異世界をつなぐ契約者

楓和

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第2章・第9話「テリオス」

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 川沿いに倒れているジュウビとロック。
精獣達はそれぞれ宝石に収まっているのか、周囲には居なかった。
そこに、大きな獣に乗った女が現れた。

 「…この程度か。拍子抜けだな。」

女が乗っている獣は、顔こそカウムに似ているが、その大きさはカウムの数倍。人が三人位乗れるほど広い背中。身体には黒と白の縞模様。尾は黒くて長い。カウムのように炎のたてがみは無く、代わりに黒い毛のたてがみがある。牙も無い為、カウムよりも愛嬌のある顔なのだが、その大きさで見降ろされると威圧感を感じる者も居るだろう。

 「…足りんな。」

女が呟いた。そう、倒れている者の中にイオンが居ない。
その瞬間、川の中から飛び出る様に現れ、女の背後に着地したのは獣甲したイオンだった。

 「動かないで下さい。」

水の鉾を女の方に向けるイオン。

 「あなたは何者ですか?何故私達を…」
 「甘いな。」
 「え?」

大きな獣が後足で河原の石をザッと蹴り上げた。

 「あっ…!」

思わず両腕で目を防御するイオン。その隙に女は、イオンの背後に回っていた。

 「…何故迷わず打たなかった?それが命取りになる。」

女は何かをイオンの方に向けていた。

 「これは銃といってな。私が指を少し動かすだけでお前の身体に穴を開ける事が出来る。」
 「…同じ事を言ってもいいですか?」
 「…」
 「何故そのジュウっていう物で私を迷わず攻撃しなかったんですか。」
 「………ぷっ、ははっ。」

女は笑った。しかしその目は、瞬きする事無くイオンを見ている。

 「面白い。お前はなかなか見込みがあるな。」

銃を懐にしまう女。

 「私はライラーズ。お前の名は?」
 「…私はイオン。戦う気は無いんですね?」
 「まぁ…今は、な。」

微妙な言葉を吐き、大きな獣の方に無防備で歩いて行くライラーズに、イオンも警戒を解いた。


 日は暮れかけていた。
川沿いで火をおこし、その焚火を中心にイオン達は座っていた。

 「えーと…」

重い雰囲気に困惑しているイオン。ロックが口火を切る。

 「…んで、突然攻撃しといて何の詫びも無しかよ?」

自分を睨むロックに対し、ライラーズは…

 「お前。」

ジュウビを指差す。

 「…?」
 「それだけ精獣と契約しといて異常はないのか。」
 「お、俺を無視すんな!」

怒るロックの前に手を出し、抑えるジュウビ。

 「あんたは何を知っているんだ。」

ジュウビは、ライラーズから奇妙な気配を感じていた。
こいつは何か重要な事を知っている…そんな気がしてならなかった。

 「何を…か。モノを知らんガキという訳だ。」
 「なっ!」

ジュウビをけなされ、ムッとしたのはイオンとロック。

 「おっと。馬鹿にした訳じゃない。…どうやらお前達は係わりが無いようだな。」

フッと鼻から息を漏らすライラーズ。

 「一度に話せば頭がこじれるだろう。少しずつ話してやる。何が良い?私の事か?精獣の事か?それとも……」

言葉を止めるライラーズ。その一瞬で空気が凍り付く程の緊張を感じるジュウビ達。
思わずイオンが口を開く。

 「あなたの事を聞かせて下さい。」

それだけで一気に緊張が解けた。

 「…お前は良い。何者か分からない私に対して警戒しつつも敬語。丁度いい緊張感。まぁ…そこの男も合格点だが。そっちは駄目だな。」

ロックは不合格。

 「この!く、くく、クソ…」
 「ロックさん、話しがややこしくなるんで。」

ネネコのように容赦なくロックを止めるイオンに、ちょっと笑いそうになるジュウビ。

 「…私は異世界から来た。」

そのライラーズの言葉に、ピリッとするイオン達。

 「なるほど。知っていたのか。」

その雰囲気に、イオン達が異世界の事を知っていたと見抜くライラーズ。

 「…まぁ、異世界から来たのは私だけではない。他に何人も居る。」
 「え?!」
 「何だ、そこは知らないのか。お前達はこの世界をあまり知らずに暮らしていたのだな。」

ライラーズに言われ、言い返せないジュウビ達。

 「まぁいい。とにかく、この世界には異世界から来た奴が複数居る。中には…神の様な奴も居た。そう、そこに居る…精獣達を作った奴だ。」

やはり…という顔付きで互いを見るイオン達。

 「そこは知っているのか。」
 「そ、それで、その精獣様を作った人って…」

イオンが聞くと、ライラーズは一度口をつぐんだ後、ゆっくりと話し出した。

 「…テリオス。テリオス・ゾルド。」
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