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第1章・第12話「暴走」
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ロックはザンジーの言い付け通りにガイカンから離れる為、チュウガン村を出て、ネネコと一緒に旅をしていた。
そしてチュウガン村を出てから三十日が経った。
ロックとネネコはザンジーの様子を見る為、闇夜に紛れて戻って来ていた。
家にザンジーが戻った形跡は無く、嫌な予感がしたロックは城に侵入する事を決める。
《なら獣甲ね》
ロックは師匠から獣甲の話しは聞いており、知ってはいた。しかし実際には未だ獣甲していない。この時が初めてだった。
「…よ、よし。」
信頼が強ければ強いほど深く結び付き、獣甲の危険度は下がる。
その一方、信頼が強く無ければ中途半端になり、身体への負担は大きくなる。それは最悪命を落とす結果となる。
「ネネコさん…行くぞ。」
《いつでも》
ネネコは余裕。
ちなみに信頼が弱ければ獣甲する事は出来ないので、中途半端が最も危険なのだ。
「…………」
《………いつするの?》
ロックはビビっていた。
「う、うぐ…」
今一つ踏ん切りがつかないロック。
《………人間で言うところの信用…がないのかしら?》
ネネコはシレっと言ったが、実のところ割とショック大であった。ロックとは信頼関係を築けていると思っていたからだ。
「いや…いや、違う!違うんだネネコさん!ただ…ただ、獣甲した後の自分の姿を想像してたら恐くなってきただけだ!」
力一杯恥ずかしい事を言うロック。ロックは結構恐がりなのだ。
《ふぅ、自分の姿に恐怖を感じるなんて…変な子。だってアンタは強くなるんだよ?逆に恐いモノなんか無くなると思うけど》
「そ…そっか!」
ネネコに言われて納得する単純なロック。
「獣甲だ!ネネコさん!」
《簡単ね、アンタ》
そして全体に灰色が強調された鎧がロックを覆う。
両耳部分からは尖った二つの角の様な物が生えており、首から口元に向かっては、くの字に曲がった棒状の物が互い違いに伸びていた。
少し角張った胸当てや腰当て、脛当て等には、丸に一本のラインが入った模様があり、それが少しずつ動いている。
背中からは、触ると痛そうな角張った白い翼の様な物が生えている。腰当ての後部からは先の尖った硬そうな尾が生えていた。
「こ、これが獣甲…」
《そうね。…あ。今安心してるようだけど、獣甲を解いたら多分…しばらく苦しむと思うよ》
「え?!」
《筋肉痛?神経痛?…なんか、そんな感じ》
「適当だな、おい!」
先に言えよ…と言いたいロックだったが、そこは我慢してガイカン城に行く事を優先しようと思った。とは言え、獣甲していれば考えている事は全て筒抜けであり、ネネコはロックの心の声を聞いてクスっと笑っていた。
「えーと…飛べる?」
《そうね。アンタがこの翼を飾りだと認識してたら飛べないよ》
「は?!え、えーと、と、飛べる飛べる飛べる…飛べる!」
ロックがそう念じた時、身体がフワッと宙に浮いた。
「おお!」
《コツがつかめた?じゃあ行きましょ》
「ぅおう!」
若干まだビビっている。
ガイカン城上空。
獣甲したロックは侵入するのに都合の良さそうな所を探した。
「せっかくだからな。出来るだけ上の方にしよう。」
城の屋上に降り立つロック。
《単純ね。でもここは正解かしら。ただ…》
「なんだ?」
《ザンジーが捕らわれてるとしたら…》
「あ、そっか。地下牢が濃厚って事か。」
《それはそう。でも…そうとは限らない。だからここで正解なの》
「どういう意味だ?」
《…私は音の精獣。しっかりと聞きなさい、城内の音を》
「城内の…音?」
ロックはネネコに言われ、目を閉じて神経を研ぎ澄ませた。
「し、師匠?…師匠の声だ。」
ロックは師匠の声を聞き、テンションが上がった。しかし次の瞬間…
「な…んだって?」
耳を疑った。
『そろそろ攻め時だろう』
『そうだな。ふっふっ…ザウルのクソヒュウめ。精獣をただのケモノと軽く見た事が運の尽きよ』
『ザンジーよ、お前の精獣、レイチとパウヒュの力ならばレイオンを潰すのにどれくらいかかる想定だ?』
『おいおい、俺だけにやらせるんじゃないだろうな?そんな疲れる事は御免だぞ、ヴィエズ。ガイカンの兵も出せよ。』
『ふ、もちろん。ただ聞いてみたくなっただけだ、その力の凄さをな。』
『なるほど。ふむ…ザンジーの記憶…いや、俺の計算だと二日だな。』
『意外と掛かるな。』
『おい、舐めてるのかヴィエズ。まぁしかし…そうだな。ネネコを取り込めば一日で済むんだがなぁ。』
『ザンジーの弟子が契約したという音の精獣か。しかしそのロックとかいう奴がどこに行ったのか、ザンジーの記憶にも無いんだろう?』
『だな。しかしこれ以上時間をかけていてはザウルに先手を打たれる…』
『ふん。レイオンを奪った後はノーゼやゴーリも動く…どちらにせよ精獣は多いに越した事はないが、仕方ないだろう。』
ザンジーの声に間違いはない。
相手はヴィエズ…それがガイカンの王子である事は、ロックにでも分かる。だが、その会話内容は信じられないものだった。
※ザンジーの言葉にあった『クソヒュウ』について説明しよう…この世界にヒュウという毛むくじゃらの動物が存在するのだが、筋肉質で力は強いのだが脳が小さいという特徴があり、力が強くても馬鹿な人間に対して軽蔑する時に使う俗語である。
「ネネコさん…これ、本当に…」
《ザンジーとヴィエズ王子ね。でも…違う》
「そうだよ、師匠がこんな事を言うはずがない。それに…」
《分かるわ。ザンジーの声だけどザンジーじゃない》
ロックはゾッとした。ネネコが言う。
《寄生者…》
「き?…何だって?」
《私の心を読みなさいよ。寄生者…つまり…》
「……そ、そんな…」
ロックはネネコの思考から寄生者の事を知った。
「は、早く助けないと…」
《ロック…》
ネネコは寄生者に脳を支配された人間の末路を知っている。そしてその知識は、今ロックにも伝わっているはずだ。
だがロックはザンジーを助けると言った。ネネコはその言葉を複雑な思いで受け止めていた。
ロックは屋上から城内に潜入し、足音や呼吸音を聞きながらザンジーが居る方向へ足を進める。
兵士らに遭遇せずに、遂にヴィエズとザンジーを見付ける事が出来た。
物陰から二人を見るロック。
二人はずっと、今迄寄生してきた人や動物等の話しをしていた。中には胸糞の悪くなるようなものもあった。
ザンジーがそんな事を言うはずがない…ロックは頭では分かっていても、心では否定していた。何かの間違いであってほしい。だが…ロックが見たその男は、額から頬にかけて火傷の様な跡があったものの、間違いなくザンジーであった。
そしてそれは、寄生者に寄生されていること…ザンジーが死んでいること…を、示していた。
ロックは受け止めるしかなかった。師匠の死を。
「…」
悲しさよりも怒りが込み上げて来た。無言で握り拳を作るロック。
《ロック、駄目よ》
「無理だ!」
ネネコの静止を聞かず、大きな声を出すロック。感情を抑えることが出来なかった。
「ぬ?!」
ヴィエズとザンジーがロックの方を見る。
「…ロック、だと。」
ザンジーの記憶から、それがロックである事を知る。そしてその姿…
「獣甲、しているのか。………く…くっくっくっくっ。」
笑い出すザンジー。
「ではこちらも…獣甲。」
ザンジーは右手に着けている指輪に手を添えた。ザンジーの身体は黄金の光に包まれる。
《…これはレイチとの獣甲ね》
金色に輝く鎧。
頭部には、両耳付近から棘の様に尖った物が五本ずつ生えており、首には棘がいくつも付いた首輪。胸当て、腰当てにはギザギザの線上の模様があり、その模様はゆっくりと動いていた。
腕や足に装着された防具にも模様が有り、また棘の様な物も外側に向かって複数生えていた。手甲にも突起物があり、全身が攻撃性に特化している様に見える。
「な、なんで…」
呆然とするロック。
「ロックよ。ネネコと契約しているお前が我らの話しを聞いていなかったはずは無いな?つまり…そういう事だ。」
ゆっくりとロックの方に近付く、獣甲したザンジー。
「おいおい、もっとちゃんと話してやれよ。久しぶりの対面だろう?」
ヴィエズが口の端を吊り上げて言う。
「せっかく弟子が訪ねて来たんじゃないか。」
「ふん…面倒だ。」
「ふっ…では私から話してやる。…お前の師匠、ザンジーは…私が殺した。」
ヴィエズの言葉はロックに深く突き刺さる。
「死体に…ザンジーの死体にな、呼び寄せた俺の仲間を入れたのさ。そしてザンジーの知識を得て雷の精獣を見付け出した。レイチの居場所はザンジーの知識通り、分身を捕獲した付近を捜索したら直ぐに分かったんだよ。さすが精獣研究者様だな。…そして分身の力を利用した上でザンジーの身体を使って契約してみたら…これが、意外と簡単に出来たのさ。」
《分身を利用?》
ネネコには分からなかった。
ザンジーは年齢も含めて契約者になる資格はなかった。それを、分身を利用して契約したとは…一体どうやったのか…
「その後はレイチの知識からパウヒュの居場所を知り、契約させたという訳だ。」
「もういいだろう、ヴィエズ。どうせ死んでいく奴よ。…とりあえずネネコ、お前には分身を出してもらおうか。なので…」
ザンジーがロックを睨む。殺気が漂った。
「お前には死んでもらうとしよう。」
《…逃げるよロック!》
ネネコは瞬時に判断した。今のロックでは勝てない。
だが、そんな間は与えない。
ザンジーは見えない程の動きでロックに近付き、腹部に突起物の付いた拳を叩き込んでいた。
吹っ飛ぶロック。その一撃で身動き出来ない状態になった。
「な、な…」
身体中が痺れている。
《まずい、わ》
このままではやられてしまう…ネネコは策を練った。
「ほぉ…」
レイチの力に感心するヴィエズ。
「うむ。全力を出したのは初めてだが…素晴らしい。」
ザンジー自身も感心していた。
「この力、もう少し試したいんだが…」
ヴィエズの方を見るザンジー。
「ふっ…まぁこんな機会はないからな。だがあまり長引かせるな。兵達が騒ぎを聞きつける。」
ヴィエズの言葉にうなずくザンジー。
「…ロックよ。レイチの雷撃、ちょっと受けてくれないか。」
ザンジーの掌に、小型の雷のような塊が発生し、それは徐々に大きくなっていく。
《…ロック、強く念じなさい》
ロックは身体を動かせないが、思考する事は出来る。ネネコの思考を読み、ジッとその時を待つ。
「獣甲はこの雷光鞠弾(らいこうきくだん)に耐えられるのか…なぁ!」
ザンジーは、雷の弾をロック目掛けて投げ放った。
《今!》
ロックの背から生えた羽が床を叩く!ロックの身体が宙に舞った。
雷光鞠弾は壁面に当たって壁が砕ける。砂埃が舞い、周囲が見えなくなった。
「ぬぅ?!」
ザンジーとヴィエズも顔を覆う。
砂埃の間から、ロックがその場から飛び去ろうとしているところを見付けるザンジー。
「逃すかぁ!…ぐ、ぐふぅ?!」
もう一度雷光鞠弾を放とうと構えた瞬間、ザンジーの身体に異変が起こった。
レイチの鎧が変形し、ザンジーの身体に食い込んでいく。
「な、なん?!」
外側に伸びている腕の棘が、内側にめり込み、腕を貫いていく。足も同じ様にめり込む。
「ぐ、ぐぎゃあああぁぁあ!」
そして首輪の突起物が凹み、首の方にめり込んでいった。
「がぼぅば!」
動けないロックの目に、血を吐くザンジーの姿が映った。
「し、ししょ…う…」
《今は飛びなさい!ザンジーの為にも!》
ネネコに叱咤され、ロックはただ空へ向かう事だけを念じた。
「く、むぅ…」
ヴィエズも、ザンジーが鎧に食われるような姿を、ただ見ているだけであった。
ガイカン城上空。
ロックは城から抜け、宙に浮いていた。少し身体も動かせるようになっていたが…呆然と、浮いていた。
「ネネコさん…あれは…」
《分からないけど…多分暴走》
無理に行ったであろう複数の契約。そして獣甲…その報いではないかと、ネネコは言った。
その時、ガイカン城から金色に光る翼を持った何かが飛び出し、ロックの方を見た後、何処かへ飛び去った。
《レイチ…》
ネネコの思考を読み、全てを悟ったロックは…声を出して泣いた。
そしてチュウガン村を出てから三十日が経った。
ロックとネネコはザンジーの様子を見る為、闇夜に紛れて戻って来ていた。
家にザンジーが戻った形跡は無く、嫌な予感がしたロックは城に侵入する事を決める。
《なら獣甲ね》
ロックは師匠から獣甲の話しは聞いており、知ってはいた。しかし実際には未だ獣甲していない。この時が初めてだった。
「…よ、よし。」
信頼が強ければ強いほど深く結び付き、獣甲の危険度は下がる。
その一方、信頼が強く無ければ中途半端になり、身体への負担は大きくなる。それは最悪命を落とす結果となる。
「ネネコさん…行くぞ。」
《いつでも》
ネネコは余裕。
ちなみに信頼が弱ければ獣甲する事は出来ないので、中途半端が最も危険なのだ。
「…………」
《………いつするの?》
ロックはビビっていた。
「う、うぐ…」
今一つ踏ん切りがつかないロック。
《………人間で言うところの信用…がないのかしら?》
ネネコはシレっと言ったが、実のところ割とショック大であった。ロックとは信頼関係を築けていると思っていたからだ。
「いや…いや、違う!違うんだネネコさん!ただ…ただ、獣甲した後の自分の姿を想像してたら恐くなってきただけだ!」
力一杯恥ずかしい事を言うロック。ロックは結構恐がりなのだ。
《ふぅ、自分の姿に恐怖を感じるなんて…変な子。だってアンタは強くなるんだよ?逆に恐いモノなんか無くなると思うけど》
「そ…そっか!」
ネネコに言われて納得する単純なロック。
「獣甲だ!ネネコさん!」
《簡単ね、アンタ》
そして全体に灰色が強調された鎧がロックを覆う。
両耳部分からは尖った二つの角の様な物が生えており、首から口元に向かっては、くの字に曲がった棒状の物が互い違いに伸びていた。
少し角張った胸当てや腰当て、脛当て等には、丸に一本のラインが入った模様があり、それが少しずつ動いている。
背中からは、触ると痛そうな角張った白い翼の様な物が生えている。腰当ての後部からは先の尖った硬そうな尾が生えていた。
「こ、これが獣甲…」
《そうね。…あ。今安心してるようだけど、獣甲を解いたら多分…しばらく苦しむと思うよ》
「え?!」
《筋肉痛?神経痛?…なんか、そんな感じ》
「適当だな、おい!」
先に言えよ…と言いたいロックだったが、そこは我慢してガイカン城に行く事を優先しようと思った。とは言え、獣甲していれば考えている事は全て筒抜けであり、ネネコはロックの心の声を聞いてクスっと笑っていた。
「えーと…飛べる?」
《そうね。アンタがこの翼を飾りだと認識してたら飛べないよ》
「は?!え、えーと、と、飛べる飛べる飛べる…飛べる!」
ロックがそう念じた時、身体がフワッと宙に浮いた。
「おお!」
《コツがつかめた?じゃあ行きましょ》
「ぅおう!」
若干まだビビっている。
ガイカン城上空。
獣甲したロックは侵入するのに都合の良さそうな所を探した。
「せっかくだからな。出来るだけ上の方にしよう。」
城の屋上に降り立つロック。
《単純ね。でもここは正解かしら。ただ…》
「なんだ?」
《ザンジーが捕らわれてるとしたら…》
「あ、そっか。地下牢が濃厚って事か。」
《それはそう。でも…そうとは限らない。だからここで正解なの》
「どういう意味だ?」
《…私は音の精獣。しっかりと聞きなさい、城内の音を》
「城内の…音?」
ロックはネネコに言われ、目を閉じて神経を研ぎ澄ませた。
「し、師匠?…師匠の声だ。」
ロックは師匠の声を聞き、テンションが上がった。しかし次の瞬間…
「な…んだって?」
耳を疑った。
『そろそろ攻め時だろう』
『そうだな。ふっふっ…ザウルのクソヒュウめ。精獣をただのケモノと軽く見た事が運の尽きよ』
『ザンジーよ、お前の精獣、レイチとパウヒュの力ならばレイオンを潰すのにどれくらいかかる想定だ?』
『おいおい、俺だけにやらせるんじゃないだろうな?そんな疲れる事は御免だぞ、ヴィエズ。ガイカンの兵も出せよ。』
『ふ、もちろん。ただ聞いてみたくなっただけだ、その力の凄さをな。』
『なるほど。ふむ…ザンジーの記憶…いや、俺の計算だと二日だな。』
『意外と掛かるな。』
『おい、舐めてるのかヴィエズ。まぁしかし…そうだな。ネネコを取り込めば一日で済むんだがなぁ。』
『ザンジーの弟子が契約したという音の精獣か。しかしそのロックとかいう奴がどこに行ったのか、ザンジーの記憶にも無いんだろう?』
『だな。しかしこれ以上時間をかけていてはザウルに先手を打たれる…』
『ふん。レイオンを奪った後はノーゼやゴーリも動く…どちらにせよ精獣は多いに越した事はないが、仕方ないだろう。』
ザンジーの声に間違いはない。
相手はヴィエズ…それがガイカンの王子である事は、ロックにでも分かる。だが、その会話内容は信じられないものだった。
※ザンジーの言葉にあった『クソヒュウ』について説明しよう…この世界にヒュウという毛むくじゃらの動物が存在するのだが、筋肉質で力は強いのだが脳が小さいという特徴があり、力が強くても馬鹿な人間に対して軽蔑する時に使う俗語である。
「ネネコさん…これ、本当に…」
《ザンジーとヴィエズ王子ね。でも…違う》
「そうだよ、師匠がこんな事を言うはずがない。それに…」
《分かるわ。ザンジーの声だけどザンジーじゃない》
ロックはゾッとした。ネネコが言う。
《寄生者…》
「き?…何だって?」
《私の心を読みなさいよ。寄生者…つまり…》
「……そ、そんな…」
ロックはネネコの思考から寄生者の事を知った。
「は、早く助けないと…」
《ロック…》
ネネコは寄生者に脳を支配された人間の末路を知っている。そしてその知識は、今ロックにも伝わっているはずだ。
だがロックはザンジーを助けると言った。ネネコはその言葉を複雑な思いで受け止めていた。
ロックは屋上から城内に潜入し、足音や呼吸音を聞きながらザンジーが居る方向へ足を進める。
兵士らに遭遇せずに、遂にヴィエズとザンジーを見付ける事が出来た。
物陰から二人を見るロック。
二人はずっと、今迄寄生してきた人や動物等の話しをしていた。中には胸糞の悪くなるようなものもあった。
ザンジーがそんな事を言うはずがない…ロックは頭では分かっていても、心では否定していた。何かの間違いであってほしい。だが…ロックが見たその男は、額から頬にかけて火傷の様な跡があったものの、間違いなくザンジーであった。
そしてそれは、寄生者に寄生されていること…ザンジーが死んでいること…を、示していた。
ロックは受け止めるしかなかった。師匠の死を。
「…」
悲しさよりも怒りが込み上げて来た。無言で握り拳を作るロック。
《ロック、駄目よ》
「無理だ!」
ネネコの静止を聞かず、大きな声を出すロック。感情を抑えることが出来なかった。
「ぬ?!」
ヴィエズとザンジーがロックの方を見る。
「…ロック、だと。」
ザンジーの記憶から、それがロックである事を知る。そしてその姿…
「獣甲、しているのか。………く…くっくっくっくっ。」
笑い出すザンジー。
「ではこちらも…獣甲。」
ザンジーは右手に着けている指輪に手を添えた。ザンジーの身体は黄金の光に包まれる。
《…これはレイチとの獣甲ね》
金色に輝く鎧。
頭部には、両耳付近から棘の様に尖った物が五本ずつ生えており、首には棘がいくつも付いた首輪。胸当て、腰当てにはギザギザの線上の模様があり、その模様はゆっくりと動いていた。
腕や足に装着された防具にも模様が有り、また棘の様な物も外側に向かって複数生えていた。手甲にも突起物があり、全身が攻撃性に特化している様に見える。
「な、なんで…」
呆然とするロック。
「ロックよ。ネネコと契約しているお前が我らの話しを聞いていなかったはずは無いな?つまり…そういう事だ。」
ゆっくりとロックの方に近付く、獣甲したザンジー。
「おいおい、もっとちゃんと話してやれよ。久しぶりの対面だろう?」
ヴィエズが口の端を吊り上げて言う。
「せっかく弟子が訪ねて来たんじゃないか。」
「ふん…面倒だ。」
「ふっ…では私から話してやる。…お前の師匠、ザンジーは…私が殺した。」
ヴィエズの言葉はロックに深く突き刺さる。
「死体に…ザンジーの死体にな、呼び寄せた俺の仲間を入れたのさ。そしてザンジーの知識を得て雷の精獣を見付け出した。レイチの居場所はザンジーの知識通り、分身を捕獲した付近を捜索したら直ぐに分かったんだよ。さすが精獣研究者様だな。…そして分身の力を利用した上でザンジーの身体を使って契約してみたら…これが、意外と簡単に出来たのさ。」
《分身を利用?》
ネネコには分からなかった。
ザンジーは年齢も含めて契約者になる資格はなかった。それを、分身を利用して契約したとは…一体どうやったのか…
「その後はレイチの知識からパウヒュの居場所を知り、契約させたという訳だ。」
「もういいだろう、ヴィエズ。どうせ死んでいく奴よ。…とりあえずネネコ、お前には分身を出してもらおうか。なので…」
ザンジーがロックを睨む。殺気が漂った。
「お前には死んでもらうとしよう。」
《…逃げるよロック!》
ネネコは瞬時に判断した。今のロックでは勝てない。
だが、そんな間は与えない。
ザンジーは見えない程の動きでロックに近付き、腹部に突起物の付いた拳を叩き込んでいた。
吹っ飛ぶロック。その一撃で身動き出来ない状態になった。
「な、な…」
身体中が痺れている。
《まずい、わ》
このままではやられてしまう…ネネコは策を練った。
「ほぉ…」
レイチの力に感心するヴィエズ。
「うむ。全力を出したのは初めてだが…素晴らしい。」
ザンジー自身も感心していた。
「この力、もう少し試したいんだが…」
ヴィエズの方を見るザンジー。
「ふっ…まぁこんな機会はないからな。だがあまり長引かせるな。兵達が騒ぎを聞きつける。」
ヴィエズの言葉にうなずくザンジー。
「…ロックよ。レイチの雷撃、ちょっと受けてくれないか。」
ザンジーの掌に、小型の雷のような塊が発生し、それは徐々に大きくなっていく。
《…ロック、強く念じなさい》
ロックは身体を動かせないが、思考する事は出来る。ネネコの思考を読み、ジッとその時を待つ。
「獣甲はこの雷光鞠弾(らいこうきくだん)に耐えられるのか…なぁ!」
ザンジーは、雷の弾をロック目掛けて投げ放った。
《今!》
ロックの背から生えた羽が床を叩く!ロックの身体が宙に舞った。
雷光鞠弾は壁面に当たって壁が砕ける。砂埃が舞い、周囲が見えなくなった。
「ぬぅ?!」
ザンジーとヴィエズも顔を覆う。
砂埃の間から、ロックがその場から飛び去ろうとしているところを見付けるザンジー。
「逃すかぁ!…ぐ、ぐふぅ?!」
もう一度雷光鞠弾を放とうと構えた瞬間、ザンジーの身体に異変が起こった。
レイチの鎧が変形し、ザンジーの身体に食い込んでいく。
「な、なん?!」
外側に伸びている腕の棘が、内側にめり込み、腕を貫いていく。足も同じ様にめり込む。
「ぐ、ぐぎゃあああぁぁあ!」
そして首輪の突起物が凹み、首の方にめり込んでいった。
「がぼぅば!」
動けないロックの目に、血を吐くザンジーの姿が映った。
「し、ししょ…う…」
《今は飛びなさい!ザンジーの為にも!》
ネネコに叱咤され、ロックはただ空へ向かう事だけを念じた。
「く、むぅ…」
ヴィエズも、ザンジーが鎧に食われるような姿を、ただ見ているだけであった。
ガイカン城上空。
ロックは城から抜け、宙に浮いていた。少し身体も動かせるようになっていたが…呆然と、浮いていた。
「ネネコさん…あれは…」
《分からないけど…多分暴走》
無理に行ったであろう複数の契約。そして獣甲…その報いではないかと、ネネコは言った。
その時、ガイカン城から金色に光る翼を持った何かが飛び出し、ロックの方を見た後、何処かへ飛び去った。
《レイチ…》
ネネコの思考を読み、全てを悟ったロックは…声を出して泣いた。
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昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
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犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
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そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』
YOLCA(ヨルカ)
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「その黄金の瞳……なんて気持ち悪いの。我が家に化け物は必要ないわ」
名門伯爵家の娘として生まれたエレーナ。しかし、彼女に宿った未知の能力を恐れた継母イザベラは、実父の留守中を狙い、幼い彼女を雪の降る町に捨て去った。
死を覚悟した彼女を拾ったのは、帝国の裏社会を支配する「皇帝の弟」ヴィンセント公爵。
彼はエレーナの力を「至宝」と呼び、彼女を公爵家の実の娘として迎え入れた。
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エレーナは、二人の過保護な兄と、五人の精鋭部下に囲まれ、美しくも最強の工作員へと成長していた。
すべてを暴く『黄金の瞳』、すべてを操る『魅了』、そして伝説の師匠たちから授かった至高の淑女教育を武器に。
一方、継母イザベラは父を捨て、さらなる権力を手に入れるため、悪名高い侯爵の妻として社交界の頂点に君臨していた。
「お久しぶりです、お母様。……化け物と呼ばれた私からの、お返しを受け取ってくださいね」
捨てられた少女による、優雅で残酷な復讐劇。
今、その幕が上がる。
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