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第1章・第3話「大事な友達なんだ」
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俺達はコウケン山に向かっていた。
ジンセン村を出てから比較的狭い砂漠を抜け、一つ目の山であるサイケン山に入ったところだ。
ジンセン村で出会ったイオンとかいう巫女と、その村にいた水の精獣であるミズリ。こいつらと一緒にな。
本当は俺がミズリの力を貸りて終わりだったんだが…ミズリが言うには、既に三精獣と契約している俺には重い(?)とか何とか。
俺も知らない事だが、三精獣と契約すること自体がかなり無謀なんだそうだ。今の俺がミズリの力を借りれば、最悪俺の心・体ともに耐え切れずに崩壊すると言った。それは俺も困る。
エデンの敵を討つまで、俺は死ぬ訳にいかないからだ。
「ねぇ、あれは何ていう生き物?あれは?」
イオン…うるさい女だな。俺にとってそんなモノどうでもいいんだよ。けど、まぁ…
「あれはアンルって草食動物だ。角が大きいほど強い。あっちはボウドリの仲間でコウトウボウドリ。長い足を持つボウドリの中でも一番長い足を持つ鳥だ。あと…」
《お前、マメだな》
「う、うるさいぞミズリ。」
そうじゃない。俺はただこいつを利用しようと考えてるだけだ。
《利用?うーん、そうは思えないよねー》
ビックリした。俺の思考を勝手に読んで、急に頭ん中に話し掛けてくんな。
《同感》
また。お前らいい加減にしろ。
俺の頭に直接話し掛けているのは地の精獣・リクウと風の精獣・リョクヒ。あと…火の精獣・カウムが居るんだが、こいつは俺がリクウ達と契約してからあんまり話し掛けてこなくなったな。
《女が気に入ったのか》
び、びっくりした!あんまり話し掛けてこないって言った瞬間話し掛けんなよ。
しかも何だ?俺がイオンを気に入っただと?何を馬鹿な事言ってやがる!
《貴様も若い男だったという事だ》
はぁ?意味分かんね。若い男だと何でイオンを気に入るんだ。
《ふぅ…》
いや、おかしいよな?精獣が溜息とかおかしいよな?カウム、お前完全に俺を馬鹿にしてるよな?
その後もあーだこーだと頭の中で言いたい放題だ。
ミズリ…お前の言った事が分かった。こうして獣精達が頭の中でわちゃわちゃ話しまくるもんだから俺の心が崩壊するんだな?そうなんだな?
けど、体はどうして崩壊する?
《…》
《…》
《…》
…ほーら。こいつら肝心な事は黙りやがる。どうでもいい事には黙れって言っても黙らないクセに。
母さんが言ってたプロテクト…か。
「ジュウビ、もう日が暮れるよ。」
「あ、ああ。そうだな。」
今迄はどうとでもなったが…イオンが居るからな。どこか体が痛くならない様、平らな場所を探そう。
《女の子に優しい》
リョクヒ、ぶっ飛ばす。
《私が作ってあげるよー》
何だって?
リクウがそう言うと、俺の腕輪から勝手に出てきやがった。
「わ?!」
イオンが驚いてやがる。まぁ急に出てくりゃ無理もないか。
《初めましてー。私はリクウ。地の精獣でーす》
「え、あ…初めまして。」
真っ白の身体に赤茶色の目。羽の様に見える長い耳が四つある。尾は短く、体毛はフサフサ。前足は長いが後足は折れ曲がっていて短く見える。リクウは精獣の中じゃ割と親しみ易い姿をしてるといえる。ただ一か所を除いて…
《久しぶりにちょっと空気吸おーっと》
「ひ…ひぃぃっ?!」
普段リクウの口は見えないが、いざ開くと…前足の付け根まで開く大口だ。口が裂けて見えるし、細かい牙が多いから余計に気味が悪い。
《あー、やっぱ外の空気も吸わないと。ね?イオンちゃん》
「は、はい、そそそうですね。」
引きつってやがる。まぁそうなるな。
《じゃ、いくよー》
リクウの奴、何をする気だ。…え?嘘?
リクウが息を吹きかけるとその部分から草が生え、徐々に広がっていく。まるで緑の絨毯だ。
しかもこの草…踏んでも茎が折れない。なんて強い草だ。なのに凄いクッション性…って、おい。俺だけの時はこんな事してくれなかったよな…。
《だって…ねぇ?ミズリ》
《リクウ、私に同意を求めるな》
俺に優しくする気は無いって事かよ。
《ジュウビは男だから。んで……生意気だし》
おい。
「うわー、凄い。ホントに気持ち良いっ。ありがとう、リクウ様。」
《どう致しましてー。やっぱり可愛いー》
口を大きく開いて喜びを表してるな、リクウ。けどその口じゃあ…
「ひぃぃっ!」
ほら見ろ。イオンがビビってる。
《…》
「うお?!」
今度はリョクヒが勝手に出て来やがった。何だよ無言で?何で出て来た?
「あ、えと…リョクヒ様?は、初めまして。」
《う、うん…これはどう?》
え?嘘?
…リョクヒの奴、折れた木を運んでるのか?風に乗って木が飛んできたぞ。そしてリクウが用意した草の上に乗った。で…木の上部を風で切ったか。平らになったぞ。
「わぁ…丸太のテーブルですか。凄いっ。」
《…う、うふ》
うふじゃねぇよ。その顔で何を照れてやがる。
俺にあーだこーだ言ってたが…お前らじゃないか、デレデレなのは。
と言うか、俺は今迄こんな気の利いた事してもらった事ないぞ。
《それは、まぁ》
お前もか。
「あーくそ。とりあえず何か食料を探してくる。お前はここで獣達と待ってろ。」
あっちに木の実っぽいのがあったな。あと…川で魚か何かを捕って来るか。
この山…ミズリがサイケン山とか言ってたな。このサイケン山は木々が茂ってて、おまけに小川もある。食い物には困らないだろう。
それに山に入ってから危険な動物に一度も出会っていない。ま、問題なく明日には越えられるだろう。
それにしても…あいつら、イオンに甘すぎじゃねぇか?
《男がぼやくな》
まだお前が居たんだった…
《おい…構えろ》
「何だよ?」
《…気を研ぎ澄ませろ》
「?!」
……何だ?何か…いる!
俺は咄嗟に、腰に装着している短剣を抜いた。一瞬、冷や汗が出るほどの危険な気配を感じたからだ。
そして、相手も俺に気付いたようだが…
肉食獣…か?
《かもな。焼くか》
馬鹿野郎、こんな草木の生い茂った中でお前の力を借りたら、回り全てが燃えるだろうが。
《今のお前だとそうなるな》
くそー、どうせ俺は未熟だよ。今はとにかく、何とかする方法を考えないと…
《俺が出よう》
そう言ってカウムが腕輪から出た。こいつら勝手に出たり入ったりするよな。
《さて…焼いて食おうか》
カウムは四つ足で構えた。様になってやがる。
カウムは、大きさこそミズリやリョクヒと同じ位だが、前足と後足の付け根部分の筋肉が発達していて、他の奴らよりデカく見える。体毛は短めで、赤と黒のシマ模様。
長い首から背中にかけて赤いたてがみがあり、それはまるで炎の様だ。
尾は黒くてフサフサだから見る度にちょっと…触りたくなる。
長めの顔には額部分から鼻先まで赤いラインが付いている。
口はリクウ程じゃないがデカめで、デカい牙が二本生えている。そして俺が一番気になるのが…目付きの悪さだ。
まぁ、ミズリの目も相当だが…。
《どうやら…去った様だな》
「え?」
《俺の姿を見て恐れをなしたか…それとも…》
カウムが構えを解いた。確かにカウムの姿は一般的に怖いからな。
「あいつらの方に向かったんじゃないよな?」
《反対方向だ》
「そうか。」
とりあえず良かった…が、危険な生物が居ると分かった以上、今夜は寝ずの番か。明日は急いで山を越えるようにしないとな。
《ふん、焼いて食えば問題ない》
無茶苦茶言いやがる。とにかく早いところ食料を調達して戻ろう。
俺は、近くの木の実だけを採り、急いでイオンの所に戻った。
「あー、おかしいっ。あ、おかえりー。」
《もう戻って来たのー、つまんない》
《早過ぎる》
リクウ、リョクヒ…こいつら殴ってやりてぇ。どうやらイオンは、リョクヒやリクウから俺の事を聞いていて盛り上がってたらしい。
《ん?何かあったのか》
ミズリ…こいつが一番まともだ。
《リクウもリョクヒも神子が居なかったからな。ずっと寂しかったんだろう》
おっと、もうカウムは俺の腕輪に入っているからか。俺の思考を読めるんだな。
《お前は俺の神子だろ。腕輪に入っていなくても思考はつながる》
そうだった。
《だから聞こえたぞ。俺が思っている通り、やはり俺は一般的に怖い姿なんだな》
スネんなよ…。俺はお前を一度も恐いと思った事無いぞ。
《知ってる》
それにしても…リクウやリョクヒにはいつも優しいよな、カウムは。
「どうかしたの?ジュウビ。」
「…危険な何かが居た。肉食獣かもしれない。」
「え?!」
《何?おかしいな。サイケン山にはそんな生物は居ないはずだ》
《あれはかなり危ない感じだったぞ》
《むぅ…》
ミズリはこの山を知っているんだな。しかし…じゃああの気配は何だったんだ。普段この山には居ない生物、か…
「とにかく今夜は俺が見張る。明日は早めに出発してこの山を越えるぞ。」
俺は焚火が消えないよう、多めに用意した薪の近くに座って見張っていた。
夜中は少し冷える。ん?誰かが近付いて来た。
「…イオン?」
「交代するよ。」
「大丈夫だ。お前は寝とけ。」
「少し寝たよ。だから次はジュウビが寝て。」
「…お前は本当に良い奴なんだな。」
「え?!なな、何それ?」
「いや、別に深い意味はない。俺の村は女の子が居なかったから。相手に優しい言葉をかける男なんか居ないだろ。」
「そっか、ミズリ様が言ってた。でも…どうして男同士だと相手に優しくないの?」
「う?ん?うーん…そういや何でだ?」
「ぷっ、はははっ。」
「え…?」
こいつ、こんな顔で笑うんだ。良い笑顔だな…。あ、ヤバい。理由は分からんがヤバい気がする。
「な、何で笑うんだっ。」
目、逸らしちまった。
「だっておかしいじゃない。優しさに男も女も関係無いでしょ?そこに今迄気付かないなんて。」
「う、うっるせぇなっ。考えた事も無かったんだからしょーがねぇだろっ。」
やっぱりヤバい。何でかイオンの顔見れねぇし。
「でも…良い奴なのはジュウビも一緒だよ。」
「え?」
「だって、私の顔見て慌てて薬箱探し出すんだもん。」
「い、あ、そりゃ、なぁ…」
言葉が上手く出ないのは何でだ?くっそ、こういう時にこそ出て来いよ、カウム。
《…》
絶対こいつ楽しんでやがる。
「ねぇ、ジュウビ。あの時言ってた、その、エデンって…」
聞いていいのかどうなのか、戸惑いながら…って感じだな。まぁ…別に隠す事も無いんだが…
「…俺の…相棒だ。」
イオン、こいつには手を貸してもらわないと困る。だから…エデン、お前の事を少しだけこいつに話そうと思う。
あの男の事は、あまり話さずに…な。
「エデンは、俺が産まれた時からずっと傍に居てくれた、大事な友達なんだ。」
エデン…この話しはやっぱり辛くて悲しい。エデン、お前に………会いたい。
ジンセン村を出てから比較的狭い砂漠を抜け、一つ目の山であるサイケン山に入ったところだ。
ジンセン村で出会ったイオンとかいう巫女と、その村にいた水の精獣であるミズリ。こいつらと一緒にな。
本当は俺がミズリの力を貸りて終わりだったんだが…ミズリが言うには、既に三精獣と契約している俺には重い(?)とか何とか。
俺も知らない事だが、三精獣と契約すること自体がかなり無謀なんだそうだ。今の俺がミズリの力を借りれば、最悪俺の心・体ともに耐え切れずに崩壊すると言った。それは俺も困る。
エデンの敵を討つまで、俺は死ぬ訳にいかないからだ。
「ねぇ、あれは何ていう生き物?あれは?」
イオン…うるさい女だな。俺にとってそんなモノどうでもいいんだよ。けど、まぁ…
「あれはアンルって草食動物だ。角が大きいほど強い。あっちはボウドリの仲間でコウトウボウドリ。長い足を持つボウドリの中でも一番長い足を持つ鳥だ。あと…」
《お前、マメだな》
「う、うるさいぞミズリ。」
そうじゃない。俺はただこいつを利用しようと考えてるだけだ。
《利用?うーん、そうは思えないよねー》
ビックリした。俺の思考を勝手に読んで、急に頭ん中に話し掛けてくんな。
《同感》
また。お前らいい加減にしろ。
俺の頭に直接話し掛けているのは地の精獣・リクウと風の精獣・リョクヒ。あと…火の精獣・カウムが居るんだが、こいつは俺がリクウ達と契約してからあんまり話し掛けてこなくなったな。
《女が気に入ったのか》
び、びっくりした!あんまり話し掛けてこないって言った瞬間話し掛けんなよ。
しかも何だ?俺がイオンを気に入っただと?何を馬鹿な事言ってやがる!
《貴様も若い男だったという事だ》
はぁ?意味分かんね。若い男だと何でイオンを気に入るんだ。
《ふぅ…》
いや、おかしいよな?精獣が溜息とかおかしいよな?カウム、お前完全に俺を馬鹿にしてるよな?
その後もあーだこーだと頭の中で言いたい放題だ。
ミズリ…お前の言った事が分かった。こうして獣精達が頭の中でわちゃわちゃ話しまくるもんだから俺の心が崩壊するんだな?そうなんだな?
けど、体はどうして崩壊する?
《…》
《…》
《…》
…ほーら。こいつら肝心な事は黙りやがる。どうでもいい事には黙れって言っても黙らないクセに。
母さんが言ってたプロテクト…か。
「ジュウビ、もう日が暮れるよ。」
「あ、ああ。そうだな。」
今迄はどうとでもなったが…イオンが居るからな。どこか体が痛くならない様、平らな場所を探そう。
《女の子に優しい》
リョクヒ、ぶっ飛ばす。
《私が作ってあげるよー》
何だって?
リクウがそう言うと、俺の腕輪から勝手に出てきやがった。
「わ?!」
イオンが驚いてやがる。まぁ急に出てくりゃ無理もないか。
《初めましてー。私はリクウ。地の精獣でーす》
「え、あ…初めまして。」
真っ白の身体に赤茶色の目。羽の様に見える長い耳が四つある。尾は短く、体毛はフサフサ。前足は長いが後足は折れ曲がっていて短く見える。リクウは精獣の中じゃ割と親しみ易い姿をしてるといえる。ただ一か所を除いて…
《久しぶりにちょっと空気吸おーっと》
「ひ…ひぃぃっ?!」
普段リクウの口は見えないが、いざ開くと…前足の付け根まで開く大口だ。口が裂けて見えるし、細かい牙が多いから余計に気味が悪い。
《あー、やっぱ外の空気も吸わないと。ね?イオンちゃん》
「は、はい、そそそうですね。」
引きつってやがる。まぁそうなるな。
《じゃ、いくよー》
リクウの奴、何をする気だ。…え?嘘?
リクウが息を吹きかけるとその部分から草が生え、徐々に広がっていく。まるで緑の絨毯だ。
しかもこの草…踏んでも茎が折れない。なんて強い草だ。なのに凄いクッション性…って、おい。俺だけの時はこんな事してくれなかったよな…。
《だって…ねぇ?ミズリ》
《リクウ、私に同意を求めるな》
俺に優しくする気は無いって事かよ。
《ジュウビは男だから。んで……生意気だし》
おい。
「うわー、凄い。ホントに気持ち良いっ。ありがとう、リクウ様。」
《どう致しましてー。やっぱり可愛いー》
口を大きく開いて喜びを表してるな、リクウ。けどその口じゃあ…
「ひぃぃっ!」
ほら見ろ。イオンがビビってる。
《…》
「うお?!」
今度はリョクヒが勝手に出て来やがった。何だよ無言で?何で出て来た?
「あ、えと…リョクヒ様?は、初めまして。」
《う、うん…これはどう?》
え?嘘?
…リョクヒの奴、折れた木を運んでるのか?風に乗って木が飛んできたぞ。そしてリクウが用意した草の上に乗った。で…木の上部を風で切ったか。平らになったぞ。
「わぁ…丸太のテーブルですか。凄いっ。」
《…う、うふ》
うふじゃねぇよ。その顔で何を照れてやがる。
俺にあーだこーだ言ってたが…お前らじゃないか、デレデレなのは。
と言うか、俺は今迄こんな気の利いた事してもらった事ないぞ。
《それは、まぁ》
お前もか。
「あーくそ。とりあえず何か食料を探してくる。お前はここで獣達と待ってろ。」
あっちに木の実っぽいのがあったな。あと…川で魚か何かを捕って来るか。
この山…ミズリがサイケン山とか言ってたな。このサイケン山は木々が茂ってて、おまけに小川もある。食い物には困らないだろう。
それに山に入ってから危険な動物に一度も出会っていない。ま、問題なく明日には越えられるだろう。
それにしても…あいつら、イオンに甘すぎじゃねぇか?
《男がぼやくな》
まだお前が居たんだった…
《おい…構えろ》
「何だよ?」
《…気を研ぎ澄ませろ》
「?!」
……何だ?何か…いる!
俺は咄嗟に、腰に装着している短剣を抜いた。一瞬、冷や汗が出るほどの危険な気配を感じたからだ。
そして、相手も俺に気付いたようだが…
肉食獣…か?
《かもな。焼くか》
馬鹿野郎、こんな草木の生い茂った中でお前の力を借りたら、回り全てが燃えるだろうが。
《今のお前だとそうなるな》
くそー、どうせ俺は未熟だよ。今はとにかく、何とかする方法を考えないと…
《俺が出よう》
そう言ってカウムが腕輪から出た。こいつら勝手に出たり入ったりするよな。
《さて…焼いて食おうか》
カウムは四つ足で構えた。様になってやがる。
カウムは、大きさこそミズリやリョクヒと同じ位だが、前足と後足の付け根部分の筋肉が発達していて、他の奴らよりデカく見える。体毛は短めで、赤と黒のシマ模様。
長い首から背中にかけて赤いたてがみがあり、それはまるで炎の様だ。
尾は黒くてフサフサだから見る度にちょっと…触りたくなる。
長めの顔には額部分から鼻先まで赤いラインが付いている。
口はリクウ程じゃないがデカめで、デカい牙が二本生えている。そして俺が一番気になるのが…目付きの悪さだ。
まぁ、ミズリの目も相当だが…。
《どうやら…去った様だな》
「え?」
《俺の姿を見て恐れをなしたか…それとも…》
カウムが構えを解いた。確かにカウムの姿は一般的に怖いからな。
「あいつらの方に向かったんじゃないよな?」
《反対方向だ》
「そうか。」
とりあえず良かった…が、危険な生物が居ると分かった以上、今夜は寝ずの番か。明日は急いで山を越えるようにしないとな。
《ふん、焼いて食えば問題ない》
無茶苦茶言いやがる。とにかく早いところ食料を調達して戻ろう。
俺は、近くの木の実だけを採り、急いでイオンの所に戻った。
「あー、おかしいっ。あ、おかえりー。」
《もう戻って来たのー、つまんない》
《早過ぎる》
リクウ、リョクヒ…こいつら殴ってやりてぇ。どうやらイオンは、リョクヒやリクウから俺の事を聞いていて盛り上がってたらしい。
《ん?何かあったのか》
ミズリ…こいつが一番まともだ。
《リクウもリョクヒも神子が居なかったからな。ずっと寂しかったんだろう》
おっと、もうカウムは俺の腕輪に入っているからか。俺の思考を読めるんだな。
《お前は俺の神子だろ。腕輪に入っていなくても思考はつながる》
そうだった。
《だから聞こえたぞ。俺が思っている通り、やはり俺は一般的に怖い姿なんだな》
スネんなよ…。俺はお前を一度も恐いと思った事無いぞ。
《知ってる》
それにしても…リクウやリョクヒにはいつも優しいよな、カウムは。
「どうかしたの?ジュウビ。」
「…危険な何かが居た。肉食獣かもしれない。」
「え?!」
《何?おかしいな。サイケン山にはそんな生物は居ないはずだ》
《あれはかなり危ない感じだったぞ》
《むぅ…》
ミズリはこの山を知っているんだな。しかし…じゃああの気配は何だったんだ。普段この山には居ない生物、か…
「とにかく今夜は俺が見張る。明日は早めに出発してこの山を越えるぞ。」
俺は焚火が消えないよう、多めに用意した薪の近くに座って見張っていた。
夜中は少し冷える。ん?誰かが近付いて来た。
「…イオン?」
「交代するよ。」
「大丈夫だ。お前は寝とけ。」
「少し寝たよ。だから次はジュウビが寝て。」
「…お前は本当に良い奴なんだな。」
「え?!なな、何それ?」
「いや、別に深い意味はない。俺の村は女の子が居なかったから。相手に優しい言葉をかける男なんか居ないだろ。」
「そっか、ミズリ様が言ってた。でも…どうして男同士だと相手に優しくないの?」
「う?ん?うーん…そういや何でだ?」
「ぷっ、はははっ。」
「え…?」
こいつ、こんな顔で笑うんだ。良い笑顔だな…。あ、ヤバい。理由は分からんがヤバい気がする。
「な、何で笑うんだっ。」
目、逸らしちまった。
「だっておかしいじゃない。優しさに男も女も関係無いでしょ?そこに今迄気付かないなんて。」
「う、うっるせぇなっ。考えた事も無かったんだからしょーがねぇだろっ。」
やっぱりヤバい。何でかイオンの顔見れねぇし。
「でも…良い奴なのはジュウビも一緒だよ。」
「え?」
「だって、私の顔見て慌てて薬箱探し出すんだもん。」
「い、あ、そりゃ、なぁ…」
言葉が上手く出ないのは何でだ?くっそ、こういう時にこそ出て来いよ、カウム。
《…》
絶対こいつ楽しんでやがる。
「ねぇ、ジュウビ。あの時言ってた、その、エデンって…」
聞いていいのかどうなのか、戸惑いながら…って感じだな。まぁ…別に隠す事も無いんだが…
「…俺の…相棒だ。」
イオン、こいつには手を貸してもらわないと困る。だから…エデン、お前の事を少しだけこいつに話そうと思う。
あの男の事は、あまり話さずに…な。
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エレーナは、二人の過保護な兄と、五人の精鋭部下に囲まれ、美しくも最強の工作員へと成長していた。
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一方、継母イザベラは父を捨て、さらなる権力を手に入れるため、悪名高い侯爵の妻として社交界の頂点に君臨していた。
「お久しぶりです、お母様。……化け物と呼ばれた私からの、お返しを受け取ってくださいね」
捨てられた少女による、優雅で残酷な復讐劇。
今、その幕が上がる。
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