龍青学園GCSA

楓和

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第4章の8「冷静だよ」

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 第二試合は竜沢と隆正の短距離走対決が繰り広げられた。
左腕骨折のハンデが有るとはいえ走る事に関しては確実に隆正が有利。それでもいつもの勢いがない隆正の事を終始気に掛ける竜沢。そんな竜沢に対し、隆正は複雑な思いを巡らせる。

 「お前を信じてたからだ。」

スタート直前の竜沢の言葉に隆正は己を取り戻し、竜沢との戦いに敗れた後、龍青学園へ戻ってきたのであった。



 「さぁ続いての第三試合は、体育館で剣道対決でーす!」
 「森林文房対天野流香先輩ですぅ!咲子、向かいまぁーす!」

我先にと体育館に向かう観客達。
体育館では、袴に着替える為に更衣室へ向かう流香に七月が声を掛けていた。

 「今日って歌祭りスペシャルにまゆみんが出るんだよねー、楽しみっ。」
 「ふぅ~、私はシェインの方が楽しみね。新曲初披露だし。」

二人は歌番組の話しで盛り上がっていた。森林、なめられてるで。

 「良かった、ちゃんと冷静だね。」

笑顔で言う七月に流香が答える。

 「あの時とは違うわよ。大丈夫、今は冷静だよ。」
 「流香、それでも…気は抜かないでよ?」
 「ふぅ~、私に抜かり無し。」

一度森林に一対一で負けている流香だが、果たして…。

 「さぁ体育館の友美です!咲子ちゃん、お帰り。」
 「ただいまですぅ!竜沢さんカッコ良かったですよぉ!」
 「良かったねー。さぁ、いよいよ第三試合!選手の方は準備して下さーい!」

ほのぼのした放送。だが、いつまでもほのぼのとしてはいられない。
黒点塾はここでも忍術という名を借りた卑怯な策を施していた。それは…


 「流香!」

着替えて来た流香の方へ走って来る七月。

 「どうしたの七月?慌てると転ぶわよ。」
 「咲ちゃんかっ。いやいやそんな事よりっ!防具を着けないってどういう事よ!」
 「どうと言われても…そうなのよ。」
 「どうなのよ!」

真剣な顔でボケとツッコミをする二人。

 「向こうがそう言ってきたから。例の掲示物にも書いてたんだって、蚤並みの字で。知ってたけど。」
 「いやあんた、そんな簡単に…」

防具なしでは危険だと七月は言いたいのだ。流香だってそんな事は百も承知である。

 「さっき言ったでしょ?私は冷静だよ。」
 「流香…」
 「そんな顔しないの。私を信じなさい。」

流香は森林が待つ畳ステージに上がった。森林は余裕の表情を浮かべている。
そして学美が手当てを終えて竜沢達と合流。畳ステージ脇に皆が集まった。

 「さぁ、今回は一本取るかギブアップするかの真剣勝負。前のように助けなど入らんからなぁ。逃がしはしないぞ。こんな竹刀よりシャーペンやメジャーの方がいいんだが、まぁハンデだな。お前の様な弱い奴にはこれで十分よ。一発で決めずにボロボロにしてやる。俺は女が苦しむ顔がけっこう好きでな。」

長々としゃべって舌なめずりをする森林に対し、流香は呆れ顔でこう言った。

 「ふぅ~、ホントよくしゃべる。」
 「何ぃ…?」
 「弱い何とか…って言うけど正にこの事?」
 「き、貴様ぁっ!」
 「そんな事より聞いていい?…好きなのコケシ?リスペクト?」

森林の髪形を見て言う流香に、森林は遂に激怒した。
 
 「ぜ、絶対に許さん…」

真っ赤な顔をして歯ぎしりする森林。


 「これより第三試合を開始します!お互いに、礼!」

今回の審判は華澄野が務める。

 「それでは…」

華澄野の手が上がる。

 「ぐぬぬぬ…泣いてすがるまで痛めつけてやるっ。」

怒り心頭の森林、竹刀を握る手にも力が入った。

 「始め!」

パァンっ。

 「……え?」

場内『シ~ン』。森林『ポか~ン』。華澄野『ポケ~』。

 「審判、どうぞ。」

流香が声をかけると『はっ』と我に返る華澄野。

 「い、一本!それまで!」

間を置いてから大歓声が上がった。
開始直後、流香は電光石火で間合いを詰め、すれ違いざまに軽い『面』を鋭く叩き込んだのだ。 

 「そ、そんな…」
 「じゃ、礼っと。」

痛さも何も感じる事なくただ放心している森林に一礼し、ステージを下りる流香。

 「き……きゃー!流香先輩ステキですぅ!カッコいいー!」

咲子、マイクで叫ぶ。

 「すっ………げぇっ!さすが流香!相手が前回勝ってる気で調子ぶっこいてクッソ油断して間抜けに気ぃ抜いてるところにちょっと小バカにして頭に血を上らせて赤いコケシみたいにして力ませておいてから一気に似合ってねぇ坊ちゃん刈りの脳天に一本入れるなんてな!」
 「出てるぞ格闘王。」

興奮しながら全てを説明する七月に真顔でツッコむ学美。

 「やるな流香!防具無し試合に簡単に乗ったのは、相手の油断を誘うと同時に身軽になってスピード勝負に出る狙いだったんだな!」

竜沢と鏡が流香に駆け寄ろうとした…その時!

 「こ、こんな…お…俺は認めんぞー!」

逆上した森林が流香に背後から襲いかかった!

 「?!」

振り向く流香。だが構える間は無く、森林が振り下ろす竹刀が視界に入った。

 「…!」

思わず目をつぶってしまった流香は一瞬前に出たような感覚がした後、心地よい暖かさを感じた。痛みを感じない事を不思議に思いながらゆっくり目を開けると、鏡の横顔が間近にあった。

 「えふぇえ?!」

驚くのと照れるのが一緒になってる流香。

 「ぐ、ぐげぇ…は、早す、ぎ…」

流香を左手で抱きかかえた鏡の右拳が森林の鳩尾にめり込んでいる。鏡は前に出る事によって竹刀をかわすと同時に森林の懐に入り、右ストレートを決めたのだ。気を失って倒れ落ちる森林。

 「大丈夫ですか?」

笑顔で流香に尋ねる鏡。

 「え、ええ、あ、うん。」

訳の分からんどもり方をする流香。

 「い、今の鏡、音根らを倒す時より早かったんちゃうか?」
 「最速だったな。」

冷や汗を垂らす隆正と竜沢。

 「あ、ありがとう。」

たった今、森林から電光石火の一本を取った人と同一人物とは思えない流香の変わり様。

 「そ、それじゃ着替えてくるね。」

そそくさと去ってしまう流香を見送ってから竜沢達は鏡に寄って来る。

 「鏡!鏡!」
 「な、何です?」

ニタニタしている竜沢と隆正が近付いてきたので、ちょっと引き気味の鏡。

 「いい加減に言ったらどうだ?」
 「はい?」
 「だからやな、流香にやなぁ痛っ!」

竜沢と隆正は話しの途中で誰かに頭をはたかれた。

 「ってえ、何だよ七月っ。」

頭を押さえて振り向く竜沢と隆正。

 「外野は余計な事するなって言ったのは神ちゃんでしょ?」

七月はそう言って二人の耳を強く引っ張る。

 「いてててててててっ!」

そんな竜沢達を見て、苦笑いの鏡であった。
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