかったようですね、狙われたのは。」
すでにポケットからドライバーグローブを出している鏡。そして竜沢が鏡から離れた瞬間、音根が凄いスピードで間合いをつめて来た!そして…
「ふんっ♪」
勢いに任せた音根の右のパンチを、鏡はそのスピードに関心しながらも後ろに素早く下がって距離を取りつつ首を左に傾けてかわす。
「ふんっ♪」
「ととっ。」
続いて左のジャブ!これまた後ろに下がりながら、次は首を右に傾けてかわす鏡。
「…すっげ。」
竜沢は想像を上回る音根の速さに驚いていた。それでもどこか落ち着いているのは、鏡は負けないと確信しているからだ。
「ふふんっ♪」
「なるほど。」
鏡はリズミカルに動く音根のタイミングをつかんできた。
「ふふん…ふんっ♪」
今まで以上の鋭いパンチを繰り出す音根。右のストレートだ。
バシィッ!
夜空に鋭い音が響く。鏡が音根のストレートを左手でブロックした音だった。
「ふふん♪避け切れなかった…って事だよね♪」
「そうですね。でも…」
バキッ!
「ぐっ?!」
「僕があなたなら、絶対に動きを止めませんけどね。」
音根は鏡の左ジャブを右頬の下辺りにくらい、ガクリと片膝をついた。
「さすが鏡。おみごとっ。」
近付いて来る竜沢。
「やれやれ、簡単に言わないで下さいよ。」
気を抜いた鏡。その時…
「ふふん♪」
再び動き出す音根。
「ヤバいっ!」
その竜沢の叫びと同時に音根は立ち上り、そのまま鏡のあご目掛けて右のアッパーを繰り出した。
「くっ!」
一瞬、鏡の表情が真剣になった。そして…
「鏡っ?!」
鏡がアッパーをくらったと思い、驚きの声を上げる竜沢。
「…ふー、やれやれ。」
鏡のあごと音根の右拳の間に、鏡の右手が入っていた。鏡は何とか音根のアッパーを防いでいた。
「ふふん♪ふん♪」
今度は鏡に打ち返される前にバックステップで離れる音根。
「やっぱり山嵐を狙うより、僕はこっちの方が楽しいな♪…今日は挨拶代わりだよ、川波鏡。必ず僕が君を倒す。ふっ、ははっ♪」
不気味な笑い声を残し、去って行く音根。
「何て奴だ。鏡の拳をくらって、まだあれだけ動けるなんて。」
「何言ってるんです。竜沢くんだってそうだったじゃないですか。」
ドライバーグローブをはずしながら、鏡がニコやかに言った。
「そ、そうだっけ?」
「僕はあの時の竜沢くんの方がよっぽど恐かったですよ。」
「おいおい、人を化け物みたいに言うなよ。」
「おや?」
「てめっ!『違いましたか?』…みたいな顔すんな!」
「ははっ。」
不気味な音根の事など忘れて、楽しげにたこ焼き屋を目指す二人であった。
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44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
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拓海の生活はどうなるのか!?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
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